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2007年10月17日 (水)

「犯人に告ぐ 上」 雫井脩介

犯人に告ぐ 上 (1) (双葉文庫 し 29-1) 犯人に告ぐ 上 (1) (双葉文庫 し 29-1)

著者:雫井 脩介
販売元:双葉社
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期待しすぎていたから…?何かの二番煎じ感が残る本でした。
そして事件ものなのに、それほど感じられない緊張感が、問題かな。
人間味が描かれているのはいいですが、
やはり横山秀夫のような固さが殺人事件には恋しく思います。

六年前、巻島が取り逃がした犯人は、「ワシ」と名乗る男だった。
そう珍しくはない男児誘拐事件で、警察は高を括っていた。
身代金を要求した犯人は、引き渡し場所に必ず現れる、
そういった一種の傲慢な解釈が、事件を殺人事件へと促した。
警察は男児を見殺しにした、そんな批判を一手に引き受けた巻島は、
マスコミという悪魔に心を喰い荒らされ、左遷される。
そして六年後、ひょんな事から呼び戻された巻島が任されたのは、
くしくも男児連続殺傷事件だった。はたして巻島は犯人を捕らえられるのか…

第一に、テレビでの公開捜査、という何とも新味を欠いた設定の話で、
期待していた分、ちょっと肩透かしを喰らった感がある。
だって、このネタは、デスノートなんかで出てきた、
神がかり的な頭脳戦とは程遠い、低レベルな事件進みだからだ。
最も、それが真実なのよ、と言われればそれまでだが、
ストーリー上、小説として「作られた感」が漂うのは否めないところ。
それにテレビ公開捜査は、形は違うけど「テレビのちから」とかいう、
実際の番組もあるし、宮部みゆきの模倣犯でだってテレビを使っていた。
そう考えると、何もかもやりつくした物を、真似て作ってみた、
という何とも二番煎じ感が残る気がしてしまった。
話はというと、上記のような味気ない設定の割にはとても読みやすい。
スピード感があって、その中に「巻島」という一風変わった男が、
生き生きと描かれており、スムーズに読むことが出来ると思う。
しかし、その分殺人事件でありながら、ちっとも重々しい雰囲気がなく、
巻島のマスコミと警察の葛藤…みたいなものも、だいぶ薄れている。
そう言えば、マスコミと警察の葛藤と言えば、
横山秀夫の「クライマーズ・ハイ」という名作があったなぁ…
とか思いながら読んでいると、よりこの作品のエンターテイメント性が
私の中で引き立ってしまい、事件ものの風格を失っているように思えた。
雰囲気でいうなら、あの「踊る大捜査線」のような、
小説で言うなら、秦建日子の「推理小説」のような、
まるで、ドラマや映画になる事を想定して書かれたような感じである。
もう少し重きを置いて描くことが出来たら、六年前の「ワシ」と、
それを時折思い出し顔を歪める巻島、終わる事のない殺人事件、
これらのコントラストが絶妙な感じになると思うのだけれど。
しかし、やっぱりテレビじゃだめかな、今の時代ネットか…?
ともあれ、下巻も読もうと思います。

★★★☆☆*85

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