« 「対岸の彼女」 角田光代 | トップページ | 【映画】神童 »

2007年6月 1日 (金)

「推理小説」 秦建日子

推理小説 推理小説

著者:秦 建日子
販売元:河出書房新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


ドラマ「アンフェア」の原作です。
まさにエンターテイメントを満喫するのに最適な本。
しかし、「推理小説」と言うジャンルの本を読みなれた人間が読むと、
きっと意見は「小賢しい」とか、そんな類だと思う。
読者を嘲っている、まぁそれが「フェア」と言う目的であるなら仕方が無い。

会社員と女子高生が殺された。
殺人現場には意味深な手がかり、「アンフェアなのは、誰か」
二人の関係性は見当たらず、主人公・雪平の捜査は難航。
しかしそんな中、出版社に「推理小説 上巻」というタイトルの原稿が届き、
騒然となった。なぜなら、この事件はその小説の通り進められていたからだ。
続いて、犯人は続編「推理小説 中巻」を三千万円で落札しろと要求する。
ラストが見えず、登場人物皆が模索状態のまま、事件は刻々と進んでゆく。

この作品を書いた動機とは、推理小説は「アンフェア」ではいけない、
…つまり、犯人はラスト、事件の原因、事実、真意を語らなくてはいけない、
と言う暗黙の了解を撤廃した、新感覚の「推理小説」を目指すことでしょう。
何故なら、謎が解けない小説は、つまらないし、読みたくないから。
そんな事は誰もが知っているわけで、誰がどう言わなくても、
事件が起き、人が殺され、そして犯人が捕まる、と言う物語を小説家は書く。
まぁ多少例外はあるでしょうが、それは決まりごとして決定していて、
その上で、心情(例えば犯人の動機に感動を持たせるとか)処理で、
読者に楽しんでもらうとか、もしくは、猟奇的な殺人や見事なトリックに
恐ろしさを感じてもらい、背筋を冷やすか……そう言う方法が多いでしょう。
何故なら、その方が読者が楽しんでくれるし、読みたいと思うから。
そう言った納得を得る=「フェア」である。
読者も事件に参加でき、読んでいくうちに、こいつが犯人か?と推理できる。
しかし、この作品が目指すのは、それの全く真逆である。
読者も「フェア」にはしない。「アンフェア」を味わっていただく、
だから、物語の中に「もしかしたらこいつが犯人かも知れない」
と言う、伏線をなくし、登場人物と共に、謎のままラストを迎え撃つ。
だけど、それってもはや「推理小説」じゃないよね、と私は思う。
例えば読者も「アンフェア」を目指すのであれば、一登場人物と言うことになる。
そうすると、要するに事件が起きたとしたら、それは「事件」でしかないのだ。
そして、もし「あいつが犯人か?」と思ったら、
そなわちそれは、単なる一登場人物の一場面からの「推測」でしかない。
だが「推理小説」の定義は、「事件の全貌が推理されている」ところにあると思う。
物語の事件・事故、については、主人公、または別の人物によって、
「推理されて」いなければならず、もしも万が一それが、
「全貌が推理されて」いなければ、それは「推理小説」ではない。
ただの事件・事故に過ぎないと言う事。
だから、この話は一見読むと、読者を嘲るような視線で書かれていて、
「アンフェアな終わりの小説」が繰り広げられ、
警察が翻弄される部分とリンクし、より緊迫して焦燥感が生まれるのですが、
しかし、これはもともと「推理小説」ではないと、私は思う。
なので、結果はつまらない終わり方、と言うこと。
作者も分かっているように、「おそらくは、納得のいかないラスト」
とありますが、私は納得がいかないと言う前に、
これは「推理小説」ではない、と言いたい。
そして痛いのは、この犯人がすぐに分かると言う事、伏線がありすぎる。
そして結局は犯人が自白するところ。
正直「推理小説」なんて名前で出すくらいなら、
宮部みゆきの「火車」くらいのラストの興奮が欲しい。
犯人は何も語らないが、そこに意味があることが描かれていないのが残念。

色々酷評したけど、読みやすい。
さすが脚本家と言う事だけあって描写も丁寧で、
ドラマを見ているような感覚で読めます。
ですが小説慣れしている人が読むと、残念ながら、
内容が喧嘩を売っているようにしか見えないのが難点です。
秦さんの次の本では、捻くれていない考え方の本を読みたいですね。

★★★☆☆*84

|

« 「対岸の彼女」 角田光代 | トップページ | 【映画】神童 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/6632883

この記事へのトラックバック一覧です: 「推理小説」 秦建日子:

« 「対岸の彼女」 角田光代 | トップページ | 【映画】神童 »