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2007年6月

2007年6月29日 (金)

「クローズド・ノート」 雫井脩介

クローズド・ノート クローズド・ノート

著者:雫井 脩介
販売元:角川書店
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うーん微妙。惜しいなぁ、雰囲気は瀬尾さんみたいで好きだったのですが。
途中であぁ書いてるの男の人だな、と分かっちゃうあたりが悲しい。
文中に出てくる手紙やノートは、作者のお姉さんの実物のようで、
とてもいい感じでした。あ、映画やりますが、沢尻エリカは似合いません。

何をやっても中途半端な香恵は、いつも葉菜の事を羨んでいた。
葉菜には彼氏もいるし、自分の目標もはっきりしていて、
そろそろ留学する事も決めている。
急かされるように自分の未来を想像するのだが、上手くいかない。
不安を抱え始めた香恵は、気を紛らわすため「ノート」を読むことにした。
これはこのアパートに前住んでいた人が置き忘れた一冊のノート。
香恵は読むほどに共感し、そして持ち主・伊吹の思いに引き込まれてゆく。

第一に感じてしまうのは、ノートありきの本だ、ということ。
この伊吹という先生は作者の亡くなられた、
実のお姉さんをイメージして書かれたようです。
それを大事にしている様子が、文章からも滲み出ていて、
また臨場感のある伊吹と生徒の母親とのやりとりが、
より物語を広げるという点で、良い効果だったと思います。
残念なのは、全てはノートのために!
という作者の固定観念が、うっすらと見えるため、
共感できないところにあると思いました。
はっきり言ってしまえばノート以外の部分は杜撰でした。
主人公がいじけそうになるとノートを読み、恋をするとノートを読み、
そして主人公が、全てノートを肯定する…。
そんな様子が何となく白々しいと思える部分があり、
あとがきを読んだ時に、原因がわかり、なるほどと思ったのです。
特に何だかなぁと思ったのが、主人公が石飛さんの恋に気づくあたり。
勝手に一人で盛り上がって、お花が欲しいというようなことを言ったのに、
たまたま来なかったからといって、一人激昂していじけている。
メールが来ても恋人きどりで返信しない…そんな様子を想像し、
これは男性的な感情なんだろうな、と少し思ったりしました。
ところどころで見られるそんな描写で、主人公が女なのに…
と歪な心理表現に感じてしまい共感できませんでした。
折角いいノートなのに…もっといい使い方あったんじゃない、と思う。
少し残念なお話でした。映画はきっと観ないな。
主人公は沢尻エリカというよりは、私は綾瀬はるかのように感じたのですが;

★★★☆☆*84

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2007年6月28日 (木)

「涼宮ハルヒの憂鬱」 谷川流

涼宮ハルヒの憂鬱 涼宮ハルヒの憂鬱

著者:谷川 流
販売元:角川書店
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あーあーあー。こんな小説出しちゃだめですってば!!
面白いじゃないですか、こんな事だからオタクが増えるんですよ。
と怒りたくなる噂の「ハルヒ」でした。
ここで言うのも何ですが、NOIRさんお薦めどうもでした^^*

「ただの人間に興味はありません。宇宙人、未来人、
異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。」
俺の全ての災難はここから始まったといっても可笑しくないだろう。
入学式早々、クラスの自己紹介で涼宮ハルヒはこうぶちかましたのだ。
奇怪な発言と近寄りがたさと言ったら、それはもう天下一品。
そんな彼女に、何故か俺は選ばれてしまった。そう、選ばれてしまったのだ。
かくして俺はいつしか夢見た、非現実的な世界に巻き込まれる事になる。

読んでいて思うのは、読者が女だと言う事を一切考えられていない本だ。
ということです。全てはアキバ系の男性のために……!(むしろ作者か?笑)
そんな作者の信念をありありと感じる作品です。
いえ、悪いとはいいません。しかしながら、読める展開と予定調和、
それを面白みをもって進めるために、キャラクターを美少女化、
そしてお色気が存在しているわけで、読み手が女だと、
「あぁそう言うの男の子好きよね」
という冷静な眼差しになってしまうのが難点でした。
そう、私が男だったら、もっと「むふふ」と楽しめたはずなのです。
そのへんご理解いただけますか?
はてさて、そんなオタクな内容を差し引いたとして、とても面白かったです。
何より一番感じたのは、比喩が上手いことでしょうか。
非現実的ワールドが次々に出てくる中で、
こうどんどん描写もパラレル化してくるわけですが、
その時に、「これってどんな世界?」と疑問を持たせない描写力が有ります。
最近、アニメを見ている人が急増していますよね。
どんなアニメでもいいのです、取りあえずアニメーション。
その知識を巧みに利用した描写で、あぁこの作者は、
本当にこの世界が好きで小説を書いているのだ、と実感できました。
終始、男の子目線のシュミレーションゲームのようなタッチで、
ゲーム好きな男の子ならこりゃいちころなんじゃないでしょうか、と思います。
新たなライトノベルだとも思いますね。
むしろ今はこういうゲーム的なものがライトノベルと言われるのか?
よくわかりませんが、楽しいですので、男性の方ははまらないようにご注意。

★★★★☆*86

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2007年6月24日 (日)

【映画】きみにしか聞こえない

20070625_1 
なんだか、日記でズタボロに書いたので、こちらは少なめに。
私はお薦めしません。

あらすじ(ヤフー映画引用)
-----------------------------------------------------
内気で友だちのいない高校生のリョウ(成海璃子)は、
ある日、公園でおもちゃの携帯電話を拾う。数日後、
彼女が保健室にいると着信音が聞こえ、若い男性の声が聞こえてくる。
なぜか、二人は電話がなくてもテレパシーで通話できるようになり、
長野に住むシンヤ(小出恵介)と、横浜で暮らすリョウの不思議な交流が始まる。
-----------------------------------------------------

【1】まず、主人公二人の背景描写がきちんと描かれずに始まっているから、
「どうしても寂しくて、孤独に耐え切れず縋りついたのが頭の中の携帯だった」
という重要な要素が上手く描かれていない。
「きみにしか(この二人にしか)聞こえない」という重要性を感じられない。

【2】次に途中から「頭の中の携帯」が具現化された形が出てこないので、
もやは「テレパシー」と化してしまい、携帯電話の意味がなくなっている。

お薦めしない理由は上記です。

*--

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2007年6月22日 (金)

「メリーゴーランド」 荻原浩

メリーゴーランド (新潮文庫) メリーゴーランド (新潮文庫)

