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2007年3月

2007年3月31日 (土)

「八月の路上に捨てる」 伊藤たかみ

八月の路上に捨てる 八月の路上に捨てる

著者:伊藤 たかみ
販売元:文藝春秋
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つまんない。
途中から頭の中でこの言葉が回っていたのですが、
「いやいや、芥川賞取ったんだから、最後くらいはいいのかも」と、
なかばやけになって読みました。が、つまらない。
伊藤さんの良さが全く見受けられなかった作品です。
よっぽど「ミカ!」の方がいいです。児童書書いてください、お願いだから。
と、森さんの時にも言った気がする「風に舞い上がる~」もそう思って。

僕は30歳の誕生日に離婚をする。
しかし、その離婚の原因が、自分でも良く判っていなかった。
多分僕は智恵子を愛せていたはずだ。
でも、もう一度振り返ってみると、どうも違う気もする。
不愉快に思いながら出した婚姻届がいけなかったのか、
それとも、お互いに理解しようとしなくなったのがいけなかったのか。
熱い夏、蒸されたトラックに揺られながら、ふと過去を思い出してみる。

よく判らない。いや、「そう言う気持ちになるよ」
って言う主人公の気持ちはとてもよく分かるのですが、
伊藤さんが何故こんなに突飛な比喩を持ってくるのか、とか、
この気持ちを伝えるのに、このくだりは必要ですか、
とかそう考えてしまう自分がいました。なので、終始楽しくない。
勿論、不倫し離婚すると言う話なので、そもそも明るい話ではありません。
でもなんて言うか、別れたいのに別れを切り出せず、
切り出せない理由が僕には分からなくて・・・、
でも僕にはもう智恵子を愛せないように感じる。
そんなグダグダな感じが、とても好きではありませんでした。
だって、皆そうですよ。と言いたくなる。
いつから嫌いになったなんて分からない恋だって沢山あるはずです。
それをただ書いている、と言う印象しかなく。
で、ひねりは無いんですか?とちょっと喧嘩腰になりそうになりました。
そう言うグダグダの中にも「あ、僕は智恵子のこう言う所が好きだったのか」
とか「きっとこういう所が不快感を持つ原因だったのだろう」とか。
そう言う自己解決らしき部分がいまひとつ欠けている気がします。
最後も何だよ、結局離婚したくないのかよ、どっちなんだよ、
って感じで、迷っているなら迷っているらしい事を書いてほしかったかな。
うーん、お薦めはしない。

★★☆☆☆*69

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2007年3月27日 (火)

「空中ブランコ」 奥田英朗

空中ブランコ 空中ブランコ

著者:奥田 英朗
販売元:文藝春秋
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久しぶりに奥田さんに手を付けてみました。
いやはや、やはり面白いです、伊良部さん。
今回も電車の中で笑ってしまうのを必死に堪えつつ、読み終えました。
あと、町長選挙も伊良部シリーズ?
後で借りてこようと思います。

「義父のヅラ」
エリート医師である達郎は病院に勤務しながら、大学の講師をしている。
そんな彼の一番気がかりな事は、院長である義父のヅラだった。
妻は、温室で育てられたような教育を受けているから、
行儀にはうるさくゲップをする事すら許されない。
ましてや、義父のカツラを指を指して笑う事など、持っての他だ。
しかし、いかにもカツラだと分かる生え際を見るたびに、
取ってやりたい衝動に悩まされ、達郎は伊良部総合病院へとやってくる。

思わず、「むふふ」と笑いたくなるエピソード満載。
それぞれの症状に悩まされ、伊良部総合病院にやってくる患者たち。
皆真剣に悩んでいるはずなのに、伊良部に相談した途端、
「こいつよりは自分の方がマシだ」と呟いている。
伊良部から次々に差し出される無謀な荒療治に大笑いです。
特に笑ってしまったのが「義父のヅラ」でした。
何故か義父のヅラを公衆の面前で剥がしてやりたい!
そんな心境をちょっと頷いてしまったりして、
取りたいけど、取れない、もどかしさが伝わってきました。
何かの原因で一つの事に固執してしまうことってあると思います。
今回はまぁヅラだったわけですが、その対処法にまた愕然。
治す方法はただ一つ、実際に一度とってみればいいのです。
ふとカツラを手にしてしまった時の何ともいえない感触がたまりません。
終わってから分かる事ですが、そう言う事は、
ちょっとしたストレスが原因だったりします。
例えば行儀作法が厳しすぎるとか。
そんな事でいちいち悩むのって馬鹿らしいじゃないか、
と伊良部を見ていると逆に思えてきます。
決してヤラセじゃない体当たり一番勝負、
と言うかむしろ何も悩まない5歳児に戻ってしまえみたいな、いいですね。

