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2007年10月

2007年10月29日 (月)

【アンソロジー】「小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所」

小説こちら葛飾区亀有公園前派出所 小説こちら葛飾区亀有公園前派出所

著者:大沢 在昌,秋本 治
販売元:集英社
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実は気になって仕方がなかったこの本(笑)
だってこんなに豪華メンバーなんだもの。逢坂剛さん以外は、
何からの本で読んだ事がある人たちでした。テーマとキャラが一緒…
もう、これは作家のセンス次第ですね。私は石田さんが一番好きでした。

「池袋←→亀有エクスプレス」石田衣良
あの恋多き男が今回一目惚れしたのは、池袋のめしやの娘・静江だった。
あんなにがたいが良く、がさつなくせして純情な両津は、
直接話し掛けることはしなかった。しかし、静江の好いている相手、
綾小路貴俊とやらが、本当に彼女に相応しいか調べる事にする。
出会い系のフリをして引っかかった卑猥な男・綾小路を、
石田生まれの両津勘吉はどう成敗するのか……。

はっきり言って一番「こち亀」らしい物語は石田さんだった。
それでいて、主人公は自身の持ちキャラの、
「池袋ウエストゲートパーク」の主人公・誠である、
などという茶目っけを出しつつ、見事に両津勘吉を描いていた。
私は「こち亀」の漫画はあまり読んだ事がないので、
専らイメージはアニメの、ラサール石井的な両津勘吉が思い浮かぶのだが、
それを差し引いても、物語の構成、両津に不可欠な要素、
などを少ないキャラクターで見事に描いていたと思う。
その他、私が面白かったのは、柴田さん、京極さん、東野さんである。
個人的に柴田さんはあまり好きではなかったのだが、この本で
両津勘吉を描く、という点では、なかなかの線だったと思う。
京極さんは京極堂が出てくるなど、マニアには堪らない代物だ。
東野さんは「あーやってくれた」と思うほど楽しそうに書いている。
これら七つを眺めて思うことは、両津勘吉を本当に捉えられているか、
と言うところだった。それが面白さであったり、切なさであったりする。
そう、両津勘吉は破天荒で乱暴者で頓珍漢だが、人情に溢れている。
そこには下町風情である江戸っ子な心意気が息づいているのだ。
果たしてその様子を描けているのは……?
それは皆さんが是非ご自身で読んで判断していただきたい。
中には物凄く脇役を登場させる作家もいるので、
漫画「こち亀」ファンには堪らない本になっているかと思いますよ。

★★★★☆*86

■収録
-----------------------------------------------
「幼な馴染み」大沢在昌
「池袋←→亀有エクスプレス」石田衣良
「キング・タイガー」今野敏
「一杯の賭け蕎麦」柴田よしき
「ぬらりひょんの禅」京極夏彦
「決闘、二対三!の巻」逢坂剛
「目指せ乱歩賞!」東野圭吾

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2007年10月25日 (木)

「サマータイム」 佐藤多佳子

サマータイム (新潮文庫) サマータイム (新潮文庫)

著者:佐藤 多佳子
販売元:新潮社
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うーん、ちょっとイマイチ、だと私は思ったんですけど、
アマゾンのレビュー評価は高いようで、単なる好みの差かもしれんです。
何せ、この本舞台が近未来だったので…(拒否反応)
なんで近未来にするのか、頗る謎です。

「サマータイム」
雷が鳴り響く嵐の日に、僕がであったのは片腕の少年だった。
右腕だけで力強く「サマータイム」を奏でる広一くんの姿は、
妙に僕を惹き付け虜にした。夏にピッタリな悲しい曲。
次第に仲を深めてゆく二人だったけれど、僕はいつも
彼の左腕の事と死んだ彼の父親の事を考えずにはいられなかった。
母親の再婚がダメになり、そして広一くんは突然街を出てゆく。
僕は戸惑い困惑する中、いつも彼の「サマータイム」を思い出した。

