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2006年12月15日 (金)

「魔王」 伊坂幸太郎

魔王 魔王

著者:伊坂 幸太郎
販売元:講談社
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あー・・・伊坂さん、張り切り過ぎだって。
憲法改正がコンセプトじゃないと言いながらちょっと押し過ぎ、出し過ぎ。
せっかく小説くらい法律を離れて読みたいのに・とこれは個人的意見ですが(苦笑)
「左派的作品です、どうぞご堪能あれ。」とか投げやりに言ってもいいですか?
「世間的なことで話を作って下さい」とか言われたんだろうな、とは思いますが。
「自分の読んだことのない小説が読みたい。そんな気持ちで書きました。」
ってアマゾンには書いてありました。確かに新しいんだけどさ。
気づいたら何と伊坂さん本10冊目でした!凄いな、いつの間に。
今このブログの1割強は伊坂さんの本なのか・・・と思うと感慨深い(笑)

「魔王」
平凡だが社会事情に敏感な安藤は、ある日自分に超能力がある事を発見する。
それは目の前にいる人間に神経を滑り込ませ念じれば、
たった今自分が思っていた言葉が、その人間の口から発せられると言う力だった。
くしくも世は憲法改正論が日夜主張され、それを左右する首相選も控えていた。
そこに国民の支持が厚く、独断的で強烈な議員・犬飼が登場。
総裁選の出馬と、国の改革を豪語し「お前たちはそれでいいのか」と問いかける。
アメリカの言いなりも嫌だけど、憲法は変えるべきではない。いや変えるべきだ。
様々な意見が交錯する中、安藤は必死に考える。どれだ?正しいのはどれだ?
俺はどうすべきなんだ?俺の力は何に使うべきなんだ?
考えろ考えろマクガリバー―。

あー・・・感想言いづらい(苦笑)
でも一言「カタイ」とても、凄く、激しく。そして、しつこい。
折角の暗喩を、後から遠まわしに説明したりして、
「判ってるから書かなくていいよ、もったいない!!」とちょっと憤慨。
中心になっているのが堅物だったから、他の物は出来るだけ理解してもらおう、
とか思ってさり気無く注釈してみた・・・とか、そんな感じだったのでしょうか。
あの、伊坂さんの意外な仕掛けと、「お!こんなところにも」的感じは皆無。
だって全部説明してくれてるから。うーん。
「魔王」の由来についても、「あの魔王ね、だから追いかける者から逃げるんだ」
と思ったら次の行に親切に「魔王の存在に気づき~」と次ページで説明。
あぁ折角の・・・折角の痛快ポイントが・・・と違う意味で涙目に。
・・・酷いな、この感想。しかも伊坂さんなのに。申し訳ない(苦笑)
皆これを面白いと思ったのだろうか?そこがちょっと疑問。
勿論ね、政治的立場とか、法律論面の立場から見れば凄いですよ、表彰物ですよ。
何たってこんなややこしく入り組んだ問題と、
悩むべき結論をなんと小説で面白、尚且つ伊坂さんの文章で読めるんですから!
追うものから逃れなければいけない、でも自分はどこに進むべきなんだ?
楽曲を駆使し、まさに「なるほど」と思わせる展開。
煮え切らない論争への講義と、集団があるべき姿に、未来の期待。
そんなざわめきを一掃する宮沢賢治の引用。
「諸君よこの颯爽たる諸君の未来圏から吹いてくる透明な清潔な風を感じないのか」
最高です。この上ない清々しさ。この爽快感を味わってしまったら、
人間はスイカの種の如く先導されてしまうだろう、と言う主人公の恐怖。
それは国民すべてが持つべきものであり、また持たなくてはいけないのだ。
強く熱く革新的な世の中を目指す、しかしそれは慎重でなくてはならないし、
間違いは間違いと潔く断言し、正しい道を考えねばならない。
考えろ考えろマクガリバー。考える事で世の中は見えてくるんだ、と心に響く。
もしも。
もしもですが、私が文献でこんな本を薦めてくれる教授がいたら、思わず握手です。
しかしですよ、裏返せば「文献て呼べそうじゃない?」くらい内容は堅いのです。
そんな雰囲気の本を読んで「あぁ面白い”小説”」って思えるのかな?って。
そこが疑問な一冊です。

対になっている「呼吸」は、どちらかと言えば右派的な感じで。
考えなくていいんだ、自分の前を真剣に考えていたら、
憲法なんて大きな枠組みは気に掛ける方が難しいよ、と言う話。

★★★★☆*90
凄く点数に迷いますが、小説的にはきっと「82」位。
「90」は色々含めて・・・ってとこですね。とりあえず堅い、どうぞご覚悟を。

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コメント

るいさん、こんにちは。
さっそく私のブログをリンクのところに
載せてくださいまして、ありがとうございます!
嬉しいです~。

さて、伊坂さん。
読み手が違うと、こんなに感想も違ってくるものなのですね(汗)
るいさんの感想は深い!楽しく拝見させていただきました~。
確かに、魔王のくだりの説明はもっとそっとしておいてもよかったような気は私もしました(汗)

内容としてはカタいし、さらに極端な意見がごろごろしているので、
手放しで「面白かった!」とは言い難いですが、
もやもや~っとした不安感があとまで残る、という意味では
印象的な一冊ではあったかな、と思います。
人に勧めるにはためらわれますけども・・・。