★★★★☆*87

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2007年3月25日 (日)

「ボーイズ・ビー」 桂望実

ボーイズ・ビー ボーイズ・ビー

著者:桂 望実
販売元:小学館
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こりゃ良かった。
「Run!Run!Run!」ではちょっと「?」と言う感じでしたが、
こう言うシンプルな方が桂さんは描くのが上手いと思いました。
ぶっきらぼうな口調、でもじんわりと心を突いてくれる良いお話です。
ちょっと泣けるかも。電車なので我慢してしまいましたが・・・。

ママが死んだ。
小学校6年生の隼人はその悲しみを必死に堪えていた。
弟である6歳の直也に「ママが死んだ」と言うことを教えなくてはならない。
直也は人の「死」と言うものを理解できていないのだ。
そんな隼人の気持ちに気づかず、パパはクリスマスに何が欲しいと聞いてくる。
「そんなの決まっているじゃないか、僕たちはママが欲しいんだよ」
痛切な思いを隠し切れず、隼人は自分だけの秘密の場所へと歩きだす。

桂さん、好きなんですよねぇ作風?が。
何となく全体的に観たら文学的にどうなの?と言われるのかも知れませんが、
やっぱり心にグッとくる文章を書いてくれるんですよね。
今回は母親に先立たれた少年の心境がありありと描かれていて、
胸を締め付けられるような思いに駆られました。
小学生の隼人は、6歳の弟に「死」について教えなくてはいけない。
「ママは死んだんだ」
毎日母親のいなくなった病室をふらりと訪れる弟を哀れみ、
死ぬという事が、もう2度と会えないと言う事で、
でもママは遠くから見守ってくれているんだよと伝えるのだ。
しかし、お兄ちゃんだから、と言う理由で責任感に悩む隼人だが、
たかだか小学生の子供なのだ、悲しくないわけがない。
弟のために必死になるあまり、自分の悲しみに気づいていない。
ママの双子のお姉さんが新しいママになるのも嫌、
ママもいなくなってパパもいなくなるなんてもっと嫌。
そんな切実な思いがじんじんと伝わってきて、心が痛くなりました。
このお話は、もう一つストーリーがあり、70歳のおじいさんも出てくる。
栄造は頑固者で子供なんて大嫌いだ。しかし、自分の乳母の死の悲しみを、
隼人の母の悲しみに重ねてしまい何かと面倒を見るようになる。
「どうしたんだ俺は、どうかしている」そう呟きながら、
嬉しそうな顔をしている頑固親父の顔が目に浮かび、思わず微笑んでしまう。
隼人は抱えていた悩みを相談できる初めての大人である栄造を得て、
栄造は人と関わる大切さと人の温かさを隼人から得る。
今までトゲトゲと周りを威嚇していた2人が、
徐々に柔らかく打ち解けるようになり、周りには笑顔が広がり始める。
そんな感覚を描くのが桂さんはとても上手で、思わずホロリときます。
今まで読んだ3冊の中で一番いいかな~。

★★★★☆*92

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2007年3月22日 (木)

【映画】バッテリー

20070323

すみません、観て来てしまいました(笑)
はい、あんなに忙しいと嘆きながら、
仕事帰りにそそくさと一人映画館へ駆け込みました。
感想は一言、素晴らしい。
正直言ってここまで良いとは思いもしませんでした。
是非観るべきです。小説を読んでいても、いなくても大丈夫。

