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2007年7月31日 (火)

「ドグラ・マグラ 上」 夢野久作

ドグラ・マグラ (上) ドグラ・マグラ (上)

著者:夢野 久作
販売元:角川書店
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お薦めいただいたので、読んでみました。ヤヒロさんどうもです。
この本は「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」
と言われている、怪奇小説である。本来なら、下巻まで読みたいのだが、
図書館で借りてるためまだ来ない!ので、上巻の感想を書いておく。

ヴウウ……ンンン……という音で私は目が醒めた。
辺りは見たことのない部屋である上に、自分の名前すら思い出せない。
非現実的な状況に混乱していると、若林という奇妙な教授がやって来た。
彼は私の記憶を取り戻す手伝いをしてくれるというのだが、
聞いている内、私は自分が何らかの事件に関与していると知る。
その事件のあらましと、この建物から抜け出すための記憶を思い出すため、
私は正木が残した手順の元、狂人解放治療を受けることになった。

この本は何とビックリ角川文庫の夏の100選に選ばれていたのだが、
どうにもこうにも堅苦しい本である。もっとも内容が精神遺伝であるとか、
物を考えるのは脳髄ではなく、個々の細胞であるとか、
非科学的な事柄を奥深くから掘り下げているため、論文並の文章だ。
しかし、その堅苦しい話をただ書いたところで、
面白みに欠けると考えたのか、作者は、登場人物を精神異常者にする、
ばかりではなく、この本自体も全体が精神異常を起こしているような本
として描かれている。なぜなら、この本はこの本の中の主人公が、
書いたものとされているからである。精神異常者が書いた、
言わば自伝のような進みになっており、異常者特有の気味の悪いほどの
記憶力により事細かに書かれている、と言う設定である。
さらにこの話の中にはさらにこの本と同じタイトルの「ドグラ・マグラ」
が出てきており、これまたどの次元を本質と置くか錯誤させるトリックだ。
そのような歪んだ世界で繰り広げられるのは、正木教授という、
これまた変わった男の精神論・精神異常者論であり、
話の半分以上が、彼の考えや、論文を述べているシーンに費やされている。
いかに人間が皆精神異常者であるか、今の精神論がいかに間違っているか、
熱く述べてあるのだが、振り返ってみれば、書いているのは主人公、
という設定になっているため、このトンチというか、皮肉は物凄いものだ。
おまけにこの建物から脱出するために「自分がキチガイではない証拠」を
書いているはずなのに、話の中で、正木は主人公はキチガイであると、
断言している。のみならず、キチガイの原因となった事件に関しても、
まるで他人事のように述べている。その滑稽さの中にある奇怪さが、
何ともぐにゃりと曲がった世界を作り出し、今まで自分が読んできた文が、
間違っていたのか、と疑う実に巧妙な造りになっているのだ。
構想・執筆になんと10年かかったというこの本は、まさに奇文書。
奇怪に見えるように、導くため、長い論文の中に、重要とされる文章が
繰り返し繰り返し出てきて、読者は引っかかる。
それにしても「胎児の夢」面白かったな、本当だったら、と思うと、
恐ろしいけれども、「本当だったら」なんて言っている私は、
正木教授に怒鳴られてしまいそうですね。
確かに、間違いを肯定している、という事実は少なくない。

*下巻を読んでから

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コメント

下巻はさらに、上巻の内容をかき回してくる内容です(笑)アタマ狂いそうになります。

投稿: やひろ | 2007年8月 1日 (水) 22:36

>ヤヒロさん

こちらにもコメントどうもです^^*

そうらしいですね!楽しみにしてます♪
上巻の終わりのあたりでもう、惨殺事件の予感がするので、
一体どうなるのやらと、気になっていますよ。

図書館からまだこないー買っちゃおうかなぁ。

投稿: るい | 2007年8月 3日 (金) 14:34

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