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2007年9月25日 (火)

【アンソロジー】「I LOVE YOU」

I love you I love you

著者:伊坂 幸太郎,石田 衣良,市川 拓司,中田 永一,中村 航,本多 孝好
販売元:祥伝社
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っていうか、お題被りすぎじゃねぇ?
と冷めた目になってしまった、アンソロジーでした。
いや、恋愛アンソロジーなので、テーマで被るのは当たりまでしょうが、
展開や出だしが一緒だと、どんだけボキャブラリーないねん、
とか密かにツッコミを入れてしまったのでした。豪華なんですけどね。笑

「魔法のボタン」石田衣良
失恋をした僕は、いつもの様に幼馴染の萌枝を呼び出し愚痴を語る。
飾らない萌枝は恋愛を忘れ、いつだってスッピンだったし、
服装だってジャージやスエットばかりだ。だがそんな彼女を前に、
傷だらけだった僕の心段々に回復し、気がつけば笑顔が増えている。
もしかして僕に必要なのは、萌枝ではないのか…。
歴代の僕の彼女たちを知り尽くした萌枝に、
自分の気持ちを伝えるため、僕は「魔法のボタン」を使うことにした。

ビックリな事に、この本の中で一番石田さんが良かった。
ビックリ…の理由は、今まで石田さんの恋愛ものは極力避けてきたからだ。
実のところ「4TEEN」を読んだ時点で、これは伊藤たかみのような、
大人を描けない微妙な線ではないか…と勝手に思っていたので、
この「魔法のボタン」は驚くほど良作に感じたのだった。失敬。
この作品は、とってもいいと思う。25歳、と意外に年齢が高めだが、
その30歳にみたない、曖昧な子供っぽさというようなものが、
例の少年の描写と合間ってよい感じに仕上がっていた。
まぁその他にも、恋愛に興味がなかった女の子が開花するような、
ちょっとしたトキメキといった描き方が、個人的にとても好きだった。
その他の作品は…というと、取り分け印象が濃いものがないというのが、
正直な感想だった。伊坂さんはまぁ伊坂さんらしく…であったが、
その他中村さんや、中田さん、市川さん、本多さんは何とも言えない。
そもそも全体的に言えるのは、どの作品でもシーンが被っている事だ。
「遅刻する女を待つ男」「電話をかけようとするが逡巡する」
「女に引け目を感じ、くよくよしている」などなど、
傾向が同じである登場人物ばかりで、何かの二番煎じに見えてしまうのが、
どうにも残念だった。恋愛小説…そう提起されて、
思い浮かぶのが、人が皆同じ発想と言うのはなるほど悲しい事実である。
いつの間にか語り尽くされた愛の話は、もう例外はなりえないのか?
男性が書く恋愛小説は特に偏りがあるなと思う結果を引き起こした。
誰が書いても同じ展開、何ていうものは至極つまらない、
前回のアンソロジー「嘘つき。」で三崎亜記が、
郡を抜いて奇抜であったように、新たな要素を開拓する作家を求めたい。
…と、論文ばかり書いていたので、最近論文口調多し。
オマケに偏見辛口失敬でございます。

★★★☆☆*83

■収録
-----------------------------------------------
「透明ポーラーベア」伊坂幸太郎
「魔法のボタン」石田衣良
「卒業写真」市川拓司
「百瀬、こっちを向いて」中田永一
「突き抜けろ」中村航
「Sidewalk Talk」本多孝好

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コメント

おお~辛口だね(笑)

私は逆に石田さんの話は普通だったかも・・

逆に、初めて読んだ中田さんの主人公の底辺っぷりに共感し過ぎたね。ここまで底辺っぷりを見せる主人公を書ける人が、豊島さん以外にいるとは!っていう。

個人的には、姉妹本?の『LOVE or LIKE』より好きだった。

投稿: すきま風 | 2007年9月25日 (火) 20:13

 私はこれがきっかけで、
 中村航さんにひかれて読むようになりました。
 「突き抜けろ」が一番好きだったんですよね。

 恋愛モノってことで、
 シチュエーションは似てくるかもしれないけど、
 それぞれの味が出てればそのへんは私はいいかも。
 むしろ、突飛すぎるのばかりでも引いちゃったりして^^;;

 論文おつかれさまです!^^

投稿: miyukichi | 2007年9月25日 (火) 21:39

>すきま風さん

コメント&TBありがとう^^*

辛口というか毒舌と言うか…(笑)
うーんあんまり作家が豪華だったから、ちょっと期待しすぎたのかもね。
中田さんあたりからちょっと読む気力が失せてしまって、
最後の本多さんとか離婚なのに愛かよ!とか、
苛立ち気味に読了しました。いけない、いけない。
多分それぞれ別の本で読んだら楽しめたと思うよ。まったくもって。

確かに中田さんは底辺だったね。
でもあれはまだ底辺じゃない気がする。
語り口がまだ「男」であることを捨てていない(笑)
まぁレベル2はよかったけどね。
っていうか90と2ってどんだけやねんと。

石田さん、この話凄く良かった。
ストーリーがね、個人的にツボだったので。

投稿: るい | 2007年9月26日 (水) 12:02

>miyukichiさん

こちらもコメント&TBありがとうございます^^*

そうなんですねぇ中村さん。
私は結構前に「リレキショ」を半端に読んだ記憶が…
(読み終わらず途中で返したのです…)
先日は新刊の「あなたにそばにいて欲しい」を読みました。
なかなか入り組んだ展開をする人なので、面白いですよね。

突飛過ぎるのも難ですけど。
「嘘つき。」の三崎さんはかなり突飛で度肝を抜かれましたし、
でもその文いま鮮明に思い出せるのは、
奇抜な三崎さんのお話なのです。
文章とか言い回しとか、そう言う楽しみもありますが、
やっぱり皆が皆同じと言うのは、文学的、という言葉をお借りしても、
ちょっとよろしくないように思うのです。
この時代の人間はなんてステレオタイプなんだろうと、
後世の人は思うかもしれませぬ。

論文あともうひとつあります(笑)

投稿: るい | 2007年9月26日 (水) 16:21

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 『I LOVE YOU』   伊坂幸太郎:著 「透明ポーラーベア」   石田衣良:著 「魔法のボタン」   市川拓司:著 「卒業写真」   中田永一:著 「百瀬、こっちを向いて」   中村 航:著 「突き抜けろ」   本多孝好:著 「Sidewalk Talk」  I love you祥伝社このアイテムの詳細を見る  別に、クリスマスに合わせて  このタイトルの本を読み終えたわけでは  ありません。偶然です(笑)  図書館で伊坂さんの著作リストにあったので  借りてきていたところ、読んでみたら... [続きを読む]

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