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2007年1月27日 (土)

【映画】それでもボクはやってない

200701280_2
主演:加瀬亮

「敬愛なるベートーヴェン」を観た時に予告でやっていて、
これは観なくてはいけないな、となぜかしら使命感に燃えた作品でした。
何と言っても周防監督ですしね。
それだけでも見る価値たっぷりです。

-------------------------------------------------------------
忘れ物をした、と慌てていたボク。
鞄を持ち、満員の電車に駆け込むと、駅員がぎゅうぎゅうと背を押してくる。
ようやくドアが閉まったと思ったら、背広の後ろがドアに挟まっていた。
次の駅では向かい側のドアから降りなくてはいけないのに、
このままでは降りられないじゃないか。
込み合う車両の中必死に背広を引っ張っていたら、
前から急に女の子の声がした「やめてください」。
ボクの事だろうか・・・?

次の駅に着くと背中側のドアが開いた。
「痴漢したでしょう」ボクは女の子に袖を捕まれてしまった。
-------------------------------------------------------------

正直、観ていてイライラしました。
何故なら、事実に忠実だったからです。
始めにいいますが、是非見た方がいい内容です。
でも事実に正確すぎてイライラする。
そんな経験を一度味わい、この国に疑問を抱く事が大切です。
主演:加瀬亮がとてもいい味を出していて臨場感もありますしね。

日本の法制度は抜け穴が沢山ある、といいますが、
それと同様に冤罪が多い国でもあります。
そして、まさに今回の題材である「痴漢行為」。
そもそも「痴漢行為」なんて他の国では殆ど存在しないので、
これは恥じるべき事実として国民が考えるべき事柄です。
近年増えている「痴漢」が何故発生するのか、
また何故「痴漢」を減らす事が出来ないのか、それは意見の違える所ですが、
しかし今の現状で一番の問題は、それを裁くはずの警察・裁判所側が、
あまりの問題発生率のお陰でパンクをしている事にあると思われます。
事件が発生してしまった以上、逮捕し、拘留し、取調べ・・・と
一人当たり様々な事柄を行わなくてはいけません。
長ければ半年、多ければ500万かかる。
しかしどうでしょう?
「すみません」と言ってさえしまえば事実を認め、
加害者は「迷惑防止条例違反」で罰金3万円。それだけで済むのです。
膨大な痴漢犯罪者を処理するのに掛かる時間、金、動労と、3万円、
さてどちらが楽でしょうか。
そう聞かれ、3万円を取らない方はほとんどいないでしょう。
そしてそこには「ここで認めれば家族にはばれませんから」とか
「会社を首にはなりたくないでしょう?」と言う、うたい文句まで付くのだから。

それでもやってない。

今回の題材でもありますが、その犯行を否認した場合どうなるか。
結果、殆どの方が後悔をするはずです。
何故なら、ここで天秤に賭けられるのは、
「法律を頭から通し、犯人を逃さないと言う国の利益」と、
「痴漢行為としたと言う名誉の損傷。しかもその代償は3万円」なのだから。
逮捕し、拘留し、無罪になる。
それはイコール国が「自分は間違っていました」と言うことなのである。
そんなのは国のプライドとして許されない事なのです。
おまけに国民はそんな優柔不断な国を見て、言う事を聞かなくなるでしょう。
だから、警察や検察、裁判官は自分の利益のために、有罪にするのです。
いわば被告人は初めからバイアスが掛かった状態で裁判に挑むしかない。
「無実の人を誤って裁かないために裁判官はいる」
そんなセリフを言う登場人物がいますが、まさにそれは理想郷でしかありません。
冤罪者を増やさない。
まず「増やさない」と言う時点で誤りかと思いますが、
「冤罪者」を出さないと言う事は、事実無理であるから仕方が無い。
でもそこを極力努力して、「無罪」にする努力。それが必要なのである。
嘘と戦う裁判官。
誰もが千里眼を持ち真実を見極められるわけではない、
だからこそ徹底した調査と、誰もが納得する裁きを人は求めるのです。
原告が嘘をついた、被告が本当の事を言った・・・
そんな事は裁判官だって誰も真実は判らない。
でもそこで「被告は本当の事を言っているかもしれない」と、
一歩踏み出さなくてはいけない。
「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」
今だ叶わない、わが国の願いですね。

*95

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コメント

 観てこられたんですね。
 TBさせていただきます☆

 実際に同じ目に遭ったら、
 “妥協”して罰金払ってしまう人が
 大半でしょう。
 そのことを、この映画を観たあとでは、
 けっして非難できない・・・。

 いろいろ考えさせられますよね。
 るいさんの記事も、
 いちいちうなずきながら読んじゃいました。

 あ、そうそう、主演は加藤さんじゃなくて、
 加瀬さんですよ。

投稿: miyukichi | 2007年1月28日 (日) 17:03

>miyukichiさん

こんばんわ!
TB&コメントどうもありがとうございます^^*

すみません・・・いや、何かもう謝るしかないと思いました(苦笑)
私には文字を読み取ると言う機能が欠落しているようです。
(だから私が直すとよくシステムエラーを出すのでしょうか・・・)
加瀬さんでしたかぁ、ハチクロの人ですよね?
ハチクロ自体観ていないのでよく演技は知らないのですが、
今回はまさに迫真の演技だったなぁと。
あのナヨナヨ感がよいのですね、きっと。

