« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »

2007年11月

2007年11月28日 (水)

「あおい」 西加奈子

あおい (小学館文庫 に 17-1) あおい (小学館文庫 に 17-1)

著者:西 加奈子
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する


西さん、随分読んでませんでした。
この本デビュー作です。デビュー本にしては、凄い本。
しかし、私は会話文の文末が「だった。」と「。」がついているのが、
やたらと気になってしまった。他の本もそうだっけ?

「あおい」
私はその昔女子高生だった頃、彼氏ではない男の人にレイプされた。
持ち前の明るさで保っていたつもりだったけれど、
その後、男の人に触れるのが気持ち悪くて仕方なくなった。
そしてまたしばらくすると、今度は手当たり次第に男を求めた。
人とセックスをする事など、何でもないことだと思いたかったのだ。
さて、今私のお腹の中には、愛する人の子供がいる。こんな不純な動機で、
それに、この上なく頼りない私は、果たして子供を産むべきだろうか。

西さんの軽やかな関西弁を読んでいると、関西も捨てたもんじゃないと思う。
それはまぁ私の微妙な偏見があるのだが、陽気な関西人を見ると、
あぁ東京人とはやっぱり感覚が違うのだ、と感じるところにある。
だけど、西さんの関西はその明るさがいやらしくなく、
私の中にすんなりと流れ込んでくる気がするのだった。
この本では、主人公が結構嫌な感じの女の子だ。
友だちにしたくないな、と思うのだけど、本の中の「私」も、
きっと自分を友だちにしたくないと思ってるだろうなと気づいている。
確信犯と言えば、響きは悪いが、直したいんだけど直せない、
そんな自分のいやらしさに嫌悪し、苦虫を噛むという様子が上手かった。
おまけにそれにはレイプされたと言う辛い過去も見え隠れし、
主人公が意固地になってしまう行動が、
そこに起因している事が絶妙な感じで虚しさを誘っている。
ただ、少し気になるのが話し口調で物語が進む点で。
私はあまり好きではない。
小説の形を崩せるのも味なんじゃないか、
と考える事も出来るかもしれないが、崩しすぎもどうかと思う。
文体の話口調によって小説と読者の近さを強めるのか、
文章の巧さによって小説に読者を引き込むのか、
私は後者の方が読んでいて気持ちが良い気がするのだ。
まぁ、好き嫌いはありけり。次は「さくら」でも読みましょ。

★★★★☆*86

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月26日 (月)

「人間失格」 太宰治

人間失格 (集英社文庫) 人間失格 (集英社文庫)

著者:太宰 治
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


文豪作品は、一律「*90」でつけてますから、悪しからず。
いや、凄くつまらないものだったら、下げますけど、
昔の本、と言うだけで色々学ぶものがありますよね、ということで。
この太宰の斜め視線、私の考えと重なるところがあります。

「自分」は、幼い頃から人間を信用する事が出来なかった。
他人が不意に見せる、裏表のある表情を見るたびに恐ろしく、
それから逃れるためには「自分」は道化になるしかなかった。
どんなに自分に不都合な事であっても、笑顔を振り撒き、おどけてみせる。
そうしているうち、皮肉にも「自分」は人に好かれ、男女の関係を結んだ。
しかし、芽生える事のない独占欲と、絶望に悩まされるうち、
道はいつも自殺の一途を辿った。狂人、それは人間、失格である。

こんな凄い作品を書いておきながら、何一つ賞を取れていない太宰治。
この人は生まれた時代が悪かったとしか言いようがない。
あと50年早くして、夏目漱石とやり合ったとしたら、
もっといい意味で善い作品が生まれたろうし、あと50年遅くして、
現代に生きていたとしたら、間違いなく芥川賞を取れている。
その分今の審査が甘くなっているのではないか、と言えなくもないが、
今回はそれを置いておいたとしても、とてももったいない時に生きた人だ。
この本は夏目漱石の「こころ」と発行部数が大体同じ、と言う、
驚異的な人気を持っている。あえて述べておくと、
私は夏目さんの方が好きなのだが、その原因として、起承転結の、
「転結」が非常に上手く纏まっているからである。
「こころ」では自殺させてしまった友人を追い、
自分もまた自殺せねばならないという心境が痛いほど伝わって来、
また、そうと分かっていながらも、「まさか」と真実を知る「私」の
焦燥が合間って、ラストでは鳥肌が立つほどだ。
対する「人間失格」は、滑稽さを若干狙った節があるので、
自分の死さえも笑い話にしようとした感がある。
それはそれで痛々しい作者の思いが伝わってくるのであるが、
一番の感動としては、突き落とされる絶望が欲しいのだ。
「私」がKの血飛沫を見た時の愕然とした思いや、
それに反して、遺書を冷静に読んでしまう自分の冷酷さを知るような。
そういったものがないから、「人間失格」と堂々たるタイトルの割に、
ラストのインパクトが薄く感じるように思う。
しかしながら、人間を信用する事が出来ない「自分」の様子は、
思わず人を頷かせる文章である。周りの人間が信じられない、
そう言った経験は、人間一度は味わった事があるんじゃないだろうか。
少なくても私は味わった事があるのだが、その時の心境といったら、
自殺願望なくしては立っていられないほどだ。
太宰の人生がそうであったように、遺書とされる小説の中の「自分」もまた、
幾度も自殺を選ぶ。これが太宰の人生なのだろうか、
そう思いながら、他の本を読むと、違った感慨が生まれるかも知れない。

★★★★☆*90

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月25日 (日)

「猛スピードで母は」 長嶋有

猛スピードで母は 猛スピードで母は

著者:長嶋 有
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する


私は有川浩さんと、長嶋有さんがどうも同じ人物だと勘違いしていた。
何をどう間違ったのか知らんが…。
今回は長嶋有さん、タイトルの「猛スピードで母は」の他に、
「サイドカーに犬」が入っている。うーん…映像化するほどでも…。

「サイドカーに犬」
私が小四の時、母は家出をし、その後知らない女が家へとやってきた。
ヨウコと名乗ったその女は、夕方やって来て夕飯と朝食を作り、
朝になると自転車で帰ってゆく。初めは警戒していた私だったが、
次第に陽気なヨウコさんに気を許し、餌付けされていったのだった。
好物である麦チョコをねだる私と弟は、まるで犬みたいだ。
ヨウコさんのいる生活にすっかり慣れてしまった頃、
私とヨウコさんは二人で夜中の街に出かけることにした。