著者:荻原 浩
販売元:新潮社
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久しぶりに荻原さんでした。半年ぶり……?随分読んでませんでした;
読み始めて再認識しましたが、やっぱり荻原さんの話は面白いですわ。
途中まではページを忘れてすいすい読んでいました。
が、問題は展開の悪さかな……後半にかけて凄くつまらなくなるんですよね。

お役所勤めの啓一は、いつも何をするでもない仕事をこなし、
定時に帰宅するという味気ない生活を送っていた。
民間企業から転職した事もあり、会社での風当たりも強く、
また、友人などには「いいよな、公務員は」と嫌味を言われる。
そんな啓一はひょんな事から、市内にある錆びれたテーマパークを
再建する事になった。何のとりえも無いその観光施設は、閉演寸前だ。
啓一はどうにか繁栄させようと、公務員という柵を捨てる覚悟をする。

問題はどこをラストにするか、という所にあると思う。
読んでいて中盤まではとても面白い。
テーマパーク再建に向けて、旧友の大道芸人団体が登場したり、
手伝ってくれるボランティアがヤンキーだったり、
と個性も色々で楽しめるし、再建に向けた意気込みの表し方もよい。
再建に向けて絶対に成功させなければいけない、
ゴールデンウィークイベントと言うのも、何だかんだいって、
纏まり始め、公務員では味わえなかった達成感や、
遊びの楽しさを実感でき、お役所的なガチガチの仕事はダメだと教訓になる。
しかし、その冒頭から中盤にかけてほぼイベントの事しか触れてないから、
読者としては、「きっと素敵なテーマパークになり、そして、
メリーゴーランドが廻ってるんだろうなぁ…」という期待があるのだが、
そもそもメリーゴーランドが不許可で設置できない上に、
突如として、仲がよかった妻が敵対勢力になったり、
いきなり選挙で知事が変わり、テーマパーク閉鎖、などとなり、
かなり強引な展開のイメージを受けた。
その強引さが、折角の最後のシーンを台無しにしているだけでなく、
前半で主人公が頑張った成果が水の泡になり、一体何が言いたかったんだ?
と疑問が残る。せめて「――三年後」とかにして、
頑張ったがどうしても再建できず閉園になったテーマパークで、
メリーゴーランドを乗ったらいいのにと思った。
そのためには、選挙の部分は要らないし、イベントとともに終了でよさそう。
うーん、微妙。お薦めしない。これなら「オロロ~」や
「神様から~」の方が楽しいと思うのでそちらを是非。

★★☆☆☆*76

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2007年6月21日 (木)

■雑談:作家発掘!

こんにちわ、最近何だかんだいって暇っぽい、るいです。

毎日は忙しいのですが、平日の忙しさは慣れてしまったのか、
今では普通に感じるようになりました。
きっと授業をロクに聞かなくなったせいだな、と確信。

そろそろ中だるみの時季ですよ。
でも、そうこう言ってるうちに、七月には前期試験があるなぁ( ̄_ ̄;)
おまけに麻疹休講があったせいで、補講盛りだくさん。
最悪です。
八時限目とか……「正気ですか?」と教授に訴えたい。
だって帰るの十時過ぎですよ?
家遠い人、終電なくなっちゃうよ。

***

今、図書館の本を返すので必死です。
なんでこんな集中豪雨のように予約本が届くんでしょう(T△T)
予約したのはバラバラの日なのに……!
おまけに友人・知人にも借りまくりで、本当申し訳ない。
----------------------------------------------
・「銃とチョコレート」 乙一著
・「涼宮ハルヒの憂鬱」 谷川流著
・「タペストリーホワイト」 大崎善生著
・「真夜中の五分前 side-A」 本多孝好著
・「福音の少年」 あさのあつこ著
・「クローズド・ノート」 雫井脩介著
・「東京奇譚集」 村上春樹著
・「鴨川ホルモー」 万城目学著
・「我輩は猫である」 夏目漱石著
----------------------------------------------
必死に、かつ、楽しんで読んでますので、
返すのもうちょっと待ってくださいね。

そういえば、最近読んだ事のない作家さんに手を出してみるようにしました。
随分偏っていたので……。
伊坂さんも乙一さんも吉田さんも制覇したので、
新たな開拓地を目指して冒険中。

本多孝好さんは、なかなか好きな感じです。
まだ一冊しか読んでいないので、細かい事はいえませんが、
文体は、乙一さんと佐々木譲さんあたりを足したような感じでした。

雫井脩介さんは、今読んでいますが、とても読みやすいです。
「クローズド・ノート」は映画化みたいです。
まだ確か二冊くらいしか本を出してない新人さんだったような。

万城目学さんは、森見登美彦さんとタイマン張ってる感じです。笑
内容・構成・キャラの引き立て方がかなり似ている。
お二人とも京都(関西?)がお好きなようで?

そんなこんなで、なかなか良い方々を発見。
引き続き読んでいければ、と。

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2007年6月20日 (水)

「春期限定いちごタルト事件」 米澤穂信

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫) 春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

著者:米澤 穂信
販売元:東京創元社
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小説は表紙絵とタイトルに惹かれて読むものではないな、と思いました。
これは一般的に面白いのだろうか……?と必死に悩みながら読了。
他の皆さんがとても面白いと言うのなら、
私の感覚が間違っているかも知れません、と思います。

事件の臭いを察知すると、自然と推理力を働かせてしまう小鳩、
そして甘い物大好き、つい因果応報の復讐心に燃えてしまう小佐内ユキ。
二人は、難関高校合格と同時に、今までの一切の行動を止め、
騒がない、関わらないをモットーに「小市民」を目指す事にした。
校内で起きる窃盗、路上で盗まれた自転車……
事件が次々と起こる中、小鳩と小佐内さんは、
いかに「小市民」ありながら、事件を解決するか悪戦苦闘する。

まず第一に何故「小市民」を目指しているか冒頭に書いていないので、
謎が残るまま事件に遭遇。第二話で解き明かされるのか?
と期待させながら、結局ラストまで分からない。
その時点で彼らが「小市民」に必要以上に拘る事がいらやしく思えた。
事件に巻き込まれ、痛い目にあったんだ、とか、
偉そうに事件を解決したら、周りの人に犬猿されたことがある、とか、
そういう事が書かれていれば、主人公の心理状態が分かる。
でも、この本にはその点で主人公の反省などが書かれていない。
なので、事件が起きた、何故かは教えたくないが事件には関わりたくない。
といった、非常に曖昧なまま事が進み事件へ発展。
解決したい、でも目立ちたくないと小鳩と小佐内は押し問答するばかりで、
「小市民」以下の野次馬、もしくは関わりたくないと見せかけて、
実は関わりたいと思っていた、という腹黒さを感じる。
オマケに、事件解決のヒントが何も読者に与えられないまま、
主人公が「大体分かっちゃった」発言をし、一気に読む気が萎える。
読者として一緒に推理できないのは、凄く面白くない。
折角事件の内容、推理の仕方は面白いと思うのに、
上記のような理由でとても読む気になれず、主人公の一人芝居に見える。
うーん、酷評しましたが、これを面白いと思う人もいるかも知れません。
どうぞ、この文は当てになさらぬよう。

★★☆☆☆*76

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2007年6月19日 (火)

■雑談:掲示板取りました

久しぶりの雑談……?

