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2007年12月13日 (木)

「山妣」 坂東真砂子

山妣〈下〉 (新潮文庫) 山妣〈下〉 (新潮文庫)

著者:坂東 真砂子
販売元:新潮社
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いやはや、長かった…宮部さんの「模倣犯」の長さを思い出しましたよ。
これは先日の小説添削指導の時に先生にお薦めしてもらったものでした。
私に足りない物、と言う点で、読んでいてとても勉強になる本でした。
が、しかし、この作家さんの良作は他にある気がしました。

涼之助は生まれつき奇異な体を持っていた。
上半身には女性の乳房があり、下半身には男性の精器がある。
そんな姿に親は恐れたのか、赤子の頃すでに芸者の世界に売られていた。
親を恨み、座長である扇水だけが頼りだったが、
扇水もまた、そんな涼之助の体を弄ぶ事だけを考えるようになった。
外見だけは美しく涼之助は女形を演じる。
しかし、本来男でもなく女でもない自分は、
舞台に上がらない素の姿でさえも、男を演じているのだ。
そんな時巡業の最中、涼之助は自分の出生理由を段々と知ってゆく。

良くも悪くも文章が綿密すぎて、なかなか話が進まず詰め込まれた感がある。
一つ苦戦したのが、会話文が読めないことである。
何と言ってもお国訛りがかなり強く書かれて、
「がんだ」とか「すけぇ」とか、あまり聞きなれない言葉を使用している。
しかしまぁこれがあったからこそ、豪雪地帯の雰囲気や、
芸者や花魁の描写が上手くいっていたので、強くは言えないですが。
この本の中の世界観はとても凄いと思う。
村人が恐れている山には、山姥が住んでいて、
しかしその山姥は、人間である。
世間を忘れ世捨て人になった彼女の生き様と、
そして生まれてきた奇妙な体つきの人間のいわく。
次第に明らかになってゆくうち、絡み合う人間模様が何とも生々しく、
まるで自分も豪雪地帯に佇んでいるかのような雰囲気を味わえた。
又、山姥になりながらも、それでも生きるいさの「生きる」という思いと、
また涼之助の思いとが合間って、人間の深さを感じた。
ただ、ラスト山で鍵蔵が銃をぶっ放すシーンは、
何だがちょっと…という気もしなくもなかった。
熊を撃つつもりが、妻を撃った、それは山神に惑わされたのだ、
と全て山神のせいにされ纏められている。
でも、その割には山にの尊重度?が低い気がしてしまった。
うーむ、何とも。
気軽に読んで楽しめる代物ではありません。
長い休みがある時に、ゆっくりまったり読んではいかがでしょうか。

★★★★☆*88

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