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超自意識過剰少年・巧が甲子園を目指すスポーツドラマ。
親の転勤により田舎町にやってきた天才ピッチャー巧は、
地元の豪腕キャッチャー豪とバッテリーを組む事になった。
新たなパートナーと出会いお互い刺激し合っていた2人だったが、
心のすれ違いが原因で仲違いを起こしバッテリー解散の危機に。
そんな時2人の間を取り持ってくれたのは巧の弟・清波だった。
病弱な清波のために続ける巧の孤独な野球・・・
いつか巧は母親に認めてもらえる日が来るだろうか。
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泣いた、泣いた。巧み役の男の子(林君)が完璧な巧を演じていました。
あの巧の心に秘めた辛い思い、野球が出来る喜び、
豪速球をキャッチャーミットで受けてもらえた時の快感。
全ての感情を上手に表情で表現する事で、無口、だけどその分
人以上に色々な思いを、色々な人を考えている少年を作り上げています。
無名の役者にあの、あさのさんの繊細な少年の心は表現できまい、
そう踏んでいただけに、あの演技の素晴らしにまず感動。
ボールを投げる時のキリっとした表情も格好良かったのですが、
投げた後、豪がそのボールをしっかりと受け止め「巧、最高じゃ」と
お互いに笑いあうシーンがとても心が温まりました。
それと清波のシーンも。まさかあの子役(鎗田君)が、
あんなに可愛らしい演技をしてくれると思っていなかったので、
あの病室の所、「兄ちゃん、最後までボール、投げるんか」と、
うわ言の様に清波が呟くシーンで思わず号泣。
ストーリー的には、原作は長いので随分カットされていましたが、
脚本が上手いのか、要所を捉えているので納得の繋がりです。
それと、見事なのは投球です。素晴らしい。
あれ、合成じゃないよね?と思うくらい見事なピッチングを見せる林君。
お陰で笑いあり、キキリと締まるシーンもありの、見事な仕上がり。
今回の全ては子役の子達の演技の素晴らしさで、
仕上がりが格段に上がり、予想をはるかに上回る出来です。
当初は「ちゃんと小説の思いを伝えられるんでしょうね?」と
半信半疑でしたが、むしろした方がいい。
私が映画の方がいいなんて言う作品はあまりないです。

 しかし一つつけるなら・・・まぁ気づかない人も多いでしょうが、
子役さんたち年齢さば読んでます!(笑)
林君は12歳(巧)の役なのに、実際は17歳だし、
鎗田君は9歳(清波)の役なのに、実際は12歳です。
観ていて、「うーん、それにしても凄い球投げるよね12歳・・・」
とちょっと疑って公式サイトを覗いたところ、判明しました。
でもストーリー上、気になりません。むしろ合っている。
あさのさんの背伸びをした少年・巧も、
人を人一倍気遣い心優しい清波も、とても合っています。
どうぞ、大スクリーンで是非。見なきゃ損ですよ?本当に。

公式サイト

*95

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2007年3月21日 (水)

「ありふれた風景画」 あさのあつこ

ありふれた風景画 ありふれた風景画

著者:あさの あつこ
販売元:文藝春秋
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結局のところは同性愛ですか?
とちょっと煮え切らなかったあさのさんでした。
内容は「ガールズブルー」的な感じで、他人から非難される子供が、
それでも頑張って生きようとする、と言う感じです。

男を誘惑するのが趣味なんでしょう?
そんな噂を流される少女・琉璃はようやく本当の恋を見つけた。
その相手は黒髪が美しく、眼鏡の奥に輝く瞳が神秘的な周子だった。
そう、相手は女の子。
お互いに惹かれあう2人の前で他人の目などは関係ない。
同姓を愛してしまう事は何も悪い事ではないのだから。

うーん。微妙でした。いや、でもとても清々しく纏まっていて、
同性愛(女同士)でありながら、さっぱりとした仕上がりでした。
踏み出してはいけない壁だけど、自分の中にある本能が、
それを求めてしまうし、一般的に普通ではない。
しかし、私たちは何も悪いことしていないじゃないか、
そう言う訴えをひしひしと感じ、その若さゆえのパワーがとても良かったです。
が、しかし。何となく女どうしてもいいじゃないか、
と読者に思わせるために、ちょっとこじ付けがましいのでは?と
思う場面が少しあったりしました。
例えば、主人公琉璃の両親が離婚の危機であること。
これには、どうせ異性同士でも上手くいかないじゃん、
結局は気持ちなのよ、と言う見せつける題材の様に感じてしまい、
うーん・・・と悩むところでした。
後は洋祐もどうなんだろう、冤罪に怯えてしまうのは本当の愛ではない?
と言いたかったのだろうか、私の理解力不足かと思いますが、
何とも疑問点が多かったです。
でも、これが例えば純愛で、初々しい感じで、と繋がるのであれば、
真っ直ぐに受け止められたのかも・・・。
と言う事は、私は同性愛を差別しているのか?と言う所に直面しますね。
いや、そんな事は無いです。全くもって。

★★★☆☆*83

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2007年3月19日 (月)

■雑談:5日で1本

只今DVD「ジャンヌ・ダルク」を5日かけて観ております。
きっと明日辺り終わるでしょう・・・。
何だか最近時間配分がおかしいのか、
それとも単に時間が無いのかは判りませんが、忙しない日々を送っています。
1本の映画を5日かけて見ちゃうくらいな感じです。