いつも来てくださってる皆さん、どうもありがとうございます。

話しが変わりますが、

何だか表示がめっちゃ遅いので、掲示板取りました。

気が向いたらまた付けるかもです。

軽いのがあればいいのですが~(^_^;)

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2007年6月18日 (月)

「この本が、世界に存在することに」 角田光代

この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス) この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)

著者:角田 光代
販売元:メディアファクトリー
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エッセイかと思ったら、エッセイではありませんでした。
タイトル通り、「この本が、世界に存在することに」感謝する本。
本好きならば、一度は感じたことのあるこの感覚を、
角田さんがSSで巧みに描いてくれています。

「彼と私の本棚」
彼の家に遊びに行き、彼の本棚を見たとき、
まるで自分の本棚を見た時のような親しみが湧いた。
実際に私が持っているものと、同じ本がいくつもある。
同棲する事になった私たちは、本棚も共有するようになった。
一緒にいるのだから同じ本は二冊要らない。
そう言ってお互いがちぐはぐに買い集めた本が本棚に納まっていて、
そして今、この家を出て行こうとする私は、また自分の本を選り分けている。
それは共有した思い出を、そっと引き剥がしているのと同じなのだ。

SSなので、10編も入っているのですが、
話が多いからか、微妙に「これはこじ付けがましくないか?」
と思う話がいくつかある。何せ全部本にまつわる話しなので。
私の希望としては、短編二本くらいの長い話にした方が良かったのでは、
と思いつつ、これだけ色々な本との接し方があると考えれば、
さもありなん、それもいいかも知れないと少し思う。
しかしながら、話の一本一本はとてもよい物でした。
最後の一編はエッセイになっているのですが、それを読んで
「この本がなかったら今の私はいないかもしれない」
と思う本、について考えていました。
本を読む、その行為は当たり前過ぎて、深く考える事が難しい。
だけど、よくよく振り返ってみると、私の人生の節目節目には、
あぁあの時はあんな本を読んでいた、と言う記憶があるのです。
小学校の時は森さんの「カラフル」とか、伊藤さんの「ミカ!」とか、
中学校の時はアレックス・シアラーの「青空の向こう」とか。
高校の時は夏目さんの「こころ」とか。
読書離れから引き戻してくれた、伊坂さんの「重力ピエロ」とか。
小説に引き込んでくれた、春樹さんの「ノルウェイの森」とか。
そんなこんな振り返ってみると、もしもあの時あの本がなかったら?
と少しだけ不安になるのです。当たり前の様に過ぎてきた読書生活を、
支えてくれた大切な「本」たち。是非皆さんも、スタートラインに立ち、
「この本が、世界に存在することに」ついて考えてみてはと。

★★★★☆*87

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2007年6月17日 (日)

【DVD】花とアリス

花とアリス 通常版 花とアリス 通常版

販売元:アミューズソフトエンタテインメント
発売日:2004/10/08
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よかった~号泣しました。これはすきま風さんにおDVD借りしたのですが、
自分で買おうかと思っています(笑)かって損はない作品ですね。
岩井さんを見直したし、蒼井優がめちゃめちゃいい。
文句なしにお薦めできる作品だと思います。リリイもいいけど、これもいい。

あらすじ(ヤフー引用)
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幼なじみのハナ(鈴木杏)とアリス(蒼井優)。ハナは落語研究会に所属する高校生・宮本(郭智博)に一目惚れ。同じ部活に所属し、なんとか宮本に近づこうとするハナ。そしてある嘘をついたハナは、宮本と急接近する。しかし、その嘘がバレそうになり、さらに嘘をつくはめに。しかもその嘘がきっかけで宮本がアリスに恋心を抱いてしまい……。
------------------------------------------------------------

溢れ出るのは、愛情に喘ぐ子供の切なさと、
繋ぎ止めたいと願う恋情のもどかしさ、
そして、いつまでもそこにある事を求める淡く深い友情。
それらが、岩井監督らしい表現方法でやさしく描かれています。
この作品の根幹となるのは、ハナとアリスの初恋をめぐる物語。
どうしても相手(先輩)を手に入れたいと願うハナは、
ひょんな事件から、先輩は記憶喪失であると仕立て上げ、
オマケに自分たちは恋人同士だと、嘘をつくことにした。
嘘に嘘を重ね、そのまた上に嘘を塗りたくる。
ハナと先輩との恋を実らせる、その一つの目標を目指していた二人だったのに、
いつの間にか、違う何かを求始めている。
恋愛のちょっとした甘い悪戯から生まれた、ハナと先輩、
それからアリスの関係が、次第に縺れ合ってゆく様が、とても苦しかった。
この、さすが岩井監督といわざるを得ない、巧みな角度からの展開で、
ラストに向けて凄く良い余韻になっていると思う。
アリスは、先輩の姿に、家を出て行った父の幻想を思い浮かべ、
ハナは、事実を知られて、関係が壊れる事ばかり心配し本当の事を言えない。
そして、その交差する思いの上には、ふわりと、崩れそうで崩れない、
でもしっかりとした友情が横たわっていて、
ふとした瞬間にその存在にそっと気づかされるのだ。
塗り固められた嘘が崩れる時、その辛さは、痛みを増し、
嘘は嘘をついた分だけ、自分を苦しめ痛めつけるのだと気づく。
ラスト、アリスがバレエを踊るシーンは鳥肌が立った。
物事に正面から逃げていた二人だったが、
ハナはようやく本当の事を先輩に切り出し、真っ直ぐ進む事を決めた。
さぁ次はアリスの番……。
そういった思いが過ぎる中、いつものように、
オーディションが素っ気無く終わりそうになると、アリスが言うのだ。
「あの、ちゃんと踊ってもいいですか」
今までは正面を避け、他人に言われるまま自分の道を見ていなかったアリスが、
自分の人生の一部として、ハナと一緒にずっと習ってきたバレエを踊る。
その踊りがあまりに美しく、また前半で感じた父親への感情もプラスされ、
それを見ているだけで、重ねた嘘と傷跡を乗り越え、
新しく前に突き進んで行こうという、溢れんばかりの希望を感じた。
これはよいです、お薦めです。

