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2008年2月28日 (木)

「ラヴレター」 岩井俊二

ラヴレター (角川文庫) ラヴレター (角川文庫)

著者:岩井 俊二
販売元:角川書店
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岩井さんの映画はいつも文句なしの作品だと思いますが、
この本は若干映像ありきの文章構成になっていて、
小説的な味わいが薄いのが残念でした。まぁとても多才な事は一目瞭然
なので、脱帽といったところですけどね。それにしても脚本のような小説。

二年前に恋人を亡くした。
それは彼の命日に墓参りに来るたび、強く思い知らされる事だ。
博子はまだ樹を忘れる事が出来なかった。それどころか、
死んでからもまだ何かを求めるように彼の姿を探している。
彼が中学生時代に住んでいた住所を知った博子は、
何となくペンをとり、いないはずの彼に当てて手紙を送ったのだった。
「お元気ですか? 私は元気です」この手紙は誰にも届かなくていい。
だって、届かないこそが、彼に届いているような気がするではないか。
しかし、数日後、驚いた事にその手紙には返事が来たのである。

是非とも映像化して欲しい(してあるけど)と思う第一感想だった。
ストーリーはとても完璧である。きっと岩井映画のこれを観たら、
それはもうボロボロ泣くだろうと思った。
しかし、私の想像力が乏しいのか知れないが、
いい話だとは思いつつ、この本を読んで感動する事はなかった。
ただ、「岩井さんが映像化したら凄そうだ!」という感覚、というか、
ただならぬ秀作である匂いはプンプンし、わくわくした。
でも、どうだろう。この本が岩井さんではない別の監督に映画化されたら…
私はどうも素直に頷く事が出来なかった。
そもそもの問題として、この本はとても脚本的である。
会話がかなりの量をしめ、人の動作描写は必要最低限に書かれているのだ。
それはきっと映像化するとき、その登場人物を演じる役者の味を
加味している?のではないか、と私は思うのだが、
「小説」として見ると、とてもスカスカしていて、文章的味がない。
でもきっとこれは、書き手の職業的な問題もあると思う。
脚本家で、小説も書いている人たちは何人もいるが、
私はその全ての人に対してこんな思いをしていると思うからだ。
本谷さんも、松尾さんも、三谷さんも、みなどこか小説家…というよりは、
やっぱ脚本家でしょう、という雰囲気がした。
と、個人的な趣味の偏りを語ってしまったけれど、
このストーリーを是非映画で見たいと思った。
最後、樹が見せる動揺を、最大にするためどこまで手の込んだものに
なっているのか、とても興味があるところ。
それとこの本は、博子の話ではない、というところがポイントである。
つい前半博子の話に感情移入してしまいがちだが、
この本は「あたし」のための話なのだ。その切り替えが絶妙で、
さすが岩井さんですねぇ、と思った次第でした。

★★★☆☆*87

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