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2006年9月30日 (土)

「風に舞いあがるビニールシート」 森絵都

風に舞いあがるビニールシート 風に舞いあがるビニールシート

著者:森 絵都
販売元:文藝春秋
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森さんが直木賞取った!とはしゃいで買ってしまいましたが・・・。
うーん、でも「カラフル」派な私にとってはちょっと堅い気が。
なんとなく雰囲気的に宮部さん系に・・・もちろんミステリではないですがね
まさしく、と言っていいほど直木賞狙って書きました、
と言わんばかりの作品だと思うのですが、どうでしょう?
そして短編集です。長編期待してたんですけども・・・涙

この本は全体的に、人がひとつの事に魅せられてしまい、
周りの様子が目に入らない、と言う現象がテーマのようです。
熱中して、熱中させられて、「自分は正しい方向を向いているのか?」
と言う事を考えない人が登場し、その奇妙さに気づかなかったり、
もしくはそれを他の誰かに指摘されて気づいたりする。
でもそれは方向性は違えど、ほとんどの人たちが経験するものなのだと。
うーん。それにしても、ちょっと変わり者の主人公ぞろい。
職業も結構マニアックな部分つついてますし、やっぱり賞狙いを伺えます。笑
文章は堅めで、会話文もいつもの森さんより少なめで、
主人公たちの心の声や心情が詰まった感があります。

まず「器を探して」から。
人の味覚を虜にするパティシエ・ヒロミの補佐を担当する弥生。
弥生は付き合っていた彼氏と結婚を予定していたが、
それを聞きつけたヒロミは、弥生を遠方出張等に繰り出させ邪魔をする。
その回りくどい嫌がらせに怒りを覚えていた弥生だったが、
結局は魅惑のケーキを作るヒロミに逆らうことができない。
怒りを覚えながら行った出張の要件はケーキに合う器を探してくる事。
しかし弥生はヒロミの納得する器を見つけたにも関わらず、
尚も魅惑のケーキにより適合する器を求めることに翻弄されてしまうと言う話。
1番目に載っているからか、その絶妙な要点の突きに驚いた。
ケーキに魅了されるあまり、人生を投げ出す女。
作っている人の性格が最悪だったとしても、ケーキの魅力には適わない。
終わり方が・・・とってもいい所で止めてくれるものだから、
このまま短編集にしておくのはもったいないよ!と言いたくなる。
そして女ってこんな感じかも、と思ってみたりした。笑
私はケーキではないけどね、なんて。

次は「ジェネレーションX」を。
30代になった主人公・健一は、仕事のミスから得意先の年下社員・石津と、
消費者の奥さんに謝罪しに行くことになった。
東京から宇都宮までの車の中、健一が一言許したのを発端に、
石津は携帯電話で次から次へと電話を掛け捲り、大声を張り上げる。
話を聞いているうちに、どうやら10年来の同窓会を開くことになったらしく、
健一は徐々に電話の会話の内容を気にし始める。
童心に戻り、旧友と会うことを素直に喜んでいる石津を見て、
健一は今まで格好よく見せようと気張っていた見栄を捨ててみようと決意する。
この中で私が一番好きな話だったりします。
なんとなく一番森さんぽいってのもありますけど、
一番身近な話題でとても言いたいことが伝わるストーリーになってます。
集まるメンバーが一人も欠けちゃいけない理由、とても素敵でした。
そうですよね、人っていつの間にか老け込んできますから、
たまには古い友達と会って遊ぶのもいいよね、とか思いました。
「大人になっても遊び心を」っていうのがコンセプト、いいですね。

堅い森さんの文が好きな人はもっと評価が高いかも知れません。

*90

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コメント

 「ジェネレーションX」、よかったですねー。
 こういう話って好きです。

 「器を探して」は、なんか惜しいなぁー、って
 思っちゃいました。
 途中まではよかったんだけどなぁ。

投稿: miyukichi | 2007年7月 8日 (日) 14:10

>miyukichiさん

こんばんわ~TB&コメントありがとうございます^^*

この本は結構前に読んだので、詳細を覚えてなくて申し訳ないのですが、
一言「堅苦しかったなぁ」と言うイメージのある本です。
「カラフル」や「DIVE!!」とか少年が主人公だったりして、
なんとなく児童書のイメージがある森さんが、
いきなりここまで堅苦しい文を書くと、あぁ直木賞狙ったのか、
と感じてしまい、少し残念に思った記憶がありました。

私も中でも「ジェネレーションX」は好きでしたね。
一番森さんらしさが出ていたようなお話だったと思います。
結局は野球のメンバーを揃えるんでしたっけ?
その童心に帰る様子がとてもよかったですね!
「器を探して」私も最後が妙にスパッと終わっている気がして、
続けばいいのにと思った記憶があります。

また読んでみたくなりました。
確かこれは買ったはずなので、持っていた気がします。
本が山積みになっているので、どこにあるのか発掘せねば(?!)です。
森さんの児童書の新作出ないかなぁ~と楽しみにしていたりします。

投稿: るい | 2007年7月10日 (火) 00:07

こんばんは。
読み進めて行く毎に気に入ってしまいました。
「器を探して」は、魅了した器から離れられないんじゃないかって思ってたけど…。
僕と彼女とどっちを取るなんて女性でも言われることあるんですかね?
「守護神」も好きでした。やっぱり本がらみは今一番気になる話題ですから。
その他の作品も、短編の中に価値観(生き方)が表現されていて、偏っているけど納得させられたというか、認められると言うか。本棚に並べたい小説でした。

投稿: fumika | 2008年1月26日 (土) 20:06

>fumikaさん

こんにちわ。
すみません…レス遅れました;

私はずっと森さんの児童書で育った子供だったので、
そのイメージをもってこの本を読むと、
かなり堅い感じがした記憶があります。
しかし、その文章が良質であったのは確かだし、
思わず頷いてしまうような巧みな構成だったと思います。

確かに価値観や生き方、判断力、などが描かれている本でしたよね。
自分はそんな決断をしないと思うけど、
そんな決断をする人もきっといるだろう、
というような、どこか親近感が沸きました。
私が一番覚えているのは、やっぱり「器を探して」かなぁ。
最初に読んだからか、インパクトがありました。

確か私もハードカバーで買った記憶があります。
本棚を探せば、きっと見つかるはず(笑)

投稿: るい | 2008年1月31日 (木) 11:19

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