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2007年12月16日 (日)

「正義のミカタ」 本多孝好

正義のミカタ―I’m a loser 正義のミカタ―I’m a loser

著者:本多 孝好
販売元:双葉社
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まず一言目は、「本多さん、イメチェン成功おめでとう!」です。
いやはや、かなり失礼な発言ですが、今までの本多さんの雰囲気を、
がらりと変えた作品です。私的に表すと「東京版・鴨川ホルモー」
だからと言って、面白いか…というと非常に微妙なところなんですけど。

高校で流行っていたのは、僕を張り付けの刑にし、
殴ったり蹴ったりする、という遊びだった。
繰り返される暴力に耐え、僕は誰も進学しないような大学に行く事を決めた。
死ぬ気で勉強し入学した大学だったが、周りを行く人は全て敵に見えた。
この中にはいじめっこが二割、いじめられっこが二割…
頭の中で生粋のいじめられっこである、自分の身の置き様を考える。
そんな時、僕は「正義の味方研究部」という奇妙なサークルに出会った。

問題なのは、話の途中から目指す地点が変わること。
「何が正義なのか分からない」というは、永遠のテーマだと思うのだが、
結局「何が正義なのか分からない」という結びで終わっているため、
「何か得た」という感じが、かなり希薄である。
そのため、主人公がいじめられっこという下位層から抜け出す、
という目的と、「何が正義なのか分からない」という混沌とが
ぐちゃぐちゃになってしまい、本当に言いたかった事がこれでもかと曖昧だ。
と、言うのも、「本当に言いたかった事」ということ自体が、
言葉や規律や法律で定められないような事柄だから仕方ないのだが、
そうすると、最初の下位層から抜け出す、という目的がうやむやになり、
主人公は、「それでも僕はダサいなりに…」なんて言いだして、
堂々巡りをしているじゃないか、と言うのが感想だった。
最後に部長が主人公を蹴るシーンはとても不快だった。
現実はそうかもしれないが、あの描写はちょっと行き過ぎてる気がして白ける。
そして最大の理由が、主人公が中盤からもうすでに正義を疑っている。
間先輩が10万くれた時点で、明らかに怪しいと気づくはずだ。
というか、読み手は絶対気づく描写になっているのに、
主人公がまったく気づいていない、みたいな風に進んでいくので、
個人的に読んでいてイライラした。ばれない伏線ならいいが、バレバレなのだ。
売りさばく物も、「大学といったら大麻かな」と予想がつくのに、
「え?!大麻ですか」みたいに驚く様子がかなり白々しい。
なんだか知っている事を、手取り足取り説明されている気になるのだ。
まぁ、これも個人的なところかもしれませんが…。
全体的には、今までの本多さんとは思えないくらい、
文章がかなりポップになっていて、リズミカルに読める。
その点では、イメージチェンジ大成功、正反対の執筆スタイルで斬新だった。
若干、森見さんや、万城目さんの売れ筋傾向に便乗したのだろうか、
とも思ったが、それを差し引いても、良い雰囲気ではあった。
って、私いつにも増して上から目線ですが…本多さん好きなので、
そこだけは間違えないよう、お伝えしておくとします。次回に期待。

★★★☆☆*84

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コメント

3ヶ月待ってようやく手元に来て読みました。

るいちゃんの言っていた通り、読み始めて「え?!これが本多さん?人違い?笑」と思った位驚いた。

こういう傾向でもいけるよね。

で、この記事を読んで確かに中盤であの先輩が黒幕だろ・・というのは言わずもがな分かったし、後半にいくにつれて、論点がずれていっていたのはちょっと残念だったね。

ただ、私はあの先輩の不平等な世の中論(?)に物凄く納得してしまって、別の意味で憤りを覚えた。
先輩の意見に共感してしまう主人公が、ちょっとだけ自分自身と重なったりもした。

そういった意味で、二重に楽しめた本だったと思う。

投稿: すきま風 | 2007年12月30日 (日) 22:27

>すーちゃん

この変わりようは凄いよね!
「MOMENT」の時から、乙一さんに似てるなって書いたけど、
まさに乙一さんの白と黒くらい驚きがあったね。
こっちの方向でも行けそうだね。
「FINE DAYS」とか「真夜中」は春樹さんがかってるけど、
大衆ウケとしてはこっちの方がいける気がするね。

そうそう、なんか「わかってるのに説明しないでよ」って感じだったね。
不平等論は面白かったね、低辺な感じも(笑)
次も楽しみにしましょ^^*

投稿: るい | 2008年1月 6日 (日) 13:46

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» 正義のミカタ [No-music.No-life]
高校時代にいじめられていた亮太は大学入学を機に変わろうと「正義の味方研究部」に入部する。正義の名のもとに学内のトラブルを解決し、自分の変化を実感するようになるが、次第に本当の正義とは何なのかを考え始める− −−− 本多孝好さんの本です。 とりあえず、本多さん名義で出している本は全制覇しました!! そして、今までの作品を読んできた私からすると・・この作品は「え?これ、本多さんが書いたの?」と思われるような一..... [続きを読む]

受信: 2007年12月30日 (日) 22:28

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