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2007年7月20日 (金)

「学校の青空」 角田光代

学校の青空 (河出文庫―文芸コレクション) 学校の青空 (河出文庫―文芸コレクション)

著者:角田 光代
販売元:河出書房新社
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狙ったわけではないのですが、瀬尾さんに続いて、
これも若干いじめを含んだ内容でした。
それにしても角田さんって凄いな、昔から文章が変わらない。
昔の方が文章が更に長いする気もする、むしろ私はそっちのが好きかな。
短編集です。

「夏の出口」
大学が推薦で決まり、私はもう進路で悩む事はなくなったはずだった。
だけど、何故か自分がその大学へ進んでいいのか、
その大学で本当にいいのだろうかと疑問が過ぎり、不安になり始めた。
ハルナや夏子たちと約束していた旅行で、今風にはしゃいだり、
彼氏を作ってセックスをしたりという計画も、今考えると、
自分ではないような、そうなってはいけないような妙な気分になる。
私は、決められた路線しか走る事が出来ないバスに、
乗り込む勇気を持てず、今来た道を再び戻ってゆく。

なんて的確な事を語ってくれる本だろうと、とても感動した。
泣いたり、という事はないのだが、思春期に子供が持っている、
ジレンマや解決できないわだかまりを、ありのままに描いている。
真っ直ぐにしか進めない自分の道、自分が仕方なく決めたその進路は、
ずっと前からそうなると思え、進んでしまえば気にならないはずなのに、
ふと立ち止まり、私はこのまま進んでいいのだろうかと不安になる。
本当はもっといい道があって、俗に言われる今風の、
ありきたりでベタな生活を送るにはこの道ではきっと間違っている。
そう思うのだけれど、結局私は同じ道しか歩むことしかできないのだ。
きっとこの迷いは過ぎてしまえばどうしようもない悩みである、
でもどうしても感じてしまう、この解決できない悩みを、
角田さんは解決しないまま、これでもかとリアルに描いている。
答えはわからない、合っているのかも間違っているのかも、分からない。
だけど気づいたら迷い、不安になっていた、と。
そんな様子を、多量の比喩を利用し、事細かに模している。
最近の本では控えめに感じる比喩も、この本(95年発行)では、
かなり大量に使用している。直喩、暗喩、隠喩、様々な方向から、
言葉では伝えきれない心の葛藤を、ありのままに描いている。
主語が一人称でありながら、ここまで押し付けがましくならないのは、
お見事だなぁ、と思いつつ最後まで一気に読めました。
内容はというと、濃いです。
いじめの題材、自分の役割、セックスについてなど。
きっと自分もそんな思いをした事があると、ふと思い出す本だと思う。

★★★★☆*90

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