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2007年8月 1日 (水)

「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」 桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

著者:桜庭 一樹
販売元:富士見書房
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物凄くライトな話でした。でも内容は全然ライトじゃない。
犬や友達がバラバラ殺人事件で死んでしまう。
うーんこれでもう少しシックに纏められていたらなぁ、
とちょっと残念に思いました。藻屑はないだろう、藻屑は。

ある日私のクラスに転校生がやって来た。
その名も「海野藻屑」、なんて最悪な名前なんだろう。
おまけに自己紹介では、自分を人魚だと言い張った。
しかし、その奇行や汚い名前とは反対に、
藻屑は有名な芸能人の親を持つ、酷く美しい少女だった。
頓珍漢な事をいう美少女は、次第にクラスで浮き、遠巻きにされる様になる。
そんな時、藻屑は私に友達になろうと言い出した。

美しい藻屑は実は家庭内暴力を受けていた。
しかし、親を守るために、「自分は人魚だ」などと奇妙な嘘を繰り返し、
自分の言っていることが信用のないことだと、吹聴していたのだった。
それが次第に分かってくる時の、切なさはとても苦しかった。
父親に飼い犬を殺され、おまけにバラバラにする。
そんな現実から逃れるため、藻屑は必死だったのだ。
対する主人公・なぎさは片親でしかも引きこもりの兄がいるために、
高校受験を断念し、13歳の若さで自衛隊に入る事を目指していた。
自衛隊に入れば、お金も掛からず、給料がもらえる。
そんな切実な生活を毎日考えていると、藻屑のような非現実的な行動や、
美しい容姿、高価な暮らしぶりなどに苛立ちが走る。
だけれど、藻屑の痣だらけの体に気づくうち、黙ってみていられないような、
守ってあげたくなるような不思議な気持ちになったのだろう。
藻屑の嘘や皮肉めいた言葉に隠された、本当の心。
真剣に見ていなければ見逃してしまいそうその信号に、
なぎさがふと気づく場面がとても胸が締め付けられるような気がした。
だが、一番のネックとなるのが、冒頭の文で、
藻屑が死ぬ事が書かれているところにある。また、文中にも時折、
兄と山に登るシーンがあり、いよいよ死んでしまうのだと、分かるのだ。
それもあの犬のように残酷にと予想がつく。
全体がどうにも軽いイメージなのに(名前が海野藻屑で察するように…)、
どうにも耐え切れない重さがあり、もうちょっと書き込んでもよかったのでは
と少し思ってしまったりした。主人公を高校生にするとか…。
まぁでもそうすると兄や自衛隊の話が狂ってくるので何とも言えませんが。
砂糖菓子の弾丸の比喩もちょっと突飛だったような、うーん。

★★★☆☆*87

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