それと、大学の通知表がまだ来ません( ̄□ ̄;)
毎度の事ですが、お願いだからもう少し早く送ってはくれませんか。
そろそろ胃が締め付けられる季節がやってまいりましたよ。
落ちた単位の修復が・・・とか、
無駄に高い教授の本で4万円くらい飛ぶんです。
六法全書とか判例六法とか行政六法とか毎年買い替えだし。
そんなわけで、ポルノのライブを控えつつ、
ダークブルーな空気に浸って(と言うかむしろ沈んで)おります。

元気を出す方法?それは本を読むことなのですが、
いかんせん上にも書いたとおり、時間が無くあんまり読めません(涙)
あー虫歯にさえならなければ・・・
全ての原因はコレです。
最近毎日の様に歯医者に通ってます。

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2007年3月18日 (日)

「あかね空」 山本一力

あかね空 あかね空

著者:山本 一力
販売元:文藝春秋
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おとっつあんが死んだ辺りで読むのを止めていたのを思い出しました。
何だかやり切れなかったんですよねぇ、あの時は。
勿論、今回読んでみてもやり切れなかったのですけれども。
のむさん、しっかりお薦め読ませていただきやした。

京都から江戸に身一つでやってきた永吉は豆腐職人だった。
永吉は幼い頃、親に邪険にされ豆腐屋に奉公に出されたから、
いつもその事を考えていたつもりだったが、
ふいに我が子を見ると、自分がそうしているようにも感じる。
京都と江戸の味覚の違いの苦労や、人の人情、
家族の関係を親子2代にわたり描かれている。

まるで時代劇を見ているような、完璧な配役、展開、江戸人情でした。
この時代劇オタクの私(そうだったんだ)が言うのですから間違いない。
京都の豆腐を判ってくれる人が現れた喜び、
豆腐作りという素朴な職に命を掛ける江戸の心意気。
そう言った粋な感情が溢れ、貧しいながら華やいだ場面を思い浮かべました。
ようやく上向きになった時に起こる不況や、騒動、
お決まり事項ですが、それを乗り越えた時に感じる、
達成感と言うか清々しさは、一筋の思いに比例し格別な気がします。
しかし残念だったのは、親子2代を描いているところなんですよね。
いや、それが良い所なのかもしれないのですが、
私は話を早口で飛ばす部分が、略年表のようだ・・・
と思ってしまい、永吉が不憫に見えてなりませんでした。
結局のところ、最後に強情なおふみしか見ぬまま世を去ってしまう、
それはあまりに可愛そうな事で、子供たちもやり切れないだろうと思います。
せめて永吉が「俺は親に邪険にされて育ったから、自分もそうするのは嫌だ」
とか、おふみが「実はお参りの時に罰が当たったかもしれなくて」
等の夫婦の相談があり、子も更生して、これからも頑張ります!
みたいな感じの部分を経て、死んでほしかったんですよね。
ただでさえ、おふみの両親があんな死に方をしてるのですから。
しかしながら、全体を見てみれば、とてもよいお話でした。
始めに書きましたが、完璧なるお江戸を描いた作品です。
呆気なく死んでしまう、それこそ本来の人間の姿なのかもしれませんね。

★★★★☆*90

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2007年3月17日 (土)

「フリクリ1」 榎戸洋司

200703171_1 

久しぶりにファンタジーが読みたくなり、「フリクリ」を読んでいます。
懐かしいなぁ、買ったの中学生の時ですよ。
実はコレ、アニメの方が格段に面白い。
いや、でも小説も私が読んだアニメ系小説の中では3本指に入るんですけど。

高校生マミ美とイケナイ関係を続けるナオ太。
そんな時、2人の前にべスパを乗り回す非常識女が現われた。
女は突然やってきたかと思うと、
担いでいたギターでナオ太の頭を思い切り叩いたのだ。
家に帰り眠れない夜を絶えていると、殴られた額が疼く。
思わず鏡で額を確認すると、そこからは「角」が生えていた。

戦隊ものかと思いきや、違う、違う。
フリクリこと、「フリクトニク・クリップルウェーバー病」要するに
思春期心因性自己完結皮膚硬化症の話。なんて嘘っぽいんでしょう。
しかしながら、少年や少女の悩みを具現化、やっつけちゃえ感たっぷり、
まさにアニメを狙い作られたと言っても過言では無いお話でございます。
頭からロボットが出てきたり、電磁波やなんかを扱えちゃうギターを
振り回す女が出てきたり・・・と非現実的でありながら、
地の部分では、いじめに耐える少女の葛藤や、
精神だけ大人びた男の子のジレンマを優しく描いている。
幼いながら強く生きる彼らに、はちゃめちゃワールドがプラスされ、
まさにガイナックスだよね、的な展開が広がります。
話的にはエヴァンゲリオンより格段に良いと思います。
完結するし・・・(禁句事項?)
まったりと、だけど少しマニアックさに浸りながら読みたい時にお薦めです。
ちなみに3巻まであります。