*95

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2007年6月15日 (金)

「MOMENT」 本多孝好

MOMENT MOMENT

著者:本多 孝好
販売元:集英社
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初本多さんでした。何となく佐々木譲さんのような、
乙一さんのような、そんな感じの雰囲気をもった方でした。
最後まで浮上しない低空飛行が何ともいえませんが、
好きな感じの作家さんです。次は「正義のミカタ」読んでみたいなぁ。

主人公・神田のアルバイト先の病院には、こんな噂があった。
「死に際の人間の願いを叶えてくれる人がいる」という必殺仕事人伝説。
院内の清掃がてら、様々な患者と接触する神田は、
ひょんな事から、その噂の人物、必殺仕事人の役を引き受ける事になった。
もう死ぬと分かっている人間が、最後に一つ願う事、
それは華々しい物ばかりとは限らない。
人間は最後に何を考えると思う?投げかけられた言葉を胸に、
神田は患者の最後の望みを叶えるため、奔走する。

死を扱っているからもう少し明るくすればいいのに、と思ったりしました。
だってヒロインが葬式屋さんで、しかも彼女は両親を事故で亡くしている。
そもそもそこですでに、ダークな感じがするではありませんか。
その上、必殺仕事人の内容も、願いがどれも陰険過ぎるように思う。
死に際で嘘をつき、最後の最後まで人を陥れようとする老人、
死という恐怖を、怨念と共に他人に押し付けようとする少女、
借金返済のために、自殺し生命保険を手に入れようとする男……。
どれもこれも、まったくあり得そうな話で、思わず引き込まれました。
最後の望みさえも、恨みや怒りや虚しさに当てる彼らの荒んだ心が、
とてもリアルに表現されていて、「死」について考えさせられました。
そこは凄くよかったと思うのです。しかし、暗すぎる。
上記のような精神が病んだ患者も当然いるでしょう、
もしくは苦しいから殺してくれ、という人もきっといるでしょう。
でも、そうではない人もいると思います。
例えば生き別れた息子に一目会いたいとか、
忘れられない味の料理があるとか、そういった素朴な望みをもった人です。
誰もが歪んだ精神ばかりを持っているわけではないと言う事。
そこに見え隠れする、死への恐怖を掻き消すため望む温かいもの。
それが描かれていないというか、最後は打ち消されて、
結局ダークな感じに纏められ、これでよかったのか?と疑問が残る。
いや、疑問が残るのも人生だ。といわれればそれまでですが、
でも極力疑問を残さず書かないと、必殺仕事人の存在が薄れてしまいますし。
暗いまま、明るくなる事無く、終結に……
何となく虚しさ、儚さばかりが残る、後味の悪い感じがしました。

★★★★☆*86

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2007年6月14日 (木)

「見えない誰かと」 瀬尾まいこ

見えない誰かと 見えない誰かと

著者:瀬尾 まいこ
販売元:祥伝社
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さり気なく手にとったら、実は連続ショートエッセイでした。
私エッセイ苦手なんですよ、でもなかなか楽しめました。
ほんの殆んどが学校の話ですけれども、
読んでいると学校先生になりたいな、と思える本です。

エッセイなのであらすじ省略。
現役教師である瀬尾さんの日常、過去、の学校話が載っています。
子供たちとの接する大変さや、教育者としての不安……、
そんなことが瀬尾さんの柔らかい口調で、つらつらと表現されています。
瀬尾さんの本を読んで思うことは、明らかに私と違う視点の人間だ、
と言う事です。角度でいってしまうと180度くらいきっと違う。
だから、文章を読んでいると、「え?何でそこでそんな風に思えるの?」
とか疑問が湧いたりするのです。
しかし、自分と同じ考えの人よりも、違う人のものを見たとき、
その分得られるもの、量が違うと思います。
そんなところをしみじみ考えながら、読めました。
学校での子供たちの出来事も、例えば、悪口を言われたりとか、
嫌がらせをされたり、と言うとき、私だったらならば、
もっと陰険な文になり、教師なんてこんなもんかと挫折したり、
とりあえず負の方向に考えると思うのです。
しかし、瀬尾さんはプラス思考。「子供はこんなもんだと思っていた」
くらいの一言で済まされていて、「え?何でそこでそんな風に思えるの?」
と思うのです。しかし、本当は瀬尾さんだって、
負の事を考えているかもしれない。だけど、わざといい物を見つけ、
よりそれの魅力を引き出そうという精神が窺えました。
それが、私には出来ない。なので、この文章を読んで、
「あぁそうかこう言う時は深く考えないようにして、
こうゆう時は人に優しく接すべきなのだ」と不思議な魅力で
しっかり伝えてくれるのであります。
とりわけ楽しい話題も、面白い内容もありませんが、
ありのままの瀬尾さんの考え方を知る事が出来る本です。

★★★☆☆*80

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2007年6月11日 (月)

「だれかのいとしいひと」 角田光代

だれかのいとしいひと (文春文庫) だれかのいとしいひと (文春文庫)

著者:角田 光代
販売元:文藝春秋
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すきま風さんにお薦めいただいた本でした。
良かったです。先日「対岸の彼女」でも良かったなと思えたのですが、
今回はなんと言うか短編の特性を生かしたちょっとした出来事、
がとても好きでした。何の変哲もない景色から生まれる小さな物語、
そんなイメージの作品が八編入っています。

「海と凧」
私たちは、例えば靴下のたたみ方について話しながら、
本当はもっともっと深いところで言い合いをしている。
自分の主張を押し通しながら、「なんて意地を張る女なんだ」とか
「なんて全てを知っていないと気がすまない男なんだ」とかそんな事を。
ふと、昔の恋を思い出してみると、何故か楽しかったことばかり浮かんで、
その幼かった頃の影を追いかけるように、私たちは海辺へと向った。
あの頃、必死に上を見上げあげた凧を見つけに行く。

