« 「パーク・ライフ」 吉田修一 | トップページ | 【DVD】陽気なギャングが地球を回す »

2006年12月 1日 (金)

「半落ち」 横山秀夫

半落ち 半落ち

著者:横山 秀夫
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


うーん。映画を細かい所までよく覚えていないからかも知れませんが、
私的に映画の方がよかった印象があります。(と言っても2年前の記憶
それにしても、まさに寺尾さんのために主人公が用意されたのでは?
と思うほどマッチしていてかなりスムーズに情景を思い描けます。
そしてここにも記者健在。さすがだね、横山さん。

現役警察官が「妻を殺した」と言って自首をしてきた。
年齢49歳、元警部、周囲は口々にすこぶる温厚で心優しい人だと答える。
彼は容疑を認め、反省をしているが、一つだけ引っかかる問題がある・・・
彼が自首をしたのは妻を殺してから2日経った3日目の早朝だったのだ。
息子の死、妻がアルツハイマーだったと言う事情や彼への同情の余地も見える中、
その空白の2日間が、マスコミに大きな問題として取り上げられる。
黙秘や虚偽を述べながら頑固として真実を語らない彼の本心を、
警察・検察・記者・裁判官、そして刑務所員が必死に追いかける。

日本の法律は、被告人が罪を認めてさえいれば、
例え心に秘めた隠し事があったとしても、そのまま処理されてしまう。
そんな、あってはならない事実がこの切ない話の中に盛り込まれている。
現代とは僅かなずれが生じると感じながらも、
法を駆使し、躍起になる警察や検察や裁判官たち。
そんな、法で雁字搦めにされた様な彼らの前に、全ての罪を認め、
自分に過酷な道を選んでさえも守りたい物の存在が現われる。
書面や定義付けられた作業では救う事ができないその大切な思いを
どうか開放してやる事は出来ないかと願う、その姿に感動した。
でも、一番心を動かされたのは、やはり犯罪の動機である。
7年前に白血病で死んだ息子。梶と妻は息子の命日に墓参りに行った。
しかしアルツハイマーの妻は、墓参りに行った事を忘れ、
「息子の命日を忘れるなんて」と狂気し、殺してくれと叫んだのだ。
それ思い浮かべた時、果たして私は殺す事を躊躇う事が出来るだろうかと迷った。
あるいは、夫に「殺して欲しい」と言わずにいる事をだ。
妻を殺したあとの2日間。中盤から話の方向がそちらへ向く。
だから、読み手としては、ラストへかけて期待が高まっていき
「妻を殺した事に苦心しながら」と言うのがポイントになるため、
ラストの部分は若干暖簾に腕押しな気もする。
勿論感動的で、そうか、それで死ぬ、と言う簡単な逃げ道よりも、
罪を負ってまで誰かのために生きると言う方を選んだのか、と納得も出来る。
でも妻に対し、と言うよりは「妻もその方がいいと言ってくれるだろう」
的に感じてしまい、私的には盛り上がった分、盛り下がりも激しかったと思う。
今思い返せば、映画でも中盤(殺害理由)あたりで号泣してました。
いい話なんだけどね、凄く。でも小説はちょっとくどかった。

★★★☆☆*85

|

« 「パーク・ライフ」 吉田修一 | トップページ | 【DVD】陽気なギャングが地球を回す »

コメント

 こんばんは♪

 この本、私も以前読みました。
 直木賞選考のときの論議の箇所が気になって
 読後感がすっきりしなかったのですが、
 まずまずおもしろかった気がします。

 本を先に読んで、
 映画まで観ようとも思えなかったんですが、
 映画のほうが、ずっといいんですね。
 それなら、また観てみようかな^^

 ところで、佐藤多佳子さん、読みました☆
 (「一瞬の風になれ!」はまだ待ち中なので
  別の作品ですが)
 そのレビュー記事中、るいさんのブログURLを
 リンクさせていただきました。
 不都合なようでしたら、はずしますので、
 ご確認いただけるとありがたいです。
 よろしくお願いします◎

投稿: miyukichi | 2006年12月 1日 (金) 20:57

こんばんわ、いらっしゃいませ^^*

あれ?確か直木賞取れなかったんですよね?
気になる論議の箇所ってどのへんだったのでしょうか・・・?笑
確かに読後感よく無いですよねぇ;
映画も振り返ってみれば、中盤の方がよかったなーと言う感じです。
面白いですけどね、深くて。
でも映画の方がもうちょっと主人公よりの話になってましたね。
あと最後のアルツハイマーの父を裁判官役が吉岡さんで、
結構濃く出てきていましたよ。
そして小説では出てこない重い刑の判決シーンもあった気が。

うーん・・・人によるかもしれませんが、
と言うか記憶も曖昧なので、断言は出来ませんが寺尾さんはよかった。
主人公にピッタリ。

おぉ!!読まれましたか、何を読まれたのでしょう、楽しみです^^*
後ほど遊びに参りますね。
私も佐藤さんの他作品、気になっております「しゃべれども~」とか。
確かあれも映像化されていましたよね!
私的に注目度ベスト10には入ります。
リンク張ってくださったそうで、不都合だ何て滅相もない!!笑
こちらこそどうもありがとうございます。
とても嬉しいです♪

投稿: るい | 2006年12月 1日 (金) 22:49

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/4378264

この記事へのトラックバック一覧です: 「半落ち」 横山秀夫:

« 「パーク・ライフ」 吉田修一 | トップページ | 【DVD】陽気なギャングが地球を回す »