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2007年6月 9日 (土)

「風が強く吹いている」 三浦しをん

風が強く吹いている 風が強く吹いている

著者:三浦 しをん
販売元:新潮社
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いやぁ、面白かった。
雰囲気を一言で現すなら、陸上版「テニスの王子様」。
主人公は反抗的ではありませんが、周りのがやがや感がそんな感じです。
主人公は当たり前のように強く、最後は必ず勝つ。
目に見える結末を考えると、私は「一瞬の風になれ」の方が好きでした。

主人公・走は、高校の時に考え方の違いから監督と衝突し、
大騒動の末、陸上を辞める事を決意した。特待の話も蹴り、
活躍を期待していた両親からも逃げるように家を出て、無名の大学に入学をする。
ひょんなことから転がり込んだ竹青荘で、走は賑やかな9人に出会った。
走を合わせて10人……。今までの辛かった記憶を消し去り、
陸上を忘れようとする最中、荘の長である灰二が驚きの提案をした。
箱根駅伝に挑戦する。ろくに走った経験も無い人間ばかりのこのメンバーで?
揺れ動くそれぞれの思いを胸に、今「走り」をかけた、熱いドラマが始まる。

一言目の感想は漫画的。勿論面白い。
10人以上もキャラクターが出てくるにも拘らず、
それぞれの個性が出ており、読み返す必要が無いと思うほど。
登場人物の大半が男なのですが、あぁ三浦さんて男の子書くの好きなんだな、
と思えるほど、キャラクターが生き生きしている。
話としては、ボロアパートの住人10人で、箱根駅伝に出てみましょう。
と言う話。現実的に考えると、かなり無理臭いです。
しかもシード権取っちゃうし……と言う、奇想天外な展開を見せるのですが、
そこに上り詰めていくまでのドラマが、読者の評価が高い理由だと思う。
だって10人いますからね、色々あるわけです。
それをきっちり書いてくれているので、それぞれが走っている時、
思わず頑張れと応援したくなるのです。
ただし、それ以外の部分はどうかと言うと、少し残念な部分はあります。
10人もいるから、辛い部分は10それぞれが分担しています。
そして巧みに10の心情を描いてくれちゃっているので、
主人公の心情価値がかなり下がっているように思うのです。
いや、10人皆が主人公だから、問題ないわ、と言われればそれまでですが、
いかんせん、主人公が殆ど挫折しない。焦っているところは出てきますが、
それは皆焦るものですから問題にならないとおもいます。
あと故障しない。一年だけのドラマと言うリスクだというのもあるし、
故障と言うものの大変さは全て灰二が担っていて、リアリティが無い。
10人もいたら、絶対数人は肉離れを経験するはず。ましてや素人だし。
あと、走っている時、色々考えすぎている。
これは小説だから仕方が無いのかもしれませんが、
走っている時って、そんな事考えていないと思うのです。いわゆる邪念。
ランナーズハイになった時「あぁ気持ちい」と思うくらいで、
後は前の選手の背中をひたすら集中する事くらいしか。
あと、監督はきちんと計算してから選手にあと10秒早くと言います。
必死に走っている人間はそんな細かい計算は頭に入りません。
そんな事をうじうじ考えていたら、あぁちょっと漫画的だなぁと思いました。
リアリティは佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」で、
人間ドラマはこの「強い風が吹いている」で味わってはいかがでしょう。
「陸上は個人競技だが、陸上部は団体競技だ」と言った、
私の恩師の言葉を思い出す本でした。泣けはしないけど、楽しい本です。

★★★★☆*92

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コメント

 こんばんは♪
 たしかるいさんも読んでいた気がしたんですが、
 (良い評価だったのも記憶にあったのですが)
 カテゴリーにしをんさんの名前がなくて
 探しそこねてました、すみません(>_<)

 これ、おもしろかったですねー。
 たしかにかなりマンガ的ではありましたが(笑)
 
 10人もいるのに、それぞれのキャラがしっかり立っていて
 読んでいて混乱しなかったです。

 故障は、読んでてもヒヤヒヤでした。
 もう、それだけがこわくてこわくて。
 でも、実際はやっぱりありえないんですね^^;;

