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2007年12月 3日 (月)

「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎

ゴールデンスランバー ゴールデンスランバー

著者:伊坂 幸太郎
販売元:新潮社
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あぁ、これで直木賞なんか取っちゃったらやだなぁ…
と思ったのが第一感想でした。いや、悪くないし、面白いんですけど。
雰囲気的には「魔王」の若干薄め、+「グラスホッパー」ですか。
雰囲気ですよ、雰囲気。それにしても時間掛かるなぁと思ったら、
500Pもあった…1000枚…そりゃ時間掛かるわなぁ。

何が起こったんだ? 青柳雅春は事態を図りかねていた。
大学時代の級友に再会し、昔を懐かしんでいるのもつかの間、
青柳雅春は彼に、自分は誰かに狙われていると言う事を知らされた。
逃げるんだ、といわれ車を飛び出した直後、警察に追われ始める。
何がどうなっているんだ? 逃げ惑う青柳雅春だったが、
隠れ、情報を収集するうち、今日仙台市内で首相が暗殺された事を知った。
どうやらその犯人が自分だと言う事になっているらしい。
冗談じゃないと首を振る中、数ヶ月前から練られた犯人に仕立て上げる、
巧妙な手口と、理不尽で強行的な警察の対応に、驚愕する。

なぜかこの本の登場人物はフルネームである。最初から最後まで。
何だか珍しい感じもし、少し読みにくかった。親切設計なはずなのに。笑
というか、整備された情報と言う事で、きっと堅苦しくしてあるのだろう、
と思ったのだが、真実は定かではない。
話は、伊坂節のオンパレード。
主人公青柳雅春が、強化された警備システム化をいかに掻い潜り、
人と人が見えないところで繋がっているという必然性と、
整備される事によりプライバシーがいかに侵害されるかを訴えている。
場面の切り替えは、「グラスホッパー」さながら、くるくると入れ変わる。
丁度いいときに青柳雅春の、知りたいと思う時に樋口晴子の語りが現われ、
物語は軽快に進んでゆく。世間が知らぬ間に自分を犯人に仕立て上げ、
必死に街中を逃げ惑う。そんな追いやられた状態で、
「ちゃっちゃと逃げろ」という父親の信頼がとても心に染みた。
加えラストの「痴漢は死ね」で、泣けた。
あぁ何でもないこんな言葉で、伊坂さんはなぜ感動を誘えるのか。
この人の筆力は計り知れないと、心から思った。
ただ、この本の欠点と言うべきは、最初から最後まで取り合えず焦っている。
呼吸すらも苦しいような緊張感や、銃を背に走り出す心境など、
主人公の気が休まる事が一時も無い。まぁ裏を返せば、
こんな緊張状態の時に、信頼できる人に巡り合う嬉しさは、
ひとしおなのだと、そう言いたいのかも知れないが。
注文が多いかも知れないが、この話、残念ながら先が読める。
そこが一点残念だったなぁと思いつつ。
若干伊坂さんには珍しく前半詰まっていて読みにくさがあるのだ。
言い換えれば、前半で大抵予想がついてしまうという点で、
ラストにかけては、お決まりの画面切り替えだし、
結局ラストは主人公があぁなってしまうし…。
初めて伊坂さんを読む方は結構楽しめると思います。
沢山読んでる方は、少しマンネリを感じなくもない。
そんな点で、勿論面白いけど、これで直木賞だったら私は悲しいなぁと。

★★★★☆*90

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