ラストが実に良いのだろうが、私は好きではない。
「そろそろなんじゃないか」の伏線が曖昧すぎて、
判断が読者に任せすぎているというのが一点。
それと、小学生が「あっという間」というのは少し違うなと言う点。
今振り返ればあっという間かも知れないが、
小学四年生の「私」はあっという間だと思うことはないだろう。
その大人と子供の微妙な時間軸の差が描かれていないのが難点だ。
これは長嶋さんに限らないのであるが、
児童書(子供が主人公で)を書く時に気をつけなくてはならないのは、
いつまでも永遠に感じるような時間感覚だと思っている。
私は小さい頃から本を読んでいた方だと思うが、
文中で、「三日後僕は、」などという文章があると、
まだまだ訪れない三日という隔たりに興ざめした記憶がある。
今になって考えてみれば、三日なんてあっという間だ。
しかし、小学生のときどうだったか、じっくり思い返してみると、
ゆっくりと佇んでいた時間の流れを感じる事が出来るのではないだろうか。
雰囲気は嫌いではないのだが…
でも男の人にしてこれだけやさしい文章が書けるのいいなぁ、
と個人的には思った。ので、違う本も読んでみよう。

★★★★☆*86

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月22日 (木)

「anego」 林真理子

anego anego

著者:林 真理子
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する


林さん読むの初めてだと思っていたのですが、
そう言えば随分前に「ミルキー」を読んだ事があったのを思い出しました。
ドラマは見ていませんでしたが、とりあえずこの本は微妙…。
現実味を欠いた展開が惜しいところです。途中まで面白いのに。

商社に勤める奈央子は、いつしか古株になっていた。
人当たりもよく、面倒見もよい奈央子の事を、友人は「あねご」と呼ぶ。
頼まれたら断れず、しょっちゅう恋愛相談をされる奈央子であったが、
彼女自身は30歳を目前に恋愛を冷めた目で流していた。
もう合コンに誘われたって、20代のようにちやほやされる事はない。
ささくれ立った奈央子だったが、ひょんな事から恋に落ちた。
それは不倫であったが、必死に今の状況から抜け出そうと、溺れてゆく。

途中までは面白い。ドラマにしたら受けるだろうなぁ、とも思う。
しかし中盤、不倫が泥沼化するあたりから、
筆が軽くなり、火曜サスペンスのような軽薄な感じに見える。
いや、私は火曜サスペンスも勿論好きだけれども、
この本で出てくるべきではないと思うのだ。
だってこのラストはないだろう…不倫の末、妻が自殺してしまい、
結局別れたはずの奈央子は、不倫相手の元に帰ってくる…。
それってあんまりじゃないか?
「あねご」と呼ばれるほど、奈央子は面倒見がいい。
それは分かるけど、せめて違う人と結婚して欲しかった。
何とも救いがないというか、何というか。
それと問題なのは、この本には教訓めいた伏線が皆無であること。
なので読み終わった後なるほどね、と思ったり、学んだ感が全くない。
ただ、「今の商社OLの現状」と「奈央子の面倒見の皮肉さ」
が描かれているだけなのである。不倫をしてしまった、
いけない事だ、だから別れる、でも学んだ事はあった、
みたいにしないと、本末転倒、と言われてしまいそうなストーリーだった。
それと、今時の30代女性って「~ですわ」って言うのか?
と疑問視しつつ。私は絶対「ですわ」なんて言わないな。笑

★★☆☆☆*79

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月19日 (月)

「冷静と情熱の間」 辻仁成

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫) 冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

著者:辻 仁成
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する


とても面白くなかった。
ので、江國さんの方を読んでみるべきだろうかと本気で迷っている。
昔は辻仁成好きだったんだけどなぁと思いつつ。
ちょっと読後、無駄な時間を過ごしたような気持ちになった。

七年前、僕の元を去っていた一人の女性を、忘れる事が出来なかった。
フィレンツェで修復士として絵と向き合う時も、
現在の彼女である芽実と過ごしている時も、
僕はそこかしこに「あおい」の面影を見つけ、そしてあの約束を思い出す。
「30歳の私の誕生日にドゥオモで会いましょう」
時が経ちすぎて、薄れ始めたこの約束を、
彼女も覚えていてくれているだろうか。

ストーリーに文句はない。問題なのは表現方法だった。
人と人の間の親密感を文章で表現できていない。
特に冒頭、修復士の先生と主人公の関係が出てくるのだが、
主人公はその先生に頼まれ、裸体モデルをしている設定だった。
後に事件が起き、離れ離れになった時、
「僕は先生の事を母親の様に慕っていたので」と言うような文があるのだが、
母親の様に慕っていた様子が描かれておらず、首をかしげた。
え?いつ親しそうにしてたの?と言う感じである。
モデルをし、裸を見せたら、母親のような親しさが生まれるのか?
ちょっと違うだろう。そう言った気になる点がいくつか見受けられ、
どうも素直に読む事が出来なかった。少なくても母親のようなのだから、
心の拠り所である、とか、困った時の相談役、という描写が欲しい。
それから、ストーリーは至ってシンプルである。
昔の女を忘れられず、今の女を代用品の様に扱っている事に気付き、
嫌々別れ、もう一度昔の女を追いかける。
ただそれだけの話だ。と、いう事はこのシンプルな話を、
素敵に仕上げるためには、主人公の心理描写をきめ細やかにし、
心の移り変わり、あおいが心に占める比重が段々増えている様子などを、
きちんと描く必要があるだろう。
この本は最初から最後まで同じように見えるのが難点。

★★☆☆☆*77

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月18日 (日)

【映画】クワイエットルームにようこそ

1119_2 
久しぶりに不気味さ?で鳥肌が立った映画だった。
まぁ「めがね」や「三丁目の夕日」では怖さは感じませんからねぇ。
ちょっと夢野久作の「ドグラ・マグラ」の冒頭を思い出しました。
それにしても内田由紀久々に見ました。