 ちなみに、私はボロ泣きでした。
 本番の駅伝シーンでは、ずっと泣いてました(笑)
 

投稿: miyukichi | 2007年7月18日 (水) 20:52

>miyukichiさん

こんにちわ~コメント&TBありがとうございます^^*

そうなのです、ちょっと陸上の本を読みたくなって読んだのでした。
図書館で半年待った本です(笑)
そうそう、三浦さん、実は初めてだったので、カテゴリーないのです;
三冊以上になったら作ろうかなぁと思いつつ。
二冊でもカテゴリーある人もいるし、ない人もいるし;
どうにかしなくては。(カテゴリー作りすぎるとバクるのです;ココログ)

面白かったですね~漫画的でしたが(笑)
でもここまで漫画的に書けるって一種の才能ですよね。
よく漫画が小説になった本がありますが、大抵つまらないです;
是非とも三浦さんに書いて欲しいですね。

そうそう、故障は実際もヒヤヒヤなんですよ;
というか10人もいたら、2~3人何かしら故障しますよ。
肉離れだったり、灰二のような致命的な故障だったり。
体調万全で行えるのであれば、補欠は要らないわけで…。
それがないのは、監督と選手の体調管理の素晴らしい学校ですねぇ。

襷が渡るか渡らないか、と言うと事は泣く、と言うよりも、
ドキドキ、ワクワク、感が強くて、お願い渡ってくれ!
と手に汗握って読んでいました。泣いちゃう気持ちも分かります。
実際に駅伝でも、去年好成績だった選手が体調不良で、
襷があと数秒のところで渡らず、繰り上げスタートになった時とか、
本当泣けますよ。「頑張れよ」って思わずテレビの前で叫んでいたり(笑)
渡せなくて悔し涙を流している人を見て、またつられて泣いたり。
是非来年は駅伝を見てくださいね^^*

投稿: るい | 2007年7月20日 (金) 10:12

るいさん、こんにちはっ♪

この作品、やっぱり漫画チックだよね。
まぁ、それでもおもしろいものはおもしろかったので、
漫画チックでも別にいいじゃん!という気になりましたが(*^_^*)

るいさんは、長距離をやっていたのかな。
るいさんの感想読んで、そうか、そういうところが現実とは違ってたんだぁと思いました。


投稿: そら | 2007年8月 6日 (月) 17:03

>そらさん

こんにちわ~コメントどうもありがとうございます^^*

そうなのですよ、漫画っぽい。
しかも私が三浦さんの本をしっかり読んだのがこれが初めてだったので、
三浦さんの持ち味が「漫画的」だとはつゆ知らず…^^;
確かも面白かったし、じーんときました!
ただ何となく「一瞬の風になれ」を読んだ後だったので、
ちょっと漫画っぽいなぁと思い引っかかってしまったんですね。
三浦さんの他の本を読んでいるうち、これは逆に特技だな、と思えました。
ここまで漫画的に書けるって凄い事ですもんね。

はい、私は長距離やっていました。
とはいっても中学生の時なので、そんなに長い距離を
競技で走った事はないのですが…。
駅伝で5キロくらいかなぁ。
高校のロードレースでは15キロ走ったんですが(笑)女子高なのに…。
自分がやっていないスポーツを的確に描くって大変だと思います。
私は野球もサッカーもからきしダメなので、
きっとお話を書いてみなさいと言われたら、大変な事に…。
そう考えると、取材とは言え作家さんって大変ですよねぇ。

今三浦さんの「私が語りはじめた彼は」を読んでいます。

投稿: るい | 2007年8月 7日 (火) 09:52

るいさん、コメントありがとです(*^_^*)
そうか~、三浦しをんさんって、漫画っぽいお話を書く人なんだ。
それはおもしろそうだ。
もっと読んでみようかな…と思ったのでした。

るいさんも長距離ランナーだったのね。
そういう方、読書ブログさんには多い気が…。
何か、資質的に「本を読む」のと共通点があるんでしょうかね~。
それとも、長距離って、意外と人気があるスポーツなのか。。。
ちょっと、おもしろいなと思ったのでしたマル

