« 「トリップ」 角田光代 | トップページ | 「ラヴレター」 岩井俊二 »

2008年2月27日 (水)

「落花流水」 山本文緒

落花流水 (集英社文庫) 落花流水 (集英社文庫)

著者:山本 文緒
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


一つ言い訳をしておくと、私は「主人公の一生を描いた作品」
という本が嫌いである。もちろん、エッセイや暴露本に文句はない。
けれども、小説の中で描かれる人の生涯というものが、どうにも
好きになれないのである。だって作家の思い通り、と思ってしまう。

「もう行かなくては」
私の本当のお母さんは、お姉ちゃんだった。
まだ若い頃に間違って子を授かってしまったから、
子供、すなわち私は母の両親の籍に入ることになった。
だから私がずっと母親だと思っていた人は祖母であり、
本当の母親は、ときおり家に遊びに来る姉だったのである。
祖母が亡くなると、そんな困惑をよそに母に引き取られる事になった。
たまに遊びにやってくるときはやさしい姉だったのに、
引き取られてゆくとそれは酷い扱いを受けた。
私はそろそろ大人になる。ここを出てゆかねばならない。

連続短編集である。最初に一つ目が、ハーフの男の子が主人公、
という、何とも読みにくい本だ。ほとんど外国人と言ってもいい、
ハーフの子供が、一体どんな思いをしているかなんて、
乏しい私の頭では考えられず、かなりの違和感があった。
まぁ山本さんなので、さばさばしていて読みやすいといえば
読みやすいのだが、本当にそう思っているのだろうか…
とおもうとリアリティのなさがあったようにも思う。
この本は、手毬という「私」の一生を描いた本である。
母親だと思っていた人物は祖母であり、
優しいと思っていた姉は、凶暴な実の母親だった。
そして母と義父と手毬の生活が始まる。
手毬は義父に恋をしながら、しかし違う人間を選び結婚。
その後、また違う男駆け落ちをする。
あんなに母親を嫌っていたはずなのに、いつしか自分もまた
同じような道を選んでいる。義父に「なんで君は一緒にいるんだ?」
と聞かれ、黙り込んだように、手毬はどこかで母親を、
憎みきれていない部分があったのだろう。
この本が、と限定するわけではないが、
私は個人的に上にも述べたように、「主人公の一生を描いた作品」
が嫌いである。だって、ストーリーは全て作者が考え描くわけで、
何となくその偏った「人物像」が、「作り物」という気がするからだ。
そんな事を言ったら、普通の小説だってそうじゃないか、
と言われてしまいそうだが、もちろんその通りである。
でも、一般的な「ある一定の期間・出来事」を書いた本は、
その書かれていない部分を読者が想像することが出来る、
と言う点で、私は好きなのだと思う。

★★☆☆☆*79

|

« 「トリップ」 角田光代 | トップページ | 「ラヴレター」 岩井俊二 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/10828677

この記事へのトラックバック一覧です: 「落花流水」 山本文緒:

» 今読んでる図書館の本 [☆★ぱいんブログ★☆ 〜日々、思ったことをボチ?と…〜]
この前の同行で3/6(木)に借りて来た本 『落花流水』山本文緒著 これ、昔持ってたんだけど… 久し振りに読み返したくなって借りちゃったぁ 『サンタのおばさん』東野圭吾・作 杉田比呂美・画 「絵本みたいだなぁ!」って思いつつ東野圭吾作品ってことで… でも内容は感慨深かったよぉ (でも、やっぱちょっと東野圭吾作品っぽくはなかったけど) 『臨場』横山秀夫著 短編集なんだけど 「倉石義男(終身検視官)を取り巻く周りの人達」 って感じかなぁ? でも… 【眠前の密室】の、(元々の事件の)犯人が ... [続きを読む]

受信: 2008年3月 9日 (日) 03:44

« 「トリップ」 角田光代 | トップページ | 「ラヴレター」 岩井俊二 »