出版社のライターである私は、目が覚めると精神病棟に寝かされていた。
人の気配を感じ起き上がろうとしたが、両手足と体を五点拘束され、
全く身動きがとれない。そんな時隣の部屋から、奇妙な叫び声が響いた。
静けさに広がる狂った女の声が恐ろしく、
自分がこの場に寝かされていると言う違和感に絶えられなくなる。
その時、笑う事を忘れたような、鋼鉄の仮面の看護婦が入ってきた。
酒で睡眠薬を飲んだのを、自殺未遂だと勘違いされたのだ、
咄嗟にそう言ったのだが、昨日の記憶は抜け落ちよく覚えていなかった。
果たして私はこの狂った病棟から抜け出す事が出来るのか。

記憶がないという不安を、とても上手く描いた作品だと思う。
まるで一瞬記憶を失った時とダブるような、真っ白な精神病棟は、
小さな混乱と、安らぎと緊張をもたらす。
蓄積するはずの記憶が吹っ飛び、その抜け落ちた部分を、
他人の口から知らされる時の恐怖と、
段々と欠如が修復された時の安心感と、何かを失う虚脱感とが合間って、
空いた記憶にそれ以上の思いを埋め込むような、温かい気持ちになった。
今回は人を忘れなかっただけ、その分安易な設定であったような気がするが、
混乱と失う悲しさを描くためにはこれでよかった気もする。
今回は久しぶりに内田由紀を見た気がする。
じっくり見ているうち、「あれ?この人こんな顔してたんだ」とか、
思ったりして、違うところで楽しんでいた。
一つ文句を言うのであれば、内田由紀は「演技」が上手い、
しかし、蒼井優は「自然体」が上手い、という微妙なギャップによって、
作品の目指している方向がやや逸れたような気もした。
精神病棟なんだから、色んな人がいるのよ、と言われれば、それまでだが。
何となく、性質が正反対の人間である、と言うのは、
見ていて痛いほど感じた。それのどちらが良くて、
どちらが悪いかは決められないのだけれども、個人的には、
蒼井優は岩井監督のような自然体一直線のようが合う気もするんだけどね、
なんて。でもまぁ全体的に観て良かったと思える映画でした。
話はかなり重いないようですが。

*85

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月16日 (金)

「明日この手を放しても」 桂望実

20071116
桂さん成長したなぁって感じでした。
心理描写の書き方が個人的に前から好きなんですが、
今回の方がよりすんなり感情移入できたと思います。
が、物語としては「?」な作品だったので、お薦めはしませんが。

私は19歳で視覚障害になった。
甲斐甲斐しく世話をしてくれた陽気な母を、突然の事故で失い、
私の生活に太陽がなくなった。無口な父、気の合わない兄と、
上手くやってゆく自信はなかった。
そんな時、私は父親の漫画の原案者になることになった。
主人公は私と同じく視力を失った少女。
私と兄が考えた偏屈な少女は、時を追うごとに成長し、心を開いてゆく。

先日長嶋さんの「レインツリーの国」で聴覚障害者が主人公だった。
その主人公も女の子だったが、障害があると言うことに捕らわれすぎて、
とりあえずへそ曲がりで、性格が歪んでいた。
だから、そうかこんな卑屈な思いをしているのかな、と思っていたのだが、
今回の桂さんの主人公は至って冷静だった。
それがいいのか悪いのかは正直決めかねるところだが、
確かに癇癪を起こすだけがストレスではないだろうと感じた。
この話のメインは、取り残された、そりの合わない兄弟が、
それぞれ心を開き、信頼し、そして離れてゆくところが描かれている。
潔癖症な上に、視力を失いネガティブな主人公と、
ストレスを怒りでしか発散できない不器用な兄。
二人の関係が徐々に解れあい結びついた時、
桂さん書き方上手くなったなぁ…と思った。
しかし、文句をつけてしまうと、ストーリーが「結局どうしたいの」
と言う感じになっている。目は見えないし、母親に先立たれ、父親は失踪、
おまけに信頼していた西尾に裏切られ、ラストはぱっとしない。
確かにこんな悲惨な事が続いたからこそ、
目が見えない苦しさを忘れ、乗り越え、主人公が成長できた気がするが、
それでも父親が戻ってこないのはどうかと思うし、
兄が結局女性に振られてしまう理由も曖昧になってしまった。
せめて母(父?)に似たいい女性と、兄が結婚する…あたりまで、
もっていってくれるとよかったなぁ、と思った。
もしくは西尾と上手くいくとか。とりあえず、中身は充実しているのだが、
ラストが肩透かしを食らう、微妙な話になっているのが残念。

★★★☆☆*85

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月15日 (木)

「噂」 荻原浩

噂 (新潮文庫) 噂 (新潮文庫)

著者:荻原 浩
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


噂の「噂」を読んでみました。
え?シャレかって?そうですちょっと洒落ました。
一言目の感想は、荻原さんは刑事モノは無理があるなぁ、です。
いや、今後は分かりませんが、とりあえずこの本は微妙ですね。

「レインマンは女の子だけを狙って足首を切り落とすんだって。
でもミリエルの香水をつけていれば、レインマンに襲われないらしいよ」
企業が自分たちの利益のみを考え少女たちに流したキャッチコピー……
その噂は、いつの間にか渋谷全体に広がっていた。
噂は尾ひれがつき、あるいは変形して伝わってゆく。
そんなある日、都心の真ん中で殺人事件が起きた。
被害者は18歳女性。死後数日がたっており、目撃情報も乏しい。
ただ一つ変わった事といえば、足首から先がなかったことだった。