★★★☆☆*83

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2007年3月16日 (金)

【映画】檸檬のころ

20070317
すきま風さんと栃木先行公開で観てきました~。
ローカルな感じがとても栃木と合っていましたよ。
それにしてもグッズでレモンリップがない事に憤慨でした(笑)
まぁポストカードは買えたのでよかったですけれども。

本のレビューより引用
---------------------------------------------------------
俺の頭の中・・・
中学校最後の野球の大会、バッターボックスに立った俺の後ろからは、
秋元が指揮をするルパンのテーマが流れている。
同じ高校を目指すと言うのを口実に、俺たちは何かと一緒にいるようになった。
2人で過ごした時間、2人で歩いた道、秋元から香るレモンの香り。
あんなに鮮明に思い出せると言うのに、今、秋元は俺の隣にはいない。
こんなに胸が痛むのに、俺はレモンの香りと共に彼女を忘れなくてはいけないのだ。
そう、俺はルパンばりにクールなのだから、決して泣きはしないけれど。
---------------------------------------------------------

個人的には西ファンだったので、ちょっと残念でした。
だってあんなに出番が少ないだなんて・・・!
とちょっと悔しく思いながら画面を眺めていました。
と言うのも、本を読んだ時も私は西の気持ちに感情移入をしていたため、
あの秋元の気持ちが自分から離れていってしまう、
と言う引き裂かれるような思いが映像で見たいと思っていたからでした。
映画のメインになっているのは、佐々木と秋元との恋。
しかしながら「俺、好きな人とさよならしたこない」と言う、
佐々木の言葉に、ぐっと来て思わず泣いてしまいました。
それと一番良かったのはやはり、白田の歌詞の付いた歌を辻本が歌う所。
座っていた白田が思わず堪えきれず立ち上がり、
体育館へ走ってゆく様子が、頭から離れずいつの間にか涙が頬を伝いました。
演技について言ってしまうと、ちょっと微妙です。
そのぎこちなさが、淡い高校生の恋を描けていたような気もしますが、
無名の方が多かったからか、その「間」と言うか、
ニュアンス的な表情にかけていたように思います。
でもまぁ、泣いてしまった事からも判るように、良い作品だった事は確か。
消える想い、実る恋、終わる恋、どうぞそんなほろ苦い感情を味わいたい方に。

*80

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2007年3月15日 (木)

「さみしさの周波数」 乙一

さみしさの周波数 さみしさの周波数

著者:乙一
販売元:角川書店
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乙一さんも残り少なくなってきてしまいましたが、
やっぱり読みたさには勝てなくて読んでしまいました。
とは言っても、「失はれる物語」に入っていたものもあったので、
新しく読んだのは2編しかなかったのですけども。
「さみしさの周波数」って言う題の話があるのかと思っていたので、少し残念。
そしてあとがきの方が面白いという難点も然り。

「フィルムの中の少女」
唯一の趣味であった映画に携わろうと、
大学生になった私は映画研究会に入ることにした。
監督や役者でなくてもいい、映画が作られる様子を見ているだけで満足だった。
しかしある日、一人部室へやっ来た私は奇妙な一本のフィルムをみつけてしまう。
言いようの無い強烈な興味を引かれ、映写機で映し始めると、
そこにはいるはずの無い少女の後姿が映っていた。
気になりもう一度再生すると、少女が少しだけこちらに体を向けた気がする。

こわ~い!と思って読んでいたのですが、結局そうでもなかった・・・。
そうだよな、スニーカー文庫だし。
とちょっと残念な気もしましたが、この薄暗い怖さは、
久々に乙一さんを味わったという満足感を得ました。
あとがきによると乙一さんは大変苦戦したらしい、
切羽詰った作品のようですが、これはこれで個人的に好きでした。
やっぱりねぇ、いいんですよこの怖さの源である乙一さんの語り口。
淡々と続けているだけの怪談話なのに、いつの間にか
周りを気にするほど話に引きこまれ、必死にいるはずのない少女を怖がりました。
だってだんだんこっち向いてくるんですよ?怖いじゃないですか!
そんな発想と言うか、人間が恐れるポイントを上手く突いてくれるんですよね。
しかしながら、最後は猟奇的で終わってほしいよなぁと言うのが、
黒乙一ファンとしての一言です。
最後の犯人が先生でした、って言うのを途中からずっと期待していたのですが、
なんだ~残念、と言う感じで怖ろしいながらも心温まる話でした。
それはそれでいいのですけども。
個人的には「失はれる物語」が好きですね。

★★★☆☆*80

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2007年3月14日 (水)

「Run!Run!Run!」 桂望実

RUN!RUN!RUN! RUN!RUN!RUN!

