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2007年12月 9日 (日)

「キッドナップ・ツアー」 角田光代

キッドナップ・ツアー (新潮文庫) キッドナップ・ツアー (新潮文庫)

著者:角田 光代
販売元:新潮社
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「山妣」があまりにもヘビーなので、浮気しました。笑
やっぱり角田さんの文章は心地いいなぁ。
物語は劇的なわけでもなく、割と淡々と進むのですが、
最後の数行で思わず泣きたくなるのは、角田さんの筆力だと思います。

夏休みの初め、私はお父さんにユウカイされた。
大きな帽子を被り、サングラスを掛けた妖しげな格好。
「俺は今からあんたをユウカイする。主導権は俺にある」
その言葉に私は「うん、いいよ」と答えていた。
「ねぇお父さん…違った…ねぇユウカイ犯、これからどこに行くの?」
私とお父さんを乗せた車は、2人の知らないどこかへ向かってゆく。

主人公の「私」の両親は、もしかしたら離婚をするのかも知れない。
だけど「私」という小学生の視点から描かれているから、
そう言った現実を理解してはらはらするのではなく、
少し離れたところで、人の気持ちを理解する。
お父さんが、お母さんから「私」を誘拐した。
ここですでに「誘拐」と考えているのも、
もうお父さんは家族ではなく、少し離れた存在と描かれているからだ。
しかし、だからと言って父親がいないという寂しさは表されない。
本当は会えるのが凄く嬉しいのだけど、つっぱってしまうような意地っ張りが、
いつの間にかなくなって、思わずまた誘拐を続けようと言いたくなる。
結局終わりを告げる、誘拐ごっこ。
果たして小学生の少女の心にどう残るのだろうか、
そんな余韻と、お父さんが娘を諦める胸の空く思いが、
とてもいいラストを描き出していた。
これも小学生のときに読みたかったなぁ、と少し残念。
「ぼくはきみのおにいさん」と同じく、良い本でした。

★★★★☆*87

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コメント

こちらのブログに久々にお邪魔しま~す!
この本は私には角田作品デビューでした。
子どもに読ませる何かいい本ないかなぁ~と本屋で探していて、見つけたのですが、当たり!でした。
子どもも読んだあとになんだかいろいろ感想文書いていましたよ。
ロードムービー的な雰囲気がよかったです。
これを読んだら、『ペーパームーン』っていう映画を思い出したのですが、るいさん、観たことありますか?
古い映画だから知らないかな・・・?

投稿: 由松 | 2007年12月17日 (月) 09:33

>由松さん
角田さんデビューは児童書の方が多いですねぇ。
この本良かったですよね、私も子供に読ませたいです。
(いつになることやら…)
あと「ぼくはきみのおにいさん」も同じくよかったですよ。
そうですねぇ小学生や中学生の時読んだ本って、
読書感想文とかかくから重要ですよね。
私は昔から夏目さんが好きな可愛くない子供でしたが(笑)
森さんの「カラフル」とかは何回も読みましたね。

「ペーパームーン?」知らないです;
洋画でしょうか?今度探してみますね。
正月にでも観て見ます!

投稿: るい | 2007年12月18日 (火) 11:36

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