最初に言っておく事は、この話の全部は、最後の一行のためにある。
そんな事を言ってしまうと、思わず最後の行を見てしまいたくなるが、
是非その最後の一行まで辛抱強く読んで欲しい。
この本の着眼点はとても面白い。噂が一人歩きし、形を変える。
様々なその噂に人々が惑わされ、困惑する姿が上手く表現されていた。
そう言った点で発想・物語として、この本は最高だった。
だが、評価が低い理由は、その他の部分に問題があるからであり、
もしもこのテーマで、この構成で、この物語で、東野圭吾が書いたとしたら、
失礼な話、私は拍手喝采を贈っているところであろうと思う。
問題なのは主人公が刑事である事。私の予測ではあるが、
荻原さんは刑事職について詳しくないのだろう。
勿論取材や、調べ物はしたろうし、その努力になんら文句はないが、
微妙に違和感を覚えた。例えば死後硬直の時間であったり、
死体の描写、不毛な捜査があまりにも単調に続く点や、
明らかに怪しいだろう、という主人公達の報告が認めてもらえない点。
そして、要らない説明が多い点。そんなところから、
きっと不慣れな刑事役を苦労して書いたんだろうな、と思った。
おまけに荻原さんは時折「ひょうきん」な比喩をする。
それはこの本に限らないし、味なんだろうと思うのだが、
このレインマンの緊張した連続殺人事件の中では、非常に似つかわしくない。
家族の会話ではいいかもしれない、だが、やはりもう少し
事件と向き合った時の焦燥感・ピリピリ感を書いて欲しかった。
あとは「主人公は朝食を食べ、家を出た。向かった先は警察だ」、
と言うような、小出し展開が否めないところ。
事件の内容でやるのはスリリングでいいが、主人公の登場でこれはいらない。
…と、散々書いてしまったが、この小説の最後の一行は鳥肌ものだ。
まるで、夏目さんの「こころ」でKの血飛沫を見たような…いや、違うな。
まぁそれに匹敵するような、寒気が走る。ので、願わくば、
もう少し警察を勉強してから書いてほしかったな、と纏めておく。

★★★☆☆*85

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月12日 (月)

「ぼくはきみのおにいさん」 角田光代

51s2dt3ph5l_aa240__2 
これ小学生のときに読みたかったなぁ、と思った本でした。
特に大事件は起きず終わりますが、しっとりした中に、
思春期の子供の感情が、とても正確に描かれています。
若干マセてる気もしますが、なかなか良い本です。

来年の中学受験に向け塾に通い、勉強漬けの毎日が続く。
夏休みになり私が気付いたのは、昼間何故かお父さんが家にいる事だった。
お父さんは私に気付くとバツが悪そうな顔をし、
「アユコが生まれる前の父さんは」と私の知らない話をする。
お父さんと私と、それからお母さんの微妙な距離感…
そんな時、私は「おにいさん」に出会った。
昔生き別れたはずの彼と私は本当の「家」を探しに出かけることにする。

もしかしたら、自分はこの家の子供じゃないかもしれない。
そんな動揺と、次第に広がってゆくお父さんとの距離を胸に抱え、
本当の家を探しに、自ら父親に背を向け歩き出す心境。
それは少しドキドキして、後ろめたくて、緊張する。
もしも本当の本当に自分がお父さんとお母さんの子供ではなかったら…
けれどきっとアユコはそんなことまで考えていない。
胸の空く感覚と寂しさが過ぎるだけで、
心のどこかでは、決してそんなはずはないと思っているのだ。
自分の知らないお父さんの楽しそうな様子を思い描く事で、
自分がいなかったとしたら、と考え、
でもやはりそうであって欲しくはなくてと揺れ動く様が、
「おにいさん」という存在を利用して巧みに描かれている。
実際に考えたら、彼が兄ではない事くらい分かるはず、
しかし「もしかして」と信じてしまったのは、窮屈だった生活から、
是非とも抜け出したいと思ったから。
そう考えれば、若干の無理も許せるかも知れません。
児童書ですし。なかなかまったりしたい時に良い本です。

★★★★☆*87

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月 9日 (金)

「NO.6 #2」 あさのあつこ

NO.6  〔ナンバーシックス〕  ♯2 (講談社文庫 (あ100-2)) NO.6 〔ナンバーシックス〕 ♯2 (講談社文庫 (あ100-2))

著者:あさの あつこ
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


すごい、今週毎日1冊読んでいる。いつまで続けられる事やら…。
あさのさんのこの本は1時間半で読み終わりました。
読みやすいスピード感のある文章。伝わってくる人物の心。
しかし難点なのは、話が展開しない点で。二巻です。

室内環境、勉学システム、異物探索、環境管理…
全てにおいてコントロールされた都市、NO.6。
その完全なるピラミッド社会の上層部に
エリートとして何不自由なく過ごしていたぼくだったけれど、
ある日を境にそれは瞬く間に崩れ去り、運命を変えた。
失ったものは自分以外の全部、手に入れたものはネズミという不思議な少年。

上にも書いたけれど、一番気に掛かるのは話が展開しない点で。
結局のところ、まだNO.6を脱出してから、主人公は何もしていない。
母親からメモを受け取り、昔母と円のあった男性を探し出しただけだ。
この本で主人公がしたのはただそれだけ。
それってあんまりじゃないか、と半分思いながらも、
NO.6を抜け出し揺れる主人公の心に触れ、読み手も動揺する。
規格があり、全てを画一的に記号で表すような、
機械的な街から抜け出した紫苑の気持ちが、
的確、としか言いようがない美しい言葉で表現されているのだ。
この話で難しいところは、読み手の人間が、主人公の紫苑にも、
ネズミにも共感できないという点であろう。
もしくは、私たちは両方の感情を持っているから、
それぞれの心境の波を敏感に感じ取れるとも言える。
「第三の方法」というのが、紫苑のセリフで出てくる。
それはNO.6と西ブロックの境界のにある塀を壊し、一つの国にする事。
この提案はネズミに馬鹿にされ早々に消えてしまうが、
その一つになった国こそが、読み手のいるこの世界なのだ、
と考えると、何やら滑稽で、最強の皮肉ではないか、と思えてきた。
勿論そうなるとは限らないのだけれど、それはあさのさん次第なので。
次巻も楽しみ。

★★★☆☆*84

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月 8日 (木)

「ぽろぽろドール」 豊島ミホ

ぽろぽろドール ぽろぽろドール

著者:豊島 ミホ
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する


うーん、短編集でしたが、傾向が全部一緒じゃん?と言う感じで。
人形=八つ当たりの道具、もしくは人形=人間の化姿、
という固定観念が豊島さんにはあるようで、何となく偏った感がありました。
自分の事を書いてる、みたいであまりよろしくないような。