著者:桂 望実
販売元:文藝春秋
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陸上のお話だから、とちょっと期待して読んだのですが、
初めから終りまで「?」と疑問が多い作品でした。
あの佐藤さんの「一瞬の風になれ」の影響が強すぎたかも知れません。
桂さんならではの、堅物の冷徹人間が徐々に心を開いてゆく、
と言うシーンも何となくインパクトにかける気がしました。

優は陸上のためだけに生きてきた。
箱根駅伝を途中棄権せざるを得なかった父の夢を背負って、
自分は完璧なアスリートになると決めていた。
夢はオリンピック、たかだか大学生ごときが走る箱根なんて目じゃない。
優がアスリートとして完璧な生活をするなか、
優とは別に医学の分野で完璧を目指していた兄が突然自殺した。
兄は何故死んだのか?
突き詰めてゆくうちに優は自分が遺伝子操作された人間だと知る。

うーん。簡単に言ってしまうと、
今まで陸上だけを見てオリンピックを目指していた人間が、
遺伝子操作されていた、と言う事実により夢を諦めなくてはいけない。
と言う話でした。いやはや遺伝子操作はドーピングでひっかかるらしい。
今の時代ってそんなに遺伝子操作が流行しているのでしょうか?
詳しく知らないですが、このテーマについて、ちょっと壮大すぎて、
陸上で纏めるにはインパクトが強すぎるよ、と残念に思いました。
あえて言うのなら、医療とかの分野でクローンはいけないよ、
見たいな感じで主人公か医者とかなら良かった気もします。
今回は親が決めた身勝手な判断によって、子供が洗脳されてしまう、
そう言う世の中が来るのはいけないことだとは、ひしひしと感じました。
例えその事によって夢が閉ざされてしまっても、
子供は走りつづけなければならないのですから。
しかし、さて遺伝子操作を自分がするのか?と聞かれれば、
きっと「しないよ」と言う方が大半だと思うので、
感情移入は難しいかも知れません。
しかしながら洗脳されてされてしまっていた優が、
はたと本当の自分の夢について考えるシーンや、
周りの温かな環境により冷徹な心が段々に解れていく様子が好きでした。
まぁ、でも出来るならそれがドーピングだから、
みたいな自分ではどうしようもない理不尽な理由ではなく、
今までは孤独に練習していたが、温かい仲間に支えられて~・・・
のような一見平凡な内容の方が涙を誘ったのではないか?と思うのです。
今後の世の中が、遺伝子操作が進み、親が子に理想を押し付ける、
なんて時代が来たら、「なるほどね」とすんなりこの本を
受け入れられる日が来るかも知れません。いや、望んではいませんけども。

★★★☆☆*79

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2007年3月 5日 (月)

「少年アリス」 長野まゆみ

20070305_4
不意に読みたくなって、借りてきました。
図書館でパソコン検索を掛けると、「この図書館にあります」と出るのですが、
一向に見つからないので聞いてみたところ、なんと書庫にありました。
いやはやお手数掛けました、受付のお姉さん、すみません。
でも久しぶりに読めて大満足です。

アリスは作ったばかりの石膏の卵をポケットにいれ、
蜜蜂と一緒に夜の学校へと向かっていた。
蜜蜂はお兄さんに色鉛筆を取ってきてくれと頼まれていたのだ。
人の話を信じやすく冗談の通じない蜜蜂は、真っ直ぐに学校へ向かってゆく。
色鉛筆を取り終えたアリス達は、好奇心で理科室を覗く事にした。
しかし暗いはずの理科室には灯がともり、何やら中から声が聞こえてくる。
そこには人間ではない何かが暮らす世界が待っていた。

