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2008年1月 2日 (水)

「疾走 上」 重松清

疾走 上 (角川文庫) 疾走 上 (角川文庫)

著者:重松 清
販売元:角川書店
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これ、随分前に明らかに読んだ事がある本なのですが、
途中からストーリーが分からなくなっていたので、読み直し始めました。
上巻の辺りは読んだ事あったので、きっと途中放棄だと思われます…。
重松さんは「流星ワゴン」「きよしこ」「ナイフ」も途中放棄酷い…。

「浜」と「沖」、お前の住む土地では、そうして差別を続けてきた。
幼い頃から刷り込まれ、染み込んだ差別意識は、中学校に上がり歴然となる。
「浜」の子供は、干拓地を埋め立て作られた町「沖」の子供と、
決して仲良くなる事はない。生徒会長だったお前の兄は、
その筆頭のようなもので、頭のいい彼は、「沖」の人々を罵っていた。
ところが兄は高校に上がり、学力が一気に下がってしまった。
学校でもいじめられ始め、今まで気高かった兄は壊れるしかなかった。
その帳尻はお前に、お前の家族に向けられ、家族はともに倒れ始める。
そんな時、「沖」の家が次々に放火に合いはじめた。果たしてその犯人は…

この本の一番のポイントは、やはり三人称「お前」という言葉で、
物語がつづられている点であろう。もちろん「お前」という部分を、
「僕」や「俺」と置き換えて読むこともできる。
だが、その一人称では作る事の出来ない、「お前」という言葉にある、
重々しい空気感、もしくは命令的な威圧感が、この物語をより気味悪く、
息の詰まる話へと導いているのである。
特に凄いのは、「お前」というまるで主人公を非難するような、
威圧の雰囲気に、「キリスト教」という、異教徒の融合、
それから日本の田舎だからこそ感じ得る地元の抗争、
というこの3点が、怖ろしくミスマッチに絡み合い、ある意味不気味な、
それでいて読者を惹き付けるようなはらはら感を生み出している所だろう。
そして、重松さんといえば、思春期の描写の秀逸さがある。
リアルに描かれる物語に潜む、「悪を隠している事実」
「悪を頼らなくてはいけない事実」「悪に責められる事実」
それらが、「さすがだ」感心し、納得する事ができる。
一つやはり感じるのは、重松さんは、
より第三者的に物事を見ることが出来るのだろう、ということ。
自分の感情を交える事無く、ただ一つの物語を完成することができる。
それは凄い事で、ある意味とても怖ろしい事でもあると思う。
特にこの話からは、そんなただならぬ雰囲気が溢れ、
恐ろしさを誘う要素を入念に練りこんだ様子を見ることが出来る。
下巻、買ってこなくては…衝動的に買ったので手元になく残念。
早く読みたいなぁ。

★★★★☆*90

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