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2007年7月13日 (金)

「となり町戦争」 三崎亜記

となり町戦争 (集英社文庫) となり町戦争 (集英社文庫)

著者:三崎 亜記
販売元:集英社
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うーん、何とも言えない後味。あまり美味しくはないような。
確か三崎さんものむさんにお薦めしてもらったような…
もうしわけないです、文章はとっても読みやすいし、好みなんだけど。
でもなぁちょっと狙いすぎかな、と思わなくもない内容でした。

突如、僕の住む町は、となり町と戦争する事になった。
何の前触れもなく決まったそれは、ポストに入っていた
「広報まいさか」に、まるでイベントのひとつの様に書かれていた。
この町で戦争? 半信半疑のまま月日は経ち、開戦の期日を過ぎた。
しかし、町の様子はいつもと変わらない。
いつもののんびりとした風の装いで、温かな光を漏らしている。
これが戦争なのか? 僕が疑問を持ち始めた頃、役所から一通の手紙が来た。

まず、もっと驚くんじゃないだろうか、と思ったりした。
そもそも、この話の舞台になっている世界(とは言っても日本だけど)は、
今の人間の感覚と微妙にずれて描かれているのです。
もしも、実際にこんな風に「となり町と戦争をして復興しよう」なんて、
そんな案が出たとしたら、物凄い数のクレームや罵詈雑言が飛ぶでしょう。
でもこの話では、その部分がやんわりと割愛してあるのです。
戦争はもうすでに行うものとされていて、反対意見はむしろほぼいない。
そんな状況をこの敗戦国日本で作り出せるまでのプロセスが、
どうしても描く事が出来ず、曖昧な心持ちのまま進める事になりました。
一番の問題点は主人公の考えている事が分かりづらいと事にあると思う。
舞台は戦下中ですから、周りの人々は躍起になっている、
そんな姿を見て、我一人関せず、と言った具合に戦争に対し考えがない。
周囲が目まぐるしく動いているのに、取り残される主人公を見ていると、
同じように生きてきたはずなのに、一人自分は違うと言う立場を取れるのか
と疑問が湧きます。微妙なギャップが生じているのです。
まるで異世界にタイムスリップしてしまった様に描かれている、
というのがその原因で、先ほど言った「割愛」によって生まれたものです。
内容はといえば、戦争は見えないところで起こっているということ、
自分が生きるために誰かが犠牲になっていること、
戦死と殺人との区別で悩むべきこと、戦争は何か有益なものと引き換えに、
虚しいものをたっぷり残すこと…色々、色々描かれています。
何も戦争について考えていなかった主人公が、
間接的に戦争に関わる事で、徐々にその恐ろしさに気づいてゆく。
そこには非常のわくわく感もある。そのわくわく感もしまいには、
自分のために犠牲になった人の事を考え、自分を卑しく思い始める。
そんな様子が、的確に描かれているので、何だか主張しすぎな気もして、
狙ってる感が漂っているのですが、内容的にはとてもよいものかと思います。
そんなわけで、小説より舞台の方がよさそうだなぁと思いました。

★★★☆☆*84

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コメント

読んだんだね~

私も、これはかなりメディアで推していたから気になって読んだのだけど・・
戦争の割には何て淡白な!?という気がして何とも違和感があったよ。

読みやすいんだけど、それにしても冷静すぎやしないかい?!という感じで。

これを読んだ後、豊島さんの「青空チェリー」に入っている「ハニィ、空が灼けているよ」を読んでみるともっと楽しめるよ。

同じように突然日常にひたひたと戦争の影が忍び寄る様は、豊島さんの方がリアリティを感じられると思う。ぜひ!