久しぶりに読みましたが、さすがは長野まゆみワールド健在でした。
この独特の世界観は長野さんでしか表現できないよなあ~と、
しみじみと中学校の図書館を思い出したりしていました。(昔そこで読んだので)
しかしながら、幻想的な話しながら、きちりと温かさもこめられている、
今回はそこをしっかり味わえたような気がしました。
人の話を真に受けやすく、兄にいつもからかわれている、蜜蜂。
そんな蜜蜂をみてアリスもまたちょっとしたからかいを楽しんで、
兄弟がいる、と言う心強い感覚を味わおうとしている。
でも、幻想的な世界に誘われ、そこに踏み込んでしまったアリスは、
次第に好奇心が恐怖へと変わってゆく瞬間、
「こんなとき、蜜蜂ならどうするだろう?」と思うのだ。
先ほどまでは半ば馬鹿にした部分もあったが、
いざとなった時には蜜蜂は物凄い行動力を見せ、僕は感心していた。
不意にそんな蜜蜂を思い出し、弱気になったアリスが自己嫌悪する姿に、
少年ならではの葛藤や一人っ子と言う寂しさが詰まっている。
こうした日常では起こりえない出来事、長野さんでは幻想的になるわけですが、
それを的確に描き、表現する。
さもすれば、もしかして夢だったんじゃないの?!
と言うような出来事には、恐怖や悲しさ、憎悪などが詰まっていて、
現実では伝えるには生々しい出来事を、そっと語られていました。
よいです、また読み始めようかなぁ~長野さん。
しかしまた書庫取り出しだったら申し訳ない感じなんですけど(笑)

★★★★☆*87

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2007年3月 4日 (日)

「女たちは二度遊ぶ」 吉田修一

女たちは二度遊ぶ 女たちは二度遊ぶ

著者:吉田 修一
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する


微妙・・・。
どうしたんだ?吉田さん。折角期待していたのにがっかりだよ・・・!
と言いたい気もしますが、単にSSに向いてないのかも知れないな、と思う。
11編入っていますが、大体どれもウケなしオチなし。
まぁ個人的には吉田さんの男視点の女の描き方が好きなので、
そこに文句はないですが、もうちょっと引っ掛けてくれても・・・な。

「最初の妻」
13歳の僕は、ある日かずみとデートをした。
いつものようなキャッチボールや裏山探検などではなく、
電車に乗ったちょっとした遠足だった。
たどり着いた小さな町で、かずみは唐突に
「私と結婚したらどんな家に住みたいか」と僕に尋ねた。
次第に周りの家々を指差し質問する。
僕は照れ隠しに「こんな汚い家なら死んだ方がましだ」と言った。
数日後、引っ越した彼女は学校に来なくなってしまう。
それを知った僕は「違う!そうじゃない!」と急に叫びたくなった。

これは11編に共通しているかと思いますが、
男である主人公「ぼく」(全部が同じ人間設定かは判りませんが)が、
女に男として人間として窘められている、と言うような感じがします。
一番印象に残っていたのが「最初の妻」なので紹介してみましたが、
これもデリカシーやそう言う裏側の何かを読み取れなかった「ぼく」が
描かれていて、少し絶望感も感じます。
ぼくってこんなに彼女のことを考えていなかったのか・・・。
彼女はぼくをこの事で試そうとしていたのか・・・。
と言う起きてしまった事を後悔するお話が満載です。
後は傾向的に「やられたな、こりゃ」と女の人に対してため息をつく、
情けない男の姿が吉田さん視点で巧みに描かれています。
が、出来る事なら、ここから発展してくれませんか?
と言いたいようなオチない話が多く、いつもの吉田さんならこんな感情を、
あとの話で活かせるのに・・・!と短い事を悔やみたい気分になりました。
一言感想を述べるならもったいない。
こんな密度の濃いものを11編も書いちゃって、長編に生かして下さいよ。
・・・とそれが私の気持ちでした。
うーん、この作品不評みたいですよ、可愛そうに。
やっぱり、もったいない。

★★☆☆☆*70

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2007年3月 3日 (土)

「卵の緒」 瀬尾まいこ

卵の緒 卵の緒

著者:瀬尾 まいこ
販売元:マガジンハウス
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良いお話でした。
これは現実的にはこんな事ってあんまりないだろうな、
なんて思いつつもいつの間にかその愛情に頷きました。
瀬尾さんが書く温かさの源ここにあり、と言う感じですね。
家族の愛を感じました。

「卵の緒」
僕は捨て子である。
薄々感じ始めていたその疑惑を、どうしても確認したくなった。
僕には父さんがいない、だから色々な事を聞くのを躊躇っていたけど、
青田先生は例え父親がいなくても、親子の証に「へその緒」があると言う。
僕が母さんにそう問い詰めると、母さんは渋々小さな箱を取り出した。
蓋を開けてみると、そこには卵の殻が入っていた。

