« 「木洩れ日に泳ぐ魚」 恩田陸 | トップページ | 「ドグラ・マグラ 上」 夢野久作 »

2007年7月30日 (月)

「ブルースカイ」 桜庭一樹

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA) ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

著者:桜庭 一樹
販売元:早川書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する


今更だが、私はSFやパラレルといった内容が嫌いである。
アニメや漫画のようにもはや非現実的ならいいのだけれど、
中途半端にタイムスリップしちゃう話がとても苦手なのだ。
その点でまずこの本は引っかかっている。
桜庭さんの素敵な文章なので、すらりと読めるのだが、やはり楽しめない。

私の名前はマリー。かつては名字もあったが、今はない。
十七世紀ドイツでは世紀末的な冷夏に悩まされていた。
夏だと言うのに雪が降り、農作物が枯れ、街が萎び始める。
そんな中全ての元凶は魔女の仕業だという、魔女狩りが横行し始めた。
街の女たちが次々と魔女に仕立てられ、殺されてゆく。
いつしか異郷人である私と祖母にも白羽の矢が立ち、
魔女であると濡れ衣をかれられてしまった。このままでは殺されてしまう…
そんな時、私の前に異国の少女が現れた。彼女の名はブルースカイ。

「根本的に何が言いたかったんだ?」と激しく疑問が残る作品だった。
この話は、第一章であるマリーの話、第二章であるディッキーの話、
そして最後にソラの話という三章に分かれている。
この一つ一つの章の中では、それとなく言いたい事が描かれている。
マリーのところでは魔女狩りと言う理不尽な好意の横行を、
「悪魔の仕業」と言う抽象的な概念で描き、それを非難するという姿勢が、
ディッキーのところでは、「急激に大人びる」存在であった女が、
現在では「幼い」女になりつつあるという社会現象がそれぞれある。
しかし全てを通して何を言いたいのか?と見てみると、
あまりにも歪過ぎて、よく分からない、と言うのが正直な感想だった。
最初~中盤にかけて、世界はまるっきり中世である。
その描写は細やかで、丸で違和感なくヨーロッパ風情を味わえてよかった。
しかし唐突に切り替わるシンガポールのために、今まで語ってきた、
マリーの話が水の泡になり、最後の数ページで処理され、残念である。
おまけに最後に出てくるソラが極めつけであり、これは日本の女子高生だ。
勿論描写は桜庭さんなので文句はない。
だけれど、唐突に表れた少女の唐突な死。それがあまりにも無残で残酷だった。
話は全体的にこの少女ソラのために描かれていると言っても過言ではない。
でも、それにしてはマリーの生い立ちの話が長すぎるし、
ソラについての描写が逆に短すぎる、なんともバランスが悪いのだ。
よって、「根本的に何が言いたかったんだ?」ということになる。
もしも桜庭さんを初めて読む方の場合、これは絶対お薦めしない。
是非「少女七竈と七人の可愛そうな大人」をお読みになって下さい。

★★☆☆☆*70

|

« 「木洩れ日に泳ぐ魚」 恩田陸 | トップページ | 「ドグラ・マグラ 上」 夢野久作 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/7323301

この記事へのトラックバック一覧です: 「ブルースカイ」 桜庭一樹:

« 「木洩れ日に泳ぐ魚」 恩田陸 | トップページ | 「ドグラ・マグラ 上」 夢野久作 »