「もし、この物語のなんでもない光景のひとつが、
そんな具合に読んでくれた人の記憶に、するり、
と何くわぬ風景でまぎれこんでくれたらいいな、と願っています」
とあとがきにあるのですが、まさにそんな感じに仕上がった本です。
何の変哲もない、例えば海で凧をあげる高校生だった頃の自分だったり、
もしくは分かれた男の部屋の中であったり、
とりあえず現在の自分が、ふとした瞬間立ち止まった時、
「あぁあんなこともあった」と淡く頼りない思い出を思い出して、
「さて、今日も頑張ってみようか」と小さくやる気を取り戻すような話。
生きていく上で大切な事って何か。
そこまで深く考える必要はないかもしれませんが、
一つ上げるなら私は後悔しすぎない事ではないかと考えています。
勿論嫌な事は必ず生きているうちにあるでしょう、
それが性格が合わないゆえの恋人との口喧嘩であったり、はたまた、
価値観の違う男の子を好きだった事をどうしても忘れられなかったり。
そういった事をマイナスに考えるのではなく、
あの頃があったから今の自分があるのだと考えるとか、
もしくは案外いい事だったと思い直す事が出来たら、どうかと。
この本は、そんなちょっとした日常のちょっとした出来事を、
マイナスではなく、少しでもプラスに考えるためには、と訴えています。
パンチはないですが、まったりと良い本です。

★★★★☆*87

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2007年6月10日 (日)

【映画】東京小説-乙桜学園祭-

20070611
舞台挨拶&トークショー付きで観て参りました。
まぁ映画は……と言う感じでしたが、トークショーで相殺致します。笑
生乙一、なんとも言えないオーラの方でした。
緊張していたのか?古屋さん曰くいつもゆっくりだそうで、元から?
トークショーについては「別館:るいの日記」で。

■「人魚姫と王子」桜井亜美監督
主人公・ナジュは五人の男と付き合っている。
五人はそれぞに彼女がいたりと、とりあえず本気ではないのだ。
そのことはナジュも気づいているのだが、
この生活をやめてしまうと、自分が失われるような気がして止められない。
自分の気持ちを否定するあまり、身の潔白を示そうと白い服ばかりを着、
次第に食べ物も喉を通らなくなっていく。
あとどれくらい食べずにいたら、死ぬ事が出来るのだろう?
何もない海の底の様な部屋に横たわりながら、ナジュは明るい世界を待つ。

辛口ですが、微妙な作品でした。
「あぁ、小説家が作ったのか」と納得してしまうような脚本。
映画というか動画は、言葉をなくしても、
伝わる何かを求めるものではないか、と個人的に思うからです。
いわゆる、小説で言う説明の部分が、映像に出てくる人間の動作、
もしくは舞台のセットなどに現れていなくてはならず、
決して言葉やセリフとして説明してはいけないと思います。
そこがまず第一に出来ていなくて、B級……もしくはそれ以下の作品です。
そう言ってしまうと一言で終わってしまうのですが、
キャストはなかなか有名どころが揃っていたようで、
演技はそれほど臭くなかったと思います。
セリフはあなた本当に小説家? と疑うものが多かったのですが、
これは決してキャストのせいではありません。
私は特にクリーニング屋のお兄さん役の柏原収史がとても好きでしたね。
あとは、これは乙一さんの作品の方でもそうでしたが、
映像が汚い。これは自主映画だと仕方ないのか?と妥協しつつも、
それでもこれはどうよ?と思うくらい汚い。
折角色についてがテーマの映画なのに、発色が悪くここもマイナス要素。
何だかトークショーがなかったら怒られちゃうぜ、な一作。

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■「立体東京-3DTOKYO-」安達寛高監督
林立する高層ビル、大勢の人が行き来する渋谷の交差点、
初めて降り立った東京は、少女にとって巨大で恐ろしいものに見えた。
この街に母がいるのだ。そう奮い立ち歩き出した時、
突如持っていたバッグを見知らぬ男に盗まれた。
あの中には母との思い出の詰まった大切な人形が入っている。
見知らぬ土地の心細さを胸に、少女は賢明に思い出を追いかけ走り出す。

私も見終わってから知ったのですが、主人公は乙一さんの奥さんらしい。
え?いくつですか、と聞きたくなるところですが、まぁそれはおいておいて。
この映画はセリフが一言もありません。
実は私はその事を観る前から知っていたのですが、
そう思ってみたからか、個人的には好きな雰囲気でした。
まぁ映画として観たらどうなの?というところはありますが、
乙一さんが回しているだろう、カメラのアングルなどを考え、
主人公はこう思っているのではないか?と考えることが出来たからです。
先程桜井さんの方のコメントでしたのは、この辺のことです。
詩的に、映像だけでも伝わってくる、監督の伝えたい何か。
そこんところが桜井さんは欠けていると思います。
反対に乙一さんの映像で気になったのは、間延びしている点。
セリフがないので、その辺も影響しているかもしれませんが、
まるでカンヌ映画のような微妙な間、それがいかんともしがたい感じでした。
それと、背景音楽があからさま過ぎる。これは桜井さんでも思いましたが、
映像と馴染んでおらず、唐突に聞こえます。
あとは、「3D」ということもあって、赤と青のセロファンが付いた、
立体に見るための眼鏡をつけて見るのですが、それが何とも観づらい。
さっきも書いたように、映像が汚いので、眼鏡をかけているのに、
きちんと立体にならない部分などがあって、目がチカチカしました。
立体にする事で、少女の不安や恐怖や柔らかさをより深く表す、
そんな乙一さんの心意気は感じる事が出来たのですが、
そこまで技術が進歩していないようで、何とも目に悪い作品でした。

辛口ですみません。ファンに怒られるかも。笑
私も一応ファンなので許してください。ちゃんと生暖かい目で観ましたから。
これをみて吉田さんの「water」観とけばよかったなぁ~と後悔中です。
この映画、まだ後一週間やってますので、是非観てきて下さい。
毎日舞台挨拶あり!!生乙一&桜井さんを見る事が出来ますよ。

*-
(映画自体はお薦めしません。苦笑)

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2007年6月 9日 (土)

「風が強く吹いている」 三浦しをん

風が強く吹いている 風が強く吹いている

著者:三浦 しをん
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


いやぁ、面白かった。
雰囲気を一言で現すなら、陸上版「テニスの王子様」。
主人公は反抗的ではありませんが、周りのがやがや感がそんな感じです。
主人公は当たり前のように強く、最後は必ず勝つ。
目に見える結末を考えると、私は「一瞬の風になれ」の方が好きでした。

主人公・走は、高校の時に考え方の違いから監督と衝突し、
大騒動の末、陸上を辞める事を決意した。特待の話も蹴り、
活躍を期待していた両親からも逃げるように家を出て、無名の大学に入学をする。
ひょんなことから転がり込んだ竹青荘で、走は賑やかな9人に出会った。
走を合わせて10人……。今までの辛かった記憶を消し去り、
陸上を忘れようとする最中、荘の長である灰二が驚きの提案をした。
箱根駅伝に挑戦する。ろくに走った経験も無い人間ばかりのこのメンバーで?
揺れ動くそれぞれの思いを胸に、今「走り」をかけた、熱いドラマが始まる。

