« ■個人的お薦め本 | トップページ | 「失われた町」 三崎亜記 »

2008年1月20日 (日)

「東京湾景」 吉田修一

東京湾景 (新潮文庫) 東京湾景 (新潮文庫)

著者:吉田 修一
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


再読しました。もう何回か読んでるんで、ストーリーはばっちりです。
読み終えるのに約二時間。やはり吉田さんの文章は、心地よく、
私の好きな文章です。あぁ早く何か新刊でないかしら。
「悪人」で最高な物を書いてしまったから、大変でしょうけれども。

愛は、体だけではなく心のどこか深い所が繋がっているはずだ。
高校時代そう信じていた自分を、亮介は今、小ばかにし嘲っていた。
所詮、男と女は体が繋がる事だけを目的にして、それ以上それ以下でもない。
そんな亮介が好きになったのは、出会い系サイトで出会った美緒だった。
品川埠頭と、お台場。彼らのいる場所の真ん中には、
東京湾が広がっていて、その隙間にじっと佇んでいる。
人と人の間に生じてしまう、嘘や気持ちのすれ違い。そんな溝を、
この海を渡りきった時、どうか消し去る事は出来ないだろうか、と願う恋愛小説。

いつ読んでもいいけれど、やっぱり一番最初に読んだ時感じた思いが、
一番大きく残っているようにも感じます。
果たして愛はいつまで続くのか。
どんなにあの時愛していたと思っていても、
今になってみると確実にそれが薄れている。
自分では望んでいないのに、勝手に心が相手に飽きて、
そしてもう終りが来るのだと、告げるのだ。
始まったものは、いつしか終わる。
そんな事を言っていたら、何も始まらないじゃないか。
そうは分かっているのだが、どうしても動き出さない体がもどかしく、
また諦めたようにそれをなかったことにしようとする。
一歩踏み出したら止まらなくなってしまう亮介のように、
きっと人間の心の中には、見えない線があると思う。
それは人それぞれ違うもので、その自分の中に引かれた
ある一線を越えたなら、未知の空間へと続いている。
それを恐れて、けれど踏み出さなければ何も始まらない愛を、
果たして二人はどのように手に入れるのか。
東京湾を泳いで渡る。それが亮介の答えであり、新たな未来の一歩だ。
ところで、いつも忘れがちなのか、伏線で張られる「東京湾景」
改めて読み返すと、このせいで複雑になっていると感じなくもない。

★★★★☆*91

------------------------------------------------------------------
*過去の感想文(2007/1/13)

東京湾景 東京湾景

著者:吉田 修一
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


読んだ人誰もが思うのじゃないかと思いますが、
「なんだ、吉田さん純愛小説書けるんじゃん!」と。(失礼な
でも本当いい感じでした、私は好きですね。
こんな深いところを突いてくれる、恋愛小説はなかなかないでしょう。
ちょっと気になるのは、ドラマとは全く違う、って事くらいです。
そして全然仲間さんってイメージじゃないんですよねぇ・・・。
で、主人公は何故か山田孝之な感じ。無謀でどろっとした白夜行な雰囲気がね。

愛は、体だけではなく心のどこか深い所が繋がっているはずだ。
高校時代そう信じていた自分を、亮介は今、小ばかにし嘲っていた。
所詮、男と女は体が繋がる事だけを目的にして、それ以上それ以下でもない。
そんな亮介が好きになったのは、出会い系サイトで出会った美緒だった。
品川埠頭と、お台場。彼らのいる場所の真ん中には、
東京湾が広がっていて、彼らの隙間にじっと佇んでいる。
人と人の間に生じてしまう、嘘や気持ちのすれ違い。そんな溝を、
この海を渡りきった時、どうか消し去る事は出来ないだろうか、と願う恋愛小説。

