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2008年1月13日 (日)

「娼年」 石田衣良

娼年 (集英社文庫) 娼年 (集英社文庫)

著者:石田 衣良
販売元:集英社
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実はちょっと馬鹿にした気持ちもあったのですが(すみません)
予想を上回る良さでした。石田さん、見直した。
でも、まぁ七割がたセックス描写なので、苦手な方は
ご注意願いたい感じで。意外や意外、いけるかもしれませんけど。

とりわけ趣味もなく、女も好きではない、退屈な男と評されるぼくは、
ある日、御堂静香にボーイズクラブの店員として雇われる事になった。
御堂に電話で予約を入れた女性と待ち合わせをし、
デートをしたり、セックスをしたりすると、一時間一万円になる。
最初は馬鹿にした気持ちだったが、複数の女性と関係を持つうち、
ぼくは人間の「愛」や「性欲」について目覚めてゆく。

石田さん、凄い!というのも、全体の七割近くをセックスに当てているのに、
物語がまったくいやらしくないからである。むしろ心地いいくらいだ。
これは物語を書く時、主人公の男に石田さんが必要以上に感情移入を
しないよう、細心の注意をはらって書かれているからだろう。
それと、極力「いやらしい」とされる擬音や声、などを排除している。
エロスの要素は捨て、人間がなぜ性欲や欲望を持っているのかというような、
「人間の不思議」といった疑問に正面から向き合っているから、
女性でも楽しめるような本になっているのだ。
ところで、確かにセックスと言うだけで、世間の人間は卑猥だと言ったり、
そんな業界に手を染めるのは、おかしな人間がやるものだ、という
負のレッテルが貼られているため、みなこそこそとしなくてはいけない。
その矛盾に疑問を持ち、足を踏み込んでゆくのが、「ぼく」である。
物語自体は単純である。ただ「ぼくが欲望に目覚める」と言えばいい。
でもその中で起きる複雑な心理変化が、他の男性作家では描けないような、
第三者的な立場で描かれているから、読後に清々しい気分になった。
一つ文句を付けると、主人公は二十歳だけれども、
こんなに人格が整った男はいるのだろうか…というところ。
ちょっとハードボイルドすぎる気もしなくもない。
もう一つは美点を挙げると、私もボーイズクラブに電話をしたくなった。笑
というところでしょうか。なかなか面白かったです。
突き詰めると、恋愛ではないので、私は好きだったのかもしれませんが。

★★★★☆*87

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