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2007年12月22日 (土)

「理由」 宮部みゆき

理由 (新潮文庫) 理由 (新潮文庫)

著者:宮部 みゆき
販売元:新潮社
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この本3回目。一言、「長かった」でも、「読みきった」と感慨深い思いです。
インタビュー形式により、謎が段々に解けてゆく…という
それぞれの人が何故事件に関わったのか、その「理由」が描かれた物語。
物語性が希薄なので、「超面白かった!」とはなりにくいと思いますが。

六月二日、荒川区ヴァンダール千住北ニューシティ、2025号室で、
一家四人が殺害される惨殺事件が発生した。
ヴァンダール千住北は出来て間もない高層住宅マンションであったが、
事件が深夜だったという理由もあり、目撃情報が乏しかった。
また普段から互いを干渉しないという主義が災いし正確な情報が掴めない。
捜査が難航する中、この2025号室は売りに出されていたことが分かった。
家賃未納によって競売に掛けられたこの家には、買受人がいる。
だがその家には法を巧みに掻い潜った占有屋と呼ばれる人間たちが住んでいた。
その事実が分かった頃、殺された四人は血の繋がらない人間だと判明する。

怖ろしい。怖ろしいよ、宮部さん。何回読んでも舌を巻きますよ。
たった今この事件を目撃してきたんですよ!と言えそうなくらい、
練りこんだ人物設計と、事件の真相。全てにリアリティが求められ、
まるで現実に起こった事件をインタビューして小説にした、
というような感じで真実を読むことができる。
宮部さんの頭の中では一体どんな風にこの話が処理され、
描かれるに到ったのだろうか。私としてはそっちの方が気になってしまった。
この本で一番伝えたかったと思われるのは、
この一つの事件に対し、驚くほど大勢の人間が関わっているという事だろう。
2025号室の所有権を持つ人間、そこに実際に住んでいる人間、
競売から競り落とし買受人になた人間、占有をさせた人間、
殺されたおばあさんの家族、殺されたおじさんの家族
殺されたおばさんの家族、殺された青年の生い立ち、
四を殺した人間、マンションの管理人、逃げた容疑者、
容疑者をかくまった人間……と実に様々な人間が犇いている。
まるでその人たちは事件の放射線状にいるような気がするのだが、
実際は、重要な人物が事件から遠いところにいたり、反対である事もある。
事件の経緯と、なぜ人々が事件に加担するに至ったのか、
その「理由」を、一つ一つ近くから手繰り寄せてゆくように、
実に見事な展開で、宮部さんは人間模様を描いてくれている。
ただし、一つの人間としての物語性が乏しいので、
ハラハラ・ドキドキ、面白い、というものを求めている人は、
少し物足りなさを感じるかも知れない。
しかしながら、このリアルな人間模様、他の誰にもまねできまい!
という感じですね、さすが宮部さん。
この「理由」と「火車」は3回ずつ読んでいる。
それでも色あせない思いは、凄いとしか言いようがないですね。

★★★★★*95

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