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2007年7月 4日 (水)

「真夜中の五分前 side-A」 本多孝好

真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-A 真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-A

著者:本多 孝好
販売元:新潮社
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「真夜中の五分前」…なんて素敵なタイトル!
とミーハーな気持ちで初めは読みたいと思ったのでした。笑
哲学的なこと書いているのかしら?と期待していたのですが、
そうでもないような、何だか最後に切なさが押し寄せてくる話でした。
傾向的に大崎善生さんのような感じがしました。

僕は会社で孤立した部署の席についている。
ワンマンでやって来た女性課長に従う従順な部下、
そう貼られたレッテルは、あまり嬉しいものではなかった。
悪い噂には尾ひれが付き、社内で手を出した女性の名前まで挙がっている。
五分遅れた時計を眺めながら、仕事なんてただ生きるための糧でしかないと
全てを丸め込もうとした時、僕はある女性に出会った。
同じ顔、同じ声、同じ性格の妹を持つ一卵性双生児の女性に。

うーん「MOMENT」の黒さでは乙一さんを感じたのですが、
今回はなかなかピュアな感じがして、大崎さんぽいかも、
と思いながら読んでいました。失礼ながら大崎さんより好きですが。
個人的にはもう少し哲学的なことを望んでしまいました。
五分前というかその五分の間に起きる何か、みたいに、
少し突っ込んでくれるかしら、と思っていたのですが、そうでもない。
ただいつも五分遅れている時計を見て、過去の思い出を思い出している。
それをいつまでも直さないのは、心のどこかで忘れたくないと思っているのか、
それとも忘れたがる自分の戒めとして、そのままにしておくのか…
そんな切ない心境を読み取る手段として、ひっそりと描かれていました。
対する双子のかすみの登場。同じ顔、同じ声、同じ性格を持ち、
そして同じ人を好きになってしまう双子の姉妹。
結婚を決めた妹ゆかりの恋人を、かすみは死ぬほど好きだった。
しかしそこには越えられない壁があり、自分は決して愛してもらえない。
そんな愛に飢え、自分を見つけようともがき続けるかすみと、
自分を変えた初恋の女を忘れられず、全てを拒絶し消し去ろうとする僕。
二人は曖昧な平行線を描きながら、決してくっつかないのだ。
でもどちらかが少しでも傾き、近づいてきたら…?
そうしたら、いつしかポーカーフェイスを崩す時がやってくる、
その五分を跨ぎ「愛してる」に踏み出すその瞬間が。
そんな様子が、淡々と、でも確実に描かれていて、
そのお陰で最後のシーンで二人が壁を乗り越える時、
とても心に染みるものがありました。
本当の事を隠しつづけるクールな僕の中に潜むのは、
一人のあどけない少女だった、というところが、
私としてはグッとくる?ような。吉田さんの情けない男も好きですが、
本多さん格好つけ男の内情も良いかもしれません。
って私の好みを言ってどうするって感じですが;次は「side-B」でも。

★★★★☆*86

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