« 「九月の四分の一」 大崎善生 | トップページ | 「さよならバースディ」 荻原浩 »

2006年12月 8日 (金)

「出口のない海」 横山秀夫

出口のない海 出口のない海

著者:横山 秀夫
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


あー・・・泣いた。疲れた。
横山さんの刑事ものも記者ものもいいけど、戦争ものもいいな、と思った。
あえて言うなら、もうちょっと序章が長くてもいいような・・・。
短くて何が起こったのか判らず、読む気になりづらい雰囲気がある。
並木の章に入ってしまえば、もうそこからは言う事無しです。

時は第二次世界大戦―そこには甲子園で優勝をした豪腕ピッチャーがいた。
大学へ進学し、いよいよ職業野球を目指せると意気込み始める頃、
その右腕は悲鳴をあげ、ボールをホームまで投げる事さえ出来なくなってしまった。
激戦が繰り広げられる最中、野球を諦めきれない彼も間もなく徴兵されてしまう。
国、それから家族と仲間を守るため、戦う事を余儀なくされ、そして、
彼は自らの命と引き換えに追撃する、特攻隊を志願した。
死の間際でさえも定まらない死の理由と、戦争への疑問。
複雑な思い抱きながらも魔球を完成させようと死の世界へ駆け上る。

「兄さん。お国のために立派に死んできてください」
そう敬礼するトシの様子を思い描き涙が止まらなかった。
こんなことってあっていいのだろうか?・・・と疑問と複雑な思いが過ぎる。
トシの中ではごく当たり前のことを言ったのであろう、
戦争の時代に生まれ、幼い頃から戦争に勝つことだけを教えられているのだから。
甲子園を優勝した兄が誇らしかったように、
特攻隊として国のために命を捧げる兄はどれほど立派に映っただろう。
しかし、それは間違っている。その歪みがとても痛烈だった。
兄一人が死んだところで国が勝つわけでもなければ、家族だって救えない。
むしろ、かけがえのない青年を犠牲にしているだけに過ぎない。
目の前を過ぎる爆撃を前に私が同じ事を言える自信は到底無いけれど、
この悲惨なまでに腐食された戦争と言う悪魔が憎たらしかった。
隣を次々に飛び出し死んでゆく同志たちを見て、
自分の番は今か今かと待ちわびる姿が焼きついてはなれない。
これが飛んだら、死ぬ。死に直面した時の人の気持ちと、
死人を送り出さねばならない補助員の様子が、痛々しく、辛い。
いい話、だけど並木の最後がなぁ・・・あれでよかったのかな、と少し思う。
でも確かに並木が伝えてくれた思いは重かった。
涙したのは、失敗・自信の喪失・焦燥・・・もっぱら特攻出撃時でした。
(と言いつつあの「ボレロが聞きたい」の理由が薄かったと思うのですが;)
最後はしっとりと纏められて、老人が語る懐かしい日々、と言う形になる。
しかしながら、話の殆どが並木の戦場を写しているため、
まるであの時の2人が並木と言う人物をその目で懐かしんでいるようで良かった。

★★★★☆*88

|

« 「九月の四分の一」 大崎善生 | トップページ | 「さよならバースディ」 荻原浩 »

コメント

るいさん、TBとコメントをありがとうございました。
るいさんのブログも読ませていただきましたが、とっても読みが深いですね。
興味深く読ませていただきました。
また、遊びに参ります。
ありがとうございました。

投稿: kim | 2006年12月 9日 (土) 20:49

>kimさん

こんばんわ!
TB&コメントありがとうございます^^*

>るいさんのブログも読ませていただきましたが、とっても読みが深いですね。

記事を読んで下さったそうで、どうもありがとうございます!
お恥ずかしい限りですが、お褒めの言葉まで・・・!とても嬉しいです。

こちらこそまたお邪魔させてください♪

投稿: るい | 2006年12月10日 (日) 01:16

どうもわざわざありがとうございました。トラックバックがまだよくわからないで、こちらからはできないのですが、また暇なときに来ていただければと思います。

投稿: ホルスタイン | 2006年12月10日 (日) 16:13

>ホルスタインさん

こんばんわ、こちらこそコメントありがとうございます^^*

トラックバックですか・・・確かに私もいまだよく判っていません;
ブログによってトラックバックできないものもあったり・・・。
トラックバック以外にも沢山わからない機能があるんですけど;
頑張って使いこなそうと思います。

また遊びに伺いますね♪

投稿: るい | 2006年12月10日 (日) 23:34

こんにちは!
コメント&TBありがとうございました!!

たくさん本を読まれていらっしゃるんですね☆
ぜひぜひ、参考にさせてください!
またお邪魔させていただきます。
よろしくお願いします!!

投稿: tud-motoko | 2006年12月11日 (月) 11:09

>tud-motokoさん

こんばんわ!
こちらこそコメントどうもありがとうございます^^*

「出口のない海」を読んだからか、戦争物をまた読みたくなりました。
映画もいいかな、「硫黄島からの手紙」も気になります。

>たくさん本を読まれていらっしゃるんですね☆

いえいえ、まだ駆け出しですけれども;
去年辺りから爆発的に読むようになったので、備忘録に感想を載せています。
つたない文章ですが、参考になれば嬉しいです♪

こちらもまたお邪魔しますね!

投稿: るい | 2006年12月12日 (火) 00:04

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/4474843

この記事へのトラックバック一覧です: 「出口のない海」 横山秀夫:

» 出口のない海 [毎日がチェミイッソヨ〜Caramel Diary]
出口のない海 横山 秀夫 ちょっと前からはまっている、横山秀夫氏の著作です。 空を飛んだ、神風特攻隊はあまりにも有名ですが。 海軍のほうでも、あったんですね。 特攻隊が・・・。 人間魚雷「回天」、これに乗って敵艦隊に突撃する。 文字通り、命を祖国のために捧げて。 こんなに悲しいことがあったなんて、日本の戦争の歴史は許せないと思います。 主人公は、甲子園の優勝投手並木。 大学進学後は、怪我をして満足な投球ができない日々が続く。 そんな中、「魔球を作り出す」という夢を、持ち... [続きを読む]

受信: 2006年12月 9日 (土) 20:50

« 「九月の四分の一」 大崎善生 | トップページ | 「さよならバースディ」 荻原浩 »