好きになれなかった原因として、多分二つの事がある。
一つは、無駄にこの話の舞台が近未来型区画住宅であることだ。
なんでそんな設定にしたのか、皆目見当がつかない。
ちょっと錆びれた田舎町にしたほうが、哀愁が漂ってよかったのでは、
とすら、思ってしまったほどだった。うーん、好みですね。
そして、もう一つは、結局は何が言いたかったのか、という根本。
勿論「サマータイム」というところからしても、
忘れられない過去の、あの夏の思い出、と言う懐古の気持ちは分かる。
情景も分かるし、一つ一つの事が輝いて見えた、
幼い頃を思い出す気持ちもきちんと伝わってくる。
それはそうなのだが、何か物足りないというか、
結局は弾かなくなってしまった広一の「サマータイム」とか、
そう言うものばかりに気をとられてしまった。
これから彼らはどうするのだろうか、変わってしまった広一と、
変わらない僕と佳奈は、またあの「サマータイム」のように、
歩みより、あの頃のような三人に戻ってゆくのだろうか?
何だか酷評になってしまったけれども…私は佐藤さんは好きである。
「黄色い目の魚」何かは特に良かったんだけど。
うーん佐藤さんは小学生というよりは、中~高校生の描写が好きかな。
といって、強引に締めくくってみる。

★★★☆☆*83

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2007年10月24日 (水)

■雑談:賞をいただきました

どうも、活字中毒女、るいです。
最近、仕事や、バイトや、学校や、就活や、その他色々が忙しく、
本を読む気力が沸きません。

その上気力は沸かないのに、読めないとイライラするのです。
あぁ「私は読書でストレス解消していたんだなぁ」と、
近頃しみじみ思います。まぁ言い換えれば、活字中毒なんですけど。

読みたい本はいっぱいあるのになぁ。
バイト辞めようかなぁ。

そう言えば、実はこっそり私も小説を書いていたりします。
そんな大そうなものではないのですが、
先月、大学の懸賞作品コンクールに応募したら、
なんとまぁ、「優秀賞」を頂きました。

ちょっと自分でも驚きです。
そっち方面も頑張ってみようかなぁ…と思いつつ、就活もせねばと。
どうぞ、生暖かく見守って頂けると嬉しいです。

ちなみに、賞金は五万円です。
大賞の一つ下なので、なかなか良い賞なのです。
本でも買おうかなぁ~シャーロックホームズ全集が欲しい。

■現在読書中の本たち
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「サマータイム」 佐藤多佳子著
「つくもがみ貸します」 畠中恵著
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」 東野圭吾他
「おいしい水」 盛田隆二著
「犯人に告ぐ 下」 雫井修介著
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2007年10月23日 (火)

「ラスト・イニング」 あさのあつこ

ラスト・イニング ラスト・イニング

著者:あさの あつこ
販売元:角川グループパブリッシング
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あぁ一週間に一冊しか読めないなんて…!!ようやく読み終わりました。
「バッテリー」を貪るように読んだ貴方、是非読むべきです。
あの6巻の中途半端なラストを解決すると共に、
瑞垣というもう一人の野球に縛られる少年を楽しむことができます。

もう野球なんてやるものか。新田に屈辱的な大敗を期してから、数ヶ月。
俊二は野球を捨てた。理由なんてそんな明白なものはない。
ただ、自分は選ばれた野球に人間ではないと気付いてしまったからだ。
いつからか夢見ていたのは秀吾が大敗する姿だった。
あの、天才バッター門脇秀吾が平伏す様子を思い浮かべるだけで、
背筋がぞくぞくし、わくわくた。でも、どうだ?自分達は新田に惨敗した。
秀吾は涙を流していた。なのに俺はわくわくなんてしなかった。
初めて見た秀吾の弱さにイライラし、そして野球が嫌いになっただけだった。