一言目の感想は漫画的。勿論面白い。
10人以上もキャラクターが出てくるにも拘らず、
それぞれの個性が出ており、読み返す必要が無いと思うほど。
登場人物の大半が男なのですが、あぁ三浦さんて男の子書くの好きなんだな、
と思えるほど、キャラクターが生き生きしている。
話としては、ボロアパートの住人10人で、箱根駅伝に出てみましょう。
と言う話。現実的に考えると、かなり無理臭いです。
しかもシード権取っちゃうし……と言う、奇想天外な展開を見せるのですが、
そこに上り詰めていくまでのドラマが、読者の評価が高い理由だと思う。
だって10人いますからね、色々あるわけです。
それをきっちり書いてくれているので、それぞれが走っている時、
思わず頑張れと応援したくなるのです。
ただし、それ以外の部分はどうかと言うと、少し残念な部分はあります。
10人もいるから、辛い部分は10それぞれが分担しています。
そして巧みに10の心情を描いてくれちゃっているので、
主人公の心情価値がかなり下がっているように思うのです。
いや、10人皆が主人公だから、問題ないわ、と言われればそれまでですが、
いかんせん、主人公が殆ど挫折しない。焦っているところは出てきますが、
それは皆焦るものですから問題にならないとおもいます。
あと故障しない。一年だけのドラマと言うリスクだというのもあるし、
故障と言うものの大変さは全て灰二が担っていて、リアリティが無い。
10人もいたら、絶対数人は肉離れを経験するはず。ましてや素人だし。
あと、走っている時、色々考えすぎている。
これは小説だから仕方が無いのかもしれませんが、
走っている時って、そんな事考えていないと思うのです。いわゆる邪念。
ランナーズハイになった時「あぁ気持ちい」と思うくらいで、
後は前の選手の背中をひたすら集中する事くらいしか。
あと、監督はきちんと計算してから選手にあと10秒早くと言います。
必死に走っている人間はそんな細かい計算は頭に入りません。
そんな事をうじうじ考えていたら、あぁちょっと漫画的だなぁと思いました。
リアリティは佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」で、
人間ドラマはこの「強い風が吹いている」で味わってはいかがでしょう。
「陸上は個人競技だが、陸上部は団体競技だ」と言った、
私の恩師の言葉を思い出す本でした。泣けはしないけど、楽しい本です。

★★★★☆*92

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2007年6月 7日 (木)

■雑談:読んでいる本

こんな本を今読んでいます。

というか、万城目さんとか、もう読み始めて数ヶ月経ってるんですけど……。
そろそろ本腰入れて処理しよう。決して悪い本ではありません。
誤解を与えてはいけませんね^^;

そうそう、ようやく「風が強く吹いている」が回ってきました……!!
よく待ったなぁ、私。半年もですよ。
もう図書館で100人以上待っている本は、
借りずに買ってしまおうと決めました。
だって、この本は「待ちに待って」という感じでよめたけど、
絶対読みたくなくなってる事あると思う、だって半年だし(苦笑)

何はともあれ、三浦さん実は初なので(「月魚」で以前挫折…)
ドキドキしながら読んでいます。さすがは面白い。
最後までノンストップで読めそうです。

あとは、伊坂さんの「アヒルと鴨」を再読中。
映画の前売り券も買ったので、これはしっかり原作を読むべきかしらん、
と思った次第であります。こっちもやっぱり面白い。
伊坂さん、今回は舞い上がらずに冷静に読んで感想を述べようと。
映画も好評みたいなので、楽しみです。

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「鴨川ホルモー」万城目学
「吾輩は猫である」夏目漱石
「見えない誰かと」瀬尾まいこ
「風が強く吹いている」三浦しをん
「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎(再読)
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2007年6月 6日 (水)

【アンソロジー】「嘘つき。―やさしい嘘十話」

嘘つき。―やさしい嘘十話 (ダ・ヴィンチ ブックス) 嘘つき。―やさしい嘘十話 (ダ・ヴィンチ ブックス)

販売元:メディアファクトリー
Amazon.co.jpで詳細を確認する


実はアンソロジーをきちんと読むのは初めてでした。
いいですね、「あぁこの作家さん好きだ」と発掘できる。
この本でいいなぁと思い、他の作品も読んでみようかしらん、
と思ったのは、西さんと、佐藤さんと中島さんですね。
光原さんもなかなか好きです。

「やさしい本音」中島たい子
私の彼は嘘をつけない。
元カノが東京へやって来たから、彼女と会っているのだろうと思う。
その事を私が尋ねると、彼は何も言わず黙ってしまった。
だから、私は元カノと会っていたと気づいてしまう。
そんな事なら、黙っていないで嘘でも付いてくれればいいのに。
本音を隠すのが上手い私、不器用な彼、
これからも一緒にいるために、二人はやさしい本音から始めよう。

一編一編が短いので、一番よく纏まっているのでは?
と思うのが、中島さんの「やさいい本音」でした。
雰囲気も瀬尾さんみたいにほんわかしていて、とても良かったです。
サブタイトルにもある「やさしい嘘」に一番合っていた様にも思います。
この本に収められているのは、「やさしい嘘」。
嘘と言うと、ついてはいけないもの、とか、
あまりいいイメージがないですが、これには嘘によって生まれる優しさ、
もしくは優しさから生まれる嘘がたくさん盛り込まれています。
あの人を傷つけたくない、そんな思いから生まれるものですね。
決して人を陥れるためだけに嘘は存在しているわけではないのです。
それにしても、十人十色とはこのことだなぁ、と思いました。
一番「おいおい」と思ったのが三崎さん。
いや、悪いわけではないのですが「やさしい嘘」と言うテーマで、
こういった発想が出てくるって凄いな、とビックリしたのです。
ちょっと戦争もの。そう言えば「となり町戦争」もそうですね。
次に「おーこりゃ負のオーラ全開だ」と思ったのが豊島さん。
うん、これも予想はしていたのですが、それ以上でした。笑
ある意味おどろおどろしい感じで「やさしさ」が屈折してます。
あとは井上さん。びっくりどっきりゲイ話でした。
初めから順に読んでいくと、主人公が子供である事が多いので、
和やかムードなのですが、唐突にゲイ。いや、感情は分からなくない。
でも女でもいいじゃないか、何ていう思いも頭を掠めました。
……そんな感じで、なかなか楽しめる一冊です。
読み終わった後に心温まりますね。

