« 「宿命」 東野圭吾 | トップページ | 「江利子と絶対」 本谷有希子 »

2007年8月18日 (土)

「私が語りはじめた彼は」 三浦しをん

私が語りはじめた彼は 私が語りはじめた彼は

著者:三浦 しをん
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


うーん…何が言いたいのかよく分からない本でした。
語る切り口や文体を変え頑張っているのは伝わってくるのですが、
何か根本的なところで表したいものが不明瞭な気がしました。
大勢の人間を狂わせた、ちっぽけな男…という設定にした方がよさそう。
連続短編集です。

「予言」
俺の知らないうちに、全ては決まっていた。
両親は離婚をし、父はこの家から去ってゆく。
そんな事実にうろたえる俺を、母と姉は静かにあざ笑っているようだった。
いつでも遊びに来ていいんだから、とそう言う父だが、
実際に足を運んでみると、そこは俺が足を踏み入れるべき場所ではなかった。
再婚相手の無愛想な女、連れの子供、もう戻らない父、
その全てが俺に最大級の嫌悪感を抱かせた。もう父と会うことはないだろう。

この本は一応一人の「川村」という男に振り回された人々が描かれている。
「予言」に出てくる「俺」は「川村」の息子であり、
父の身勝手さ、身内からさる川村の非道さなどを克明に語っている。
他の編も大体そんな感じで、例えば再婚先の娘であったりとか、
川村の弟子であったりとか、という視点から話は進んでいく。
しかし理解しがたいと言う点で問題なのは、あまりにも切り口が遠い事だ。
再婚先の娘の編では、主人公はその娘ではなく、
素行調査を依頼された、調査員の男の視点から描かれている。
勿論、話の中には、義父である川村も出てくるのだが、
ほとんど存在意義がないように思えるほどで、
果たして娘について語りたいのか、川村について語りたいのか、
不明瞭すぎて、全体がバラバラに見えてしまうのが残念だった。
そして「川村」という人物について、正直よく表現されていない。
これは先ほど挙げた、遠まわしすぎるのもあるのだが、
一体何を描きたいのか、例えば「身勝手な男ぶり」なのか、
「人がいいようで、実は腹黒い」なのか、そう言った所までが、
ぼんやりしてしまい、川村によって振り回された人々の怒りの矛先が、
イマイチはっきりせず、何が言いたいのかよく分からない。
どちらかといえば、個人的には川村が主人公の編はいらないように思う。
周りからもっと濃厚に川村の素行を描写してあげた方が、
面白みと、彼について言いたい事が具体的に伝わったのでは?と感じた。
タイトルが「私が語りはじめた彼は」ですからねぇ…ちょっと。
それにしても短いのに読み終えるのに物凄く時間が掛かった。

★★★☆☆*82

|

« 「宿命」 東野圭吾 | トップページ | 「江利子と絶対」 本谷有希子 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/7580077

この記事へのトラックバック一覧です: 「私が語りはじめた彼は」 三浦しをん:

« 「宿命」 東野圭吾 | トップページ | 「江利子と絶対」 本谷有希子 »