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2007年4月 7日 (土)

「エバーグリーン」 豊島ミホ

エバーグリーン エバーグリーン

著者:豊島 ミホ
販売元:双葉社
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すきま風さんにお借りしました!どうもありがとうございます^^*

あー良かったです。
なんだか偉そうな事を言ってしまえば、成長したね、って感じの本。
比喩とか、主人公の女の子の気持ちとか、
とても上手くて、すんなりと共感する事ができました。
ちょっとマニアックな内容を含んでいますが、
それは豊島さんが実際になさっていたからでしょうか・・・?
今回はかなりネタバレぎみで書いてるので、気にする方は読まないで下さい;

時は中学生-。漫画家を目指すアヤコと、ミュージシャンを目指すシンは、
卒業式の日に約束をした「10年後にまた会おう」と。
きっと夢を叶え、またこの場所へやってくる事を誓った。
好き、とは違う。ある意味憧れのような、目下のような、
曖昧な関係でありながら、あの時の二人はお互いに支えあっていた。
消えない夢、ずっと心に住み続ける思い出、
そっと胸に手を当てながら、二人は10年後のあの場所へと向かう。

豊島さんの小説を読むと思うことなのですが、
豊島さんはかなり現実的なことを書かれる作家さんです。
それがいい意味での作風だと思いますが、
小説、フィクション、ハッピーエンド、だと思って読み始めると、
突き当たった現実に寂しさを覚える事があります。
と、言うのも私が小説で非現実的なものに現実逃避を求めているから、
主人公は仲間ともども幸せに、問題は全て解決、を探しているのです。
しかし、この本でも分かるように、主人公のアヤコ、
それからシンは、決して結ばれる事はありません。
こんなによい題材を前に、思い悩み必死に格闘しながら、決して結ばれない。
そう、それこそが現実なのです。10年もの間、
お互いが他の誰とも付き合わず、ずっと一人の人間を待ち続ける。
そんな事は現実的には無理なのです。
気持ちは変わりゆき、そして全ては思い出になる。
その現実を突きつけられたとき、儚くて、苦しくて、切なくて
でもどこかで「しょうがないか」と言って涙を流すような、そんな小説です。
勿論その「しょうがないか」は少しの諦めと、現実の確認。
変わり行くものを確かめ、前を見据えなおす、そして思い出はしまっておく。
最後に見せたアヤコの表情が好きでした。
「その小さな残像さえいとおしくて、
私はしかめっつらになるくらい強く強く目を閉じる。」
良い本です。

★★★★☆*91

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コメント

好評だったようで良かったです^^

アヤコが律儀に、毎月発売の音楽雑誌をチェックしているところが何とも切なかったです。
期待とは裏腹に、夢をかなえたアヤコと全く別の道を歩んでいるシンの10年後の姿がリアルで。

再会シーンがかかれないまま終わってしまうのかと思わせておいて、ラストがちゃんとあったのでほっとしたのを覚えています。

本当に10年も誰とも付き合わず1人の人を思い続けるなんて子とはあり得ないんですよね。
悲しいけれど、それが現実です。

でも、その現実を豊島さんはいやみなく書いてくれた気がします。

投稿: すきま風 | 2007年4月 7日 (土) 21:20

るいさん、こんばんは。
ものすごーくご無沙汰してしまっておりました。
TBさせていただこうと、自分の記事を読み直したら、
とんでもなく恥ずかしいシロモノだったので、
コメントのみとさせていただきます(苦笑)

そう、豊島さんの作品は「現実」を感じさせますね。
それが自分にひびいてちょっといつも痛いのですが、
この作品は、その痛みを感じつつ、思い出はそのままに
前に進んでいく主人公らが描かれていて、
すごく元気が出たというか安心できたというか。
るいさんのレビューに触発されて、また読みたくなってきました。。

投稿: くろ | 2007年4月 7日 (土) 22:55

>すきま風さん

こんにちわ~TB&コメントどうもありがとうございます^^*

良かったですよ~。
毎日チェックする音楽雑誌も悲しかったですね。
今月も載ってない・・・と肩を落とすアヤコの背中を思い浮かべると辛いです。
豊島さんは現実を書いてくれますから、痛くて切ないですね、
でも「あぁやっぱりこうなるのか」と思い納得してしまいました。

再会のシーンは・・・案外疑ってませんでした。
きっと二人は会うだろうと、会わなければ二人は何も始まらないのだろうと、
感じて、必ず10年後はやってくると思っていました。
まぁただ、夢が叶ったアヤコと、叶わないシンの思いは、
さすがに予想できませんでしたけども。

>本当に10年も誰とも付き合わず1人の人を思い続けるなんて子とは
>あり得ないんですよね。悲しいけれど、それが現実です。

そうなんですよねぇ、読み終わったときにずしっと来るものがありました。
一人の人思い続ける、変わらない気持ちに掛けてみたい気もするんですけどね。
なんとなく逆に(笑)それが現実逃避と言うヤツです。

豊島さん読むの怖いな~(笑)
次の本もこう、胸が痛むのだろうと思うと、読むの躊躇しちゃいますね。
いや、豊島さんとても好きなんですけど、
私はまだ現実を見る勇気が持てていないのかも知れません。

投稿: るい | 2007年4月 8日 (日) 11:35

>くろさん

こんにちわ~お久しぶりです!
コメントどうもありがとうございます^^*

私も過去記事は恥ずかしくて自分でも読めたものではありませんよ(苦笑)
しかしながら、以前、くろさんのブログで拝見していたので、
読みたくなった一冊でもありました!とてもよかったです。

そうそう、豊島さんは現実主義者のようで、
優しい文章で導いて「こういう風にしかならないの、残念だけど」
と丁寧に教えてくれているように感じます。
痛いんですよねぇ、これが。
思い出はそのまま、確かにそう簡単に捨てられるもんじゃないんですよね、
思い出ってヤツは。と最近しみじみ思います(苦笑)
前に進んでゆくアヤコとシンはとても素敵でしたね。
でもまだ私は取り残された感一杯です。
何かをやり忘れたのではとつい振り返ってしまう自分が、
ちょっと恥ずかしくなった一冊でした。
頑張らなくちゃなぁ、と。

良い本でしたので、再読も良いかと思います!
私ももう少し自分が成長したら、もう一度読んでみたいです。

投稿: るい | 2007年4月 8日 (日) 11:42

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» エバーグリーン [No-music.No-life]
2人をつなぐものは…約束。中学校の卒業式で、10年後の再会を約束したシンとアヤコ。夢をかなえるため、シンは地元に残りアヤコは東京に向かう。それぞれの日常の中で、時間も距離も離れた2人の心は、揺れていた− −−−− 豊島ミホさんの本です。 [http://fengdao.exblog.jp/] 旅行に行ってたり、 面接とその準備があったことで・・ 買ったのにずっと読めなかった豊島さんの新作! 2006年 ..... [続きを読む]

受信: 2007年4月 7日 (土) 21:22

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