★★★☆☆*81

■収録
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「おはよう」西加奈子
「この世のすべての不幸から」豊島ミホ
「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」竹内真
「木漏れ陽色の酒」光原百合
「ダイヤモンドリリー」佐藤真由美
「あの空の向こうに」三崎亜記
「やさしい本音」中島たい子
「象の回廊」中上紀
「きっとね。」井上荒野
「やさしいうそ」華恵

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2007年6月 5日 (火)

「スタア」 清水義範

スタア (幻冬舎文庫 し 2-7) スタア (幻冬舎文庫 し 2-7)

著者:清水 義範
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する


うーん、ごめんのむさん。あんまりいただけなかった。
ストーリーはいいと思うのですが……、
というよりも、むしろこの本はエッセイのような感じで、
物語性がない気がしてなりませんでした。特に前半。

一昔前アイドルとしてデビューした高杉は、
今年三十一歳を迎え、芸能人としての境地に立たされていた。
いつしか歌手としての道は閉ざされ、女優にもなれない。
そんな彼女が進むべくは、バラエティ・アイドル、通称バラドルだった。
後輩が次々とデビューし活躍する中、
必死に自分の存在意義を見つけようと、暗中模索する。

まず一番気になったのが、途中で語り手が三人称から一人称に変わっている。
「高杉は~」となっていたのが、途中「私は~」に変わっているのです。
「私は~だ。高杉は思った」ならいいのですが、「高杉は思った」がない。
まるで主人公が自ら語るような形になってしまい、日記部分と混同する。
これは小説では結構ありない事だと思うのですが、どうなのでしょう。
客観的に書けないなら、初めから「私は」に統一してしまえばいいのに、
とその部分が終始気になってしまって、あんまり楽しめませんでした。
ストーリー……というよりは、一人のアイドルの人生を振り返る、
という感じで、やたらと過去回想部分が多く、主人公が卑屈である。
途中で出てくる日記も、本当にアイドルとして頑張りたい人間なら、
あんなに赤裸々に語らないのではないか、と思いました。
なぜなら、テレビに写る仮初の自分が「アイドル」なのであって、
本音を語ってしまっては、ただの人になってしまうのでは?と思うから。
それに、主人公はやたらと一般人を差別的な眼で見る。
最近読んだ芸能ものでは、綿矢さんの「夢を与える」がありましたが、
まだこちらの方が感情移入できたような気がしました。
しかし、有頂天になった(私は芸能人なのよ!みたいな)アイドルの、
心境や、心配する物事や、プライドなんかは、とてもリアルです。
そこを生かして、もう少し物語性が強かったら、と思いました。
エッセイ苦手の私には、少し合いませんでした。

★★☆☆☆*77

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2007年6月 4日 (月)

【映画】眉山

20070604
珍しく二日連続で映画を観に行ってしまった。
これは見ようか見まいか迷っていたのですが、
お薦めいただいたので、ちょっくら重い腰を上げました。
感想は、まぁ観て損はない。奈々子に大沢たかおだもの。

あらすじ(ヤフー映画引用)
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東京で働く咲子(松嶋菜々子)は、故郷の徳島で暮らす母親の龍子(宮本信子)が入院したと聞いて久しぶりに帰郷するが、母が末期ガンだと知ってがく然とする。咲子は母を看病する中で、医師の寺澤(大沢たかお)と出会う。残された短い時間の中、咲子は寺澤に背中を押されるように今まで知らなかった母の人生を知っていく。
---------------------------------------------------------

一言言うなら、あぁさだまさし。笑
ストーリーの中に、痛いシーン(必ず観ている人間が辛くなるシーン)
が何箇所かあり、それを売りにしているようなイメージがある。
これは原作を読んでいないのでなんとも言えないですが、
多分さだまさしだから、原作もこんな感じでしょう。
特に、あまりに強烈過ぎないか、と思ったのが、
死んだ後に解剖実験に自分の体を献上するという「夢草会」のくだり。
いきなり母・龍子がそれに入っていると知らされる、
主人公の場面がなんともあっさりしていて、
普通ならもうちょっと驚かない?とか思ったりしました。
その前に、余命数ヶ月を宣告されているのに。
それと阿波踊りと眉山の繋げ方が、あまりに微妙な気がした。
やたらと阿波踊りというか祭りのシーンが多いのですが
(きっと撮影が大変だったとは思いますが)客はそんなものは観たくない。
眉山も母の回想シーンでしか現れず、自分で登ってみたり、
なんて事はまるでない。そういう点から、なんだかこじ付けがましさを感じた。
こう言う映画で思い出すのは、横山秀夫原作の「半落ち」。
悪くはないんだけど、骨髄バンクのくだりがあったり、
少年のために罪を被り続ける決心をするとか……。
そう言った痛々しいシーンが多く、逆にコントラストがずれている。
今回もその様な感じで、まぁ結果的に盛り込みすぎじゃないの?と思う。
いっそ献体なくして、眉山と夫との話を濃くした方が、いいように感じた。
……、と書いても、これはきっと原作の時点でこう言う話だから、
きっと仕方のない事なんだと思うんですけどね。
映像は綺麗でした。大沢たかおが「二年後」のシーンで、
夫婦になったのにも関わらず、超素っ気無く「君が持ってたほうがいい」
と言うシーンと、祭りのシーン以外は、どれも楽しむ事が出来ました。
何と言ってもお母さん役・宮本信子がよかったですね。
見て損はないと思うけど、予想通りの展開・結末なので、お薦めはしない。

*85

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2007年6月 3日 (日)

【映画】神童

20070602 
一言目の感想は、予想以上によかった。観たらそう思うに違いありません。
私の目的は、松山ケンイチだったのですけれど、
いやはや褒める意外の言葉が出ないくらいよかったですよ。
「セクシーボイスアンドロボ」のイメージが吹っ飛びましたね。笑

あらすじ(公式サイトより引用)
---------------------------------------------------------
言葉を覚える前にピアノが弾けた13歳の少女うた。
彼女は”神童”ともてはやされながらも、
中学生となった今では自らの才能をもてあましていた。
球技は禁止され、いつも手袋着用という窮屈な生活の中で、
娘の才能のために全てを捧げる母親からの重圧、
父の不在にも胸に大きくのしかかっていた。
そんなある日、歌はオチ零れ音大受験生のワオと出会う。
それまでずっとひとりの世界にいきてきたうたは、
二人で”音”を共有し、音で心を通い合わせる体験を通して、
音楽の真の喜び、人とのつながりのあたたかさに目覚め、
やがては音楽そのものである自分自身を受け入れていく――。
---------------------------------------------------------