「きみのいない夜には」
私は他人の運命に呑まれ、それを引き裂くのが好きだ。
具体的に挙げるのであれば、友人が一番可愛がっている人形を奪い、
悲しみに暮れている姿を眺めるとわくわくする、というところだろうか。
ある日オークションで中古人形を手に入れた私だったが、
その中には人形宛ての手紙が入っていた。
元持ち主からの、人形への手紙…そんなことするのは、
尋常ではなく人形を愛していた証拠だろう。私は再び胸が躍り始めた。

実は結構期待して読み始めた。と言うのも、私も実は小さい頃から、
ずっと持ちつづけているぬいぐるみがあるからだ。
そんなに大事に愛でていた訳ではないが、それでも、
そのぬいぐるみが部屋の中にないと落ち着かない…
というような感じで、今も私のベットの隅に鎮座している。
そんな人間と人形という微妙な関係を、
豊島さんはどんな風に描いてくれるのだろうと楽しみだったのだ。
だが、この本に書かれている人形愛について、私は少しも同調出来なかった。
唯一納得できたのは、「きみのいない夜には」の男の気持ちである。
事情により手放したが、やっぱり人形が気になり手紙まで書いてしまう。
私はまさか手紙を書いたりはしないが、拠り所がなくなった不安、
みたいなものに共感を得る事が出来た。
しかし、この他の話はと言うと、自分や他人にそっくりな身代わり、
であったり、ストレスを発散する道具として描かれていた。
それって、ごく一部の人ですよね?と私は思う。
他人に見立てたり、ストレスを発散する気持ちは分からなくはない。
むしろ私もぬいぐるみでそんな事をしてきたかも知れない。
だけれど、結局のところはぬいぐるみは心の拠り所、
もしくはなくてはならないもの、というような書き方をした方が、
もっと共感してくれる読者が増えたのではないか、と思った。
あとは個人的なことですが、文法がはちゃめちゃで、読みにくかった。
豊島さんってこんな文章だった…?と思いつつ。
文章は長けりゃいいわけではなく、長くても角田さんのような、
美しい文体にして頂かないと読みにくくて仕方がない。
「―」の乱用も気になり、色々な意味でなんだかなぁでした。

★★★☆☆*80

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月 7日 (水)

■独断と偏見の点数

■2007/11/07 → 追加更新してみました (合計206冊)

今までの勝手に付けていた「独断と偏見の点数」を並べてみました。
「あれ?なんでこんな高い点数なんだ?」という本も数冊ありますが、
まぁ大体私の気持ちはこんなですね、参考になるのかな?判りませんけども;
私も今後の参考にしたいので(笑)一覧にして載せてみました。

リンクは後ほど全てに貼る予定です・・・。後ほど・・・。(2007/3/26)

