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2007年8月16日 (木)

「宿命」 東野圭吾

宿命 (講談社文庫) 宿命 (講談社文庫)

著者:東野 圭吾
販売元:講談社
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久しぶりに東野さん。実は「幻夜」が文庫で出たときに、
久しぶりに東野さん読みたい!と思い購入していたのですが、
結局あのブロック並みの分厚さに気圧され、お蔵入りしてます。
折角買ったのに…。ところでこの話はある意味で地味な話でした。

小学生から高校生まで、勇作には一人のライバルがいた。
瓜生というその男は、何をとっても完璧にこなし、ミスをしない。
勇作も優秀な生徒だったが、瓜生がいる限りいつも二番手だった。
高校を卒業し、貧乏だった勇作は医大を諦めて警察官になり、
自分の目指していた医者になると言う夢を忘れようとする。
しかし、突然舞い込んできた、地域最大の大事件に勇作は息を呑んだ。
事件の被害者はUR電産…瓜生の会社であったからだ。
二人はまるで「糸」に引かれる様に、警察と、そして容疑者として再び出会う。

何ともごちゃごちゃした話であった。
個人的にラストはとても好きなんだけれども、そこに辿り着くまでの経緯が、
何とも複雑怪奇というか、そんなところまで持ってきちゃう?と思うほど、
入り組んだ内容に思えてしまった。「脳」っていうのがな、嫌な原因かも。
話は終末まで二極化し、本編と、そして主人公・勇作が推し進める
独自の推理とが交差し、複雑な展開を見せる。
この話もどちらかと言えば、当事者がべらべら推理を喋ってしまうタイプだが、
最後は、「罪のない告白」のような形になっているので、
最終的にはとても心地よい終わりになっていると思う。
それは東野さんの事件描写が緻密であるのと、
トリックの微妙なさじ加減が上手いからだろう。
しかし、この話にはもう一つの物語がある。
それが勇作が推理するものなのだが、それが何とも言いがたい。
結果を言ってしまうと、こうして宿敵廻り合ったのは、
因果のせいであり、彼らが双子だったからだ、というオチなのだが、
それはとてもいい結果として終わっている。
だけど、その間には脳を操作した、とか、父親と血が繋がってない、とか、
一つの事でも衝撃的過ぎる出来事が、ぽんぽん出てきて、
あまりにも非現実的に感じてしまい、自然な感情が生まれてこない。
もしも、脳の操作、とかを重視して展開するなら、
もう少し主人公に脳に興味を持たせるとか、自分と親は似ていないとか、
そういったところにポイントを置いて話が進んでいれば、
こんなに違和感がなかったと思う。前半は恋人がらみで、
最後は宿敵を追い詰めるため…と推し進める主人公が、
ラストで自分と彼は双子だと知って「何だそうだったのか」と、
あまりにも簡単に納得している当たりが、唸るところ。
自分を嫌っていた?そんな描写もないですし、私的にもやもやな終わりでした。
オチは好きだったんですけどね、そこまでの過程が何とも。

★★★☆☆*83

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