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2007年4月18日 (水)

「悪人」 吉田修一

悪人 悪人

著者:吉田 修一
販売元:朝日新聞社出版局
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最高でした。まさに吉田さんの真骨頂。
これは読むしかない、読み始めたら止まらなくなって、
いつの間にか「悪人」に同感してしまう自分がいるのです。
泣けるサスペンス。ここまで人物描写が素晴らしい殺人事件はそうないですよ。

出会いサイトで出会う男女。
彼らは希望もなく、必要とされるわけでもなく、
ただ生き続けているだけの現実の自分から逃げようと、
携帯電話で無意味なメールを送り合う。
そうして出会った、ある意味軽薄な欲望が殺人事件へと発展した。
人を笑う者、笑われる者、加害者になる者、被害者になる者。
果たして誰が正しく、誰が「悪人」であるのか、
事件の下では人間の醜く、それでいて純粋な欲望が絡み合って広がってゆく。

正直、この話のキーとなる殺人事件が起きた時、
殺された女・佳乃の事を思い、思わず泣きそうになりました。
凄い事です。サスペンスで死んでゆく人間なんて、
最初の頃にさっと出てきて死んで、大抵の場合それで終わりです。
そして残された者の苦悩と、犯人の追跡が始まるはず・・・。
しかし、この話では初めの方で犯人が判ってしまいます。
最後の方で、「貴方が犯人ですね?」と言うようなサスペンスを、
根本から覆し、塗り替えてくれるような作品でした。
その思いの重い事この上なし。
人を笑う者、笑われる者、加害者になる者、被害者になる者。
登場人物の全ての人間の心情に、思わず足を止め耳を傾けたくなりました。
何故殺したのか、そこはこの話ではあまり重要ではありません。
犯人が確定し、殺した理由も重要ではない、それ以外の部分、
まさに殺した人間が、殺された親が、疑われた人間が、殺人犯を愛した女が、
一体どんな事を考え、その思いがどう交差して、そしてどう消えてゆくのか。
その情景を怖ろしくリアルに、生身の人間が、
この一つの事件を起こしてしまったと言う事実と過程が正直に描かれています。
この本は最後まで「悪人」が誰なのかはっきりと書かれていません。
でも、読めば全てが分かるはず。
私は最後に祐一が光代の首を絞めたのは、
「自分が加害者にならなくては、今後光代が傷つくから」と思ったからだ、
としか考えられませんでした。なのに、その思いは語られる事なく、
二人は永遠の別れを迎えてしまう。苦しくて切ないのに、
光代の言葉を聞いていると、もしかしたら少しくらいは殺す気があったのかも
と気持ちが揺れてしまい、その不確かさが、
他では味わう事の出来ない何ともいえない後味を残してくれました。
決して楽しい話ではありません。だけど読み終わった時のやり切れなさや、
誰もの心に「悪人」は潜んでいるのだと、気づかせてくれる作品です。
ちょっと官能シーンも多かった?かも。笑
お薦めです。

★★★★★*97

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コメント

はじめまして。
TBさせていただいたのですが、間違えて2つも送信してしまいまして…すいません。どっちかひとつ削除してください。

最近買った本『悪人』『うりずん』『家日和』まで一緒で、なんだか親近感をかってに感じてしまいました(^m^

投稿: すもも | 2007年4月20日 (金) 18:45

>すももさん

こんばんわ!コメント&TBどうもありがとうございます^^*
TB修正しておきました、お気になさらず♪

コメントも残さずすみません;
吉田さんがお好きなようだったので、思わずTBさせて頂きました。
「悪人」「うりずん」「家日和」どれもよかったですよねぇ。
今年はなかなか当たりな本を読んでおります。

またお邪魔させてください!

