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2006年8月

2006年8月31日 (木)

「平面いぬ。」 乙一

平面いぬ。 平面いぬ。

著者:乙一
販売元:集英社
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久しぶりに乙一さん。
なんだか一気に読みすぎたので、これも結構前に読んでいて2度読み。
表題作よりも他の話の方が結構好きだったりする珍しい本。
ちょっと残酷で、でもしっかりほろりと感動する。
他の短編よりはどれもやや長め。

ではまずは「石ノ目」から。これって結構有名なんだろうか?代表作?
目を合わせるとその相手の人間を石にしてしまう石ノ目と言う女の伝説があった。
「わたし」はひょんなことから幼い頃に失踪した母親を探す事になり、
同僚Nと共にる山の中に入るが、Nが不慮の事故で怪我をしてしまう。
Nを負ぶったわたしが必死にたどり着いた先、そこは石ノ目が住む家だったと言う話。
まぁご存知の通り乙一さんですから、ラストはしっかり出し抜いてくれます。
でも寂しいですね、ずっと石ノ目だと言われ続け生きてきたのかと思うと、
心が痛むばかりではなく、来る人来る人に恐れられ生活するのは、
一体どんな思いがしただろう、と考えると乙一さんの文章の深さが伝わってくる。
家の周りに並ぶ石造の死体の山、想像するだけでもぞっとしますけど、
その分だけ人間の心の厭らしさが表れていますね。
人間はダメと言われれば言われるだけ実行したくなる動物です。
なんと学習能力が無いことやら、そんな事も実感できます。
最後にはしっかり心に残る物を置いてってくれる話です。

次は「BLUE」を。これが実は一番好き。
結構ドタバタ話ですけど、なかなか童話的で好きなんですよねぇ。
不思議な布で作られたしゃべる人形5体が一般家庭に潜り込む話。
美しい容姿を持つ4体は長女のジェニファーに、
切れ端の布で作られいじめられる醜い「BLUE」は、末っ子テッドの物になった。
ジェニファーはお嬢様気質で美しい容姿の4体を持て囃していたが、
テッドは玩具を壊す乱暴な子供だったため、醜い体が益々ボロボロになってゆく。
しかし最後一番大切にされていたのはBLUEだった、という話。
親の理解の無さ、兄弟の確執?、いじめ、
などたっぷりな要素がしっかり入っているのに、
童話として読めるくらい綺麗に纏まっていて感心する。
それと、人間的な目から見ると、ボロボロに汚れた玩具ほど、
よく遊んだなぁ、と後になって感慨深く思うわけで、そう言う反面もしっかり。
ぬいぐるみ、懐かしいな。なんて昔を思い出しながら読むのに最適。

*83

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2006年8月30日 (水)

「インストール」 綿矢りさ

インストール インストール

著者:綿矢 りさ
販売元:河出書房新社
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一番初めの正直な感想・・・ガキっぽい・・・
いや、言い換えれば若々しくて新鮮な文章。
ははぁ、これで賞が取れるのね?
同じ十代ですけども、共感も得る事もなく、ただ単調に読んでしまった。
何回か読めば変わるだろうか・・・(そうは思えない
でも同世代として何か共感したいなと言う思いはあるので、
今度は「蹴りたい背中」でも読んでみよう。

毎日の単調な生活に飽き飽きしていた女子高生が、
自分の周りの世界を変えようとするフレッシュ感たっぷりな話。
部屋の何もかもを捨てて、学校も億劫になり
ひきこもりを始めた「私」はひょんなことから小学生・かずよしと共に、
エッチなサイトのチャット譲としてアルバイトする事になる。
17歳、うーんそんなものか。と思ってしまった。
インターネットを通じて大人の世界に踏み込む事によって、
微妙な情緒・例えば客に自分を「雅」だと偽る事で得る罪悪感や、
社会の民主主義の生産についての疑問などに直面する事によって、
「私」は徐々に成長していく様子が描かれている。
やはり作者が若いだけあって、主人公の気持ちも女子高生ありのまま、
という感じがし、生き生きした印象がある。
しかし、裏を返せばそれだけ未発達な文章であるわけで・・・
まぁその年代枠ではずば抜けた才能があるのかもしれませんけれども。
ラストの清清しさはとてもよかったですけどもね。
そこがまさに若くしてしか書けないのかな、なんて思いました。
主題の「インストール」もうちょっと大げさに
「インストール」具合を書いても良かった気もします。
今後に期待、と言うことにしてひとまず。

*70

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2006年8月28日 (月)

「コールドゲーム」 荻原浩

コールドゲーム コールドゲーム

著者:荻原 浩
販売元:新潮社
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あれれ。荻原さんの本てこんな感じでしたっけ?とちょっと疑問形になった。
随分前に読んだのが「神様からの一言」だったからかも知れないけど。
うーんなんて言うかもうちょっとハードボイルド系に仕上げてもらえると・・・
なんて、それは私の個人的な趣味ですが。笑
「コールドゲーム」なんて硬い名前ついてるから、ついね。

光也が中学時代クラスぐるみでいじめていた、「トロヨシ」こと廣吉が、
5年たった今、突然クラスメイトに復讐を開始する話。
クラス内で起きていたいじめは酷く陰湿かつ残酷なものだった。
復讐は個人のその「いじめの関与具合」で代償が決まる。
目をアザにしたヤツは顔面に傷を、
パンツを脱がせたヤツは下半身裸で海に放り投げる。
ついにはクラスメイトから死者までが出てしまった。
光也と亮太は自分が過去にした過ちと、今起きている事件に驚愕するが、
どうにかこれ以上被害を出させないよう呼びかけようとクラス会を開く。
ある法則性に従って襲われていくクラスメイト達は事件を阻止しようと必死だったが、
自分たちの手には負えない事件であると認識し始め、徐々に手を引いてしまう。
しかし次のターゲットはいじめの中心的存在だった亮太であり、
皆生命の心配をするが、有志を募って果敢に廣吉に対抗する。

うわっ、そう言うオチでしたか。
と突っ込んだ後に、あぁでも現代でも起こりうる事件かも、
と思ってしまいちょっと寒気がした。
全体的には集団意識の強まりの怖さを物語ってます。
いじめ・・・本人がいじめだと思ったら、もうそれはいじめだ、とよく言いますが、
まさにその通りだと。この話のように行き過ぎたからかいが、いじめになり、
いじめが自殺の原因になり、自殺が復讐の動機になるわけです。
私的にはハムラビ法典万歳ですが、日本ではそうはいきませんしね。
話の中に約20人(もっとかな?)位登場人物がいますが、
特徴を的確に言ってくれる、と言うかあぁこんなヤツクラスにいたわ、
って言う感じなので、沢山出てきてるはずなのに気にならない。
が、しかしながら主人公の説明がイマイチ。うーん周りの説明は上手いのですが。
話は若干わくわく感強めで進んでいきますが、キーポイントが少ない。
デジャブのロゴマークも結局正体が判ってから確信するし、意味無いじゃん的。
あと、美咲を好きだった光也がちらりと書かれていますが、
出来るならこの部分は全面的に押して欲しかった!と残念がる。
手の込んだ事件描いてるのに、男女関係まで書くと
話がごちゃごちゃになりそうだったから止めたのかなぁ?、と勝手に思ってしまった。
うん、そんなわけで私の一番好きなのは亮太の「悪かったな」です。
この一言のお陰で亮太の格がぐんとアップしてる気がします、人としでですが。
終始恐怖に追われたい時に。(そんな時無いって

