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2007年9月12日 (水)

「ジョゼと虎と魚たち」 田辺聖子

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫) ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

著者:田辺 聖子
販売元:角川書店
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初、田辺さんでした。確かそろそろ80歳になられる、
おばあちゃんといっていい年齢の方です。
文章がいい意味で古臭い。世を80年も生き、全てを知った上で、
とつとつと語られる人間の潜在意識の表現がとても上手い。
短編集です。

「ジョゼと虎と魚たち」
クミは生まれつき体が弱いので、車椅子生活を送っている。
祖母と一緒に暮らしていたが、祖母は車椅子のクミを
近所に見られるのが嫌で、なかなか外に出してくれなかった。
「あたいなあ、これから自分の名前、ジョゼにする」
祖母が死に、変わりに傍にいてくれる恒夫にクミはそう宣言した。
過去との決別、幸せな今に気付くために、
クミはいつでも明るく、傲慢に生きて行く。

私のあらすじが何か嘘っぽいのですが…。いや、嘘なのかも知れない。
多分田辺さんが言いたかったのは、こんな事ではきっとない。
でもこの最後のシーンは是非読んでから味わって欲しいので、
あえて書かない事にする。田辺さんが「ジョゼ」で言わんとする事は、
幸せは死と同じと言う、何とも人間の意志の真髄に近い事だ。
幸せは死?きっと全てを幸せに生きている人には分からないだろう。
死ぬほど愛してる?これとも違う。
これは、長い間暗がりに閉じ込められ、陽に当たれなかったジョゼの、
それでも明るく生きようとする意志の強さと、
悲しみを隠すための傲慢さと、それに気付いた恒夫の内情と、
初めて人に愛された喜びとが交じり合い、初めて生まれるものだ。
そこに至るまでの情景を、押し付ける事無くさらさらと伝えてくれる。
これは読んでみないと分からない感情で、
でもきっと自分の心のどこかに潜んでいるだろうという
潜在意識に気付かされ、「あぁそう思う」と納得できるのだ。
他の短編もしかり。
少し気になるのが、どの話も20代~30代の主人公であるのだが、
書いているのは80歳なので、考えている事が高尚であること。
きっと実際の人間は、行動している時は、こんな深い事考えてないと思う。
しかし、その考えてもいないようなちょっとした行動や傾向に、
理由や、それを行うための意識を集中させ考えてみると、
きっとこう言うことになるんだろうなぁと、思う。
それと個人的には視点が右左に動きすぎるのがあまり頂けない。
作風は古風な言い回しで、現代を描く、不思議な感覚である。
中身はおばあちゃんなのに、孫の人生を生きているような。
勿論、20歳の私からすれば、孫に成り切れていないと分かるのだけど、
それがいい味を出しているなぁと。

★★★★☆*90

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コメント

先日、運転しながらラジオを聴いていたら、小川洋子さんがこの作品をお薦めしていたので気になってました。映画化もされてるんだよね。私もいつか読んでみるわ^^

投稿: れおぽん | 2007年9月12日 (水) 22:21

>れおぽんさん

こちらにもコメントありがとうございます^^*

今でもお薦めされてるんですね!
凄いなぁ、これ結構前に発行された本なのに。
映画は妻夫木君が主演でしたね。
見たことがないけど、なかなか評判はいいようです。

この本は女の人は凄く共感できると思います。
とりわけ30代、40代の。
そうそう、それが言いたかったのよ、
っていう事を何気ないストーリーで語ってくれます。
短編集なんですが、どれも良かったです。
個人的には「ジョゼ」が一番好きでしたけどね。

投稿: るい | 2007年9月13日 (木) 10:50

映画、よかったですよ~~~!
原作とはちょっと違ったけれど、私的には感動というよりはすごく納得というか。
賛否両論あるみたいですけどね。

投稿: 由松 | 2007年9月14日 (金) 20:48

>由松さん

こんにちわ~遅くなってしまいました^^;
コメントどうもありがとうございます!

原作とは違うのですねぇ。確かに短編で短いから、
書き加えられてるんだろうなぁ、とは思いましたが。
そうですね、私も納得な感じでしたね。
残念ながら泣けはしなかったので。

「ダ・ヴィンチ」に田辺さんが、「ジョゼ~」の映画について
コメントしてた事があったのですが、
なんだか出来上がったイメージが違ったらしく
「ジョゼはもっとエキセントリックな女の子のつもりで書きました」
みたいな事を言っていました。

小説で共感を得た人は、もしかしたら違和感があるのかもしれませんね。

投稿: るい | 2007年9月18日 (火) 11:49

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