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2007年6月11日 (月)

「だれかのいとしいひと」 角田光代

だれかのいとしいひと (文春文庫) だれかのいとしいひと (文春文庫)

著者:角田 光代
販売元:文藝春秋
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すきま風さんにお薦めいただいた本でした。
良かったです。先日「対岸の彼女」でも良かったなと思えたのですが、
今回はなんと言うか短編の特性を生かしたちょっとした出来事、
がとても好きでした。何の変哲もない景色から生まれる小さな物語、
そんなイメージの作品が八編入っています。

「海と凧」
私たちは、例えば靴下のたたみ方について話しながら、
本当はもっともっと深いところで言い合いをしている。
自分の主張を押し通しながら、「なんて意地を張る女なんだ」とか
「なんて全てを知っていないと気がすまない男なんだ」とかそんな事を。
ふと、昔の恋を思い出してみると、何故か楽しかったことばかり浮かんで、
その幼かった頃の影を追いかけるように、私たちは海辺へと向った。
あの頃、必死に上を見上げあげた凧を見つけに行く。

「もし、この物語のなんでもない光景のひとつが、
そんな具合に読んでくれた人の記憶に、するり、
と何くわぬ風景でまぎれこんでくれたらいいな、と願っています」
とあとがきにあるのですが、まさにそんな感じに仕上がった本です。
何の変哲もない、例えば海で凧をあげる高校生だった頃の自分だったり、
もしくは分かれた男の部屋の中であったり、
とりあえず現在の自分が、ふとした瞬間立ち止まった時、
「あぁあんなこともあった」と淡く頼りない思い出を思い出して、
「さて、今日も頑張ってみようか」と小さくやる気を取り戻すような話。
生きていく上で大切な事って何か。
そこまで深く考える必要はないかもしれませんが、
一つ上げるなら私は後悔しすぎない事ではないかと考えています。
勿論嫌な事は必ず生きているうちにあるでしょう、
それが性格が合わないゆえの恋人との口喧嘩であったり、はたまた、
価値観の違う男の子を好きだった事をどうしても忘れられなかったり。
そういった事をマイナスに考えるのではなく、
あの頃があったから今の自分があるのだと考えるとか、
もしくは案外いい事だったと思い直す事が出来たら、どうかと。
この本は、そんなちょっとした日常のちょっとした出来事を、
マイナスではなく、少しでもプラスに考えるためには、と訴えています。
パンチはないですが、まったりと良い本です。

★★★★☆*87

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コメント

良かった!期待はずれだった・・とか言われたらショックを受ける所でした(笑)
単行本の挿絵がまた綺麗で、物語の雰囲気に合っているんですよね!

私はこの中では一番「ジミ、ひまわり、夏のギャング」が好きです。
角田さんは自身と同世代の「負け犬」の女性を描くのも上手いけど、こういう微妙な年頃の女の子を描くのもうまいと思うんですよ。
個人的にはこっちのが好きだったりします。

投稿: すきま風 | 2007年6月15日 (金) 22:43

>すきま風さん

こんばんわ~コメントどうもありがとう!

よかったよ~読みながら「あぁやっぱり角田さん好きだわぁ」と思ったよ。
文章の流れがいいよねぇ、あの長くてタラタラうじうじしている感じが(笑)
吉田さんにも似て、私はとても好きなのです。
挿絵綺麗だったね!!中にもいくつか入っていて、物語に馴染んでた。

「ジミ、ひまわえい、夏のギャング」もよかったよね。
アパートの周りに茂るひまわりの様子が眼に浮かぶようで。
私も小さい時実家の玄関にでっかいひまわりが三つ咲いていたので、
何となく思い出したりしたよ。今は枯れちゃってないんだけど(涙)
「負け犬」は上手いよねぇ、「対岸の彼女」をお薦めしておくよ。
うーん「微妙な年頃」は私は結構当たりハズレが……;
この本は良かったけれども、「空中庭園」はうーん、って感じでした。
少年少女がダメなのか?よく分からないけれども。

後でこっそり読み返したい感じ。
図書館で借りてしまったので、文庫でも買っておこうかな^^*

投稿: るい | 2007年6月17日 (日) 20:11

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» だれかのいとしいひと [No-music.No-life]
転校生じゃないからという理由でふられた女子高生、元カレのアパートに忍び込むフリーライター、親友の恋人とひそかにつきあう病癖のある女の子、誕生日休暇を一人ハワイで過ごすハメになったOL…。どこか不安定で仕事にも恋に対しても不器用な主人公たち。ちょっぴり不幸な男女の恋愛を描いた短篇小説集。 物語は8編からなる直木賞受賞作家、角田光代さんの短編集です。 角田さんの本を初めて読んだのは、「東京ゲストハウス」という本です。 でも、この話は私的にはあまりぴんと来る作品ではなかったんです。 し..... [続きを読む]

受信: 2007年6月15日 (金) 22:44

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