*74

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2006年8月27日 (日)

【映画】ユナイテッド93

ユナイテッド93 テロリストと闘った乗客たちの記録
2001年9月11日。
確かにあの日を覚えている。
あぁ中学生だったなぁ、と思うと同時にあの衝撃の大きさを明確に。
夜中のニュースから騒ぎ立てていたし、社会の授業が丸々
「ハイジャック事件についての感想文」を書く授業になった。
いつも私たちが開いている教科書には、
「昔の事」として事実が坦々と述べられているから、
自身が体験していない事件はただの過去の出来事でしかない。
ただ年号と事件の名前を一致させるだけの授業。
あの第二次世界大戦だって、もう私達には過去でしかないのだ。
そんな平和に溺れた現代の日本人がまさに驚愕した事件、
それはこの「9.11」ではなかっただろうか。
いつしかこの事件もこの教科書の1ページとして載るのだろう。
そう考えた時複雑に入り組んだ思いが頭の中を過ぎっていた。

内容はかなりのノンフィクション。
様子を忠実に再現しているし、特に有名な俳優も出ていない。

あの日4機の飛行機がハイジャックされた。
目的は自爆テロ。アメリカの主要機関に突っ込む事。
2機は世界貿易センタービル、1機はペンタゴンへ衝突し目的を果たす。
しかし残りの1機「ユナイテッド93便」は目的に達する事なく、
ペンシルバニア州の草原に墜落する。
何故、この飛行機は墜落したのか・・・?

ハイジャッカーに乗っ取られた飛行機は、ニューヨークへ向ってゆく。
パイロットと乗客数名が殺害され、残った乗組員と乗客は動揺していた。
次は自分が殺されるのではないか、そんな不安が心を過ぎる。
しかし次第にこの状況が普通のハイジャックとは違うのではないか、
と気づき始めると共に、携帯電話などで地上に連絡を取り始める。
他の3機がテロを起こしている事を知り、
じきにこの飛行機もどこかに突っ込んで皆死ぬのだ・・・
そう確信を得た乗客たちは、勇敢にもハイジャッカーに立ち向かい、
やっとの思いで操縦桿をとる。
しかし時はすでに遅く、高度を上げられないまま
ペンシルバニアに墜落し、乗客・乗員全員が死亡する。

管理塔と空港の混乱と緊張が生々しく描かれていて手に汗を握った。
あの日テレビのニュースで情報を得ていたから、
まさかあんな騒動が起こっていたなんて思わなかった。
確か私がテレビを付けたのは1機目の飛行機が貿易センターに突っ込んだ時。
その後すぐに2機目が突っ込み息を飲んだ。
目の前に監視塔の画面の大スクリーンに映る衝突シーンが、目に焼きつく。
ユナイテッド93便の中では、電話をかける人々の言葉に涙した。
皆「愛してる」と一言相手に呟き、無造作に電源を切り顔を膝に埋める。
きっとその返事を聞いてしまったら、電話を切れないと判っていたのだろう、
そう思うと思わず胸が苦しくなって涙が流れた。
こんなドラマがこの中で起きていたのか、と言う感動と、
何故助からなかったのだろうか、と言う無念の思いが心に染みる。
この飛行機に乗っていた人々は皆死んでしまった。
でも忘れてはいけない。
それを克明に訴える作品だった。
感動・・・と言うよりも考えさせられるような、もやもやが心に残った。

今回はちょっと真面目な感想を。
一度は見たほうがいい、そう思います。

*90

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2006年8月25日 (金)

「池袋ウエストゲートパーク」 石田衣良

池袋ウエストゲートパーク 池袋ウエストゲートパーク

著者:石田 衣良
販売元:文藝春秋
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石田さんだ~と気軽に読み始めた本。
なかなか好きだけど、石田さんの本自体が実は若干苦手。
うーん理由は・・・途中で飽きる。(はっきり言い過ぎ
でもこの年齢でよくこんなに若い文章書けるわぁ、と関心はするけどね。
この本は短編だから好き、って言うのも結構あるのかも知れない。

そして実は・・・ドラマを見たことがない。苦笑

言わずと知れているかもしれないけど・・・ストーリーから。
池袋の果物屋の実家で働く誠が、池袋西口公園付近
(ウエストゲートパーク)で起きる事件に首を突っ込み解決する話。
結構短編系・主人公の軽快な話口調で進んで読みやすい。
1巻のこの本は誠がどうやって池袋の不良達と付き合っているかの話題。
ドラマでも登場するキャラクターが多数出てくるが、
ドラマはもっと後の話なので、結構裏付け的ストーリー要素。
そうそう、そして石田さんは人物の外装説明がとっても上手い人なので、
最初のほうに出てきた人でも、ちゃんと思い出せる解説つき。
今回の一番の目玉はやっぱり最後の内戦の話。
「Gボーイズ VS Rエンジェルス」の緊迫感がとっても見もの。
もちろん組織的にストーリーが組み立ってるから、前から読むべきですが。
誠の池袋を守る真の目的が正しい方向に定まる?って言うか、
仲良くやっていた池袋を取り戻して平和にしたい・・・
と言う気持ちが全面に出てきていて言い感じ。
一番よかったのは、お兄ちゃんが暴行された薫のところかなぁ。
特徴的な言葉ではないけど、「手術が終わるまでいてくれるならいい」
と取材を受ける彼女になんだか関心した。
どちらかと言えば、石田さんに感心したって言うのかな。
フェアじゃない感じで普通の環境ではこんな事は起きないだろうけど、
ウエストゲートパークではこれが普通(?)なんだ、
みないなものをちょっと暗に感じた気がしました。
いや、それ以前に不良の環境設定はばっちりなんですけど。笑
そんな感じです。軽い感じで楽しめる。
一気に読もうかな~と思ってたんだけど、無理だった。
もう7巻(?)も出てるのかぁと思うと伸びかけた手が引っ込みそうです。
ドラマをDVDででも見たら変わるかなぁ。考えておきます。

*88

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2006年8月24日 (木)

「バッテリーⅣ」 あさのあつこ

バッテリー〈4〉 バッテリー〈4〉

著者:あさの あつこ
販売元:角川書店
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面白いよ~でも振り返るともう4巻?みたいな衝撃が。笑
4巻も読んだって言うと、物語では4年位立ってもいい気がするんだけど。
でも1年も経たないこの作品は、だからこそ奥深いと言いたい。
この思春期の少年の心情を事細かに描くセンスが素敵です。

超自意識過剰少年・巧が甲子園(全国大会?)を目指すスポコン小説第4巻。
天才ピッチャー巧は強者を前に更に強く早いボールを投げるようになった。
しかし当のバッテリーである豪はまだボールを受ける自信が持てず、引きこもる。
そんな時にチームメイト吉貞が巧のキャッチャーに名乗りを上げる。
豪はあまりに門脇に拘るあまり、キャッチャーとして大切なゲーム作りを忘れ、
どんな球を引導するか戸惑いそれにつられた巧ともどもバッテリーが崩れてしまった。
実際そんな事頻繁に起こる事なんじゃないか?と疑うけれど、
これまでのストーリーで確立された、巧の偏屈な性格と、
豪の一人で抱え込む性格から、より深刻に事が進んでゆく。
自分の信じた相手に球を取ってもらえない、と言う巧の初めての強い動揺と、
自分のキャッチャーとしての自覚を疑う豪の気持ちがとてもリアルに伝わってきた。
「電話をして・・・いや、豪の家に行けばよかった。」
いつも強気で自分が折れる事なんて無い巧がふと漏らした感情が切ない。
話の展開としては、横手のメンバーがより鮮明に描かれ始め、
特に門脇と瑞垣のコンビがとても興味深い。
仲が良さそうなのに、実はお互い疑いあっている、と言う設定が良く、
ライバル意識の強さを隠す瑞垣の姿にも心を打たれる。
あと、なんて言っても4巻からのいいところ、と言えば「姫さん」!笑
瑞垣が巧につけたニックネームが、これまでの巧にかなりヒットしていい感じ。
何て言うんだろう・・・・あの「テニスの王子様」的なトキメキがありました。笑
まぁ1・2・3の次にどうぞ、って事で。
甲子園の季節ですから、野球小説が読みたくなりますね。なんて。