■点数の高い順・作者アイウエオ順 (2007/11/07 現在、計206冊)
---------------------------------------------------------
*98 「GOTH」 乙一
*98 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」 村上春樹
*98 「ノルウェイの森」村上春樹
*98 「DIVE!!」 森絵都
*98 「クライマーズ・ハイ」 横山秀夫
*98 「東京タワー」 リリー・フランキー
*97 明日の記憶」 荻原浩
*97 「博士の愛した数式」 小川洋子
*97 「カラフル」 森絵都
*97 「悪人」吉田修一
*96 「The MANZAI 1」 あさのあつこ
*96 「The MANZAI 2」 あさのあつこ
*96 「The MANZAI 3」 あさのあつこ
*96 「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎
*96 「重力ピエロ」 伊坂幸太郎
*96 「底辺女子高生」豊島ミホ
*95 「陽気なギャングが地球を回す」 伊坂幸太郎
*95 「暗いところで待ち合わせ」乙一
*95 「檸檬のころ」豊島ミホ
*94 「ラッシュライフ」 伊坂幸太郎
*94 「終末のフール」伊坂幸太郎
*94 「一瞬の風になれ 第三部:ドン」 佐藤多佳子
*94 「パレード」 吉田修一
*94 「うりずん」吉田修一
*93 「死神の精度」 伊坂幸太郎
*93 「隠し剣秋風抄」 藤沢周平
*92 「チルドレン」 伊坂幸太郎
*92 「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
*92 「サウス・バウンド」 奥田英朗
*92 「ボーイズ・ビー」桂望実
*92 「対岸の彼女」角田光代
*92 「柔らかな頬」 桐野夏生
*92 「黄色い目の魚」佐藤多佳子
*92 「神様からひと言」 荻原浩
*92 「少女七竈と七人の可愛そうな大人」 桜庭一樹
*92 「風が強く吹いている」 三浦しをん
*92 「パーク・ライフ」 吉田修一
*91 「グラスホッパー」 伊坂幸太郎
*91 「ビタミンF」重松清
*91 「ゴーストバスターズ―冒険小説」高橋源一郎
*91 「エバーグリーン」豊島ミホ
*91 「手紙」東野圭吾
*91 「東京湾景」吉田修一
*90 「魔王」伊坂幸太郎
*90 「夏と花火と私の死体」 乙一
*90 「学校の青空」 角田光代
*90 「一瞬の風になれ 第二部:ヨウイ」 佐藤多佳子
*90 「卵の緒」瀬尾まいこ
*90 「さようなら、ギャングたち」高橋源一郎
*90 「ジョゼと虎と魚たち」 田辺聖子
*90 「坊っちゃん」 夏目漱石
*90 「こころ」 夏目漱石
*90 「白夜行」 東野圭吾
*90 「蕎麦屋の恋」 姫野カオルコ
*90 「さびしさの授業」伏見憲明
*90 「火車」 宮部みゆき
*90 「風に舞いあがるビニールシート」 森絵都
*90 「あかね空」山本一力
*90 「最後の息子」 吉田修一
*90 「初恋温泉」吉田修一
*89 「バッテリーⅠ」 あさのあつこ
*89 「バッテリーⅡ」 あさのあつこ
*89 「バッテリーⅢ」 あさのあつこ
*89 「バッテリーⅣ」 あさのあつこ
*89 「バッテリーⅤ」 あさのあつこ
*89 「バッテリーⅥ」あさのあつこ
*89 「ラスト・イニング」 あさのあつこ
*89 「アヒルと鴨のコインロッカー」 伊坂幸太郎
*89 「砂漠」 伊坂幸太郎
*89 「ハードボイルドエッグ」荻原浩
*89 「県庁の星」桂望実
*89 「しゃべれどもしゃべれども」佐藤多佳子
*89 「まほろ駅前多田便利軒」 三浦しをん
*89 「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦
*89 「熱帯魚」吉田修一
*88 「うつくしい子ども」 石田衣良
*88 「池袋ウエストゲートパーク」 石田衣良
*88 「ミカ×ミカ!」伊藤たかみ
*88 「ドラママチ」 角田光代
*88 「一瞬の風になれ 第一部:イチニツイテ」 佐藤多佳子
*88 「幸福な食卓」瀬尾まいこ
*88 「神田川デイズ」 豊島ミホ
*88 「バスジャック」 三崎亜記
*88 「いちご同盟」 三田誠広
*88 「ステップファザー・ステップ」 宮部みゆき
*88 「幸福ロケット」山本幸久
*88 「笑う招き猫」山本幸久
*88 「出口のない海」横山秀夫
*88 「日曜日たち」吉田修一
*87 「憑神」浅田次郎
*87 「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
*87 「ミカ!」伊藤たかみ
*87 「空中ブランコ」奥田英朗
*87 「家日和」奥田英朗
*87 「最悪」 奥田英朗
*87 「この本が、世界に存在することに」 角田光代
*87 「だれかのいとしいひと」 角田光代
*87 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」 桜庭一樹
*87 「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ
*87 「優しい音楽」瀬尾まいこ
*87 「雨の子陽の子」豊島ミホ
*87 「少年アリス」長野まゆみ
*87 「R.P.G.」 宮部みゆき
*87 「アーモンド入りチョコレートのワルツ」 森絵都
*87 「7月24日通り」吉田修一
*87 「ひなた」吉田修一
*86 【アンソロジー】「小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所
*86 「木洩れ日に泳ぐ魚」 恩田陸
*86 「涼宮ハルヒの憂鬱」 谷川流
*86 「真夜中の五分前 side-A」 本多孝好
*86 「MOMENT」 本多孝好
*86 「ねじまき鳥クロニクル 第1部:泥棒かささぎ編」 村上春樹
*86 「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」 本谷有希子
*86 「夜の果てまで」 盛田隆二
*86 「新釈 走れメロス」 森見登美彦
*86 「長崎乱楽坂」吉田修一
*85 「号泣する準備はできていた」 江國香織
*85 「アジアンタムブルー」 大崎善生
*85 「町長選挙」 奥田英朗
*85 「小生物語」乙一
*85 「犯人に告ぐ」 雫井脩介
*85 「パン屋再襲撃」 村上春樹
*85 「半落ち」 横山秀夫
*85 「ランドマーク」吉田修一
*84 「ガールズブルー」 あさのあつこ
*84 「NO.6 #1」 あさのあつこ
*84 「ぎぶそん」伊藤たかみ
*84 「ミーナの行進」 小川洋子
*84 「冬のオペラ」 北村薫
*84 「クローズド・ノート」 雫井脩介
*84 「温室デイズ」 瀬尾まいこ
*84 「推理小説」秦建日子
*84 「となり町戦争」 三崎亜記
*84 「スプートニクの恋人」 村上春樹
*84 「江利子と絶対」 本谷有希子
*83 【アンソロジー】「I LOVE YOU
*83 「ありふれた風景画」あさのあつこ
*83 「フリクリ1」榎戸洋司
*83 「天帝妖狐」 乙一
*83 「平面いぬ。」 乙一
*83 「ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師」 上遠野浩平
*83 「錆びる心」 桐野夏生
*83 「制服捜査」佐々木譲
*83 「サマータイム」 佐藤多佳子
*83 「図書館の神様」瀬尾まいこ
*83 「宿命」 東野圭吾
*83 「真夜中の五分前 side-B」 本多孝好
*83 「つきのふね」 森絵都
*82 「失はれる物語」 乙一
*82 「オロロ畑でつかまえて」 荻原浩
*82 「蛇にピアス」 金原ひとみ
*82 「FINE DAYS」 本多孝好
*82 「私が語りはじめた彼は」 三浦しをん
*81 【アンソロジー】「嘘つき。―やさしい嘘十話
*81 「暗黒童話」 乙一
*81 「イン・ザ・プール」 奥田英朗
*81 「パイロットフィッシュ」 大崎善生
*81 「エコノミカル・パレス」角田光代
*81 「東京ゲスト・ハウス」 角田光代
*81 「ぼくは悪党になりたい」 笹生陽子
*81 「夢にも思わない」 宮部みゆき
*81 「夢を与える」綿矢りさ
*80 「4TEEN」 石田衣良
*80 「そのときは彼によろしく」市川拓司
*80 「さみしさの周波数」乙一
*80 「夜のピクニック」 恩田陸
*80 「六番目の小夜子」 恩田陸
*80 「ブギーポップは笑わない」 上遠野浩平
*80 「スキップ」 北村薫
*80 「陰日向に咲く」 劇団ひとり
*80 「見えない誰かと」 瀬尾まいこ
*80 「強運の持ち主」 瀬尾まいこ
*80 「しゃばけ」 畠中恵
*80 「海辺のカフカ」 村上春樹
*79 「レインツリーの国」 有川浩
*79 「ジュリエットの悲鳴」 有栖川有栖
*79 「銃とチョコレート」 乙一
*79 「Run!Run!Run!」桂望実
*79 「観覧車」 柴田よしき
*79 「返事はいらない」 宮部みゆき
*79 「レキシントンの幽霊」 村上春樹
*79 「春、バーニーズで」吉田修一
*78 「夜明けのブギーポップ」 上遠野浩平
*77 「さよならバースディ」荻原浩
*77 「スタア」 清水義範
*76 「メリーゴーランド」 荻原浩
*76 「春期限定いちごタルト事件」 米澤穂信
*76 「格闘する者に○」 三浦しをん
*75 「死にぞこないの青」 乙一
*74 「コールドゲーム」 荻原浩
*73 「失踪HOLIDAY」 乙一
*73 「予知夢」 東野圭吾
*70 「ブルースカイ」 桜庭一樹
*70 「アフターダーク」 村上春樹
*70 「女たちは二度遊ぶ」吉田修一
*70 「インストール」 綿矢りさ
*69 「八月の路上に捨てる」伊藤たかみ
*69 「九月の四分の一」 大崎善生
*65 「ママの狙撃銃」 荻原浩
*-- 「地下鉄(メトロ)に乗って」 浅田次郎
*-- 「ジョン・レノンを信じるな」片山恭一
*-- 「空中庭園」角田光代
*-- 「ブルースノウ・ワルツ」豊島ミホ
*-- 「西の魔女が死んだ」 梨木香歩
*-- 「今夜は眠れない」 宮部みゆき
*-- 「天使の卵」 村山由香
---------------------------------------------------------