捨て子、とは少し違うけれど、血の繋がらない子を進んで育てるのに、
この話はちょっと奇異な理由ではないか、と思ったりもした。
別に不妊で悩んでいるわけでもない若い女が子供を引き取るのだから、
それ相応の理由があってもいいはずではないかと。
しかしこの母親は幼い育生を見た瞬間に、
その子供を手に入れたいと心から懇願するのだ。
ちょっと妙ではないか・・・と思わなくもない。
でも本当の母親が我が子を産み、手にした瞬間、
それって多分この母親と同じ気持ちになるのではないかと思った。
又、ずっと子供が出来ず悩んでいた夫婦などが、やむを得ず里子を貰い、
そうしてやって来た血の繋がらない子を見た時、そう思うのでは?と。
そう言う人たちにとっては、血の繋がりなんて些細な問題なのだろう。
確かに大きくなった時に、こうして育生が自分の生い立ちを知ったように、
母親はちょっとした話を設けないといけないかもしれない。
だけど、そんな面倒まで省みずに引き取り、育て上げたのは、
きっと他の誰よりもその子供に愛情があるからであり、
例えその愛情が「へその緒」の様に形ある証拠として残らなくても、
この抱きしめた時の温かさは誰にも負けないでしょう?と。
良いお話でした。
そんな愛情が羨ましいです。

★★★★☆*90

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2007年3月 2日 (金)

■雑談:読みたい本

読みたい本があるのに、読む気になれない・・・。
何だその状況は、と言う感じで。

うーん。
重症。
全部読み途中。

卵の緒 女たちは二度遊ぶ はなうた日和 ありふれた風景画

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2007年3月 1日 (木)

「笑う招き猫」 山本幸久

笑う招き猫 笑う招き猫

著者:山本 幸久
販売元:集英社
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今のお笑いブームを見越した本だなぁとちょっと関心しました。
女二人の漫才コンビ。コンビ愛がとても素敵でした。
裏事情や苦悩や挫折、ウケた時の達成感、どれもなかなかリアリティがあります。
が、あのテレビのシーンは、客がさくらだったんじゃないの?
と一瞬思ったりしましたが、どうなんでしょう。

コンビを組んで足掛け5年。
私とアカコがガッチガチに緊張したままステージに上がった初舞台。
結果は惨敗、客はクスリとも笑わなかった。
でも、衣装だけで着飾った何のひねりも無い、
ヤツらにあんなに笑いが起きるなんて間違っている。
そう批判する私たちは、誰が聞いても笑ってくれるステージをと、
うける漫才に命をかけることにした。
え?どうして私が漫才を始めたかって?
そんなのアカコと漫才をする事が最高だからに決まっているじゃない!

笑わす人、笑わされる人。
相互の睨みあうステージで繰り広げられる、漫才。
あちらで笑い、こちらで笑い、「お、のってきたのってきた!」
と会場に笑いが沸く瞬間がとても気持ちが良かった。
うちらの漫才絶対面白いって!
そんな軽い一言から始まった2人に、いつしか芽生えた「コンビ」と言う、
曖昧でそれでいて親密な関係が、とてもリアルに描かれていた。
笑いを生み出すための衝突、たった一言が原因の心のすれ違い、
2人の、コンビと言う絆は一体どれだけの強さがあるのだろうと不安になる。
家族や家庭の事に口は出せないのだろうか。
心に積もる相手への不満を伝えてはいけないのだろうか。
悩みを打ち明けてはいけないのだろうか。
しかし、ふと立ち止まり自分の原点を辿ってみると、
そこにはゆるぎない答えがひっそりと、でもしっかりと佇んでいる。
私がOLをやめた理由は何?どうして漫才をはじめた?
新しい自分を見つけるため?・・・そんなのお生憎様。
答えは簡単、アカコと漫才をする事が最高だから。ただそれだけ。
家族でもなく、友達でもなく、時には悪い所を指摘しなくてはいけない、
でも実は、その関係は見た目よりもタフで、力強いのだ。
だってそうだよ、人を笑わせるためには、
こちらの心が笑ってなくちゃいけないじゃない!
とヒトミの清々しい気持ちが伝わってくるようだった。
臨場感のある漫才の内容、描写が素敵でした。
願わくば、最後の一試合?は一つ笑わせてから終わらせて欲しかった、
と思うほど漫才のシーンが心に残っています。
しかし伏線を張ったと思われる、エヌ・エッチ・ケーの漫才の笑いの軽さ
についての悩みが、急にネタが新しく無いから・・・
とヒトミが決めてしまったあたりに展開の早さを感じました。
まぁ家族的な事に重点が置かれていたので、それはそれでいい味でしたが、
2人のコンビならではのいかに漫才で笑わせるかの研究が、
もうちょっとあってもいい気がしたなぁと。

★★★☆☆*88

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