*89

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2006年8月23日 (水)

「つきのふね」 森絵都

つきのふね つきのふね

著者:森 絵都
販売元:角川書店
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森さんが書いた命に関わる本って素敵だなぁ、と再確認した。
「カラフル」もこの間読み直したわけだし、
「つきのふね」もよかったよなぁ~と思い出し読んでみた。
やっぱりいいわぁ。
心にじ~んとくる、いい話。

端的に言うと、非行少女が、精神異常の男性を助けようとする話。
中学生のさくらは、仲間外れにされるのを恐れて、万引きを繰り返していた。
しかし、親友・梨利と一緒に万引きを店の人に見つかってしまった。
梨利は逃げ、さくらは捕まる事になってしまい、梨利は見捨てた事を後悔し、
さくらは一緒に捕まって欲しいと思った事を悩み、お互いを避け始める。
そんな時さくらが仲良くなった智は、人間関係から精神が狂ってしまっていた。
徐々に発覚して行く智の症状の悪化に友人・勝田と共に作り話をし、
少しでも正常な精神に更生しようとする。
中学生は群れを作る・・・何だか懐かしい気持ちで読みました。
森さんは小さい子供の心境を書くのが上手いので、気持ちがしっかり伝わる。
主人公さくらは、家族ともそれほど団結力もなく、
また親友と仲たがいする事によって、一人ぼっちになってしまった。
そんな時出会ったオアシス・智を必死に必要としていたが
それとは裏腹に智は「月の船」を書き続け狂ってゆく。
自分が癒され様と訪れているばかりだったが、
いつの間にか智を支えようとする、強い心のさくらに変わる。それが素敵だった。
「平気でものを盗むってのも心の病気だ」
おじさんが言ったように、世の中の人々は何かしら闇を抱えているけれど、
さくらの様に、「自分がわるいのだ」と認識する事によって、
心の病は癒えて行く・・・そんな事を訴えているお話です。
話としては「いい話」で終わるんだけども、結構余計な事が多い。
例えば・・・火事とか。結構動揺材料でしかない気もする。
あとは精神病とか扱ってるから、さくらとかは高校生でもいい気もしたけど、
そうすると中学生(ならでは?)の集団行動とか団結力が描きにくいのかな?とか。
大人の登場が少なくて重い話題なのに「子供だけで解決しよう!」
みたいなちょっと突っ走った感があるような気もして残念。
でもすごく感動する。
最後に「智の昔の手紙」が出てくるのですが、これが反則なくらい泣ける。笑
「やっぱり森さんいいわぁ」の一言をつい言ってしまう。
しみじみしたい時に読む本にどうぞ。

*83

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2006年8月22日 (火)

「陰日向に咲く」 劇団ひとり

陰日向に咲く 陰日向に咲く

著者:劇団ひとり
販売元:幻冬舎
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劇団ひとり・・・正直感心した。
うん、まさかこんなに感動するとは思ってもみなかったし、
オチがあるのが見え見えなんですが、でも結構意外性があってなかなか。
恩田さんも言っているようにあと2冊書いてみて欲しい。
むしろウケない芸人よりも向いてる気がするよ、なんて。笑

一人一人の話が取りあえず面白い。
ホームレスだったり、なんちゃってカメラマンだったり、駅員だったり・・・。
何気なく読んでるとしっかり騙されてしまい、オチを知って悔しい。

一番良かったのはやっぱり先入観のない状態で読んだ、
最初の「道草」かなぁと思います。ひっかかった、ひっかかった。
サラリーマンに嫌気が差した男が、ホームレスに憧れ、
昼間は出勤し、夕方にはボロボロの服に着替えホームレス生活を送り始める。
そんなある日、ホームレス達の中に有名野球選手の父親がいると言う話題になり、
大法螺吹きのオヤジが、父親ではないか?と疑われる。
皆も歓迎し本人も満更ではなく、祝福ムードで、
生き別れていた息子との再会を喜んでいた・・・・。
喜んでいた・・・のに実は・・・!!と言う感じ。
本当騙されたー・・・。まさかいつもは大法螺吹きでも、
少しは本当の事を話しているんだ!とちょっと関心していたのに、
裏切られた感たっぷりで、劇団ひとりにやられたな、と思った。

「ピンボケな私」「鳴き砂を歩く犬」
は話口調で進められているけど、あまり気にならなくて良かった。
どちらかというと、親近感が湧いてなかなか気持ちが伝わる気もする。

うん、まぁこの本は読んでみないと判らないよ、って事で。
書いちゃうとオチが判って楽しく無いからね。
是非、一読を。損はありません。

*80

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2006年8月21日 (月)

「アフターダーク」 村上春樹

アフターダーク アフターダーク

著者:村上 春樹
販売元:講談社
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毎度難解不落の春樹さん。この作品はより最強です。
今まで色々春樹さん読みましたが、一番コンセプトがよく判らない。
せっかく「作家デビュー25周年記念の書き下ろし本」だって言うのに、
もったいないと言うか何と言うか残念と言うか・・・。
うーん・・・まぁ一度読んでみるといいかも知れません。(投げやり

ひたすら眠りにつくことで、自ら自分の中の殻に閉じ篭る美少女の
現実と殻の中の奇妙な関係や、エリートサラリーマンが、
中国人娼婦に暴行を加えるなどの腹黒い世界との対比の話が主。
「アフターダーク」の名に相応しく、夜が明ける前の静粛な様子を
細かく時間を刻みながら複数の場面からこんこんと語られている。
終始話が定点カメラのような客観的視点で進められ、
世界をはるか頭上から状況を見下ろし把握される感覚が新しい。
登場人物にはいつになく人間味がある感じがするけど、
春樹さんの話に断固関西弁は合わないと思っているタチなので、
読んでるときに違和感があり、あまりいただけなかった。
あと語り口も客観的視点であるため、どこか無機質で冷たい感じがし、
勿論登場人物の感情があまり反映されないため、物寂しい。
いや、でもその状況を巧妙に文章化することで、いかに苦しんでいるか、
いかに悲しんでいるか表現するのは腕の見せ所なのかも知れません。
その点では春樹さんの文章はうってつけな気もするのですが、
今回は形容詞がかなり控えめになっているのでコンパクトなイメージがある。
静寂で静粛なイメージを演出したかった=客観的視点になったのかな、と。
内容は・・・えーと。苦笑
ふとした瞬間に、自分の残像から内面的な自分がこっそり現れる。
それを見逃してはいけないし、もしそれに捕まってしまったら、
自分に向き合いもう一度見つめ直さなければならない、と言うのがコンセプト?
それと合わせて、姉妹を比較したり、サラリーマンと娼婦の登場などから、
人間関係の稀薄と、無駄に他人に頼らない自主性なども描かれている。
それで、その状況をはるか頭上からカメラのような視点で眺めると、
小さな自主性を保ちながら複雑にもつれ合い生息する人間が、
不意に思い悩んで塞ぎ込んだり、意欲を出して躍起になったりする様子が見える。
あの「ゆっくり歩いて、たくさん水を飲め」も結構比喩も何とも・・・。
地道に得る物を得ろ、って感じでしょうか?
うん、実に判りにくい。
何かいい解釈方法お待ちしています、なんて他人任せ。笑

