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2006年12月25日 (月)

「7月24日通り」 吉田修一

7月24日通り 7月24日通り

著者:吉田 修一
販売元:新潮社
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あれ?これって「7月24日通りのクリスマス」の原作ですよね・・・?
クリスマスについての話がほぼ出てこないのですが、
映画はちょっと違うのでしょうか?
なんだか吉田さんにしてはしっとりしすぎていて、らしくない、黒くない。
何と言うかうーん綺麗な藍色、みたいな感じがしました。
結局「色」について答えが出てきませんもんね、気になっていたのに!

最近、自分の住むこの町をリスボンの街と当てはめて過ごすのが趣味で、
特に明るくもなく地味で冴えない私には、美しい弟・耕治がいる。
ずっと可愛がってきたから、耕治には相応に見合った彼女が必要だし、
そして当然ながら周りが羨むような幸せを手に入れるべきだとも思っていた。
しかし、結局耕治が私に紹介してきた彼女は地味で冴えない女。
憧れだった先輩との恋に終止符を打たざるを得ず、
惨めな思いをして傷つく自分と重ねてしまい、酷く嫌悪する。
周りの穏やかさを選んでしまう上、いつも「間違えたくない」
と躊躇する心を振り切って、どうか輝く自分を手に入れたいと願う恋愛小説。

何だか初めて読んだかも、吉田さんの純粋恋愛もの(笑)
なかなか、いいですね。臭い言い方ですがピュアな感じが。
何をやっても冴えない自分を、自ら嫌っている事に気づかない主人公。
人に気をかけすぎるから、自分にかける事を忘れ、自己嫌悪ばかり続く。
でも自分に似た状況、すなわち耕治の前に現れためぐみが、
まるで先輩とは釣り合うはずの無い私の様に感じて戸惑うのだ。
美しく輝く男を前に緊張する地味な女。
それは彼女が最も嫌う女であり、またそれは自分自身でもある、
その対比が面白く、尚且つ切なくて悲しい。
「この子は自分のようだ」と気づく一方で、
やっぱり私もこんな風に周りから惨めに思われる、
そう思いながらも耕治のように輝くような男に守ってもらいたいと願っている。
「結局はモテる男が好き」自分が地味で冴えない分、
どこかでないものねだりをする様子が人の性とか、そんな気がしてならない。
最後の方にポイントとして出てくる警備員。
地味でありながら、周りを色分けし客観的に観察する、
と言う本田にはない能力に惹かれながらも、多分どこかですれ違っている。
落ち着く事だけを考えていた主人公が、
飛び立つ様子、まるでジェットコースターに乗った後の爽快感を求めるような、
少し怖い物見たさで初々しい様子が、この小説では一番魅力的だと思う。
それにしても、亜希子は読んでいてイライラしました。
でもそう言う人、いますからね。人に遮られる人生・・・
その雲間を抜けられたら、きっと悪くない人生が待っている。
・・・・といいんだけど。な終りも好き。

★★★★☆*87

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コメント

おはようございます。るいさん。

>飛び立つ様子、まるでジェットコースターに乗った後の爽快感を求めるような、
少し怖い物見たさで初々しい様子が、この小説では一番魅力的だと思う。

そうですね。うまく形容してあると思います。私もそう思いました。
読後感のよい小説は、とても気持ちのいいものですよね。

投稿: ゆう | 2006年12月26日 (火) 08:41

>ゆうさん

こんばんわ!コメントどうもありがとうございます^^*

やはり最後の部分を良いと思ったそうで!
あの清々しさは凄く良かったですよね。
不安を抱えつつジャンプする様子が、輝いて見えて
いつもの吉田作品よりも爽快感を感じました。

>読後感のよい小説は、とても気持ちのいいものですよね。

本当ですね!
久しぶりに気持ち良く読み終わりました。

まだお邪魔させてください♪

投稿: るい | 2006年12月26日 (火) 22:18

 こんばんは♪
 TBどうもありがとうございました。
 こちらからも、TBさせていただきますね。
 (実は、作品にあんまし好意的な評じゃなかったもんで、
  TB躊躇してたんです^^;;)

 ジェットコースターの爽快感ですかー、なるほど。
 たしかに、最後、小百合はかなり思い切ったんでしょうね。
 私的には、めぐみちゃんは好感もてたんですけどね。
 
 亜希子にはイライラしたけど、
 何もいえずな小百合にさらにイライラしちゃいました^^;;

 

投稿: miyukichi | 2007年1月22日 (月) 20:23

>miyukichiさん

こんばんわ!
TB&コメントどうもありがとうございます^^*
いえいえ~どんな感想でも読むのは勉強になります!!
と言うか、むしろ私の方がけちょんけちょんに言っている本多いような;
いつでも何でもTBどうぞ、楽しみにしています♪

そうそう、実は私も結構肩透かし感はあった本です。
映画になってるし~しかもキャストがなかなかいいし~・・・。
と期待していたので、あれれ??と物足りなさが。

miyukichiさん、小百合お好きじゃないようですね(笑)
私は結構両方に共感できましたけど、
あのダメさっぷりが極端だったからでしょうかね。
元はと言えば、小百合が自分でうじうじ思い悩んでいる姿が、
めぐみの姿に重なって、「まるで自分を見ているようだ」と言う、
鏡の前の自分にイライラする・・・と言うようなそんな作品な感じがしました。
めぐみは耕治と自分と釣り合わないって思いたけど、踏み切れた。
小百合はそれを見て「頑張ってみよう、不安があるけれど」、
と言う部分が見せ場だったような。
個人的にはまさにジェットコースターですね(笑)

そう考えると、「東京湾景」も結構内面うじうじ系ですねぇ・・・。
吉田さんの作風ともいえるかもしれませんが、悶々と考えるキャラクターが多い。
私的に男の子が主人公の吉田さんが好きです。

投稿: るい | 2007年1月22日 (月) 23:35

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受信: 2007年1月22日 (月) 20:04

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