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2006年12月27日 (水)

「優しい音楽」 瀬尾まいこ

優しい音楽 優しい音楽

著者:瀬尾 まいこ
販売元:双葉社
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面白い事思いつく人だなぁ、とちょっと感心した。
瀬尾さんのふんわりとした作風は健在で、
正面から考えると曲がったり歪んでしまう心を、優しく包み込む様に描いている。
しかし伝えたい事ははっきりしっかり訴えて、
それでいて嫌味にならない独特な雰囲気を携えている。短編3本。

「優しい音楽」
駅で衝撃的な出会をし、恋人になった千波。
次第に親密になってゆくが、何故か千波は僕を家族に紹介しようとしない。
やっとの事で彼女を説き伏せ、両親に会った時の彼らの反応は、
彼女が僕をはじめて見た時の表情とまったく同じだった。
不思議で偶然な出会いから生まれる、必然の恋と愛情の話。

始めの方で展開は読めてしまったのですが、心が温かくなるいい話でした。
兄とそっくりな彼氏。それってどうなのかな?と思うけども、
例え偶然顔が似ているから、と近づいた2人であったとしても、
その後その間に生まれる感情は2人のものだから、顔がどうって物じゃない。
2人で過ごす間にその愛の深さを感じる事が出来るのだろうけど、
ではやはり問題なのは千波の家族との関係である。
あまりの酷似に、まるで息子のように接する両親の思いは、
重すぎるし、どれだけ主人公を悩ませ、傷つけただろうと思う。
しかし息子を亡くしてばかりの両親の立場を取って考えれば、
まるで息子が帰ってきてくれた奇跡の様に映るのかも知れない。
そうした2面からの矛盾が続き、その隙間を埋めるために、
例えば、もし自分が嫌いであっても兄が好きだった物を美味しいと言う、とか
努力しなければならないし、どちらかが何かを我慢しなければいけない。
そんな複雑に絡まった問題を胸に抱いていたとしても、
自らが奏でる音楽のセッションで心を通わせると、
「自分は亡くなったお兄さんではないけれど、
お兄さんとは違った色で、この家族に溶け込んでもいいですか?」
と言う暗黙の温かな問いかけが流れ分かち合えて行く気がする。
そこが、この作品のとても魅力的なところである。
優しい音楽、まさにその通り。

★★★☆☆*87

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コメント

 こんばんは♪
 読まれたんですね~☆

>伝えたい事ははっきりしっかり訴えて、
 それでいて嫌味にならない独特な雰囲気

 うんうん、ほんとそうですよね。
 瀬尾さんの力量と底にある優しさを
 すごく実感できました。

 「自分は亡くなったお兄さんではないけれど、
  お兄さんとは違った色で、
  この家族に溶け込んでもいいですか?」

 そうそう、そうなんです。
 そういう会話が聞こえてきそうでした。
 なんか、思い出して泣けてきそうなくらい、
 ピタッとあの場面を言い当ててますよ。。。

投稿: miyukichi | 2006年12月27日 (水) 23:34

>miyukichiさん

こんにちわ!
TB&コメントどうもありがとうございます^^*

読みましたよ~miyukichiさんのレビュー通りとても良い本でした♪
瀬尾さんってすごいなぁ、と関心します。
作家さんによって雰囲気がある、って言うのは判りますけど、
文章でここまで温かい気持ちにしてくれる作家さんは他にいませんね。

>なんか、思い出して泣けてきそうなくらい、
>ピタッとあの場面を言い当ててますよ。。。

そう言っていただけると嬉しいです!
本当、あの場面はとても感動しました。
尖っていた角が丸くなるような・・・、そんな感じがして、
この本のコンセプト?をより一層際立ててくれている気がします。

瀬尾さんの本、図書館で借りようと思うのですが、
人気があるのか、冊数が少ないのか、予約待ちが物凄いです(涙)
今度読めるのはいつだろう・・・とちょっと凹んでいたり。
栃木の町の図書館にでも行ってみようかなと思います。
「図書館の神様」気になっています。

投稿: るい | 2006年12月29日 (金) 12:56

こんにちは~。
るいさんの記事を拝見して、
ああ、そうだった、こういう優しい空気の作品だった!
とありありと思い出しました。

瀬尾さんの本は、私の地元図書館でも、
コンスタントに予約が入っていますね。
うーん、早く文庫にならないかな~。
「図書館の神様」もぜひぜひ、楽しんでください!

投稿: くろ | 2006年12月30日 (土) 14:21

>くろさん

こんにちわ!
TB&コメントどうもありがとうございます^^*

>ああ、そうだった、こういう優しい空気の作品だった!

本当、優しい感じのする作品ですよねぇ!
突拍子も無い事が起きてビックリするのだけど、
それを優しく包んでくれて、いつの間にかまったり和やかな雰囲気に。
瀬尾さん凄いなぁ・・・と改めて感心してしまいました。
絶える事の無いこの絶妙な柔らかい雰囲気と、
面白い角度からの話の展開に思わず頷いてしまいますね。

そうそう、瀬尾さんの本予約が凄いんですよね。
特に今年出た本とかは「いつ読めるだろう・・・」と悲しくなるくらい。
私も文庫化希望です!早く出ないかなぁ。
「図書館の神様」予約入れておきました!
受け取れるのは来年ですけど、結構早く順番が廻ってきそうで、楽しみです。

そう言えば・・・この間知ったのですが、瀬尾さんって学校の先生なんですね。
いいなぁ、私も中学生の時こんな先生に教わりたかった・・・!!(笑)
先生をしながら作家、って多いのでしょうかね。
結構大変そうですけど。そう言えば北村薫さんもそうですね。

投稿: るい | 2006年12月31日 (日) 12:54

るいさんのこの記事を読んで、気になって図書館で借りてしまいました。

これは良かったです。
特に「優しい音楽」の雰囲気と話の内容がちょっと切なくて、でもとても温かな気持ちにさせてもらいました。

トラバさせて頂きますね★

投稿: すきま風 | 2007年1月17日 (水) 22:54

>すきま風さん

こんばんわ!
TB&コメントどうもありがとうございます^^*

読まれたのですね~瀬尾さん初ですか!
おめでとう(?)ございます(笑)
なんだかとても不思議な感じのする作家さんだと思いませんか?
私は一番最初(「幸福な食卓」でしたが)に読んだ時、
「なんなんだこの妙な感じは・・・!!」と、
あまり人に言えない違和感を覚えていました・・・。
だって、なんでこんなに悲しい状況を、結構淡々と話しているのに、
いつの間にかほんわか、ふんわりした話に纏まっているのです。
まるでグリム童話のような・・・ちょっと極端な説明ですけど;
もちろん、いい意味の不思議なパワーを感じます。

私も一番「優しい音楽」が好きですね。
たぶん他の作家さんがこのストーリーを書いたら、
とんでもなく暗い話になりそうですが、瀬尾さんだとそうならないよなぁ、
と私はいつも何故か比較してしまう癖があります。
でも春樹さんがこの話書いたら、どんよりもんもんな主人公な本になりそう、
とか勝手に想像して、瀬尾さん凄い!とか考えたり(かなり偏見です・笑)
何と言っても、瀬尾さんと音楽、瀬尾さんとお菓子、瀬尾さんとぬいぐるみ・・・
そう言う可愛い組み合わせが似合う、そんな文章がとても好きです。

よいな~と思ったら、次は是非「幸福な食卓」を!

投稿: るい | 2007年1月17日 (水) 23:25

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