吉田さんって、繰り返すけど絶対核心を言わないよねぇ・・・と改めて思った。
まぁそこが私が好きな所でもあり、吉田さんの作風とも言えるかな。
この本はとてもよかったですよ、ドラマの韓国国籍とか分けのわからん設定、
何だったんだろう?とちょっと疑いたくなるほどです。
特に題材になっている愛の深さと尺度、他の恋愛小説だと、
「どの位好きなのよ」で済んでしまいそうですが、この本は違う。
昔、愛に溺れすぎたあまりに、本当に人を愛する事をやめてしまった男。
昔、本当に人を愛せる分けがないと思い、でも愛を求め続ける女。
出会い系サイトで出会った二人の間には、その時点で溝があって
偽名を使ったり、過去を偽ったりする。
しかし、次第に心が惹かれ合ってしまった彼らは、
どうしても自分のその嘘を言い出せずにいるのだ。
もしも嘘だとわかったら、嫌いになられるかも知れないし、
今までのこの生活が続かないかも知れない。そう思いつつも、
実際には自分たちがどれだけの深さで愛し合っているのか判ってはいない。
仮面を被ったまま恋に落ちた2人は、
愛は体を繋げるだけのものだと感情を押さえつけ、そして去ろうとするけど、
しかしふと立ち止まった時、感じたあの時の感情を何故か追いかけてしまう。
それがまさに愛、と言うか恋愛だよね。
と、とても単純な、でもとても重要な恋愛を描いている。
ラスト、どうにか2人の間にある蟠りを消し去ろうと、東京湾を渡る亮介。
私は絶対泳いでくるよ、って思うのですが皆様どうでしょうか?

★★★★☆*91

|

« ■個人的お薦め本 | トップページ | 「失われた町」 三崎亜記 »

コメント

おはようごさいます。るいさん。
TBとコメントありがとうございました。
ラストは、私も思いましたよ!(笑)
絶対に泳ぎつくな、と(笑)
泳ぎ着かなくても、きっと幸せが待っているんじゃないかと!!

投稿: ゆう | 2007年1月14日 (日) 07:10

先日はコメントありがとうございました♪
この本、昨日買ってきたところで、私の方もタイムリーで驚きました(笑)
でも友人に借りている本が8冊。
そっちを先に読まないといけないので、この本にたどり着けるのはいつになることやら。
でもるいさんの記事を読んで、早く読みたくなっちゃいました。
先に読んじゃおうかしら。
読み終わったらTBさせてくださいね♪

投稿: このみ。 | 2007年1月14日 (日) 14:36

>ゆうさん

こんばんわ!
TB&コメントどうもありがとうございます^^*

>ラストは、私も思いましたよ!(笑)
>絶対に泳ぎつくな、と(笑)
>泳ぎ着かなくても、きっと幸せが待っているんじゃないかと!!

やっぱりですか~!!!(笑)
私も読んだ瞬間、「絶対これ泳ぐって!!」って思いましたね。
ふとあの火事の様子が浮かんだ瞬間、あの時の熱い思いをもう一度、
美緒にも向けてくれるはずだ、と何故か確信しました。
そう考えると、吉田さんの文章はさっぱり具合に騙されてたけれど、
物凄くどろどろした恋愛小説だったのか?と思えてなりません。
そうですね、泳ぎ着かなくても、洋服びちょびちょのまま、
亮介はきっと美緒の前に現われてくれそう(笑)
良いお話でした、続き読みたいけど・・・
ここで止めておくのがきっといいのでしょうね、なんて。

投稿: るい | 2007年1月15日 (月) 00:47

>このみ。さん

こんばんわ!
コメントどうもありがとうございます^^*

おぉ!こちらもタイムリーだったのね!!凄い。
ちょっと偶然って怖いですよねぇ(笑)
いやぁ、このみ。さんの所であの「おやじ汁」を見た時の衝撃は凄かったですよ。
「え?え?デ・ジャヴ?!」とか思いました。
一瞬あのジュースが、全国的ヒット商品なのに、
昨日まで私だけが知らなかったのか?と思ったくらいで・・・。
うん、偶然て怖いですよ。

「東京湾景」購入されたのですね!
なかなか良かったですよ^^*
私は仲間さん主演だったドラマ(何と月9でした)をしっかり見ていたので、
韓国国籍とか、出会い系とか、何か手を出しづらい雰囲気があったのですが、
読んでビックリ、小説の方が断然よかったです。
だいぶ登場人物の設定とか違いますし、もしドラマを見ていたのだとしたら、
全く別物だと思って読んだ方が楽しめると思います。

