« 「銃とチョコレート」 乙一 | トップページ | 「格闘する者に○」 三浦しをん »

2007年7月 9日 (月)

「少女七竈と七人の可愛そうな大人」 桜庭一樹

少女七竈と七人の可愛そうな大人 少女七竈と七人の可愛そうな大人

著者:桜庭 一樹
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する


久しぶりに私の心をグッと掴んでくれる女性作家さんでした。
まったくもって吉田さんや角田さんのような作風ではないですが、
この本は、小説版「彼氏彼女の事情」みたいな(好きな人はきっと好き)、
なんだか不穏な空気と、温かい微笑の混じった絶妙な本でした。

母親が淫乱であったがために、生まれてしまった美しい少女・七竈。
小さな町で異様なまでに美しいと言う事は、それだけで生きがたく、
また男に溺れ姦淫を繰り返す母は、家出性の淫乱女だと巷で有名だった。
そんな肩身の狭い七竈のより所は、親友である雪風で二人は馬が合った。
彼もまたこの世を逸した美しい顔立ちをしており、
七竈は自分と同じ境遇の人間であると信じていた。
しかし、高校に上がり日に日に互いの成長を確認するにつれ、
七竈は自分が雪風と似ていると気づいてしまう。そして周りの人物もまた…。

隠隠滅滅とした雰囲気に、ひっそりと佇む真っ赤な七竈の実と、
さらりと舞う白い雪。そんな様子がピッタリと合う、
とても不思議で、それでいて読みやすいお話でした。
一番惹かれた部分は、母親の不徳のせいで、娘が苦労していると言う点。
ブスで嫌われるならまだしも、美しすぎて生きづらいという、
何とも歪曲した痛みの描き方が好きでした。
おまけに、その美しさが仇となり、親友だと思っていた少年が、
実は自分の異母兄弟かもしれないと複雑な疑念を持たねばならない。
その心情が、つらつらと、時には鉄道と言う渋いマニアックさに逃げながら、
語られている辺りが、まさに考えさせられる部分であり、
そして最終的に母親を自分が許せるのだろうか、という問いに変わってゆく。
中には犬の視点で語られる部分があるのですが(乙一さんみたい!笑)、
人間ではなく動物を介した時の主人公の温かい視線や、
不意に見せた母親に対する態度などが、憎らしくも上手に描かれていて、
これは素敵なお話だと、認めざるを得ませんでした。
特に一番好きだった部分は、母と七竈の口論をさり気無く語る辺りですね。
客観的にみる人間の表情や、言葉、雰囲気が、犬を通して伝わってくる。
ちょっと可笑しな話ですが、その丸みを帯びた視点がとてもよかったのです。
あとは、雪風の一言もよかったかな。もしかしたら、七竈よりも先に、
兄弟であると気づいていたかも知れない雪風の、「さようなら七竈」
と、突き放された切なさと、その前に描かれている二人だけの世界が重なり、
悲しい、でも仕方がなくて、もどかしいけれど、やっぱり一緒にはいられない、
そんな気持ちが照準を見つめる雪風の瞳に写るようで、心に残りました。
親子とは何か、血の繋がりとは何か、人とは違うということは何か、
を考えながら、いかにして自分が親を許す事が出来るのか、
そんなことを考えることが出来る本です。ちょっとだけ許すのは第一歩だと。
おまけにしっとり、さっぱり、心地よい文章ですから、是非に。
個人的にはとてもヒットした本でした。

★★★★☆*92

|

« 「銃とチョコレート」 乙一 | トップページ | 「格闘する者に○」 三浦しをん »

コメント

この本、装丁が綺麗でとても気になっていたんだよね!
図書館に置いてあるかな・・・

るいさんがこんなにお薦めするんじゃ、よさそうだね。
今度読んでみよう☆

投稿: すきま風 | 2007年7月13日 (金) 21:39

>すきま風さん

こんばんわ~コメント&TBどうもです^^*

これ個人的にとってもお薦めー!
淡々としてるから、好き嫌いがあると思うんだけど、
多分好きになってくれると思う…ので是非読んでみてね!
というか、単行本買っちゃおうかなぁと思っているので、
もし図書館にないようだったら、買うまで待っててくれれば貸すよー。

図書館にはどうだろう?
実は作者の桜庭さんって、ライトノベル出身なので、
ばりばりオタクな小説をメインで書いている方なので、
結構図書館の品揃えは悪いかも;
私が借りてる図書館にも無いのがあるし…。
でもアマゾンでは好評なので読んでみたいなぁと思っていたり。
その前にも他の本も借りてみるけどね。

取りあえず、他の本は分からないけど、
この「少女七竈と七人の可愛そうな大人」はお薦めでございまする^^*

投稿: るい | 2007年7月14日 (土) 23:52

読みました。

なんていうか・・胸がきゅっとしめつけられるような読後感。

七竈と、雪風の悲しい運命・・
何だかひりひりと痛い物語でした。

にしても、母凄すぎだよな・・。

この七人の大人っていうのは、誰をさすのだろう?
母の七人の相手でしょうか?

投稿: すきま風 | 2007年7月26日 (木) 22:22

>すきま風さん

コメント&TBどうもありがとうです^^*

そうそう!何だか切なさが込み上げてくるよね。
疑いが確証に変わる瞬間と言うか、その主人公の怖さとか、
一風変わった雰囲気で書かれて、とても好きだったのです。
雪風のあの「ずきゅーん!」がなぁ、泣きそうになりましたよ。

母親はもう論外と言うか、もうこういう狂った人だ、と言う感じで、
むしろ振り回される周りの人間を哀れんでしまったね。

どうなんだろうねぇそう言えば七人は出てきてないよね。
七人と寝た、とは出てくるけど。
雪風の兄弟は何人だっけ?
雪風と七竈と雪風の兄弟を合わせたら七人?
だったら可愛そうな「子供」になるかな。
きっと最初母親が寝たという七人の事だと思うのだけど、どうだろうね。

投稿: るい | 2007年7月29日 (日) 15:35

七竈と雪風。この二人はずっと一緒にいて欲しいと思ってしまったけれど・・・。淡々と語られてるけれど、とても切ない運命なんだよね。ほんと、この物語の文章は独特の世界観があって好きな作品となりました。

投稿: れおぽん | 2007年11月26日 (月) 23:01

>れおぽんさん

こんにちわ~読まれましたか~^^*
桜庭さんの本の中でやっぱり一番好きですねぇ。
この不思議な雰囲気が好きでした。

そうそう、ずっと一緒にいたらいいのに、
とおもう反面、「あぁやっぱりダメか」
っていう切なさが上手く描かれてましたよね。

「私の男」も楽しみです。
あと「青少年のための読書クラブ」…
も持っていた気がする。読まなくては。

投稿: るい | 2007年12月 2日 (日) 09:57

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/7089949

この記事へのトラックバック一覧です: 「少女七竈と七人の可愛そうな大人」 桜庭一樹:

» 「桜庭一樹」の感想 [読書感想トラックバックセンター]
「桜庭一樹(さくらばかずき)」著作品についての感想をトラックバックで募集しています。 *主な作品:青年のための読書クラブ、赤朽葉家の伝説、砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない、GOSICK ゴシック、少女七竈と七人の可愛そうな大人、少女には向かない職業、推定少女、ブルース..... [続きを読む]

受信: 2007年7月24日 (火) 09:58

» 少女七竈と七人の可愛そうな大人 [No-music.No-life]
半身を奪われるような別れ、あきらめていた人への想い、痛みをやさしさが包み込む。気鋭、桜庭一樹が描き出す、最高の恋愛小説− −−− るいさんにお薦めされ、早速図書館で借りて読みました。 実は装丁が綺麗だったので、とても気になっていたのです。 七竈って、何だろうと思っていたのです。 何かの言葉なのか?って。 植物らしいです。 で、主人公の女の子も同じ名前です。 [http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTM..... [続きを読む]

受信: 2007年7月26日 (木) 22:23

« 「銃とチョコレート」 乙一 | トップページ | 「格闘する者に○」 三浦しをん »