そうか、あの「バッテリー」の中途半端なラストはこのためにあったのか。
そんなことをまず初めに感じた本だった。
初めに言ってしまえば、あの試合で巧は横手に大勝する。
そんな晴れがましいストーリーが待っているわけであるが、
あさのさんは、そのシーンを描かなかった。その理由。
その深い深い理由を、この本を読んで肌で感じる事が出来た。
巧と豪のためのラスト…それは、あの若さで得てしまった才能の苦しみ、
そしてまだ伸びるであろう若い力、その行方を、
さて幸ととるか不幸ととるか、またその先は明るいのか暗いのか、
若さゆえに不安が残る、自分ではどうする事も出来ない未来を描いたのだ。
正直バッテリー6巻を読んだ時、肩透かしを喰らった気がした。
あんなに葛藤し、成長してきた二人は晴れやかなラストさえ飾れないのか、
そう思ったのだが、それは大きな間違いだった。あさのさんは、
あの「バッテリー」の中であの二人を終わらせたくはなかった。
そんな思いがひしひしと伝わってくるのであった。
脱線したが、本編はと言うと話の軸はほぼ瑞垣のストーリーである。
野球に魅せられ、天才的な才能を持ち合わせた幼馴染を見てきた彼は、
それとは対照に自分は野球に選ばれない人間だと気付いてしまった。
どんなに頑張っても秀吾のようになれるはずもなく、
巧の様な球を投げられるわけでもない。そう考えた時、
「頑張る、頑張らない」の前に瑞垣は野球を捨てた。
その素っ気無いともとれる選択は、とても彼らしいかもしれない。
でもその裏側に隠された思いは計り知れず、
素直に野球を楽しめなくなった少年の大人びた心の傷を見せ付けられた。
自分の行動のために名誉を捨てた親友、いまだ伸びつづける巧の才能、
野球は自分にとって何なのか様々な思いが交錯し、胸を過ぎる。
複雑に悩み、しかし思わず「でもさ、結局お前は野球が好きなんだって」と、
肩を叩きたくなるような、そんな思いがした。
個人的には、何度も同じセリフが回るので、少し冗長な気もしたのだけれど、
そうして何度も何度も悩む思いこそが、瑞垣の、
そして野球を通して何かをやり遂げるという少年の姿なのでは、と感じた。

★★★★☆*89

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2007年10月17日 (水)

「犯人に告ぐ 上」 雫井脩介

犯人に告ぐ 上 (1) (双葉文庫 し 29-1) 犯人に告ぐ 上 (1) (双葉文庫 し 29-1)

著者:雫井 脩介
販売元:双葉社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


期待しすぎていたから…?何かの二番煎じ感が残る本でした。
そして事件ものなのに、それほど感じられない緊張感が、問題かな。
人間味が描かれているのはいいですが、
やはり横山秀夫のような固さが殺人事件には恋しく思います。

六年前、巻島が取り逃がした犯人は、「ワシ」と名乗る男だった。
そう珍しくはない男児誘拐事件で、警察は高を括っていた。
身代金を要求した犯人は、引き渡し場所に必ず現れる、
そういった一種の傲慢な解釈が、事件を殺人事件へと促した。
警察は男児を見殺しにした、そんな批判を一手に引き受けた巻島は、
マスコミという悪魔に心を喰い荒らされ、左遷される。
そして六年後、ひょんな事から呼び戻された巻島が任されたのは、
くしくも男児連続殺傷事件だった。はたして巻島は犯人を捕らえられるのか…

第一に、テレビでの公開捜査、という何とも新味を欠いた設定の話で、
期待していた分、ちょっと肩透かしを喰らった感がある。
だって、このネタは、デスノートなんかで出てきた、
神がかり的な頭脳戦とは程遠い、低レベルな事件進みだからだ。
最も、それが真実なのよ、と言われればそれまでだが、
ストーリー上、小説として「作られた感」が漂うのは否めないところ。
それにテレビ公開捜査は、形は違うけど「テレビのちから」とかいう、
実際の番組もあるし、宮部みゆきの模倣犯でだってテレビを使っていた。
そう考えると、何もかもやりつくした物を、真似て作ってみた、
という何とも二番煎じ感が残る気がしてしまった。
話はというと、上記のような味気ない設定の割にはとても読みやすい。
スピード感があって、その中に「巻島」という一風変わった男が、
生き生きと描かれており、スムーズに読むことが出来ると思う。
しかし、その分殺人事件でありながら、ちっとも重々しい雰囲気がなく、
巻島のマスコミと警察の葛藤…みたいなものも、だいぶ薄れている。
そう言えば、マスコミと警察の葛藤と言えば、
横山秀夫の「クライマーズ・ハイ」という名作があったなぁ…
とか思いながら読んでいると、よりこの作品のエンターテイメント性が
私の中で引き立ってしまい、事件ものの風格を失っているように思えた。
雰囲気でいうなら、あの「踊る大捜査線」のような、
小説で言うなら、秦建日子の「推理小説」のような、
まるで、ドラマや映画になる事を想定して書かれたような感じである。
もう少し重きを置いて描くことが出来たら、六年前の「ワシ」と、
それを時折思い出し顔を歪める巻島、終わる事のない殺人事件、
これらのコントラストが絶妙な感じになると思うのだけれど。
しかし、やっぱりテレビじゃだめかな、今の時代ネットか…?
ともあれ、下巻も読もうと思います。

