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2007年4月 8日 (日)

「うりずん」 吉田修一

うりずん うりずん

著者:吉田 修一
販売元:光文社
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いや~かなり良かったです。期待は裏切られませんでした。
お薦めですよ~私も図書館で借りたのですが、買いなおすかも。
吉田さんの本の中で今のところ一番は「パレード」なのですが、
それに追いつく勢いですね、と言うか短編と言う分野だったら抜いてるかも。
佐内さんという方が写真を撮って、その写真を元に吉田さんが
短編を書いています。実はお二人は全部終わって編集の時に初めて会ったとか。

「解雇」
解雇された岡野と美里はビーチバレーを眺めている。
目の前では黄色いチームが大差を付けられ負け始めた。
会話の流れで、岡野はボート部だった自分が
強くなりたいと躍起になっていた頃の事を思い出す。
「どっちが勝つと思う?」
もしも美里が「黄色いほうが逆転する」と答えたら、
ここを立ち去ろうと心に決め、問いかける。
ここで終わりだと思った後に、もう一回、
自分にはオールを漕ぐ力があったことを思い出した。

何だか写真があるって新鮮だなぁと思いました。
それに、その写真を見て膨らんだ物語を吉田さんも書いたわけで、
勝手に挿まれた写真だったとしたら、勝手に文章のイメージを作られて嫌、
と思うのかもしれませんが、これは違うのですよ。
吉田さんが写真を見て、眺めて、感じた事をダイレクトに体感できるのです。
そして不思議な事に、眺めていると確かに「なるほどそう感じる」
と納得する事が出来ます。さすがは同じ歳の芸術家のコラボだから?
どことなく佐内さんと吉田さんには似たものを感じました。
平凡の中に際立つ大切な思い、みたいな。
写真の良し悪しって、正直よく判らないのですが、
「わー綺麗!」とか「どれも絶妙なアングル」なわけではありません。
むしろその逆を狙っているのではないか、と言う印象があります。
写真の中に納まっている物や人もとても平凡なのです。
しかし、その写真、と言う中に切り取られた一瞬の中に、
その人、物、時間なりの大切な瞬間が詰まっている、そんな感じがしました。
是非写真を見てから、吉田さんの文章を読んで欲しいです。
その一枚の写真から感じるインスピレーションと言うか、イメージと言うか、
取りあえずそう言ったものを頭に思い浮かべながら読むと、
吉田さんの文章に出てくる登場人物たちがとてもリアルに動いてくれます。
中でも好きだったのは「解雇」「後輩」「野心」だったのですけども。
どれも、平凡で、でも忘れてはいけない一瞬の思いが詰められていました。
短い話なのに、何故か泣けてきたりするんですよね。
ゆっくりと写真を眺めならがら、コーヒーブレイクに最適です。

★★★★☆*94

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