「初恋温泉」 吉田修一
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初恋温泉 著者:吉田 修一 |
待ちきれなくて買ってしまいました、吉田さん。
タイトルが絶妙な響きがあって、とても好きです(笑)
内容はタイトル通り、温泉に訪れるカップルのお話。
短編5本収録。
「ためらいの湯」
勇次は久しぶりに会った大学の友人と不倫を始めた。
自分にも妻がいるし、相手の和美にも旦那がいる。
話の流れから、2人で温泉へ行こうという話になるのだが、
いざ、こうして不倫どうしの2人が向き合うと、
どこか後ろめたいような、それでいて相手に悪いなと思っているような、
妙な気持ちが湧いて来て、本来の不倫の意味を失っている気がする。
電話から聞こえる妻の声が、そっと勇次の袖を引っ張っていた。
淡々と、だけどとても現実的に日常が描かれている。
ちょっとした事から足を向ける温泉、ふとその湯に浸かりながら、
思う事は日常では味わえない不思議な感覚があるのだ。
不倫同士の旅へ出かける勇次は、ためらいにふと足を止める。
いつも優柔不断で他人に指図ばかりを受けている自分が始める不倫、
それこそは自分の意志があるはずだから、胸を張って進みたい。
しかし、心のどこかでは、やはり妻に悪いなと言う気持ちや、
こうして不倫に付き合ってもらっている和美に申し訳ない、
と言う気持ちが湧いてくるのだ。
その気持ちは正しいようで、正しくない。
そんな気持ちがあるのなら、初めから止めておけばいいのだから。
意気投合して始めたはずの不倫を、ふと立ち止まってみると、
自分はこんな事をしていていいのか、とまた優柔不断になる思いを、
必死に堪え目を瞑ると、そこには空の浴槽しかない。
温かさの無いただ冷たいだけの浴槽が、浮かび消えてゆく。
やはり間違っているのか?自分はこのまま進んでいいのか?
そんな疑問を抱いたままのラストが、とても好きでした。
あとは「純情温泉」も純情なストーリーで吉田さんにしては意外。
かなりラブラブな雰囲気が痛いな、と思うくらいですが、
きっとこの2人は上手くはいなかいのではないか?
と言う疑問も抱えていて素直に喜べない辺りが、いいのかも。
★★★★☆*90
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