★★★☆☆*85

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2007年10月10日 (水)

「NO.6 #1」 あさのあつこ

NO.6(ナンバーシックス)〈#1〉 (YA!ENTERTAINMENT) NO.6(ナンバーシックス)〈#1〉 (YA!ENTERTAINMENT)

著者:あさの あつこ
販売元:講談社
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近未来SFファンタジー……いやぁ、まさに私が嫌いな分野でして。
しかし、この本は随分前からすきま風さんにお薦め頂いていたので、
ここぞとばかりに借りてみました。人気でいつもないんですよねぇ図書館に。
あさのさん久しぶりでしたが、やっぱり読みやすいです。
あさのさんは只今「ラスト・イニング」も読んでおります。

室内環境、勉学システム、異物探索、環境管理…
全てにおいてコントロールされた都市、NO.6。
その完全なるピラミッド社会の上層部に
エリートとして何不自由なく過ごしていたぼくだったけれど、
ある日を境にそれは瞬く間に崩れ去り、運命を変えた。
失ったものは自分以外の全部、手に入れたものはネズミという不思議な少年。

ただ一つ残念だったのは、そんなにエリートばかり選りすぐっているなら、
主人公以外にも都市に違和感を覚える者がいても可笑しくないだろうという点。
このお話は、法哲学(実は得意分野)で言うところの、
「プロテスタント的信仰共同体」というものである。
新興宗教のように意向にそぐわない物は排除され、NO.6を追われるのだ。
統制された世の中で、まるで主人公だけか覚醒したように、
他人と違う事を考えているのは何だか不自然である。
小さな頃から英才教育を受けていたなら尚更であり、
そう言った意識を持つまでのプロセスが書かれていない。
話は主人公が覚醒した瞬間から始まっているのだから、
むしろ、そうなるために選ばれた人間なのだ、と言えなくもないが、
私は超常現象の奇跡や、偶然の連発続く小説が好きではないため、
ちょっとばかり不満が残る設定なのであった。
その他はあさのさんらしくとても楽しく読める。
SFだけれども、描写は秀逸なので、「これは何?」と思うところもない。
本当ならば高校生位の少年が背負う生と死の重み、
詰め込まれすぎた不必要な情報の虚しさ、
その何とも言えぬ思春期の複雑な内情を、SFという異世界の中にも、
きちんと存在し、血が通っているということを教えてくれた。
登場するニヒルな少年ネズミと、優秀、だけど偏った思考を持つ紫苑の、
不確かな人間模様。果たして彼は仲間なのか…?それすらも分からぬまま、
思わず足が動き出すさまをリアルに描いている。
次巻に期待~でも図書館にはなかったなぁ。予約しなくては。

★★★☆☆*84

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2007年10月 5日 (金)

「新釈 走れメロス」 森見登美彦

新釈 走れメロス 他四篇 新釈 走れメロス 他四篇

著者:森見 登美彦
販売元:祥伝社
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これは、これは…見事に原作の伝えたかった事を潰してくれています。
それを面白いと取るか、何と無礼なヤツ、と取るか。
それは個人的な見解で分かれるのではないでしょうか。
ちなみにどちらかと言えば私は後者なんですけれども…。短編集です。

「桜の森の満開の下」
満開に咲き乱れる桜を見ると、男は妙な気分になり、嫌な気持ちになります。
早朝ひっそりと佇むそれのことを考えると、
理由は分かりませんでしたが、恐怖感が付き纏うのでした。
そんなある日明け方目覚めた男は、怖い物見たさで桜の下へと向かいました。
恐る恐る進んだ先…その満開の桜の下で、美しい女に出会ったのでした。
男は売れない小説を書くことだけにしか興味をもたないオタク男でしたが、
女の援助もあり、次第に本が売れてゆきます。男は世間的に有名になり、
欲しいものは全て手に入りましたが、いつも頭を過ぎるのは満開の桜でした。

