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2006年12月28日 (木)

「ランドマーク」 吉田修一

ランドマーク ランドマーク

著者:吉田 修一
販売元:講談社
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えーっと。コンセプトは判るのですが、その組み合わせ方に感服と言うか、
何故そんなことをするのか、と言う謎が多く。
つかみ所の無い思いを表現するためにはやはり奇抜な事が必要なのか?
かなりの濃さでマゾヒスト要素を含んだ話なのでお気をつけを。
まぁでも特にいやらしさも無く、淡々と読むには差し支えないです。

大宮に建築中のスパイラル構造の巨大ビルディング。
長方形がねじれ上がるように聳え立つそのビルを建てるために、
設計士や土木作業員、内装工など、膨大な数の人間がここにやってくる。
着実に作業が進み、地面から遠のいて空に近づく足元を踏みしめながら、
隼人は毎日同じ目標で同じ動きをしている自分に嫌悪感を抱いていた。
腹を立てることもなく同じ作業を繰り返している自分に腹を立て、
どうしたらこの矛盾に富んだ苛立ちを解消できるかと、貞操帯を装着する。

どこまでも続く螺旋状の世界に気づいて、
そしてそれを嫌悪しているにも関わらず、人間はそれに気づかないフリをする。
無視をして上り詰めていった先に待っているのは、死である。
主人公・隼人は、自ら貞操帯を装着する事で、
自分をイライラさせ、気づかないフリをする自分を強制的に振り向かせ、
その不可思議な世界に正面から立ち向かうように仕向けている、
と言う姿が、読む側としてはとても不思議に映る。
しかしながら、そうした苛立ちこそが、人間として、もしくは生物として、
もっていなくてはいけない感覚であり、それでいて未だ解決はされない。
隼人が貞操帯を装着しつづける事は事実上無理だ、と言う事からも解るように、
人は結局その螺旋状の上で生きてゆくしかないのだ。
でも、自殺した良助のように、まるでその螺旋状にすら気づいていない、
ある意味お気楽なで危機感のない人間に限って、
その不可思議な現象を突きつけられた時、死を選ぶ事しか出来ない。
周りの喧騒や談笑、問題や奇跡が起きたとしても、
螺旋状の軸はずれる事無く人間を回しつづけるのである。
そう、この本が章によって違う事を述べながらも、
10・9・8・7・・・と順にカウントダウンを続けていくように。
深いな、吉田さん。
それでいて今回は表現がはっきりしているから、とてもよく伝わってくる。
まぁ別に貞操帯でなくても・・・と言うのはありますが、
自然の原理として、納得しやすい気もします。
最初・・・衝撃的ですけどね(苦笑)
うーん、村上龍氏よりはマシかな。

★★★☆☆*85

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