>でも友人に借りている本が8冊。

あぁ、私も(笑)
つい、借りっぱなし・・・常習犯です。
自分で言うな、と言う感じですが結構酷い借り手だと思います。
本当に「読みたい!」って思っている時に貸してもらえれば、
すぐにでも読むのですが、ちょっと忘れた頃にくると、かなり時間が;(苦笑)
それに、今回のようにやはり間に読みたくなる本もありますしね!
私は欲望には負けてしまう根気の無い人間なので、
つい、そちらを読んでしまい・・・。
ほんの出来心ってヤツですよね。(違うか?
あ、でも読んで損はしない本ですので!・・・とか誘惑しつつ、
このみ。さんのレビューを楽しみに待っております(笑)
読み終わったら是非TBしてやって下さい!
こちらからも遊びに伺いますね♪

投稿: るい | 2007年1月15日 (月) 01:07

どうもー

そうですねー
吉田さんらしさのまま、恋愛を深く書いてて、
おーって感じでした。
後半からラストはよかったですね!!

ホント、ドラマの微妙な設定はなんなんでしょうかね?
原作読んで、ドラマとか映画を観たりしますが、
これに関しては、観なくていいなーって思いました。

投稿: じゅん | 2007年1月15日 (月) 21:21

>じゅんさん

こんばんわ!
TB&コメントどうもありがとうございます^^*

そうそう、吉田さんらしさで、さっぱり読んでいましたけど、
読み終わって振り返ってみると、結構ドロドロ?だなぁと思いました。
思いっきり三角関係で、メロドラマだし。
恋愛を深く突っ込んで書いているのにも関わらず、
爽快さを失わないってすごいですよねぇ。
ラスト、良かったです!!
ここは泳ぐしかないでしょう、な感じで。
私もとても好きでした。

>ホント、ドラマの微妙な設定はなんなんでしょうかね?
>原作読んで、ドラマとか映画を観たりしますが、
>これに関しては、観なくていいなーって思いました。

そうなんですよね、同感ですよ。
ドラマはドラマで月9だったりして、
結構騒いでいたような気がしたのですが、なぜ韓国?みたいな。
私は当時ドラマを見たいたので、なんかチマチョゴリの印象が強くて;
小説もこんな話なんだろう、と思っていたので、
読んでいて「あれ?」って感じでした。
断然、原作の方がいいですしねぇ。
映画もあったのですね?ビックリです;
うーんドラマは本物のメロドラマになっていたので、見なくて正解です。

そう言えば、吉田さん今度ご自分で「WATER」映画化するらしいですね?
前にどこかのサイトで見かけたのですが、本当なんでしょうか。
この間の「7月24日通り」も、何だコレ?な雰囲気だったので、
一度吉田さんが本当に映像化したいものを見たい気もします。

投稿: るい | 2007年1月16日 (火) 01:21

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/4917250

この記事へのトラックバック一覧です: 「東京湾景」 吉田修一:

» 東京湾景 吉田修一 [かみさまの贈りもの~読書日記~]
東京湾岸を舞台に、出会い系サイトで知り合った男女の恋を描くラブストーリー。 品川埠頭で働く亮介と、お台場で働く美緒。 過去の恋人とのいざこざや、お互いの心の奥底に引っかかるものを感じながらも、その距離を縮めようと寄り添っている二人の姿がリアルに描かれて...... [続きを読む]

受信: 2007年1月14日 (日) 07:09

» 「東京湾景」吉田修一 [読書感想文 と ブツブツバナシ]
「東京湾景」吉田修一 品川埠頭で働く男とお台場で働く女が、 出会い系サイトを通じ出会う。 2人とも恋愛に関して、 カナリクールな見方を持っているのだが。。 数年前、ドラマでやっていたので、 読み終わって調べてみたところ、 全然違う話のよう。 まあ、...... [続きを読む]

受信: 2007年1月15日 (月) 21:23

» 「吉田修一」の感想 [読書感想トラックバックセンター]
「吉田修一(よしだしゅういち)」著作品についての感想をトラックバックで募集しています。 *主な作品:最後の息子、パレード、パーク・ライフ、東京湾景、water、7月24日通り、悪人、初恋温泉、長崎乱楽坂、熱帯魚、日曜日たち、女たちは二度遊ぶ、他 書評・評価・批評・レ..... [続きを読む]

受信: 2007年1月16日 (火) 18:12

« ■個人的お薦め本 | トップページ | 「失われた町」 三崎亜記 »