*70

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2006年8月18日 (金)

「返事はいらない」 宮部みゆき

返事はいらない 返事はいらない

著者:宮部 みゆき
販売元:新潮社
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宮部さん短編集。
目次すら見ずにブックoffで買ったので、読みはじめまで短編集だと気づかなかった。
超大作も好きだけど、中途半端は長編よりは短編集のが好きな傾向がある。
でも・・・何となくパターン化している気もしてならないのですが、
それはまぁご愛嬌でしょうか。それじゃ済まされない?
宮部さんは時代物もかなりいいですけどね、まぁそれは後ほど。

一番良かったのは表題作「返事はいらない」かな。
失恋した女が、とある偶然から偽装誘拐事件を手伝う事になり、
身代金受け渡しの時に、振った男の銀行口座を利用する話。
偽造カードと偽造パスワードを利用し、元彼氏の口座を使うが、
偽造パスワードには適当に自分の誕生日4077にする事にした。
しかし実は彼の口座の本当のパスワードも4077である事が発覚し
主人公の中に残る未練がましい気持ちと、切なさが入り混じっている。
いつもながら取って付けた様な犯罪動機で「え、こんな理由で?」
とちょっといぶかしむけど、進んでいくうちになるほどね、と納得する。
でも心理描写に若干怒りの度合いが弱い気がする。
最後に「私の誕生日なんて忘れているだろうな」と思っていたのに、
実は彼は自分の誕生日のパスワードを使用していた、
と判った時凄く切なくやり切れない気持ちになる。
宮部さん、この最後にふと心温まる文章を書くのが上手い。

もう一個挙げておくと、「言わずにおいて」。
部長の扱いに嫌気が差したOLが暴言を吐き辞職を決意する。
くよくよ悩みながら夜中の川原を歩いていると、車の衝突事故を目撃するが、
衝突寸前に「あいつだ!やっと見つけた」と声を掛けられる。
結局事故を起こした車は大破し乗っていた2人は死亡する。
そこでそのOLは「なんで”あいつだ”なんて言われるんだろう」と悩み、
事故を起こした夫婦の身辺を自ら捜査し始める話。
これもねぇ・・・「こんな突飛な事件にそうそう巻き込まれないよ」
とか思ってしまうのを頑張って堪えないといけない。苦笑
でもOLの堪忍袋の緒が切れるところや、事故の様子は現実的。
なんて言うかその後のOLが事件に首を突っ込む過程のリアリティが欠ける気が;
最後の「部長と仲良くやるんだよ」的な手紙がなかなかいい感じです。
やっぱり最後にほんのり温まる系が上手い。

うーん。オタンコナスとか速記とかちょっと昭和の香りがする。笑
私は時代小説の短編集のが好きです。

*79

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2006年8月17日 (木)

「陽気なギャングが地球を回す」 伊坂幸太郎

陽気なギャングが地球を回す 陽気なギャングが地球を回す

著者:伊坂 幸太郎
販売元:祥伝社
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ギャング!
まさしくこんな話に打ってつけの語り口だったのね、伊坂さん。と感嘆。
そうだよねぇ、あの真剣な時に不意にコケる面白さ、
その才能がより引き立ってしっくりくる作品になってます。
面白い、最後までノンストップで読みたい作品の上位を占める。

それぞれ奇異な特技を持つ男女4人の銀行強盗の話。
嘘を見破る男・成瀬に、演説大好き男・響野と、スリ男・久遠。
そこに体内で時間を正確に刻む女・雪子が加わって絶妙な強盗団が完成する。
ある日4人が強盗した大金が、接触事故を起こした別の強盗犯に奪取されてしまう。
偶然と思われていたその事故は、実は巧妙に仕組まれた物であり、
金を奪った強盗団を追い詰めるが、
実はその事件に雪子が手を貸していたと言う展開に。
複雑に絡み合う2つの強盗団の強盗の顛末を、成瀬の思考能力をメインに
陽気な脇役をたっぷり従えて面白楽しく描かれている。
最高だ、伊坂さん。
このギャング、と言う妙に新しいような、あるいは80年代を形容するような
陽気なキャラクターの大胆な行動や滑稽なセリフがしっかりフィット。
性格のてんで違う4人の賑やかな会話が面白い。
4人ともこんなに個性が強いのに、よく衝突せずに、
攻撃を上手く避け交わすような快走感がたっぷりある。
やはり見所は、「裏の裏を書く」ところかな、と。
いや、でも結末の予想はかなりつくのですが、
「あぁやっぱりね」と思いつつも目が離せない軽快さが見もの。
リズミカルなセリフとストーリーの転がり、この上ないです。
こんなにコメディ重視(サスペンスって書いてあるけど・・・)なのに、
自閉症の子供が出てきたりとか、いじめだったり、
そう言う現実的でかつ、現代の素朴な悩みをしっかり盛り込んでいるし、
人の本質的な弱さはどう頑張ってもよくならない、と言う無念さも然り。
本文で、4人が知り合ったきっかけ話みたいなのがさらりと出てくるのですが、
こんなに構成がしっかりしているもんだから、
それだけの話でもう1冊出来るよ、もったいない!なんて思ってしまった。笑
全体的にはあまりにリズミカルに展開していくので、掴み所が無い。
いい意味で、ギャング的。そんな話。
「オーデュボン」や「重力ピエロ」とは違った伊坂さんを是非。

そうそう、映画になってましたよね。
これもみてないんですよねぇ・・・観たかった。涙
主演4人は配役バッチリだと思います。
私的に久遠の松田次男が好きだったりします。
大沢さんもはまり役だなぁ。

■映画公式サイト
http://www.yo-gang.com/

*95

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2006年8月16日 (水)

「夜明けのブギーポップ」 上遠野浩平

2006080802 夜明けのブギーポップ

著者:緒方 剛志,上遠野 浩平
販売元:メディアワークス
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ブギーポップこの紫色のイメージがとても好き。
いや、勝手に紫だと思っているだけですけれどもね。
それにしてもどういう順番で読んだらいいのかよく判らない。
もう読んじゃったけど取りあえず、これの前に「歪曲王」を読んだ方がいいみたい。
「笑わない」→「歪曲王」→「夜明け」でどうぞ。