投稿: るい | 2007年4月21日 (土) 22:23

読みました!
引き込まれて、ほぼ一気読みでしたよ~。

私も祐一が光代の首を絞めたのは自分が加害者になるためだと
思いました。でも、肝心の光代がそのことに気付いていないって
いうのが何とも言えず切なかった。。。

トラバさせてね。

投稿: れおぽん | 2007年6月10日 (日) 01:13

トラバ またエラーでダメでした。がっくり。

投稿: れおぽん | 2007年6月10日 (日) 01:16

>れおぽんさん

こんにちわ!コメントどうもありがとうございました^^*
TB出来なかったようで;
すみません、何だか調子が悪い時がたびたびあるようで。涙
お暇な時にまたチャレンジしてみて下さい。お手数お掛けします。

「悪人」読まれたそうで!
よかったですよねぇ!!私も読み終わった瞬間に、
「これは誰かにお薦めしなくては!」と思いました。笑

そうそう、あの考えさせられるラストが良かったですよね。
祐一は絶対にわざと首をしめたんだと私も思います。
肝心の光代が気づかない、というのが逆に「悪」というものが、
どんなに曖昧で、身勝手になすりつけられるものなのだと、
より強調しているようにも見えますね。でも切ない!!
良い一作でした。これは代表作になると思いますね吉田さんの。

早くも次回作が気になり始めました。

投稿: るい | 2007年6月11日 (月) 14:33

こんばんは。るいさん。
誰が悪人で、誰がそうでないのか?
誰にもわからない、決められない切ない事実が、この本にはたくさん詰まっていました。読んでいて、心が痛かったです。
殺人とまではいいませんが、このような心の動きって日常生活の中でもちらほら見受けられますよね。
そういう部分と重ねてしまい、更に辛くなってしまいました。
読み応え抜群でしたよね。
次作も楽しみです!

投稿: ゆう | 2007年6月22日 (金) 20:03

>ゆうさん

こんばんわ。コメント&TBどうもありがとうございます^^*

ノンフィクションな雰囲気が漂うドラマがとてもよかったですね!
人がどこかで持っている「殺気」というか「カッとなった」、
という行動の結果が、どれだけ虚しいか、と考えさせられました。
誰もが持っている気持ちだから、どうしても祐一のみかたをしてしまうし、
かといって、殺人は許してはいけないと言う壁。
その倫理道徳というか、因果応報というか、の根本に問いかける、
手の届かない歯がゆさを感じてしまいますね。

ラストはとてもよい問題提起になっていますよね。
何だか吉田さんはこの本で何かを切り開いた気がします。
勿論ご自身もですが、世の中のサスペンス本に対してって感じですね。
下手な二時間ドラマをみるより、人間ドラマが面白いし、
読んだ後に読み手に考えさせる力が三割り増しになって帰ってきた気がします。
この本までには、「パレード」があり「東京湾景」があり……
と考えていくと、ファンとしてはとても感慨深いですね。
次回作も楽しみ!ですね。

投稿: るい | 2007年6月22日 (金) 22:32

TBさせていただきました

著者が並々ならぬ覚悟でこの作品に取り組み、できる限りの力を注いだという熱意が伝わってくるような本でした。

投稿: タウム | 2007年11月15日 (木) 19:12

>タウムさん

初めまして、こんにちわ!
遅くなってしまい申し訳ないです。
コメントどうもありがとうございます^^*

どうやらTBが上手くいっていないようなので、
お暇な時にもう一度チャレンジしてみて頂けると嬉しいです。

そうですねぇ、この本は凄いです。
吉田さんの本は大体順々に読んでいっていましたが、
この本は他の本と比べものにならないくらい秀逸でしたね。
私は粗探ししながらいつも読んでいますが(笑)どこにも非がなく、
全霊を捧げた事がひしひしと伝わってきました。

この次に書くものは大変そうですね。
これを超えなくてはいけないという観念があるかもしれません。
まぁどちらにしても楽しみな事には変わりがないですけれども。

投稿: るい | 2007年11月21日 (水) 16:11

私は初・吉田修一でしたが、
この作品、静かなインパクトがありました。

>ここまで人物描写が素晴らしい殺人事件はそうないですよ。

ですね~。ずっしりと存在感を感じましたよ。

私も、最後はるいさんと同じように感じました。
でも、光代は違う祐一を感じることで、これからを歩いていける。
どちらが祐一の気持ちに近いのか、それは分からないけれど、
「認識世界は感じたいと思っているように感じられる」…ってことを思いました。