投稿: くろ | 2006年12月17日 (日) 15:17

>くろさん

こんばんわ!
TB&コメントありがとうございます^^*
リンクの件こちらこそありがとうございます、嬉しいです♪

さて、伊坂さん(笑)。
うーん・・・私はこの本どうしても頂けなかったのです。
それが日々六法を開くような生活をしているので、それから逃れたかったのか、
それとも私の理解力不足で伊坂さんの未知な素敵・魅力ポイントを
発見できなかっただけのか・・・日々悩むところです(苦笑)
なんでかなぁ・・・この本「深刻な事を陽気」に読めなかったんですよ。
いつも伊坂さんの作品の中にはどこかしら「深刻な事を陽気に伝える」
要素が含まれていて、笑えない問題だって、皮肉なニューモアで相殺!
という感じがあったのですが、これには、感じられない。
「自分の読んだことのない小説が読みたい。そんな気持ちで書きました。」
ってあるように、もしかしたらコンセプト替えしたのかも知れない。
でも私の中の伊坂さんは、陽気さを失ったら伊坂さんではなかったのです。
何やら熱く語ってしまいましたが、私は伊坂さんが大好きです(いきなり告白?
ご安心下さい。

>魔王のくだりの説明はもっとそっとしておいてもよかったような気は私もしました

この本、そうそう、くどいんですよ。なんでか。
いつもならそっとしておく所をそっとしておいてないのです。
これもコンセプト替えの1種なのかと疑うほど説明に凝っている。
何を読者に考えさせたかったのか・・・と考えると、
そう言った暗喩を含んだユーモア以外、と言うことになって、
すなわちくろさんのおっしゃる「極端な意見」なのでしょうかねぇ。
でもあとがきで「それがコンセプトではありません」となっているので、
それに翻弄される人々の様子って事になるでしょうか。

>手放しで「面白かった!」とは言い難いですが、

そうですね、同感です。
掘り下げれば「なるほど」って思えますけど、決して手放しではないですよね。
せめて最後のシーンが爽やかさを求めたかったな、と。内容が重いので;
「呼吸」は清々しい感じでしたが「魔王」では・・・・。
「アヒルと鴨~」位の爽快感欲しかったな、とか勝手に思っています。
そしてなかなか「呼吸」と「魔王」を1つの小説として見れない;
見れば見るほど共通点が見つかり、
兄弟の絆が深く書かれていると思うのですが、どうしても・・・。
うーん。悩ましい!

私も印象的だと思いましたが、人には薦められないです(苦笑)
それこそ「文献だから」の勢いで貸したい・・・。

何だか、めちゃめちゃ言っていますが、伊坂さん大好きですから(笑)
ご安心下さい(何に?

投稿: るい | 2006年12月17日 (日) 23:18

 これ、私的にはけっこう悪くなかったです。
 群集心理、その他に対する考え方とかが、
 伊坂さんとすごく共感できた、ってのも
 あるかもしれません。
 たしかに、伊坂さんの他の作品の「軽妙さ」は
 あまり感じづらい小説でしたけどね^^;;

 そうそう、「マクガリバー」ではなく、「マクガイバー」ですよ。
 http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/4561515
 ↑これのことだと思われます。

投稿: miyukichi | 2007年1月20日 (土) 21:47

>miyukichiさん

こんばんわ!
TB&コメントどうもありがとうございます^^*

そうですか~・・・。
うんうん、でも私も伊坂さんの言いたいことはよく分ったのですけど、
そしてちょっといつもと違う本に、と言う心意気もよく分ったのですけど;
なんでか楽しめなかったのですよね(涙)
重かったですね、軽やかなリズムがあまり感じられず・・・。
だから、でしょうか何となく自分の中で否定してしまう所があったようです。
違うの書くって分っているけど、「こんなの伊坂さんじゃない!」と、
どこかで思ってしまったようです。
私がきっと未熟なせいですねぇ;作者に捕らわれすぎるのです;
気をつけて読まなくては・・・。

はっ( ̄□ ̄;)!!
ま、ま、ま・・・マクガイバーでしたか・・・!!
私・・・カタカナが凄く苦手な人間で・・・(結構冗談抜きに)
ギャー恥ずかしい・・・!!(>△<)!!!
よくね、やるんですよ、カタカナの読み間違え。
武勇伝と言えば、ハリポッターの「ダンブルドア」校長を、
最後まで「ダブルドア」校長だと思って読み終えた事とか・・・。
その上、映画館で役名を呼ばれてから間違っていた事に気づいた、
と言う筋金入りです。
すみません。
なんだか偉そうな事書いてるくせに、カタカナで躓いてて世話ない感じです(涙)

http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/4561515
ってどうやってみるのでしょう;?
RSS?って使ったこと無いのでわからなくて;

投稿: るい | 2007年1月21日 (日) 02:34

 わちゃ!
 ゴメンナサイ!
 wikipediaのページを見てコピーしたあとに、
 TBのためにこのページをコピーして、
 そのまま貼り付けちゃってました。
 えっと、ようするに、間違ったアドレスを貼っていました^^;;
 混乱させちゃって、ゴメンナサイ!

 正しくは、これです↓

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%92%E9%99%BA%E9%87%8E%E9%83%8E%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC

投稿: miyukichi | 2007年1月21日 (日) 03:26

>miyukichiさん

こんばんわ~!
コメントありがとうございます^^*

お!そうでしたか。
いえいえ、大丈夫です^^*
さきほど上記のアドレス覗いてきました。
「冒険野郎マクガイバー」ですか(笑)
題名に思わず笑ってしまいました。
気になるような、気にならないような・・・。

ご紹介どうもありがとうございました。

投稿: るい | 2007年1月21日 (日) 23:26

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