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2007年12月 5日 (水)

「五分後の世界」 村上龍

五分後の世界 (幻冬舎文庫) 五分後の世界 (幻冬舎文庫)

著者:村上 龍
販売元:幻冬舎
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はっきり言ってしまおう、私は村上龍氏があまり好きではない。
読書は好き嫌いでするものではない、とは分かってるのだが、
村上龍氏という人間そのものが、どうにも好きになれないのだった。
まぁこれは面白かったけど、時折ご本人の事を思い出し唸る…。

ふと気が付くと、小田桐は歩いていた。
全身が凍えるような寒さの中、前の人間の背のみを見て黙々と歩く。
何で自分がこんなところに…そう思い立ち止まろうとしたが、
前方で歩きを止め殴られている人間を見て、今は歩くしかないと判断した。
やがて検問のような場所に着き、小田桐は初めて違和感を覚える。
自分以外の人間が、全てどこかの国の血が混ざった混血児だったからだ。
小田桐は自分の腕時計が五分遅れていることに気づく。

この世界観は凄い。第二次世界大戦で、
日本がポツダム宣言を受諾しなかったら…という世界を、
ある種のリアリティを持って描かれている。
未だに戦争を続け、地下を蔓延る日本と、その他の国の混血児達が溢れる、
異様な雰囲気は、まさに「ありえる」と頷いてしまいそうな描写だった。
私は戦争と言うか、戦闘が好きではないので、好感を持たなかったが、
「戦い好き」な人間にとっては、かなりわくわくする話だと思う。
しかし、一つ目に止まってしまうのが、現実の価値観の描き方だ。
小田桐はあこぎな人間として描かれているのだが、
ここに描かれる「日本人」として、適切なのか、というところがある。
それとここでも思い出してしまうのが、村上龍氏本人の価値観。
村上龍氏は、贅沢な生活をされているのか、一般人とは感覚が違うようで、
某カンブリア宮殿での、世間知らずな発言にいつも絶句している。
二万円のソファを「これは三十万くらいですか」と言ってみたり…
そう言ったいわゆる読者側の「庶民」をあまり理解していないような、
そんな感覚で、この主人公、そして登場人物が書かれたんだろうな、
という雰囲気が出ていた。会話とか、何を彼らが重視して生きているのか、
微妙に、何だか惜しい感じだった。世界の救いは音楽だけなのか?
それと、ラスト。途中から、さぁ元の世界へ帰りましょう的な流れなのに、
結局最後腕時計を五分進めてしまう小田桐…。
彼に過去への未練はなかったのか奥行きが少ないことや、
五分後のどこに小田桐をそうさせる魅力があったのか…
しりたいかったな、ということにして纏めておくことにする。

★★★★☆*86

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