投稿: すきま風 | 2007年7月13日 (金) 21:38

 これ、私はすごく低評価なんですよね・・・。
 “上手さ”は感じるんですが、
 るいさんのいう“狙いすぎ”な感じが、
 私は好みではありませんでした。
 そういう意味では、文章自体は多少稚拙でも
 何かを訴えてくる一途さを感じさせてくれるような
 タイプの小説のほうが、ずっと好きです。

 TBさせていただきました^^

投稿: miyukichi | 2007年7月14日 (土) 02:22

>すきま風さん

こんばんわ~こちらもコメント&TBどうもです^^*

読んでしまいましたよー;
あの「嘘つき。」でちょっとばかり嫌な予感はしていたのだけど;
そうそう、結構推されてたよね!
演劇とかにもなっているようだし、どんなものかと思っていたのさ。
で、そう、淡白。
淡白すぎないか、これ?と思ったよ。
多分狙い的には淡白を狙ったんだと思うんだけど、
それにしてもあまりにも実態がなさ過ぎて、
いつの間にか終わってましたーみたいな感じでした。
戦争なら、もうちょっとそわそわした感じとか、
主人公から読み取れるとよかったのになぁ、と。
冷静すぎるね。
私は「次世代タイムスリップ」で主人公が登場した方がいいと思う(笑)

了解した!「青空チェリー」。
単行本に入ってるかな?今度図書館で借りてくるよ。
人気が無いのか…わかりませんが「青空チェリー」と「日傘のお兄さん」
だけは常備誰にも借りられず図書館にあります(苦笑)
豊島さんは、迫り来る何か!みたいなのお得意だもんねぇ。

そうそう、「神田川デイズ」読んだよ、感想は後ほど~。

投稿: るい | 2007年7月14日 (土) 23:58

>miyukichiさん

こんばんわ~コメント&TBどうもです^^*

私もなんだかなぁーの一冊でしたよ。
文章は私はどちらかと言えば好みの方なのです。
だけど、それ以外のものがどうにも好きになれないというか;

あと、狙いすぎな感じはたっぷりありましたねぇ。
隠喩で色々書かれていて、「こんなに書かいて大丈夫なのか?」
とちょっと心配もしてしまいましたよ^^;

訴えてくる何かは、今回は逆効果でしたね。
きっとこの本は「いつ始まって、いつ終わった分からない」
がコンセプトだったのだと思います。
その中で「そして気づかないその中に、沢山の犠牲が詰まっている」と。
まぁそれにしても、狙いすぎ感は消えるわけではないし、
淡々としていて、ちょっといやらしい気もしますね;

すかっとするくらい心に沁みる良い本を、久しく読んでいませんねぇ;
去年はそう言えば森さんの「DIVE!!」で感動したなぁと。
夏のいい本、見つけたいですね!!頑張りましょう^^*

投稿: るい | 2007年7月15日 (日) 00:04

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» となり町戦争 [No-music.No-life]
ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。僕は町役場から敵地偵察を任ぜられた。だが音も光も気配も感じられず、戦時下の実感を持てないまま。それでも戦争は着実に進んでいた―。 三崎亜記さんの本です。 メディアで推しているのを見たり聞いたりしていたので、ずっと気になってました。 先日、図書館で発見したので早速借りて読んでみました。 感想としては、期待していたほどではなかったかなあ・・って。 突然始まった、となり町との戦争。 とある事から、偵察という形で戦争に参加する..... [続きを読む]

受信: 2007年7月13日 (金) 21:33

» となり町戦争/三崎亜記 [Book] [miyukichin’mu*me*mo*]
 三崎亜記:著 『となり町戦争』  となり町戦争集英社このアイテムの詳細を見る  舞坂町に住む「僕」は、  町の広報紙により、となり町と戦争が行われることを知る。  そして、開戦から数日後、「戦時特別偵察業務従事者」として、  町役場職員の女性・香西さんとともに、  夫婦と偽って、となり町に住むことになり――。  「小説すばる新人賞」受賞作。  映画化もされ、公開間近なようです。  となり町との戦争なんて、発想や設定が突飛だし、  文章も、新人にしてはこなれています。  とくに、お役所がらみの... [続きを読む]

受信: 2007年7月14日 (土) 02:18

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