果たしてここまでの改変を認めていいのだろうか…
私が一つ苦慮しているのは、原作よりこの本を先に読んでしまったら、
よもやこんな物語のイメージが植えついてしまうのでは、ということです。
初めに言っておくと、どれも原作のストーリー通りの物はありません。
私はこの本を読む前に全て原本を読みましたが、
原作者が言いたい事の全てを伝えられている編は一つもないと思います。
特にそう感じたのが、「桜の森の満開の下」でした。
本家である坂口安吾著の「桜の森の満開の下」では、
目を覆うような惨殺劇が繰り広げられます。
今回森見さんは完全現代…という事で、女が欲しがる物が貴金属や、
富や名誉だったりしましたが、本当は人間の首を欲しがるのです。
女があまりに美しく、そして手放したくないと考えた男は、
途方に暮れるまでの間人を切って切って切り殺すのです。
そして、女が人間の生首人形で遊んでいる姿を見て、
「俺は間違っていたのではないか」と気づいてゆきます。
その背後で男の頭をかすめる桜の花びらと、その心情とがあいまって、
ラストシーンで女を絞め殺した時の胸が空く思いが伝わるのです。
しかし、この本では、名声を手に入れた男がそれを失った時の空虚、
というのが描かれており、飛躍しすぎなのではなかろうか、と思いました。
それについては「走れメロス」もしかり。あそこまで突っ走ってしまうと、
もはや友情など…と思ってしまうのは私だけだろうか…。
勿論、語り口は森見さんなので、とても面白い。
面白いのは承知だが、だからと言って、著作権が切れているからと言って、
この内容で同じタイトルはつけて欲しくない。
この本に書かれているお話は、「桜の森の満開の下、のようなもの」であり
「桜の森の満開の下」ではない。そこんとこ、特に理解していただいて、
楽しんで読むというのであれば、極上の娯楽小説であろうと思います。

★★★★☆*86

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2007年10月 4日 (木)

「ドラママチ」 角田光代

ドラママチ ドラママチ

著者:角田 光代
販売元:文藝春秋
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物凄く時間が掛かった本でした。というか読む時間がないだけなんですが。
水曜日の授業はくだらないので、しっかり読めました。(おいおい
木曜日もどうしようもない授業なので、読み終わるかなぁ。
と、本に関係ない事を書いてしまいました。短編集です。

「ツウカマチ」
クリスマスになったらイルミネーションが点灯させるであろう、
大木を見ながら、私は今年も彼氏おらず寂しい冬だと、責められた気がした。
私が気にかけた男たちは、結局みな違う人と愛を育み去ってゆく。
それは付き合い始めた時から、「私はこの人と結婚するんだ」とか、
さり気なく、新妻のような雰囲気を醸し出す事に
原因があるのかもしれない。そう気付き、直そうとしても、
結局上手く行かないのは、私がもう諦めているからだろうか。

角田さんの欠点は、あまりにも自然な話を描くから、
登場人物に印象がないことである。そうそう、その気持ち分かる、
と一番思い読んだのは「ツウカマチ」だったが、
これも実をいうと登場人物の名前をよく覚えていない。
短編集だからであろうか、「対岸の彼女」の葵は覚えているんだけどな、
と思いながら、何の覚える事もなく読了した。
ともかく、この本は、「何かを待っている」女を描いている。
別に今の生活がいやではないし、結婚したくないわけではないが、
平凡な生活が続くであろう、この人生にドラマを待っている「ドラママチ」
夫の浮気に気付きながらも、知らないふりを押し通し、
ただ子供が出来る事だけを心待ちにしている「コドモマチ」
など、どれにおいても主人公の感情に納得できる。
確かにそう思うと同時に、経験もしていないこんなに多くの女を
描く事が出来る角田さんに驚かされるのである。
待っている女…というのは日本での象徴であるような気がする。
声を掛けられるのを待ってるのも女、プロポーズを受けるのも女、
そう考えると、私が「ツウカマチ」を納得したように、
子供を待つだけに不毛な生活を続ける女も、
ただひたすらこの生活が終わる事を待っている女も、
確かに存在するのではないか、と思えてくるのである。

★★★★☆*88

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