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2007年3月 1日 (木)

「笑う招き猫」 山本幸久

笑う招き猫 笑う招き猫

著者:山本 幸久
販売元:集英社
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今のお笑いブームを見越した本だなぁとちょっと関心しました。
女二人の漫才コンビ。コンビ愛がとても素敵でした。
裏事情や苦悩や挫折、ウケた時の達成感、どれもなかなかリアリティがあります。
が、あのテレビのシーンは、客がさくらだったんじゃないの?
と一瞬思ったりしましたが、どうなんでしょう。

コンビを組んで足掛け5年。
私とアカコがガッチガチに緊張したままステージに上がった初舞台。
結果は惨敗、客はクスリとも笑わなかった。
でも、衣装だけで着飾った何のひねりも無い、
ヤツらにあんなに笑いが起きるなんて間違っている。
そう批判する私たちは、誰が聞いても笑ってくれるステージをと、
うける漫才に命をかけることにした。
え?どうして私が漫才を始めたかって?
そんなのアカコと漫才をする事が最高だからに決まっているじゃない!

笑わす人、笑わされる人。
相互の睨みあうステージで繰り広げられる、漫才。
あちらで笑い、こちらで笑い、「お、のってきたのってきた!」
と会場に笑いが沸く瞬間がとても気持ちが良かった。
うちらの漫才絶対面白いって!
そんな軽い一言から始まった2人に、いつしか芽生えた「コンビ」と言う、
曖昧でそれでいて親密な関係が、とてもリアルに描かれていた。
笑いを生み出すための衝突、たった一言が原因の心のすれ違い、
2人の、コンビと言う絆は一体どれだけの強さがあるのだろうと不安になる。
家族や家庭の事に口は出せないのだろうか。
心に積もる相手への不満を伝えてはいけないのだろうか。
悩みを打ち明けてはいけないのだろうか。
しかし、ふと立ち止まり自分の原点を辿ってみると、
そこにはゆるぎない答えがひっそりと、でもしっかりと佇んでいる。
私がOLをやめた理由は何?どうして漫才をはじめた?
新しい自分を見つけるため?・・・そんなのお生憎様。
答えは簡単、アカコと漫才をする事が最高だから。ただそれだけ。
家族でもなく、友達でもなく、時には悪い所を指摘しなくてはいけない、
でも実は、その関係は見た目よりもタフで、力強いのだ。
だってそうだよ、人を笑わせるためには、
こちらの心が笑ってなくちゃいけないじゃない!
とヒトミの清々しい気持ちが伝わってくるようだった。
臨場感のある漫才の内容、描写が素敵でした。
願わくば、最後の一試合?は一つ笑わせてから終わらせて欲しかった、
と思うほど漫才のシーンが心に残っています。
しかし伏線を張ったと思われる、エヌ・エッチ・ケーの漫才の笑いの軽さ
についての悩みが、急にネタが新しく無いから・・・
とヒトミが決めてしまったあたりに展開の早さを感じました。
まぁ家族的な事に重点が置かれていたので、それはそれでいい味でしたが、
2人のコンビならではのいかに漫才で笑わせるかの研究が、
もうちょっとあってもいい気がしたなぁと。

★★★☆☆*88

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コメント

るいさん、こんばんは~。

私がこの作品を読んだのはしばらく前だったのですが、
るいさんの記事を拝見して、読んだときの感じを思い出しました。
どうしてもヒトミに肩入れしてしまって、女の子女の子した服装をしたアカコがなんと憎らしく思えたことか(苦笑)

>だってそうだよ、人を笑わせるためには、
 こちらの心が笑ってなくちゃいけないじゃない!
そう思っていけるヒトミだからこそ、あれこれ悩みつつも前へとすすんでいけるのでしょうね。

うーん、また山本作品を読みたくなってきました。
最近ご無沙汰でしたが、また読み始めようかしら。

投稿: くろ | 2007年3月 2日 (金) 21:15

>くろさん

こんにちわ~!
TB&コメントどうもありがとうございました!

そうそう、ちょっと前の記事でしたので、TBを躊躇ったのですが、
図々しくもお邪魔させて頂きました(>△<)
私もそう思いました、なんとなくヒトミに肩入れしちゃいますよね。
赤いハイヒールでどこ行ってんねん!
とちょっとツッコミを入れてみたり(笑)

それと、ヒトミの中での葛藤がとても好きでした。
コンビとしてアカコに対してどれだけ踏み込んでいいのだろう?
というヒトミの姿に心が打たれました。
でもそんなこと考える必要はないって、
あの緑の招き猫を正面に向きなおすシーンを考えると、
何だが気恥ずかしいと言う顔をしているヒトミが浮かんできました。
躓きながらも前を向きずいずいと進んでゆくパワー、私も欲しいです。

山本さん、「幸福ロケット」とまた違った感じの本でした。
色々な顔?が楽しめていいですね。
私も「はなうた日和」を貸し出し期限内に読もうと必死です(笑)
他の作品も読んでみたいと思います。

投稿: るい | 2007年3月 4日 (日) 10:42

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» 笑う招き猫(山本幸久、集英社) [にゃんこと歩く。-読書日記-]
ふふふ。 あの、「高飛び」の途中に読んだ作品。これだったのだー。 毎度、お世話になっていますBEEさんからオススメされた本です。 身長180センチ、27歳独身のヒトミ。 弁当屋で時給600円のアルバイトをしながら、女二人で漫才をしている。 コンビを組む相方は身長150センチ以下、ずんぐりむっくりのアカコ。 売れないけれど、そりゃあアツい二人の、全力で本気で真剣な、漫才ライフ。 いや〜、これ、非常にすっきりした、�... [続きを読む]

受信: 2007年3月 2日 (金) 20:52

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