■2007/08/17 → 追加更新してみました (合計185冊)
■2007/06/02 → 追加更新してみました (合計150冊)
■2007/03/26 → 追加更新してみました (合計128冊)
■2007/01/12 → 追加更新してみました (合計102冊)

■2006/12/07 → 開始

| | コメント (4) | トラックバック (2)

「レインツリーの国」 有川浩

レインツリーの国 レインツリーの国

著者:有川 浩
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


なんだかなぁ……あ、初有川さんでした。
有川さんって女性の方だったんですね。
本編をしっかり読み終わってからあとがきで気付いたので、
少し驚きました。読みやすい…けどこの本は頂けない。

伸行はインターネット上のブログで気になる記事を見つけた。
それは、昔流行した「フェアリーゲーム」という物語のラストについてで、
伸行はとても共感すると共に、その記事の筆者に惹かれてゆく。
メールによって次第に相性の良さを実感してゆく二人は、
実際に会ってみようという話になった。
ネット上では容姿も体型も声もわからない。
果たして二人の関係は恋愛に発展するのだろうか……。

まず始めにこの本を一言で表すと「ネット恋愛の仕方教えます」です。
まるで教科書のような順序で、ネットを介した恋愛が進んでいきます。
ここでヒロインは聴覚障害というハンディがあるのですが、
この部分はとても上手く描かれていると思います。
しかし、二人の性格が、どうにも「お手本どおり」と言う感じなのです。
その原因と思われるのが、メール内容以外の文章が三人称だという事。
ストーリー展開に際して、ナレーション的な雰囲気も持つ
有川さんの三人称は、どこか他人行儀で、人物に共感できないのです。
ネットで知り合った彼・彼女が、聴覚障害だったら皆さんどうでしょうか?
失礼かも知れませんが、私はかなり戸惑うと思います。
もしも恋愛に発展しそうだと思ったとしても、
その後の苦労を、知った時点で考え、身を引いてしまうと思うのです。
しかし、伸行はさして惑う事無くポジティブシンキングになる。
その部分にギャップがあり、省略された感情が残念に思いました。
と、いうのも伸行の生い立ちについて、後半に少し出てくるだけでした。
これは読めば分かりますが、「言うべきではない事」として処理され、
主人公の心のうちの葛藤、という事になっています。
だけど、どうでしょう、これでは読者もおいてきぼりです。
これらの物事は一番最初に書いておくべき事柄であるし、
読者まで、まるでネット上の人物として扱われるのはかなり遺憾です。
それに、この部分がないために「ただネットで知り合った」と言う
かなり陳腐な出会いに見えてしまっているのも難点です。
最初に伸行は過去辛い事があり「フェアリーゲーム」に
心救われたことがあったので、この話は彼にとって重要だった。
という但し書きがあると、読み手として納得できるのではないか、
と思います。有川さん次は「図書館戦争」でも読んでみよう。
なかなか読みやすい作家さんではあります。
久しぶりに「ですます調」でした。笑

★★★☆☆*79

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月 6日 (火)

「東京ゲスト・ハウス」 角田光代

東京ゲスト・ハウス 東京ゲスト・ハウス

著者:角田 光代
販売元:河出書房新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


微妙…読めないほどではないが、「だから何」感が漂う。
角田さんにしては珍しいなぁ。傾向的には「エコノミカルパレス」と同。
もしかしたら、海外旅行好きの人にとったら、いい作品かも。
私は極力日本を出たくないと思っているタチなので。

旅行から戻りながら、僕はずっとマリコの事を考えていた。
空港に着き、あたりを見回せば、僕を待っている彼女がいるかもしれない。
そんな空想は夢物語だったようで、僕は誰にも待たれていなかったし、
お金もなく、今日泊まるべき家も思い当たらなかった。
そんな時、ふと旅先で出会った暮林さんのことを思い出す。
一泊三百円、食事なし、僕は東京でありながら、「ゲスト・ハウス」
という名の宿に住む事になった。

「ゲスト・ハウス」というのは、よく外国にあるような、
長旅外国人宿泊向けの安い宿の事である。
「僕」はくり返される変哲のない日常から逃げ出すため旅に出た。
そしてその旅にも飽き、戻ってきた「ゲスト・ハウス」では、
何故かまだ旅を続けているような、奇妙な感覚に捕らわれているのだ。
折角戻ってきたのに、一ヶ月も経たぬうち、
すでにその生活のマンネリ化を嫌い、この生活をやめたくなる。
そんな様子が、手にとるように分かり、旅をしない私でも、
なるほどね、と納得して読むことが出来た。
角田さんはヒッピーな人間をこの本に限らず良く出している。
私はイメージ的に角田さんはどう考えてもヒッピー思考には見えない。
むしろとても真面目な考えをする人なんだろうな、
と思うと同時に、きっと真面目すぎてヒッピーのようにはなれない、
微妙な願望のような物があるのではないか、と思うのだった。
まぁ個人的な考えなんですが。
今回もうるさいキャラクターたちが出てくるが、
角田さんが書くその人物には、全て容赦がある。
どんなに狂った人間であっても、理由があり、救いがある。
この話のもう一つのテーマとして、「自分とは違う時間を過ごした人」
についての考え方が沈められている。が、しかし、
この描き方があまり良くないため、結果何を言いたいのか微妙になっている。
主人公の「僕」はマンネリ化していた生活を捨てるために、
当時付き合っていた彼女も一緒に捨ててしまう。
だが、旅でリフレッシュした「僕」は彼女への罪悪感が微塵もない。
それはちょっとおかしいと思うのだ。
置いていってしまった彼女を後悔するならまだしも、
待っているのが当然と言うような態度が、いただけなかった。
ここをきちんと描けていたら、最後呼び止めたシーンで、
もう少し感動を誘えたのではないかと、思っている。
うーん、お薦めはしない。角田さん好きには、まったり読める本です。