吉田修一、ぼちぼちと読んでいこうかな。
まずは『東京湾景』かしらん♪

投稿: そら | 2007年12月19日 (水) 14:53

>そらさん
静かなインパクト…!
まさにそんな感じですね。

>「認識世界は感じたいと思っているように感じられる」…ってことを思いました。

確かにそうですねぇ、祐一は人を殺してしまったんですからね。
そして問題なのは祐一は人を殺した=「悪人」
というレッテルを貼られてしまうことでしょう。
そうすると「あの人は人を殺したらしいよ」と聞いただけで、
「あぁそう言えば、前からそんなところあったよねぇ」
とか「悪人」という言葉に付いている悪いイメージを、
受け継いでしまう事でしょう。
どんなに柄が悪くて嫌味なやつでも、人を殺さない限り「悪人」ではない。
でも吉田さんのこの小説を読んでいると、
そんな状況に「待った」をかけたくなる、とそう言うことだと思います。
まぁそれは読者に限ってですが。
この物語の登場人物として存在していたとしたら、
それはやっぱり自分の思いが先行する認識になるんでしょうね。

是非「東京湾景」読んでみてくださいね^^*

投稿: るい | 2007年12月20日 (木) 10:28

るいさん、こんにちは。
るいさんの感想はとっても奥が深いですね~。
私が感じるのは「切なさ」だけでした。情けないですが…。犯人は分かっていたのに、読んでいるうちに「自分が勝手に彼を犯人と思い込んでいただけ」のような気がしていました。

今週「柔らかな頬」を読んで、気持ちが沈んでしまって、
気分を変えたくて徹夜して「悪人」を読んだのですが、
なんだかまた落ち込んでしまいました。
カラフルを最後に読めばよかったです。

投稿: fumika | 2008年1月19日 (土) 11:59

>fumikaさん

こんにちわ~^^*
コメントどうもありがとうございます。

奥が深いですか…どうもありがとうございます。
この本は何だか、本について考える、
と言うよりも感じるといった方が良さそうでしたよね。

そう、それで「自分が勝手に彼を犯人と思い込んでいただけ」
みたいな気分に私もなりました。
主人公を、「犯人に仕立て上げてる」、
と言うような不思議な感じのする本でした。

他の登場人物の悪意はたくさん書かれているのに、
悪意を持たない主人公が、なぜか犯人になってしまう、
と言うもどかしいような気持ちになりました。

あはは、そうですね「柔らかな頬」→「悪人」
ときたらヘビーですねぇ。
では「カラフル」の森絵都の「DIVE!!」をお薦めしておきます。
爽快な気分になれます。近々映画化ですよ~。

投稿: るい | 2008年1月22日 (火) 11:48

こんばんは。
「DIVE」は今週末に借りる予定です。あと、「風に舞いあがるビニールシート」でちょっと気分を引き締めようと思っています。
5冊借りるので、今月はまた忙しくなりそうです。

投稿: fumika | 2008年1月22日 (火) 22:01

>fumikaさん

こんにちわ~「DIVE!!」はいいですよ!
私の読書に拍車をかけてくれた本の中の一つです。

「風邪に舞い上がるビニールシート」は、
「カラフル」なんかの児童書向けの森さんのイメージで読むと、
かなり文章が堅苦しく感じると思います。
いや、それくらいしないと直木賞は取れないよ、
っていうことでしょうけどねぇ。
でも短編集なので、さらりと読めるとは思います。

五冊楽しんでください^^*
良かったものがあったら、是非教えてください。

投稿: るい | 2008年1月23日 (水) 09:58

おすすめいただきありがとうございました。
良かったです。
それは、人の人生を奪ういいわけにはならないが、
土木作業員は、母をそして愛する人を、無償の愛で罪の意識から救おうとした。
弱弱しい、さびしい、悲しい、苦しいって感じが
後半は、暖かい、美しいって情景に変わっていく感じがしました。

投稿: しぐ | 2009年5月 4日 (月) 12:03

>しぐさん

よかったそうで、お薦めした甲斐がありました^^
吉田さんの小説は、いつの間にか肌に温度を感じているようで、
好きなんですよね。なんていうか、主人公の息遣いすら
聞こえてくる気がする、そんな感じです。
この小説もそうですけど、何度か読むとまた違った感想を
抱ける作家さんです。また後で読んでみると、さらにいいかも。
私もそろそろ再読したくなってきました!

投稿: るい | 2009年9月17日 (木) 18:02

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