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2007年3月25日 (日)

「ボーイズ・ビー」 桂望実

ボーイズ・ビー ボーイズ・ビー

著者:桂 望実
販売元:小学館
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こりゃ良かった。
「Run!Run!Run!」ではちょっと「?」と言う感じでしたが、
こう言うシンプルな方が桂さんは描くのが上手いと思いました。
ぶっきらぼうな口調、でもじんわりと心を突いてくれる良いお話です。
ちょっと泣けるかも。電車なので我慢してしまいましたが・・・。

ママが死んだ。
小学校6年生の隼人はその悲しみを必死に堪えていた。
弟である6歳の直也に「ママが死んだ」と言うことを教えなくてはならない。
直也は人の「死」と言うものを理解できていないのだ。
そんな隼人の気持ちに気づかず、パパはクリスマスに何が欲しいと聞いてくる。
「そんなの決まっているじゃないか、僕たちはママが欲しいんだよ」
痛切な思いを隠し切れず、隼人は自分だけの秘密の場所へと歩きだす。

桂さん、好きなんですよねぇ作風?が。
何となく全体的に観たら文学的にどうなの?と言われるのかも知れませんが、
やっぱり心にグッとくる文章を書いてくれるんですよね。
今回は母親に先立たれた少年の心境がありありと描かれていて、
胸を締め付けられるような思いに駆られました。
小学生の隼人は、6歳の弟に「死」について教えなくてはいけない。
「ママは死んだんだ」
毎日母親のいなくなった病室をふらりと訪れる弟を哀れみ、
死ぬという事が、もう2度と会えないと言う事で、
でもママは遠くから見守ってくれているんだよと伝えるのだ。
しかし、お兄ちゃんだから、と言う理由で責任感に悩む隼人だが、
たかだか小学生の子供なのだ、悲しくないわけがない。
弟のために必死になるあまり、自分の悲しみに気づいていない。
ママの双子のお姉さんが新しいママになるのも嫌、
ママもいなくなってパパもいなくなるなんてもっと嫌。
そんな切実な思いがじんじんと伝わってきて、心が痛くなりました。
このお話は、もう一つストーリーがあり、70歳のおじいさんも出てくる。
栄造は頑固者で子供なんて大嫌いだ。しかし、自分の乳母の死の悲しみを、
隼人の母の悲しみに重ねてしまい何かと面倒を見るようになる。
「どうしたんだ俺は、どうかしている」そう呟きながら、
嬉しそうな顔をしている頑固親父の顔が目に浮かび、思わず微笑んでしまう。
隼人は抱えていた悩みを相談できる初めての大人である栄造を得て、
栄造は人と関わる大切さと人の温かさを隼人から得る。
今までトゲトゲと周りを威嚇していた2人が、
徐々に柔らかく打ち解けるようになり、周りには笑顔が広がり始める。
そんな感覚を描くのが桂さんはとても上手で、思わずホロリときます。
今まで読んだ3冊の中で一番いいかな~。

★★★★☆*92

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