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2007年11月15日 (木)

「噂」 荻原浩

噂 (新潮文庫) 噂 (新潮文庫)

著者:荻原 浩
販売元:新潮社
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噂の「噂」を読んでみました。
え?シャレかって?そうですちょっと洒落ました。
一言目の感想は、荻原さんは刑事モノは無理があるなぁ、です。
いや、今後は分かりませんが、とりあえずこの本は微妙ですね。

「レインマンは女の子だけを狙って足首を切り落とすんだって。
でもミリエルの香水をつけていれば、レインマンに襲われないらしいよ」
企業が自分たちの利益のみを考え少女たちに流したキャッチコピー……
その噂は、いつの間にか渋谷全体に広がっていた。
噂は尾ひれがつき、あるいは変形して伝わってゆく。
そんなある日、都心の真ん中で殺人事件が起きた。
被害者は18歳女性。死後数日がたっており、目撃情報も乏しい。
ただ一つ変わった事といえば、足首から先がなかったことだった。

最初に言っておく事は、この話の全部は、最後の一行のためにある。
そんな事を言ってしまうと、思わず最後の行を見てしまいたくなるが、
是非その最後の一行まで辛抱強く読んで欲しい。
この本の着眼点はとても面白い。噂が一人歩きし、形を変える。
様々なその噂に人々が惑わされ、困惑する姿が上手く表現されていた。
そう言った点で発想・物語として、この本は最高だった。
だが、評価が低い理由は、その他の部分に問題があるからであり、
もしもこのテーマで、この構成で、この物語で、東野圭吾が書いたとしたら、
失礼な話、私は拍手喝采を贈っているところであろうと思う。
問題なのは主人公が刑事である事。私の予測ではあるが、
荻原さんは刑事職について詳しくないのだろう。
勿論取材や、調べ物はしたろうし、その努力になんら文句はないが、
微妙に違和感を覚えた。例えば死後硬直の時間であったり、
死体の描写、不毛な捜査があまりにも単調に続く点や、
明らかに怪しいだろう、という主人公達の報告が認めてもらえない点。
そして、要らない説明が多い点。そんなところから、
きっと不慣れな刑事役を苦労して書いたんだろうな、と思った。
おまけに荻原さんは時折「ひょうきん」な比喩をする。
それはこの本に限らないし、味なんだろうと思うのだが、
このレインマンの緊張した連続殺人事件の中では、非常に似つかわしくない。
家族の会話ではいいかもしれない、だが、やはりもう少し
事件と向き合った時の焦燥感・ピリピリ感を書いて欲しかった。
あとは「主人公は朝食を食べ、家を出た。向かった先は警察だ」、
と言うような、小出し展開が否めないところ。
事件の内容でやるのはスリリングでいいが、主人公の登場でこれはいらない。
…と、散々書いてしまったが、この小説の最後の一行は鳥肌ものだ。
まるで、夏目さんの「こころ」でKの血飛沫を見たような…いや、違うな。
まぁそれに匹敵するような、寒気が走る。ので、願わくば、
もう少し警察を勉強してから書いてほしかったな、と纏めておく。

★★★☆☆*85

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