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2007年8月 4日 (土)

「蕎麦屋の恋」 姫野カオルコ

蕎麦屋の恋  /姫野カオルコ/〔著〕 [本] 蕎麦屋の恋 /姫野カオルコ/〔著〕 [本]
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「ツ、イ、ラ、ク」で撃沈して「あぁ姫野さんとは分かり合えない気がする」
と密かに思っていたのですが(笑)この本は素直に面白かった。
短編集なのですが、姫野さんの短さ特有の纏め方みたいなのが、
とても好きでした。とりわけ「蕎麦屋の恋」がいいですね。

「蕎麦屋の恋」
製薬会社に勤める秋原健一は、とりわけ優れた魅力もないのに、よくモテる。
43歳で結婚もして子供もいるのに、引く手数多、
娘と同じ歳の女から、8歳も年上の女にまで……。
しかし、好意を寄せられる反面秋原は、好きと言う感情を持てないのだった。
おざなりの感情で廻る恋情、そんな時、秋原は一人の女性に出会う。
恋愛とは程遠い、愛に醒めた女・妙子に。
二人は蕎麦屋に入りテレビを見、そしてラブホテルに入ってテレビを見る。

この話、絶妙である。
一見何もなさそうなところに、愛はそっと潜んでいる、
何だかそんな事を考える作品だった。
そうか姫野さんはこういう作家だったのか、とちょっと嬉しかった。
「蕎麦屋の恋」の主人公・秋原はとりあえずよくモテる。
振り返れば、至る所に恋愛が転がっているのだが、彼はそれを取らない。
不本意だからなのか、まぁむしろ妻がいるという体裁上なのか、
秋原はなかなか紳士な男に描かれている。
しかし、一度犯してしまったちょっとした不倫の動機が、
あまりにも不明瞭で、そしてそこには愛はないのだと自分でも気づく。
そんな中現れるのが、もう一人の主人公・妙子である。
コタツとテレビが好きな女、はっきりいって変わり者だ。
一緒にテレビを見て楽しむ事が出来る人、それこそが真に愛しい人だと、
彼女は信じているのだった。変な人、そう感じる人物設定だが、
その裏には、幼少期にテレビをずっと一人で見ていたという、
少し切ないエピソードがあり、妙にリアリティが沸いてくる。
オマケに話の中にはコタツやテレビなんてほとんど重要性が無いのだが、
それを感じさせないほど、馴染んだ自然な存在感を生み出している。
姫野さん凄いなぁ、と思う。これで突拍子もなく出てきたら、
私は辛口コメントしているところだが、この絶妙な配合がとても素敵だ。
結局は何も起きない二人…いや、二人はラブホテルに入り、テレビを見た。
そして、いつもの「快特」に乗って帰ってゆく。
二人はキスもしなければ、セックスもしない。
だが、どうだい、この親密感と愛しさはと聞かれる、
清々しいような、じんわりと心が和むような、温かい気持ちになった。
姫野さんの本は短編が合っているようなので、また読んでみようと。
そしていつしかあの「ツ、イ、ラ、ク」を制覇したい…!

★★★★☆*90

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コメント

こんばんは。
TBさせていただきました。
これと『ツ、イ、ラ、ク』をたてつづけに読んで、今まで知らなかった姫野カオルコさんに興味を抱き始めたところです。
「蕎麦屋の恋」と「ツ、イ、ラ、ク」とではまったく世界がちがうように思っていたんですが、るいさんのこれを読んで、いや、むしろ、「恋とはおちるもの」という意味で見事に通じているのかなと見えてきました。
「撃沈」なさったという『ツ、イ、ラ、ク』、探せませんでした。残念。

投稿: 時折 | 2010年2月 1日 (月) 17:13

>時折さん

こんにちわ!
『ツ、イ、ラ、ク』と『蕎麦屋の恋』を連続なんて、
驚くより笑ってしまいそうな、おぉ、っていうその感じ共感できます。
「恋とはおちるもの」かぁ……そうかもしれませんね。
根底には、いや上っ面には? そのような気もするんですが、
姫野さん的恋愛思考を知るためには、ぜひ『受難』をお読み下さい。
恋愛とは何ぞや、と、古賀さんが教えてくれます。
あ、この本は電車の中では読まない方がいいと思いますし、
女の人に読んでるところを見られない方がいいと思います(笑)

ちなみに『ツ、イ、ラ、ク』は撃沈のあまり途中放棄でありました。
ので感想はないのです。ははは。少し前まで、恋愛小説は投げること
多々でした。今なら読めるかも!と思いつつもまだ腰が重いです。

TB届いていないようなので、よかったらもう一度チャレンジ下さい。
わたしも時折さんのブログのTBよく失敗するんですが……
何ででしょうね。ココログとの相性が悪いのか……。

いつもありがとうございます。
また土日に遠出なので…週始めくらいにはお邪魔します!

投稿: るい | 2010年2月 5日 (金) 10:39

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