ブギーポップの誕生と、霧間凪の生い立ちの話。
あとエコーズともちょっぴり出てくる。
何と言うか、「笑わない」とか「歪曲王」など他の作品の裏づけ的な過去の話。
「笑わない」で出てくる凪は最初からクールな感じに纏まっているのですが、
今回登場する14歳の彼女は溌剌としてして意外な感じ。
そして14歳でありながら26歳だと偽るありえなさ。
いや、絶対ばれるだろう。とツッコミを入れたくなりますが、まぁ小説なので。
話の内容としては、人間を超越した存在の人造人間が、
人間の恐怖の感情につけ込み、何とも残虐な方法で殺害される。
うーん、でも最近の世の中って変な事件が多いから、
コレだけ残酷な殺し方が書かれていても、
「もしかしたらこんな事起きるかもね」とか思ってしまう私が怖い。苦笑
まぁさすがに脳みそ啜ったり・・・なんて事件は起きないかな。
キャラクターの描き方が自然で(少しアニメ的ですが)、そんな登場人物たちが、
人の弱点を突いてあざ笑うことが快感であったりとか、
自分の生きるためになら他人を平気で見殺しに出来きたりとか、
そう言うのか凄くリアルに感じで凄いな上遠野さん、とか思ったりする。
だってこんなにファンタジーなのに。笑
そしてやっぱり胡散臭いブギーポップも、何だか憎めない。
今更あえて言うなら、正体が判らなくなるくらいは変身した方がいいと。
あと超ピンポイントないいとこ取りの感じも。笑
まぁここまできてると、もう何も言わずファンタジーだと纏める方がいいのかも知れない。
勿論、いい意味で。
どうぞ読む時は「笑わない」→「歪曲王」→「夜明け」で。
「ペパーミント」とかどこに位置するんだろう・・・?
読んだら順番に解析してみようと思います。

*78

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2006年8月15日 (火)

「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎

オーデュボンの祈り オーデュボンの祈り

著者:伊坂 幸太郎
販売元:新潮社
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これを読んで、伊坂さん受賞した時「してやったり」
って思っただろうな、なんて思いました。笑
だってこれデビュー作だよ? いやーありえない素晴らしさ、感激。
むしろ作品を書いてくれてありがとうございます、
と個人的に言いたいほどの作品です。絶品。三ツ星レストラン。笑
ここから伊坂ワールドは始まったのか、と思うと感慨深いですね。

「胸の谷間にライターをはさんだバニーガールを追いかけているうちに、
見知らぬ国へたどり着く、そんな夢を見ていた。」
と言う突飛な文章で始まる。この文章が私的にとても好き。
唐突にコンビニ強盗に押し入った伊藤は、次の瞬間目覚めた時見知らぬ島にいた。
閉鎖的なその島には未来を予知でき、しゃべるカカシ「優午」と、
島の絶対的ルールとされる「桜」と言う青年がいた。
本来は絶対に有り得ない、未来が全て予知され
過去の出来事も全てお見通しな世の中は、実に平和的なものであり、
その上絶対的殺人者・桜のお陰で全ては悪は相殺される、そんな世界観が広がる。
もしも事件が起きたとしても全ては解決され、もしくは桜に殺されてしまうのだ。
しかし島の人々は優午を信頼し重宝していたが、未来を知りすぎたカカシは
苦心のあまり自ら命を落とし、最後に「この島に足りない物」を
手に入れるべく、巧妙に未来を仕組む事にした。(むしろこれも予知していた
「自転車のライトに驚いて足を滑らせた人の頭上に、ブロック石が落ちてくる」
一言で言えば簡単だけど、話の中では自転車をこぐ人、自転車をこげと言った人
ブロックを運んでくる人、ブロックをたまたま持ち上げた人・・・
など全てが違う人物がそれぞれ違った行動の中で動いていて、上手く繋がっている。
一つの方角(人間・2次元)から見ると点でしかないものが、
上から(優午・3次元)物を見ると線で繋がっているのだ、と言いたい。
それが判った時、あぁなるほどね!って感心すると同時に、ちょっと悔しい。笑
題名である「オーデュボン」って何よ、って感じですが、
オーデュボンは大群で集団行動をするリョコウバトの絶滅を目の当たりにした人。
人間が殺していって少なくなった頃に、実は生命後継能力が低い動物だとわかり、
あんなに大群だったリョコウバトは絶滅(?)する。
そこで人間はどこまでを「動物」だと認識し平気で殺すのかな?、
と言う問いがあり、その私たちの曖昧な線引きに深く悩まされる。
動物、あるいは人間も含め、失ってから重要な事に気づくのでは遅いのだ、と言う事。
そして全てが見透かされた世界(優午)も、その力に甘んじてしまうからいけないし、
かと言って今の現実(城山)もいけないよね、と言いたいのかと。私の解釈ですが。
両方に牽制しつつ、娯楽が欠けていた閉鎖的な島に音楽が舞い込んだら、
きっと少しは上手く行くのではないか、と言うのがコンセプトっぽい。

話が複雑なのであらすじ強めになってしまったので、感想も。
やっぱり一番良かったのは園山のところでしょうか。
あの部屋一面のリアルな絵を伊藤が見つけた時、心にしみる物があった。
彼は全てを妻に捧げたのだ、と思うと同時に、
自分が変人だと言うレッテルを顧みない強さと、
「でも、これも、幸せな人生だな」と言い切った時の表情が浮かぶようだった。
それと日比野も。「人を形成するのに、一番大切なものが抜け落ちている」
と小山田が言ったのは、親友・禄二郎の死に様に心を打たれた徳之助の心が
繁栄しているからだろうか・・・と思うと泣けてきます。
文章でも伊坂さん健在、終始笑いどころ盛りだくさん。
よくここまで盛り込めるよ、って思うくらいユーモラスな文章が溢れてます。

読んでいくうちに、「何これ、ばらばら過ぎるよ」って思っていた話が、
いつの間にか1つになって、その存在は10倍にも膨れ上がる。
読み終わってから、「あぁいい話だった」としみじみ思える本。後味◎
お薦め、お薦め。
伊坂さん読み始めるならオーデュボンから読んだ方がいいかも。
色々キャラクターが他の本にもリンクしてるみたいなんで。
是非一読下さい。

*96

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2006年8月13日 (日)

「バッテリーⅢ」 あさのあつこ

バッテリー 3 バッテリー 3

著者:あさの あつこ
販売元:角川書店
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今更気づいたけども、このストーリー展開がめちゃ遅い。
それは取り柄なのか、欠点なのかよく判りませんけども。
読み始めた時は、てっきり甲子園の話位までいってくれるのかな、
なんて甘い考えをしていまして、え?高校にも入らないって?
しまった、面白すぎてつい忘れてたけど、試合のインパクトって言うか、
印象度って言うか、それはやっぱり甲子園が読みたかったかな、なんて。

超自意識過剰少年・巧が甲子園(全国大会?)を目指すスポコン小説第3巻。
部活動停止解除をめぐって、一二年VS三年の紅白試合が展開され、
その後強豪横手との試合をする事により、部活自体の信頼を深めようと言う内容。
巧の投げる「最高の球」を取るために心躍らせる豪であったが、
今までで一番強い相手、横手の門脇を相手にした巧の投球は、
恐ろしいまでに威力の強い球へと変化し、豪はボールをミットで捕まえられなかった。
巧は知らずのうちに、豪が取れる球へと手加減して投げてしまい、
それに気づいてしまった豪との仲がギクシャクする。
「おまえにとってたったひとりの最高のキャッチャーだって心底わからせてやる」
と豪語していた豪であったが、巧への不信感が募るあまり、
野球についての意欲が激変し、不安感が増す。
そのちょっとしたもどかしさが、とても考えさせられる。
ポジションは違えど、切磋琢磨して伸び続ける2人であるから、
プライドも入り混じる中巧は「ごめん」と謝る事も出来ず、
かと言って豪は自分のために手加減する巧に苛立ちと悔しさを覚える。
その様子がリアルで、読んでいるこちらも心苦しくなった。
いよいよ面白くなってきた、と言うところです!
それと、巻末に文庫本書下ろしの「樹下の少年」
と言うのがあるのですが、これがこれがいい感じ!!
短いですが本編にも負けないお話です。
巧の弟・青波の話ですが、病弱の青波を過保護に扱う母親の様子が書かれていて、
巧がどうしてここまで人を嫌い、無関心なのか判るような気がしました。
「兄ちゃん、試合に行くんで。」
青波が母親に話しかけようとする場面がありますが、
この頃ですら母親が兄を放任し過ぎていて少し泣けてきました。
こんな育て方したら、そりゃぁぐれるさ、みたいな。
青波の病弱性は不可抗力ですけども、それにしても・・・と言う感じで。
これを読んでから、私の中で巧の見方が少し変わった気がしました。