>実際に同じ目に遭ったら、“妥協”して罰金払ってしまう人が大半でしょう。

本当そうですよねぇ。
警察のあまりの杜撰さにちょっと度肝を抜かれますけど、
でもそれ以上に、「妥協」に傾いてしまうこの現状が許せませんね。
だからと言って「こうしなさい」と言ういい案も無いわけですし、
そこがまたイライラの原因と言うか、何と言うか。
極論を言ってしまえば、「痴漢したら死刑」がいいですね。
そうすれば、そのうち「痴漢」の発生件数が確実に減りますし。
でもそうすると、人権問題とかね、そう言うのが絡んでくるから・・・。
なんだが法学学んでいて思うのですが、毎度毎度そんなんばかりなんですよね。
どっちつかずの「妥協」の線引き対決。
この事件にこの刑は軽すぎる、とか、この人は善人だから、とか。
その煮え切らない法論争。
勿論今の法が良いだなんて言いませんけども、
でも結局変えたとしても、少し経つと、やれ人権だ、冤罪だ、
と騒ぐに決まっていますから、それを考えると、「どのみち一緒じゃん?」
とか冷めた意見を言ってしまいそうで。
今更ですが、私はとても法学に向いていません・・・(苦笑)
右派的過ぎます、私は。

色々考えさせられましたよね~、本当。
でも例えば、楽しくないな、と思ったとしても、
この映画は、何も考えずのうのうと生きている人たちに、
この国に対してちょっとでも考えてもらうためにありますよね。
早く金曜ロードショーで流して欲しいなぁ、と思います。
気が早い(笑)

投稿: るい | 2007年1月28日 (日) 23:34

見たよ!見ました。

加瀬亮のスーツ姿に、まず萌えて(笑)
で、どうでもいいけど、もたいさんとか光石研さんとか、「めがね」に出ている人が集結していたのもある意味面白かった。

で、真面目な感想。
見てよかったなあと。

話題性のあった作品だったし、どうせ大したことないんでしょ?とか思っていたんですわ。私。

でも・・判決が出たときのあの場面・・

「そりゃないだろう・・」

と何だか酷く焦燥感に襲われた。

本当に痴漢をおかした人間は簡単に社会に復帰して、きっとまた同じ罪をおかしてもまた復帰して・・を繰り返しているんだろうに、やってもいない痴漢行為の罪を事実通りに批判したというだけで、こんなにも長い間戦い続けなければいけない。

国、裁判官、警察、検事・・対抗すべきものが多すぎて、勝ち目のない裁判で、ただひたすらに無実を主張する・・
それがどれだけ大変なことか。

冒頭から最後にいたるまでの3年間。
加瀬亮演じる主人公の顔が、どんどん憔悴しきっていくのもやるせなく、そして見事に演じきっていたね。

何で日本って、こうなんだろう・・って強く思った作品でした。

投稿: すきま風 | 2007年11月 4日 (日) 12:04

>すきま風さん

観ましたか!よかったよかった。
これは絶対観ておいた方がいいと思う映画の一つだから。
周防監督の日本をおちょくってやろうっていう心意気に乾杯の作品。
私は法学部だけど、それに出てくる事例はこんなんばっかりだからね。
裁判官のさじ加減で何でも変わっちゃうって言う皮肉な話。
まぁ裁判官だって人間なのだから仕方ないと言われれば、
しょうがない気もしてくるけど、どっちに転ぶか分からないし、
その決定が一人の人間の判断だなんて、ちょっと馬鹿らしくて笑える。
本当に、そんな日本でいいのかい!って感じだよ。
情状酌量の余地…何てのも議論の元だね。
そう言うこと、当事者になってみないと、現代の人たちって考えないから、
こういう映画があると、ちょっと道徳的にいいよね、
という意見が私の8割を埋めてました。
ってか、離婚裁判の滑稽さ、とか、
未成年殺人事件での情状酌量をどうするか、とか、
こんなんでいいのか?みたいなこういう映画をもっともっと作れば、
反対意見も出てきて、学生戦争までは行かずとも、
今の日本を疑問に思ってくれる人が増えると思うんだよね。

>「そりゃないだろう・・」
>と何だか酷く焦燥感に襲われた。

そうそう、そう思ってもらうのが、周防さんの狙いだったに違いない。
私も結末を予感しながらも、イライラしながらそう思ったよ。

…と話題はそれてしまいましたが、熱く語りすぎました。笑
加瀬さんスーツだったね。
もえもえでした。ネクタイをして眼鏡もついてると更によし。
ようやく浪人を終えたはずだったのに…!!笑

>「めがね」に出ている人が集結していたのもある意味面白かった。

そうだね!!…観た時はキャストは殆んど重視してなかった^^;
というかこの映画豪華だよね。
でもやっぱり、この映画の成功の秘訣は加瀬さんのひ弱な男役でしょう。
あぁ「オリオン座からの招待状」も観てみようかなぁと言う気になるよね。
この間の「めがね」もよかったし。

投稿: るい | 2007年11月 6日 (火) 14:57

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