投稿: そら | 2007年8月 7日 (火) 11:14

>そらさん

こんにちわ~コメントどうもありがとうございます^^*

うーん、かくいう私も三浦さんはまだ四冊目なのですが、
「月魚」と「格闘する者に〇」は漫画的な感じがしました。
今「私が語りはじめた彼は」はそうでもないかなぁ、ちょっと堅めです。
個人的にいま「まほろ駅前多田便利軒」が気になっているのですが、
図書館の予約数が凄くて、借りられるのはまだ先のようです^^;

そうなのですよー長距離でした。
前は短距離だったんですけどね。今は長距離かなぁ。
と言うか今短距離で全速力で走ったら倒れそう(笑)
そうなんですかね?集中力と関係するって?
いやいやいや、そうでもないと思いますよ。
長距離は人気がないスポーツです(キッパリ)
というか陸上自体人気がないと思いますよ。
私が中学生の時は、女の子5人でしたからねぇ。
テニス部なんか、女の子だけで40人いたのに……!!
まぁテニスの王子様ブームがあったのですが、その年は(笑)
陸上やっていてよかったなぁと思うのは、年を取ってきても、
気軽にジョギングできるって事でしょうかね。
何となく慣れているので、「さて、走るかな」と結構思います(笑)

でも私は野球とかサッカーとかバレーポールとか知っておけばよかった、
と最近思いますよ。小説ででてきてもルールがさっぱりわからんので;

投稿: るい | 2007年8月10日 (金) 10:06

読み終わったよ~!
そして私的には、「一瞬の~」も好きだけど・・こっちの方が面白かったかも!
甲乙つけがたいところだけど、何故だか何度もうるっときてしまって・・。

私も思ったけど、あまりにも誰かがこけたりとか怪我をしちゃったりとか、スランプになるとかがなかったよね。
神童は体調を崩したけれども。
だからハイジが最後二度と走れなくなるまで走ってしまったことで、「あ~何もハイジにだけこんな役回りを押し付けなくても!」なんて思ってしまったり。

エピローグでは4年後の走の姿が書かれていたけど、やっぱり翌年のシード権は無駄になったのだろうか?
そのへんが詳しく書かれていないから微妙な感じになっていてかなり気になったよ。

ともあれ・・久々にかなりはまりました!
お薦めありがとう!

投稿: すきま風 | 2007年9月12日 (水) 21:46

>すきま風さん

読み終わったようで~お疲れ様(笑)
「一瞬の風になれ」とはまた違った味わいだよね。
何と言うかちょっと古風な感じがするような…
「一瞬の~」はバリバリ現代って感じがするんだけどさ。
駅伝だから…?かな、分からないけど。
甲乙つけがたいのはとってもわかる。
ここまでいい作品が二つあると、結局は作風の好みじゃないかな、と。

若々しくリアルな感情は佐藤さんがいいと思うし、
人間味というか情の表し方は三浦さんがいいと思うからね。

三浦さんの「漫画的」は味わってもらえたでしょうか(笑)
みなさんはそんなに「漫画的」なんて思わないのかしら…。

そうそう、まぁ「一瞬の~」は長かったから、
故障したり、治ったり出来たけど、
この話は一発勝負、ってのが売りの話だったからね。
そこんとこが、陸上では、ちょっとありえないような感じで。
まぁそこを乗り越えちゃう辺りが、フィクション小説の、
いいところなんだろうけれどもねん。
奇跡的な出来事を感動的に書くと、読者は喜ぶし(笑)
うん、確かにハイジが可愛そうだった。
悲劇のヒーローじみていて、ちょっと痛々しかったね。

シード権はダメになったに一票!根拠はないけど(笑)
だから儚い思い出、ってことで思い出しながら、
コーチするんじゃないかね、と。妄想だけどね。

いえいえ、これは作品がよいからはまれたんだよ。
三浦さんに感謝だねぇ。

投稿: るい | 2007年9月13日 (木) 10:46

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