*89

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2006年8月12日 (土)

「失踪HOLIDAY」 乙一

2006080801  失踪HOLIDAY

著者:乙一
販売元:角川書店
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角川スニーカーの乙一さん。
何となくスニーカーはこんな感じのファンタジー(?)が思い浮かぶ。
でもなぁ乙一さんは生グロイのが売りな気がして、
ちょっと物足りない感じがする。大人しすぎるんだよな、きっと。
ストーリーは好きだけども、やっぱ乙一さんには殺人事件の勢いも欲しい。

実母が再婚して超お嬢様になったナオは、その後実母が死に、
さらに義父が義母と結婚したため、金持ちの子供でありながら、
家族の誰とも血の繋がりの無い人間になってしまった。
その微妙な関係と、義母との不和に嫌気が差し、
自作自演の誘拐事件を企て、自分を心配してもらおうとする話。

使用人クニコの狭い部屋で窮屈な生活をしながら、
自分が浚われたと言う脅迫文を家に送りつけ、偽装誘拐事件を発生させる。
主人公は狭い部屋でゴロゴロしているばかりで、
主に主人公の言葉でクニコの行動の説明ばかりされている。
分類的に言えば、「夏と花火と私の死体」系に属されるかなぁ、と。
結末に「あぁ、やっぱり」と思ってしまった。
何となく乙一さんにしてはちょっとあっさりし過ぎていて物足りない。
文章はいつも以上にコミカルになっていて、明らかにウケを狙っている。
いや、悪くは無いのですけれども・・・・。
特に「いやもう断じてそういうわけではないのである」
って文が4・5回出てきて、このくどさを笑って下さい。と言う感じ。笑
まぁ一番の見所?は、家族の反応でしょうか。
自分の存在を確かめたくて誘拐事件を見せかけたわけで、
クニコもばれない様にすればいいだけのはずなのに、
わざわざ義父や義母に質問したりするあたりが感動的。
結末に向かうにつれ、主人公が反省し事件を起こした事を後悔するが、
なんとの偽装誘拐事件は他の人に利用されててビックリだね、
って言うのがコンセプト。終始ギャグ多め。
最後は和やかに終わっていい感じです。
うーん。でも私は乙一さんにはグロさを追求したい。苦笑
たまには平和的な話もいいかも。

*73

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2006年8月10日 (木)

「バッテリーⅡ」 あさのあつこ

バッテリー〈2〉 バッテリー〈2〉

著者:あさの あつこ
販売元:角川書店
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連続で読んじゃいました、あさのさん。
だって続きが気になっちゃてさぁ、1巻に試合が無いもんだから、
今度こそ緊迫試合が楽しめるかしら・・・とか思って。笑
2巻も裏切らない、面白さです。

超自意識過剰少年・巧が甲子園を目指すスポコン小説第2巻。
ようやく春休みが明け、中学生になった巧と豪は野球部に入部する。
しかし生意気な巧は行動をよく思わない3年生達にリンチに合ってしまい、
豪は今までのような巧の球を見ることが出来ないのではないか、と心配する話。
それと同時にそれらの騒ぎが学校側に伝わってしまい、
野球部の停止はおろか、存続の危機に襲われ、イライラが募る。
「ズンときて、お、きたと思わせるボール」
春休みに会ったばかりの巧と豪がの2人が、
しっかり認識し合い、認め合い始めたボールにドキドキした。
素直に気持ちを伝える豪の言葉が、巧の側になって考えると少しこそばゆい。
自分の最高ボールを投げる事だけしか考えていない巧に少し戸惑いながら、
豪は巧のボールに感化され野球を続ける自分を再認識して、
友情・・・とは言いがたいようなバッテリーならではの感情が表れ始める。
いよいよ来たな!とワクワクする。
リンチ事件を機にチームの仲がギクシャクしている間も、
巧の精神的後遺症の事をばかりを意識する豪の感情に同調した。
自己中心的に自分の事しか考えない巧を
いつの間にか気にしてしまう自分がいてちょっと悔しい。笑
でも・・・でもやっぱり試合が無い・・・!!
えぇ?!そんなぁ・・・と思いますが、
巧の力が徐々に周りに認められていく様子、快感です。
それにしても生意気なんだけどねぇ、またそこがいいのかも知れない。
話としては元から主人公が強いので、いわゆる一般的なサクセスストーリーではない。
ここまで強いと、力が伸びるのも勿論なのですが、
巧がチームと内面的にどう同調していくか、が重要視されてると思います。
オトムライの登場がかなりいい感じ。
巧の成長に打って付けの、いい性格の登場人物ですね。なんて巧びいき。笑
面白いですよ、是非1巻を読んでから。

*89

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2006年8月 9日 (水)

「バッテリー」 あさのあつこ

バッテリー バッテリー

著者:あさの あつこ
販売元:角川書店
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さすが、あさのさん!!止まらない面白さ。
1巻読み終わってから気づいたけど、これって6巻も出てるんだ。苦笑
あー絶対最後まで読まないと止められない。
コミック感覚で楽しめる、スポコン小説。最高です。

超自意識過剰少年・巧が甲子園を目指すスポコン小説第1巻。
親の転勤により新田市にやってきた天才ピッチャー巧が、
地元の豪腕キャッチャー豪とバッテリーを組む話。
面倒な事や纏わりつかれる事が大嫌いな一匹狼の巧と、
チーム全体を隅々見渡せるような心配りの出来る豪とのコンビが凄くいい!
まるで夫婦コンビのようで、心地よさが快感。
「ど真ん中。ストレート」
豪に向かって巧が初めて投げた本気球第一投目。
あさのさんの鮮やかな文体のお陰で、まるで私が巧の剛速球を
キャッチャーミットでボールを受けたような感じがして鳥肌が立った。
少々傲慢さが漂い、ふてぶてしい態度ばかりとる巧だが、
この心地よいピッチングを見ると誰もが何も言えなくなってしまう。
しかしそんな巧の内心では、祖父が自分を見てくれない悔しさであるとか、
野球以外での人間関係の煩わしさが上手く描かれていて、
天才ピッチャーも悩みがあるのね、って納得し主人公の人間味が増します。
特に弟・青波がいつしか自分を抜くのではないか、
と言う不安が半信半疑でありながらも生まれている様子が手に取るように判る。
脇役の登場人物構成もしっかりしているため、
読んでいる途中に、「あれ?これ誰だっけ」と前のページを捲る必要が無い。笑
あぁこういう人いるよねぇ、と言う感じで現実味たっぷり。
特に巧の母親は、うちの母親のようです。よく祖母と喧嘩します。
主体も巧からたまに変わるのですが、変わったとしても豪なので、
読んでいて違和感が何も無い。何たってバッテリーだから。(とまとめてみる
残念なのは、1巻では試合が1回も無いことです・・・。
6巻構成だから仕方が無いと言えば仕方が無いですけれども。
頑張って制覇しようと思います。
楽しいです、コミック的にいけますので普段漫画しか読まない方にもお薦め。