★★★☆☆*81

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月 4日 (日)

「町長選挙」 奥田英朗

町長選挙 町長選挙

著者:奥田 英朗
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する


今一番新作であると思われる「家日和」を読んだ時、
「あぁ奥田さん行き詰まってるなぁ」と思ったのですが、
この本を読んでみたら、この時点ですでに行き詰まっていたのね…
と言う感じでした。これは題材が悪すぎる。

「町長選挙」
役場に勤める宮崎が転勤になったのは、人口三千人の離島だった。
この島では四年に一度町長選挙が行われる。
「クリーンな選挙を目指す」…そんなポスターもむなしく、
その選挙は、凄まじい票獲得戦略が繰り広げられるのだった。
島は小倉派と八木派と真っ二つに分かれ、当選した派閥が天下を取る。
ポケットに手を入れられたと思ったら、札束をねじ込まれていたり、
痴呆症患者の選挙権をむりやり手中にいれたりと命がけ。
双方から迫られた宮崎は、精神的に衰弱し伊良部に助けを求めるのだった。

奥田さんは描写力はあるのに、ワンパターンである。
それはこれまで読んできた6冊で分かった事だった。
元コピーライターの人にいうのも難かと思うのだが、
何ともストーリー構成が画一的で微妙である。
その結果として生まれたのこがこの本であると言っても過言ではない。
伊良部シリーズはとても面白い。
この本だって、もしもこのストーリーを奥田さん本人が考えたのなら、
とても面白いし、こんな話し思いつくなんて凄いや、と尊敬する。
しかし、この本に書かれているのは、いつかの出来事……。
そう、まだ記憶に新しい球団買収や、ホリエモン騒動など、
実際に現実にあったことを、偽名を使って書いただけのものである。
勿論、伊良部が登場しているからには、ストーリーは事実ではないが、
この「どっかで聞いた事ある」感がとても、皮肉っぽく素直に笑えない。
そう言った面で一番良かったのが、事実にない「町長選挙」だった。
だが、これも伊良部が離島に出張してくる、など、
いつもの伊良部シリーズとは一味違い、島騒動に重点を置かれているため、
主人公の苦しみが問題解決によってスッキリする、という面では、
ちょっとインパクトが薄い物となっていた。
あぁ何で奥田さんはラストシーンに登場人物全員を終結させ、
てんやわんやの展開にしてしまうのだろうか……。
私はその傾向が折角の前半ストーリーを消してしまうように見え、
なんだか楽しめない。「最悪」も「サウスバウンド」もそうだった。
もしや奥田さんの長編は皆そうなんだろうか…と疑問を抱きつつ、
次は「真夜中のマーチ」でも読んでみようと思います。
これも映画化らしいですね。

★★★☆☆*85

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月 1日 (木)

「まほろ駅前多田便利軒」 三浦しをん

まほろ駅前多田便利軒 まほろ駅前多田便利軒

著者:三浦 しをん
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する


直木賞選考委員は、一体この作品の何を推して受賞させたのだろうか。
ふと、読み終わってそんな事を考えてしまった本だった。
「この作家の本領は、もっとちがうタイプの小説にあるのかもしれない。
思いがけない化けかたをする予感を信じて、(中略)一票を投じた。」
という五木寛之に同意したいような内容だった。

多田は、まほろ駅前で地域密着型の便利軒を営んでいる。
仕事は庭掃除から犬の飼い主探しまで幅広くこなす、
「便利軒」…言い換えれば「何でも屋」なのだった。
ある正月、一日のバスのダイヤを監視する仕事を終えた時、
多田はあまり再会したくない知人・行天に出会ってしまう。
行き場所のない行天を仕方なく住まわす事になり、
バツイチ男二人の、妙なでこぼこコンビが出来上がった。

言いたいことは分かるんだけど、と私は三浦さんの本を読んでいつも思う。
前回の「私が語りはじめた彼は」でも酷評しているけれど、
物語を展開するにおいての切り口が、適当な場所ではない気がするのだ。
今回もその類である。犬を飼えない経済状況の子供の心理や、
結婚する年になって、本当の親子ではないと知ってしまった男の心理など、
表したい事柄は良く分かるし、こんな心理を描こうという心意気は
好きだけれども、しかしきちんと描きたいのなら、そのことについての
描写は少なすぎるし、主人公との関係が浅すぎると思うのだ。
要するに漫画的なのである。色々な現実的な事柄を省略し、
主人公や登場人物の胸の中にしまい込み過ぎに思える。
だから、読み手が感動するようなシーンがうっすら通り抜けてゆくだけで、
核心の伝えたかっただろう物事が、見えないままになる。
そんな事を今回も「あーもったいないなぁ」と思いながら読んだ。
そして多田と行天のちぐはぐコンビは、漫画的で実在の姿を思い描けない。
話の内容はというと、「一度ダメになったものは元に戻らない」
という事をテーマに、割かししんみりとした雰囲気で描かれていた。
特に生々しく最後まで引っかかるのはやはり行天の切れてしまった指だった。
「一度死んだものを、繋げて生きるのはどんな気持ちなのだろう」
というような多田の心理の問いかけが出てくるのだが、
それが、多田の死んでしまった赤ん坊と、それに付随したいざこざ、
不仲になった夫婦関係など、全ての「生」を失ったものたちに掛かり、
仄暗い人間の感情を上手く描いていたと思う。
だけれども、その上手さを上記で打ち消しているとしか思えないのが難点。
結論を言うと、普通に読めば、普通に楽しい。
だけど、直木賞をとるほどかしら?と少し考えてしまうような本だった。
三浦さんはもっと違う才能があると思うんだけど……
だから、この本で受賞してしまうのは少し残念な気がするな、
と勝手な思いも生まれたりしました。失礼な話ですが。

★★★★☆*89

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »