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2007年7月14日 (土)

「神田川デイズ」 豊島ミホ

神田川デイズ 神田川デイズ

著者:豊島 ミホ
販売元:角川書店
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問題なのは、きっとどの主人公とも共感できない事にあると思う。
私は根本的に豊島さんと考え方が違うのだなぁ、
とちょっと打ちのめされた気がする。いや、いい意味で。
でも残念なのは感情移入が出来ないと言う点なのですが。
短編集です。

「どこまで行けるか言わないで」
この映画サークルに入った同級生は、たまたま皆女の子だった。
私と奥村とマルちゃん。向上心の欠片もない映画サークルに、
見切りをつけた私たちは、三人で団結し新たなサークルを作る事にした。
奥村は監督志望で、マルちゃんは女優志望で、私は脚本志望、
そして掲げた目標は「女性向けのピンク映画」を作る事。
誰も手を出していない分野に足を踏み出す、ワクワク感。
そんな明るくふわふわした思いを胸に、私たちは野望だけを語っていた。
次第にやる事が具体化し、実際に脚本を書こうとした時、
私の手は止まって動かなくなった。そしてマルちゃんも…。

連続ではないですが、短編集です。
主人公は毎度違い、話の内容も違うのですが、
共通の人物が出ていたり、本編では語られなかった結果が語られている。
その点ではとても楽しめたし、これこそが現実なのかもしれないと、
ちょっとヒヤリとした様子もうかがうことが出来きて、面白かった。
そして私にとって一番問題だったのは、この短編の誰とも共感出来なかった事。
文章が悪いのか、表現が悪いのか、何なのか、よく分からないのですが、
根本的に、私はきっと豊島さんほど向上心がないからかもしれない。
もしくは、まだ自分は何か出来るはずだ、といきがっているからかもしれない。
そんなところから、ちっとも心を揺さぶられないのでした。
と、言いつつも「どこまで行けるか言わないで」はよかったなと思いました。
何かをやりたいやりたい、とそれだけで抜け出した映画サークルだったけど、
結局自分たちが目指していたのは、とても大きな事だった。
そしてそのぶち当たった壁を越えられる者と越えられない者。
そんな二種類の人間がいて、越えられない人間は、越えられた人間を、
ただ呆然と、少し悔しさを交えて見るしかないのだ、
というとても皮肉っぽい表現がよかったと思います。
ただ、他の話でも言える事なのですが、豊島さんの話は痛いものが多い。
それはとても現実的に描く上で良い事だと思うのですが、
痛い中にも、少し上昇した慰めがないと、
どん底に突き落とされたまま終わってしまうというのは、とても耐え難い。
だって現実だってそうじゃないですか、どん底を見たら、
いつしか浮上するわけです。ずっとどん底にい続けるわけではない。
リアルに痛さを求めるあまり、どうしても排除されがちなその部分を、
もう少し配合してくれたらなぁと私は個人的に思うのでした。
だから、この作品は、全体を読んで一枚絵にするとよいと思う。
一つ目の作品に出てくる主人公たちは、次の、そのまた次の作品では、
徐々に活躍するようになり、彼らの努力が実った事を知る事が出来る。
そうするとやはり安心してしまう私がいるのです。
だから、最後の最後にやっぱりまた突き落とす豊島さんを見て、
「あぁ、あなたって人は…」とふと思ってしまいました。
いえ、それが悪いとは思わないのですが、よいとも思えず、
自分との相違点として受け取るのが一番かも知れないと思った次第です。

余談ですが、夜間部は学校により結構な人数がいます。
なんだかこの本では凄く少ないみたいに書かれていたので…。
早稲田は夜間が小規模なんだろうか?よく知りませんけど;
私の学校は憲法とか刑法とか必修になると軽く200人はいますので。
よく夜なのにこんなにいるなぁ、と自分を差し置いて感心しますよ。

★★★★☆*88

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コメント

読みましたか。

同じ学生という立場でも、共感できないということは・・尚更私はこの主人公達に感情移入出来なくて当然だということなのかな。

一つ一つの短編が、次の物語に繋がっている感じは好きで、そして尚更その後は割と上手くやっているというように描かれていて微笑ましくもなったよ。

そうか~るいさんにとっては、痛いんだね。
私は何だか共感し過ぎるせいか、納得しちゃうんだよね。

どうせ幸せなんてないし・・って諦めている自分には、丁度いいというか。

流石「底辺女子高生」だっただけあるわ、自分も豊島さんも(苦笑)

投稿: すきま風 | 2007年7月15日 (日) 22:27

>すきま風さん

こんばんわ~コメント&TBありがとうです^^*

読みました、読みました!
借りておいてなんだか酷い事書いちゃって申し訳ない^^;
でも繋がって、回り始める物語がよかったですね。
現実はきっとそうなのだ、と寛大な気持ちを感じられた気がする。

始めに言っておくと、私は底辺どころではなかったのですよ…。
底辺も底辺なりに大変さはあると思うのですが。
今まで言えませんでしたが、そのへんもまた日記の方で書ければと思いますが、
友人がいない、という寂しさよりも、私はいじめの危害に怯えていたのです。

うーん、共感については分からないなぁ;
逆に、自分が経験しちゃってるから、「自分と違う」「そんなこと思わない」
って思っちゃうのかもしれないし。
でも「檸檬のころ」はすんなり読めたからなぁ、うーん;

そうそう、痛すぎて。
「エバーグリーン」なんかは、なかなか前向き思考で終わっていたので、
これからを考えられる感じに上昇していた気がするんだけど、
これは中途半端に、主人公たちが不安なまま終わっていて、
ちょっと残念だったんだよねぇ。

まぁまぁそう言わず、幸せを掴みに仙台に行きましょう^^*(笑)

投稿: るい | 2007年7月15日 (日) 22:52

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» 神田川デイズ [No-music.No-life]
根拠のない自信に、過剰な自意識と鬱陶しいまでのナイーブさを抱え、僕たちは、惑い、傷つき、夢を見つけようと上を見上げては途方に暮れる。大学生たちの息遣いと切実な思いをリアルに描く、傑作青春グラフィティ− −−− 豊島ミホさんの待望の新刊です! 今回は、大学生の日常を描いた連載短編集です。 大学生、と一口に言ってもしょっぱい大学生活を送っているどちらかというと冴えない男女の物語とでもいいましょうか。 学生生活が..... [続きを読む]

受信: 2007年7月15日 (日) 22:27

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