*89

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2006年8月 8日 (火)

「西の魔女が死んだ」 梨木香歩

西の魔女が死んだ 西の魔女が死んだ

著者:梨木 香歩
販売元:新潮社
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あぁ・・・久々に読みにくかった・・・。
ちょっと私的に文章がいただけなくて、短いのに凄く時間が掛かった。
梨木さんてこんな文章書く方だったのかぁ。
ちょっとショック。

登校拒否になった子・まいが祖母の家で静養する話。
まいと魔女と呼ばれた祖母の淡々とした日常が生き生きと描かれています。
ジャムを作ったり、周りの自然を愛したりして、健康的な生活を送る事で、
魔女の力(?)を身に付け徐々にまいの情緒がよくなって行く。
人間が持つ固定観念や、人への思いやりなどを祖母から学び取っている。
が・・・しかし。
と言う感じで、あまりにも無駄な文章が多いので、何が言いたいのか分かり辛い。
接続詞がやけに多く、一文が短いので、主語も増える。
2人しか登場しない所で、「まいは~」「おばあちゃんは~」
で始まる文が多発し、結構うんざりする。
ジャムを作ったりサンドウィッチを作る場面も、もっと省略していいから・・・!!
それと語り手が語ってくれないので、主人公がどう思っているのかよく判らない。
うーん、惜しいなぁ。
文章がもう少し考えられてたら好きなストーリーだったのに、と残念です。
一番好きなのはやっぱり最後の「アイ・ノウ」!
おばあちゃんの魂が別れる時に起こした魔女の奇跡が素敵でした。
別れる時に言えなかった「おばあちゃん、大好き」
が伝わった瞬間、凄く感動しました。
でもちょっと言ってしまうと、別れの言葉を言えなかったのを、
もっとまいは後悔してくれてもいいかなぁ・・・とか。苦笑
素敵なおばあちゃん、いいですね。
祖母と孫の話ってなかなか読まないので、話としてはとても新鮮でした。
でもね・・・文章が苦手。個人的なものかもしれませんけども。
ほんわかしたカントリーストーリー、西の魔女はとても素敵でした。

*-

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2006年8月 7日 (月)

「坊っちゃん」 夏目漱石

坊っちゃん 坊っちゃん

著者:夏目 漱石
販売元:岩波書店
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このユーモアセンス凄いよな~・・・といつも感嘆。
だってさ、何年前に書かれたと思う、50年以上前ですよ?
50年・・・そりゃ著作権も切れるさ。笑
お金の価値観さえ変わってなければ、新作でもいけますね。

江戸っ子で勇み肌の坊っちゃんが、ひょんな事から田舎の学校の先生になる話。
曲がった事が大嫌い、喧嘩っ早くて、だけど演説大嫌い。
そんな坊ちゃんは田舎の生活で、信用できない人間関係の中で空回りする。
自分自身は子供に教える教師の立場であり、
その上教師の中での上下の関係にも挟まれる、
そんな環境にいきなり放り込まれた真っ向人間はこうなるよ、みたいな。
人間は本来、悪い事は悪いし、正しい事は正しいと生きるべきだけど、
世の中の慣習や地域の枠組みの中に入ってしまうと、
一挙に考えるべき事が増えて、一体どれが正しいのか判らなくなってしまう。
だけどいくら自分が痛い目に遭おうと悪いヤツには制裁を。
と、言うのがコンセプトかな。
いや~一円五銭でさえも返しちゃう、そんな坊っちゃんの江戸の心意気が心地よい。
「この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた」
まずは出だしのこの部分から、坊っちゃんの性格がよく判ります。
昔の江戸っ子ってこんな坊っちゃんのような感じだったんでしょうかね。
そしてやっぱり一番の見所は、最後の赤シャツと野だを懲らしめる所。
あの生卵はたまりません、なんたって食べようと思っていたのに投げちゃう。
悪党を懲らしめた感がたっぷりで大満足でした。笑
それにあだ名が面白い。
果たして50年前からこんな面白いこと考えられるものなのでしょうか・・・。
赤シャツだの山嵐だの狸だのって。
あだ名にする事に滑稽さが増すし、やっぱりキャラクターを想像しやすい。
正直すぎて疑う事を知らず、すぐ馬鹿をみる坊ちゃんも、
清の登場で心のやさしい部分もしっかり表現されている。
さすがはさすが、夏目さん。
この時代、語り手が主人公って珍しかったんじゃないだろうか・・・。
(夏目さんと川端さん位しか読まないから、何ともいえませんけども;)
「こころ」とは違った面白さ、コミカル重視の超名作、是非一度は。

*90

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2006年8月 6日 (日)

「パン屋再襲撃」 村上春樹

2006080602 パン屋再襲撃

著者:村上春樹
販売元:文春文庫




あ、「風の歌を聴け」の感想を先に書けばよかったかな・・・?
まぁいいか。(いいのか?
こちらは春樹さん初期頃の短編集。
面白いですよ~色んな話に繋がってるんですよね~。
「風の歌を聴け」とか「ねじまき鳥クロニクル」とか「羊をめぐる冒険」
にリンクしてます。あと「ノルウェイの森」もかなぁ?
ワタナベ君って・・・まさか渡辺昇?まさかねぇ・・・。

一番この作品集の中で好きなのは、「ファミリー・アフェア」ですね。
表題作も良かったのですが、あえてこちらを。笑
自分の妹の婚約者がどうも気に入らないんだよね、って言う話です。(簡略すぎ
仲の良かった兄と妹が、妹の結婚を機に仲がギクシャクしてしまい、
自分以外の他人の事は関係の無いことだと断ち切ろうとする。
しかし、人間は1人では生きて行けるわけは無いし、
何らかの接点が必ずあるのだと再認識し、少なからずどこか妥協が必要だと言う話。
当たり前すぎるけど、考え始めるとドツボにはまっちゃうよね、みたいな。
春樹さんって結構兄弟が出てくる話ってないのですが、
この話ではかなりリアルな兄と妹の関係が描かれていて新鮮です。
そして他人として描かれていないためか、女の子が幾分現実味がある気がする。
なかなか兄弟でのやり取りがコミカルでいい感じです。

あともう一つ挙げると、やっぱり「象の消滅」かな。
こちらは題とおり、象が消滅してしまった話。
脱走や連れ出された訳ではなく「消滅」してしまった、
と言うような現実的に説明が付けられない事象を、
人間は目をつぶって、現実的な出来事に無理やり結び付けようとするよね、って話。
たまたま、その不可思議な状況を目撃してしまった僕もやはり、
説明しようと努力してみるけど、やっぱり実際上手く伝えられない。
確かに世の中には、こじつけがましい事が溢れていますよね、
そこを鋭く突いて、「あぁそうね、そう思うね」って感じです。
何かの枠組みの中にキチンと納まっていないといけないのだ、
と言う人間の本能のような統一的意識が見事に描かれています。
こんな事を物語りに出来ちゃう春樹さんが素敵。
でもちょっと平坦かな、象が消滅するだけだし。短編で正解。

そんな感じで。
「風の歌を聴け」→「1973年のピンボール」→「パン屋再襲撃」をお薦めします。

*85

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2006年8月 3日 (木)

「カラフル」 森絵都

カラフル カラフル

著者:森 絵都
販売元:理論社
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「DIVE!!」読んだから、森さんの昔読んだ本が懐かしく思えて、
ついついハードしかないこの本を買ってしまいました。
何で文庫無いんだろう・・・?児童書(?)だから・・・?
それにしてもアマゾンでお届けに1週間以上って、
どれだけ品薄なんですか?とちょっと不安に。笑
近くの本屋・ブックoffになくて苦労しました。でも新品で嬉しいです。