まず第一に、松山ケンイチに惚れ直した。
あの素朴なで気取らない、ありのままの青年の姿、
まさに彼に適役であり、その演技が素晴らしかった。
振る舞いがあまりに自然だから、”演技”と言うよりも、
役になりきっている、と言う感じの方が強い。
それを一番に窺えたのが、音大受験のピアノを弾いているときだった。
ぬいぐるみをピアノの上に置き、取り憑かれたようにピアノを叩く様は、
まさに、「菊名ワオ」であり、迫真の演技だった。
ピアノの練習にも熱を入れていたと言う話だったが、
まさにその成果がここに表れていて、思わず鳥肌が立ったほどだ。
こうして絶賛するように、松山ケンイチがとても良かったので、
逆にストーリーの粗が目立ってしまったように思う。
成海璃子演じるうたは、「私は音楽だから」と自ら言うほど、
才能があるわけだが、それが周りの人に知れ渡っていないと言う点が一つ。
映画のタイトルにある「神童」と言う言葉も出てこない。
自分の生活を捨てる代わりに、得られる音楽での名声、
それを嫌がっていると言う女の子を描くのだとしたら、
もう少し普通の女の子と音楽としての「うた」を分けたほうがいいと思った。
普通の女の子になりたい、でもピアノの椅子に座ると、
思わず鍵盤を叩き音楽を奏でてしまう自分がいる……、
そう言った描写が上手く表現できていないとように見える。
あとは、楽譜をお尻の下に置くのはどうかと思った。
それはあまりにも音楽を馬鹿にした行動のように見えたから。
そう見えるのはやはり、「音楽を嫌う普通の女の子・うた」を、
きちんと描くことが出来ていないからだろうと思う。
色々書いたけど、音楽もよし、俳優人もよし、演技もよし、
と来ているので見る価値あり、是非劇場のサラウンドで聴いて欲しいですね。
個人的に気になったのはワオの今後。
あの受験の時の素晴らしい演奏は奇跡じゃなかった、
と言うシーンを観たい気もしますね。うたが手を握ったのは、勇気をくれた。
ただそれだけであって、あの猛特訓の成果が報われるところが観たかった。
泣ける部分はラストではないですが、とりあえず松山ケンイチの演技に賞賛を。
ファンは観るべし!の一本です。

*88

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2007年6月 1日 (金)

「推理小説」 秦建日子

推理小説 推理小説

著者:秦 建日子
販売元:河出書房新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


ドラマ「アンフェア」の原作です。
まさにエンターテイメントを満喫するのに最適な本。
しかし、「推理小説」と言うジャンルの本を読みなれた人間が読むと、
きっと意見は「小賢しい」とか、そんな類だと思う。
読者を嘲っている、まぁそれが「フェア」と言う目的であるなら仕方が無い。

会社員と女子高生が殺された。
殺人現場には意味深な手がかり、「アンフェアなのは、誰か」
二人の関係性は見当たらず、主人公・雪平の捜査は難航。
しかしそんな中、出版社に「推理小説 上巻」というタイトルの原稿が届き、
騒然となった。なぜなら、この事件はその小説の通り進められていたからだ。
続いて、犯人は続編「推理小説 中巻」を三千万円で落札しろと要求する。
ラストが見えず、登場人物皆が模索状態のまま、事件は刻々と進んでゆく。

この作品を書いた動機とは、推理小説は「アンフェア」ではいけない、
…つまり、犯人はラスト、事件の原因、事実、真意を語らなくてはいけない、
と言う暗黙の了解を撤廃した、新感覚の「推理小説」を目指すことでしょう。
何故なら、謎が解けない小説は、つまらないし、読みたくないから。
そんな事は誰もが知っているわけで、誰がどう言わなくても、
事件が起き、人が殺され、そして犯人が捕まる、と言う物語を小説家は書く。
まぁ多少例外はあるでしょうが、それは決まりごとして決定していて、
その上で、心情(例えば犯人の動機に感動を持たせるとか)処理で、
読者に楽しんでもらうとか、もしくは、猟奇的な殺人や見事なトリックに
恐ろしさを感じてもらい、背筋を冷やすか……そう言う方法が多いでしょう。
何故なら、その方が読者が楽しんでくれるし、読みたいと思うから。
そう言った納得を得る=「フェア」である。
読者も事件に参加でき、読んでいくうちに、こいつが犯人か?と推理できる。
しかし、この作品が目指すのは、それの全く真逆である。
読者も「フェア」にはしない。「アンフェア」を味わっていただく、
だから、物語の中に「もしかしたらこいつが犯人かも知れない」
と言う、伏線をなくし、登場人物と共に、謎のままラストを迎え撃つ。
だけど、それってもはや「推理小説」じゃないよね、と私は思う。
例えば読者も「アンフェア」を目指すのであれば、一登場人物と言うことになる。
そうすると、要するに事件が起きたとしたら、それは「事件」でしかないのだ。
そして、もし「あいつが犯人か?」と思ったら、
そなわちそれは、単なる一登場人物の一場面からの「推測」でしかない。
だが「推理小説」の定義は、「事件の全貌が推理されている」ところにあると思う。
物語の事件・事故、については、主人公、または別の人物によって、
「推理されて」いなければならず、もしも万が一それが、
「全貌が推理されて」いなければ、それは「推理小説」ではない。
ただの事件・事故に過ぎないと言う事。
だから、この話は一見読むと、読者を嘲るような視線で書かれていて、
「アンフェアな終わりの小説」が繰り広げられ、
警察が翻弄される部分とリンクし、より緊迫して焦燥感が生まれるのですが、
しかし、これはもともと「推理小説」ではないと、私は思う。
なので、結果はつまらない終わり方、と言うこと。
作者も分かっているように、「おそらくは、納得のいかないラスト」
とありますが、私は納得がいかないと言う前に、
これは「推理小説」ではない、と言いたい。
そして痛いのは、この犯人がすぐに分かると言う事、伏線がありすぎる。
そして結局は犯人が自白するところ。
正直「推理小説」なんて名前で出すくらいなら、
宮部みゆきの「火車」くらいのラストの興奮が欲しい。
犯人は何も語らないが、そこに意味があることが描かれていないのが残念。

色々酷評したけど、読みやすい。
さすが脚本家と言う事だけあって描写も丁寧で、
ドラマを見ているような感覚で読めます。
ですが小説慣れしている人が読むと、残念ながら、
内容が喧嘩を売っているようにしか見えないのが難点です。
秦さんの次の本では、捻くれていない考え方の本を読みたいですね。

★★★☆☆*84

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