「おめでとうございます、抽選に当たりました!」
ひょんな事から神様が決めた抽選に当たった僕の魂は、
下界に下りて自殺した男の子の体にホームステイする事になった。
そこで再挑戦に成功すれば、僕は輪廻・すなわち成仏でき、
失敗すれば瞬間に魂はシュッと消え、その上男の子も死亡しちゃうよ、
と言うコミカルな人格更生の話。でも泣ける。
天使の言葉で始まる軽快な語り口が、堪らない。
人の死を扱う話で、これだけ嫌味もなく話を進めるためには、
森さんの文章能力でしかありえないだろう、と断言します。
僕の入った体・小林真は冴えない男で、周りの環境も入り組んでいる、
だから真が自殺をするのは当然だ、と決めつける僕の気持ちが良く分かる。
けれどそんなどうしようもない僕を周りの皆は支えてくれていた、
と気づいた時、とてつもなく切ない思いに駆られます。
特にあんなに喧嘩ばかりして、「次はしくじるなよ」なんて言っていた兄が、
僕のために行きたがっていた医大に行くのを諦め、その上、
14年間世話の掛かった弟が自殺して死んだ気持ちを考えてみろ、と言った事。
私はその部分を読んだ時思わず泣いてしまった。
「満の声を、死んだ真にきかせてやりたかった・・・。」
全ての後悔は、死んだり自分の手元に何もなくなった時に
改めて痛感するかけがえの無い物なのだと教えてもらった気がしました。
「この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはみんないつも迷っている」
まったくその通り。
世の中には個性豊かな色んな色が溢れていて、周りは皆カラフルだから、
どれが正解かなんて決める事は出来ないけれど、
例え選んだそれが間違った物だと気づいても、もう一度よく見直してみたら、
違う色に見えるかもしれない、だから決して生きる事を諦めないで。
・・・と、コンセプトこんな感じでしょうか?
結末はご察しの通り。(言いませんけど・笑
小学生の教科書に載せてもいいんじゃないかな、なんて個人的に思いますけど。
是非、森さんの真骨頂を。

*97

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2006年8月 2日 (水)

「今夜は眠れない」 宮部みゆき

今夜は眠れない 今夜は眠れない

著者:宮部 みゆき
販売元:角川書店
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何か・・・ちょっといただけなかった。
「夢にも思わない」を迂闊にも先に読んでしまったからだろうか?
いや、それにしても宮部さん、これはさすがにこじつけ過ぎでしょう。
これなら関連性無しに「夢にも思わない」書いてくれた方が、
読む側としては楽しめたんだけどな、なんて。

僕の母親がひょんな事から5億円の遺贈相続人になる話。
金を沢山持つと人間は狂うもので、家族は離婚問題へと発展する。
しかしその5億円は、ある人物が、有名な宝石を手に入れるためだけに、
用意された金であり、家族はその事件に巻き込まれただけであった。
結局5億円は宝石へと変化し、犯人はすでに死んでいると言う奇妙な事件に。
・・・何だか宮部さんにしてはめちゃくちゃ創りっぽいキャラクターに
創りっぽいストーリーがプラスされて、え?本当に宮部さん?みたな軽いショック。
リアルな人間関係とリアルな事件真相が売りの宮部さんが、
一歩間違えて書いてしまうと、こんな物が出来るのか・・・とか。(酷い
言ってしまえばあまりに現実味がなさ過ぎて、
なんて言うか、金田一を通り越し、やっぱり「君は江戸川コナンですか」状態。
5億円がまず一般庶民に降りかかってくるなんて、稀有のまた稀有だし、
もしも金を手にすることになったとしても、
まさか母親が共犯しているなんてケースは億に一もない。
しかもあんなに5億円と盛り立てていたのに、結局手に入らない。
え?そんな事ありですか?みたいな。
折角こんなに面白い題材もってくるんだったら、
こんなコミック的に纏めないで、模倣犯ののりでやって欲しかったなぁとか。
まぁそれは私の個人的な意見です。
そして話は後ろの方でつんのめった様にバタバタと終りに向かい、
いきなりあの水族館の女性にたどり着く。
島崎が勝手に「あなたが犯人と共犯だと思ってました」的な言葉を言いますが、
うそつけ、お前。絶対判るわけないよ。笑
そんなんで判ったらそんな所で中学生してる場合じゃないってば。
と、そんな感じで、彼はこの話でも現実にあるまじき中学生を
美しいまでに表現してくれています。うん、でももうちょっとリアリティ欲しい。
ズバズバと色々書いちゃいました。
でもお薦めしません~。
どうせなら「夢にも思わない」薦めますけど、結構続き物的なので、
単独で薦めるわけにもいかず、微妙ですね。
漫画的に(むしろコナン的に)楽しむ方にはいいかも知れません。

*-

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2006年8月 1日 (火)

「スプートニクの恋人」 村上春樹

スプートニクの恋人 スプートニクの恋人

著者:村上 春樹
販売元:講談社
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春樹さん大好きだけど、理解するのに骨が折れる。
彼の文章を出来るだけ正確に読み取るコツとか、教えて欲しいです。苦笑
「スプートニク」題名と内容の掛け具合が、他の作品に比べて薄い気がする。
楽しめるけど、ちょっと考えないと主題は判ったつもりで判ってない。
そんな私もきっと判ってない・・・。

単刀直入に言うと、僕が好きな「すみれ」は、生まれて初めて恋をする、
そして、それはたまたま女だった、と言う話。
しかしすみれが好きになった女性・ミュウは、原因不明の精神混乱により、
自分の中のいくつかの物(性欲やピアノの才能や髪の色素)を失っていて、
ミュウはすみれの思いを受け止める事が出来なかった。
対するすみれも本当の母親が消える夢を見ていて、それは
すなわち自分の中の母親の血(?)が引き裂かれ、消滅すると言う隠喩。
どちらとも何かしら憎むべき物によって、自分の内部の物が欠如してしまった。
そんな時すみれは、もう一人のミュウ(欠如した方)に会いに行くために姿を消す。
僕はそんな様子を傍観者的に眺め、そして絶えずすみれへの思いを募らせる。
・・・とこんなところがあらずじかと。
自分でもよく判りませんが、これ以上上手く表現する事は私には無理です。苦笑
で、まぁ結局のところのコンセプトは、
「それぞれに他者の中になにかを求めあっていて、
なのになぜ我々はここまで孤絶しなくてはならないのだ」と言う事です。
ミュウはすみれの望みを叶えられず、すみれは僕の望みには答えてくれない。
そう言う螺旋状の関係が幾重にも続いている、と言う感じかな。
何もさえぎる物は無いはずなのに、不意に触れ合ってはすれ違っていく。
まるで二度と戻ることなく宇宙をさまよい続ける事になった、
「スプートニク」のようだね・・・と言いたいのだと思われます。
難しいですね、まったく。
でもこの本は結構好きだったりします。何て言ってもすみれが可愛い!!
春樹さんにしては珍しいキャラクターです。
いつもは大人しめで根の強いヒロインが多いですが、
すみれは結構ずれてる(?)と言うか、あまり完璧で無いところが魅力。
あまり春樹さん読まない方にもお薦めですけど、しっかり読まないとよく判らない。
それだけは言っておきます。

*84

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